Archive for the ‘窃盗罪’ Category

高齢受刑者と再犯

2019-07-19

高齢受刑者と再犯

高齢受刑者と再犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県太宰府市に住むAさん(80歳)は年金生活で、何とか年金で生活費を賄っていましたが、今月は好きなギャンブルにお金を費やしてしまいお金が足りませんでした。Aさんは息子、娘に援助を求めることも思いつきましたが、迷惑をかけてはならないと思い諦めました。そこで、Aさんは悪いとは思いつつも、近所のスーパーで食料品を万引きしました。しかし、Aさんは保安員に万引きを見つけられてしまい、逮捕されてしまいました。そして、Aさんは、窃盗罪で起訴され、裁判で懲役1年の実刑判決を受けてしまいました。実は、Aさんは、昨年10月に刑務所から出所してきたばかりでした。
(フィクションです。)

~ 刑の執行に変わりはあるのか? ~

高齢者の方が犯罪を犯し、刑務所に収容されるおそれがあるとき、

高齢者だから特別扱いされるのではないか?

などと疑問を持たれる方もおられるのではないでしょうか?

確かに、受刑者などの処遇などに関して規定した刑事収容施設被収容者法30条では

受刑者の処遇は、その者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする

とされていますから、高齢者に限らず、受刑者間の個別具体的事情に応じて処遇が異なるということはあるでしょう。しかし、だからとって、決められた刑期の種類が変わったり、期間が短くなったりするということはありません。ただし、刑事訴訟法482条では、

・刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき
・年齢70年以上であるとき

などは、検察官の指揮により、一時的に刑の執行を停止することができるとされています。

~ 高齢者と再入率 ~

高齢者(65歳以上)の2年以内の再犯入所率が高いようです。

平成30年度版犯罪白書(以下、犯罪白書)によると、

平成25年度内に出所した高齢出所受刑者(満期釈放者、仮釈放者)

再入率(各年の出所受刑者人員のうち、出所後の犯罪により、受刑のため刑事施設に再入所した者の人員の比率)

を、満期釈放者、仮釈放者別で区分すると以下のとおりとなっています。

【満期釈放者】      【仮釈放者】

出所時  11・9%    3.0% 
2年以内 30.1%   15.5%
3年以内 37.8%   22.4%
4年以内 42.5%   27.4%
5年以内 44.2%   31.3%

これからすると、高齢者間では、

仮釈放者より満期釈放者の方が再入率が高い

ことがわかります。また、高齢者と非高齢者(65歳未満)を比べると、5年以内の再入率は変わりはないとのことですが、

2年以内の再入率が高齢者の方が、満期釈放者、仮釈放者とも高い

とされています(非高齢者の満期釈放者の再入率→1年以内 7.5%、2年以内 26.1%、仮釈放者の再入率→1年以内 1.4%、2年以内 10.8%)。

~ 再犯期間も短い ~

上記の数字は、

5年以内に刑務所に再入所した高齢出所受刑者の比率

ですが、刑務所に入所する前の再犯期間も短いようです。

犯罪白書によれば、高齢者の5年以内再入者のうち、1年未満に再犯に及んだ高齢者は全体の

60.8%(非高齢者は47.3%)

だったとのことです。さらに、1年未満を細かくみると、3月未満に再犯に及んだ高齢者は全体の

21.6%(非高齢者は12.8%)

だったとのことでした。

~ 高齢受刑者に対する出口支援 ~

高齢受刑者等の中には、高齢又は障害のために自立した生活をすることが困難であるのに、身寄りがなく、福祉的支援が必要な状況にありながら、適切な支援体制が確保されないまま出所し、社会復帰を果たす上で困難な状況に陥っている者が少なからず存在します。そこで、矯正施設及び保護観察所においては、厚生労働省の地域生活定着促進事業により設置された地域生活定着支援センターを始めとする多くの機関と連携し、平成21年4月から、高齢者又は障害を有する者で、かつ、適当な帰住先がない受刑者等について、釈放後速やかに、必要な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として、特別調整を実施しています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、性犯罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。性犯罪でお悩みの方、ご家族が性犯罪で逮捕されお困りの方などは、お気軽に弊所の弁護士にご相談ください。弊所では、24時間、専門のスタッフが無料法律相談初回接見のご予約を電話で受け付けております。

【柳川市】での窃盗事件

2019-01-06

【柳川市】での窃盗事件 

福岡県柳川市に住むAさんは,知人Vさんから鍵がかかっていないVさん所有のカバンを預りましたが,その際カバンの中に入っていたVさん所有の財布を抜き取りました。Aさんは財布から現金2万円を抜き取った後,財布を近くの川に投棄しました。Aさんからカバンを受け取ったVさんは,カバンの中から財布がなくなっていることに気づき,福岡県柳川警察署に被害届を提出しました。柳川警察署は,VさんがAさんにカバンを預けた後に財布がなくなった事実などからAさんを窃盗罪の被疑者と認めました。Aさんは,Vさんから柳川警察署に被害届を提出したと言われ,柳川警察署から呼び出しを受けたので,刑事事件に強い弁護士に今後の対応や見通しなどを相談すべく,弊所の無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

本件で犯罪となりうるAさんの行為は

1 Vさんのカバンの中からVさんの財布を抜き取ったこと
2 Vさんの財布から現金2万円を抜き取ったこと
3 Vさんの財布を川に投棄したこと

です。

それぞれ犯罪として成立し,成立するとしてどんな罪が成立するのでしょうか?Aさんは警察から窃盗罪の容疑をかけられています。また,その他にも,横領罪(刑法252条1項)の成立が考えられますので,まずはそれぞれの条文から確認することにします。

窃盗罪(刑法235条)

 他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

横領罪(252条1項)

 自己の占有する他人の物を横領した者は,5年以下の懲役に処する。

~ 行為1について(窃盗罪か横領罪か) ~

行為1については,窃盗罪が成立するのか,横領罪が成立するのかが問題となります。なぜなら,Vさんの財布は「他人の財物」とも「自己の占有する他人の物」とも言えそうだからです。VさんがAさんにカバンを預けた時点で,財物(財布)の占有がAさんに移ったといえる場合は,Aさんは「自己の占有する他人の物」を横領したとして横領罪が,そうではなく,以前として財物(財布)の占有はVさんにあるといえる場合は,Aさんは「他人の財物」を窃取したとして窃盗罪が成立します。
この点,似たような事例で判例(大判明治44.12.15など)は,包装物全体についてはAさんが占有を有するが,その在中物については,Aさんがこれを自由に支配し得る状態にないから,依然として占有はVさんにあると解してAさんに窃盗罪の成立を認めています。これからすると,Aさんがカバン自体をVさんに勝手に持ち去った場合は横領罪が成立することになります。

~ 行為2,3(不可罰的事後行為) ~

行為2,3は不可罰的事後行為に当たります。不可罰的事後行為とは,

ある犯罪終了(行為1)後の行為で,それだけで別罪を構成するように見えても,元の犯罪の違法評価に包含されているために別罪を構成(成立)しない行為をいいます

= 行為2について =

確かに,財布から現金2万円を抜き取るという行為だけみれば窃盗罪が成立しそうです。しかし,Aさんとすればお金が欲しいから,Vさんのカバンから財布を抜き取った(行為1)のであって,行為2は行為1からの自然的な流れと言え,行為2の違法性(悪いこと)は行為1によってすでに評価しつくされていると言えそうです。よって,行為2は不可罰的事後行為であり,窃盗罪は成立しません。

= 行為3について =

行為3は器物損壊罪に当たりそうです。器物損壊罪の「損壊」には隠匿することも含まれるからです。しかし,Vさんの財布の占有が害された(財布が隠匿された)という違法性は,行為1,つまり,他人の財物を窃取することによってすでに評価しつくされていると言えます。よって,行為3も不可罰的事後行為として器物損壊罪は成立しません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪,横領罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。上記のように,事案によって成立する犯罪が異なりますから,どの犯罪が成立するか不安な方,お困りの方は,まずは弊所の無料法律相談のご利用をご検討ください。
(初回法律相談無料

財産事件 福岡県の平成30年1月から9月までの窃盗犯

2018-10-26

財産事件 福岡県の平成30年1月から9月までの窃盗犯

Aさんは遊興費欲しさに,人気の少ない会社事務所に侵入し,鍵のかかっていなかった金庫の中から現金10万円を盗んだ侵入盗の疑いで,福岡県粕屋警察署に逮捕されました。侵入盗とは何か?福岡県の財産事件専門の弁護士が解説します。
(フィクションです)

~ 侵入盗 ~

侵入盗とは,他人の建物などに無断で入り,そこにあった物を盗む「建造物侵入罪又は住居侵入罪刑法130条前段)と窃盗罪刑法235条)」の罪のことを指し,捜査機関が窃盗の手口を分類するために使用している用語です。侵入盗は,さらに空き巣,事務所荒らし,更衣室荒らし,倉庫荒らしなどに分類されます。本件は,事務所荒らしということになるでしょう。

~ 認知件数トップの窃盗犯 ~

万引きをはじめとする窃盗犯は故意犯でありながら,比較的誰でも手の出しやすい犯罪と言えます。そのため,福岡県警が発表した平成30年1月から9月までの窃盗犯認知件数(暫定値,18890件)は,以前として他の凶悪犯(殺人罪,強盗罪,放火罪等),粗暴犯(傷害罪,暴行罪,脅迫罪等),知能犯(詐欺罪,横領罪等),風俗犯(強制わいせつ罪,公然わいせつ罪等)の認知件数を上回って断トツの1位です。ちなみに,侵入盗の認知件数は2626件で,うち空き巣などの住宅を対象としたものが1280件,その他が1346件となっています。

刑法犯,窃盗犯の認知件数は,前年同時期より減少しているものの,刑法犯における窃盗犯の認知件数の占める割合自体はまだまだ高いです。ご家族などが窃盗犯で逮捕されお困りの方は,財産事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。
(福岡県粕屋警察署までの初回接見費用:37,200円)

福岡市早良区で万引き 執行猶予とは?福岡の刑事弁護士に無料相談

2018-10-18

福岡市早良区で万引き 執行猶予とは?福岡の刑事弁護士に無料相談 

福岡市早良区に住む主婦のAさんは,ドッグフード2袋を買い物袋に隠匿して店外に出たところ,Aさんの様子を一部終始見ていた保安員に声をかけられ逮捕(窃盗罪)されました。Aさんの身柄は福岡県早良警察署の警察官に引き継がれましたが,夫が身元引受人となったことからAさんは釈放されました。Aさんと夫は,執行猶予を獲得できないか刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(フィクションです)

~ 刑の全部の執行猶予(刑法25条)とは ~

執行猶予とは刑の執行を猶予されることです。中でも,刑の全部の執行を猶予されることを刑の全部の執行猶予といい刑法25条にその要件が定められています。刑の執行を猶予されただけですから,無実・無罪となった,許されたということではありません。執行猶予は,あくまであなたが有罪であることを前提に,社会内での更生を期待して刑の執行を一時的に猶予しているにすぎないのです。

~ 必要的取消しと裁量的取消し ~

よって,何らかの事由により執行猶予が取消されることがありますので注意が必要です。刑法は①必要的取消し(必ず取消される),②裁量的取消し(取り消される場合がある)を定めています。の例を挙げると,執行猶予期間中にさらに罪を犯し,その罪につき禁錮以上の実刑に処せられた場合(刑法26条1号)がります。この場合,実刑に処せられた刑(例えば,懲役1年)と執行猶予が付いた刑(例えば,懲役8月)とを併せて服役(懲役1年8月)しなければならなくなります!の例を挙げると,執行猶予期間中に罪を犯し,罰金に処せられた場合(刑法26条の2第1号),保護観察の遵守事項を遵守せず,情状が重いとき(刑法26条の2第2号)などがあります。

執行猶予をいうと,とかくメリットの方を強調されがちですが,執行猶予はあくまで社会内更生を図るための制度であり,取消されることがあるということも頭に入れておくべきでしょう。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,万引きなどの刑事事件を専門の法律事務所です。執行猶予獲得ならフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
(福岡県早良警察署までの初回接見費用:35,500円)

【福岡県大牟田市 窃盗】器物損壊罪成立を検討する刑事事件の弁護士

2018-09-18

【福岡県大牟田市 窃盗】器物損壊罪成立を検討する刑事事件の弁護士

Aさんは,駅構内に掲示されていたポスターをはがした件で,福岡県大牟田警察署の警察官に窃盗罪で逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は,器物損壊罪の成立も視野に刑事弁護をしていく方針を固めました。
(平成30年9月2日共同通信掲載事案を参考にして作成)

~ 窃盗罪(刑法235条),器物損壊罪(261条) ~

窃 盗 罪:10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
器物損壊罪:3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料

~ なぜ,器物損壊罪の成立を検討するのか? ~

判例は,窃盗罪が成立するためには,主観的要件として窃盗の故意のほか,不法領得の意思が必要としています。
不法領得の意思とは,権利者を排除して他人の物を自己の所有物をしてその経済的用法に従ってこれを利用若しくは処分する意思,と定義されています。
なぜ,不法領得の意思が必要とされているのでしょうか?
それは,一つには,窃盗罪器物損壊罪を区別するためと考えられます。
つまり,「ポスターをはがす」という一見していずれの罪にも該当しそうな行為について,不法領得の意思を加味することによって,いずれの罪が成立するのか区別できるというわけです。
窃盗罪における不法領得の意思とは,,要は「その物が欲しい」という意思内容であり,この意思が認められれば窃盗罪が成立しますし,反対に,その意思が認められず,例えば,嫌がらせ目的などの場合は器物損壊罪が成立するのです。

この両者を区別する意義は大きいです。
なぜなら,両者の法定刑には大きな差があるからです。
また,器物損壊罪は親告罪,つまり被害者の告訴がなければ起訴できない罪です。
仮に,器物損壊罪が成立するとされた場合,その時点で告訴状がない場合,告訴状が提出されていた場合でも示談交渉示談の内容によっては告訴が取り消された場合は起訴されません(不起訴)。
つまり,告訴がなければ起訴できないという点では,窃盗罪よりも器物損壊罪の方が不起訴になる可能性は高いと考えます。
この点でも大きな差があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪器物損壊罪をはじめるとする刑事事件専門の法律事務所です。
お困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
福岡県大牟田警察署までの初回接見費用:43,200円)

福岡県の刑事事件弁護士解説③ 車上狙いの違法捜査で無罪判決   

2018-08-28

福岡県の刑事事件弁護士解説③ 車上狙いの違法捜査で無罪判決          

Aさんは,スーパー駐車場に駐車中の無施錠の軽トラックの中から,発泡酒1箱(時価2500円相当)を窃取した(車上狙い)として現行犯逮捕,起訴されました。
裁判所は,車上狙いに対する警察の捜査を違法(①)と認定し,違法捜査と直接かつ密接に関連する証拠は排除される(②)から,Aさんの自白を補強する証拠がなく,Aさんを無罪(③)としました。刑事事件専門の弁護士が解説します。
(平成29年3月24日付鹿児島地方裁判所加治木支部判決を基に作成)

~ 補強法則(上記③について) ~

自白には,その自白を裏付ける証拠(補強証拠)を必要とする原則を補強法則といいます(刑事訴訟法319条2項等)。
補強法則が必要な理由は2つあります。
一つは「誤判防止」です。
自白は,捜査官等に対する迎合などから虚偽が混入している危険があり,その自白によって誤った裁判がなされるのを防止するために必要とされるのです。
もう一つは「自白偏重の防止」です。
自白は証明力の高い証拠と言われていますが,仮に補強証拠を要しないとすると,捜査官等が自白に頼りっきりになり,自白を獲得しようと強制・拷問等の人権侵害を招きやすくなります。
これらの事態を防止するために補強法則が必要とされるのです。

~ 本件の補強証拠とは? ~

本件の補強証拠は被害届(被害の日時・場所,被害品,時価,処罰感情等が記載されている書類)です。
実は,Aさん自身は自白,つまり窃盗車上狙いをやったこと自体は認めていました。
しかし,昨日のブログでご紹介したとおり,被害届は違法収集証拠として証拠から排除されたのです。

~ 被害届が証拠から排除された結果,,, ~

刑事訴訟法336条には
(略)被告事件について犯罪の証明がないときは,判決で無罪の言渡しをしなければならない
と規定されています。
犯罪について証明がないときとは,裁判官が被告事件の存在について合理的な疑いを超える心証を得るに至らなかった場合またはその心証があっても自白に補強証拠がない場合のことをいいます。
そして,本件では後者の場合にあたり,Aさんは無罪とされたのでした。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は車上狙いなどの刑事事件専門の法律事務所です。
刑事事件無罪を獲得したいなどとお考えの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。

福岡県の刑事事件弁護士解説② 車上狙いの違法捜査で無罪判決 

2018-08-27

福岡県の刑事事件弁護士解説② 車上狙いの違法捜査で無罪判決         

Aさんは,スーパー駐車場に駐車中の無施錠の軽トラックの中から,発泡酒1箱(時価2500円相当)を窃取した(車上狙い)として現行犯逮捕,起訴されました。
裁判所は,車上狙いに対する警察の捜査を違法(①)と認定し,違法捜査と直接かつ密接に関連する証拠は排除される(②)から,Aさんの自白を補強する証拠がなく,Aさんを無罪(③)としました。刑事事件専門の弁護士が解説します。
(平成29年3月24日付鹿児島地方裁判所加治木支部判決を基に作成)

~ 違法収集証拠とは(上記②について) ~

上記②の理論のことを違法収集証拠排除法則といい,同法則によって排除される証拠のことを違法収集証拠といいます。
判例昭和53年9月7日)は「証拠物の押収等の手続に憲法35条及びこれを受けた刑事訴訟法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,これを証拠として許容することが,将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては,その証拠能力は否定される」としています。
つまり,「重大な違法」と「違法捜査の抑制の見地から相当でないこと」を証拠排除の要件としているのです。

~ 本件ではどう認定されたか? ~

本件では,
ア 車上狙いに対するなりすまし捜査(以下,本件捜査)を行うべき必要性がほとんどなく,適法手続からの逸脱の程度は大きいこと
イ 国家が犯罪の発生(車上狙い)を一定程度促進する結果となってしまっていること
ウ 警察官には捜査方法の選択につき重大な過失があったといえること
エ 警察官の証言から,本件捜査の適法性に関する司法審査逸脱の意図がみられること
などを理由に,車上狙いに対する本件捜査には「重大な違法」があり,さらに,本件捜査により獲得された証拠を許容することは「違法捜査の抑制の見地から相当でない」と認定されました。

~ 本件で排除される証拠とは? ~

裁判では,車上狙いに対する本件捜査と直接かる密接な関連性を有する被害届,捜索差押調書,実況見分調書,現行犯人逮捕手続書違法収集証拠として証拠から排除されました。

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福岡県の刑事事件弁護士解説① 車上狙いの違法捜査で無罪判決 

2018-08-26

福岡県の刑事事件弁護士解説① 車上狙いの違法捜査で無罪判決         

Aさんは,スーパー駐車場に駐車中の無施錠の軽トラックの中から,発泡酒1箱(時価2500円相当)を窃取した(車上狙い)として現行犯逮捕起訴されました。
裁判所は,警察の捜査を違法(①)と認定し,違法捜査と直接かつ密接に関連する証拠は排除される(②)から,Aさんの自白を補強する証拠がなく,Aさんを無罪(③)としました。刑事事件専門の弁護士が解説します。
(平成29年3月24日付鹿児島地方裁判所加治木支部判決を基に作成)

~ 事件の概要(違法と認定された捜査とは?) ~

本件は,警察官がスーパーの駐車場に無人かつ無施錠の軽トラック(助手席上に発泡酒1箱,食パン等が放置)を駐車し,Aさんがこれに対し車上狙いに出たところを現行犯逮捕した(以下,本件捜査という)というものでした。

~ なぜ,違法と認定されたのか?(上記①について) ~

裁判所は,まず,車上狙いに対する本件捜査を「なりすまし捜査」と仮称した上で,同捜査を任意捜査の一類型と位置づけました。
そして,なりすまし捜査判例平成16年7月12日 最一小決)が定義した「おとり捜査」の違いを指摘しつつも,両者は本来犯罪を抑止すべき立場にある国家が犯罪を誘発しているとの側面があり,その捜査活動により捜査の公正が害される危険を孕んでいるという本質的な性格は共通しているから,判例が指摘したおとり捜査が許容される要件は,車上狙いに対するなりすまし捜査でも有用であるとしました。

判例が指摘した要件とは,ア,機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象としていること,イ,直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,通常の捜査のみでは当該犯罪の摘発が困難であること,です。
裁判所は,Aさんがアには当たると認めました。
しかし,イに関して,・車上狙いは密行性が高い薬物犯罪等とは異なり,証拠の収集や犯人の検挙が困難な犯罪類型ではないこと,・具体的にみても,通常の捜査手法ではその捜査を遂げることが困難であると認めるべき事情がなことなどを理由に,車上狙いに対するなりすまし捜査の必要性はほとんどなく,本件捜査は任意捜査として許容される範囲を逸脱しており違法と判示したのです。
 
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佐賀県三養基郡基山町で執行猶予経過後に万引き 執行猶予が可能か

2018-07-31

佐賀県三養基郡基山町で執行猶予経過後に万引き 執行猶予が可能か  

私(Aさん)は,平成30年7月27日に,佐賀県三養基郡基山町のスーパーで万引きした(本件)ところを店員に見つかり,その後,佐賀県鳥栖警察署まで任意同行を求められ,取調べを受けました。
私は,平成25年7月1日に,鳥栖簡易裁判所で同じ万引き窃盗罪)により懲役1年,3年間執行猶予の判決(同年7月16日自然確定)を受けています。
私は,再び執行猶予を獲得することは可能でしょうか?
(フィクションです)

~ 執行猶予期間が経過した場合の効果 ~

Aさんは,前刑で3年間の執行猶予判決を受けていますが,その期間の起算日は判決が確定した日です。
Aさんの場合,平成25年7月2日から起算して同年7月15日までが控訴申立期間になります。
そして,その翌日の7月16日が確定日となるのです(上訴取下げなどなく14日間の不服申立て期間が経過して確定することを自然確定といいます)。

平成25年7月16日から3年間執行猶予の期間ということは,平成28年7月15日が執行猶予期間満了日となり(正確には,平成28年7月15日午後12時),同年7月16日を迎えれば執行猶予期間が経過したと言えるわけです。
よって,本件は,執行猶予期間経過後の犯行ということになります。

執行猶予期間が経過した場合,刑の言渡しは効力を失い(刑法27条),経過後に犯罪を犯したとしても,全部の執行猶予の要件につき定めた刑法25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に該当します。
つまり,規定上は初犯者と同様の扱いを受けます。

しかし,執行猶予期間が経過したとしても前科が消えるわけではありません
そして,裁判では前科に関する証拠(前科調書,判決謄本等)が請求され,取調べられる可能性が高いです。
つまり,あなたが以前にも同様のことをしたことは裁判官の知り得るところとなり,裁判官の心証が悪くなることは間違いありません。
この点が初犯者と大きく異なる点で,結果,実刑となる可能性も否定はできません

このような事態を避けるためにも,裁判では,あなたにとって有利な事実を具体的に主張・立証していくことが必要です。
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北九州市若松区の窃盗事件は常習累犯窃盗? 刑事専門の弁護士が接見

2018-06-29

北九州市若松区の窃盗事件は常習累犯窃盗? 刑事専門の弁護士が接見

Aさんは,福岡県北九州市若松区にある地蔵尊に設置してあるさい銭箱から現金約3,000円を盗んだとして,若松警察署の警察官に窃盗罪逮捕されました。
Aさんの家族は,刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(平成30年6月25日西日本新聞掲載事案を基に作成)

~ 窃盗罪(刑法第235条) ~

他人の財物を窃取した場合には,窃盗罪が成立します。
窃取」とは,財物の占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除して,財物を事故や第三者の占有に移すこととをいいます。
この「財物に対する占有者の占有」というのが一つのポイントであり,仮に占有のない財物を自己や第三者の占有に移した場合には,窃盗罪ではなく遺失物等横領罪が成立することになります。

上の事案では,地蔵尊の管理者にさい銭箱の中の現金の占有があると考えられ,これを窃取した場合には,窃盗罪が成立する可能性が高いです。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

ところで,窃盗罪を常習的に繰り返した場合は窃盗罪よりも重い「常習累犯窃盗罪」に問われる可能性があります。
常習累犯窃盗罪については,「盗犯等ノ防止及処分二関スル法律」という昭和5年に施行された法律の3条に規定があります。
法定刑は「3年以上の有期懲役」です。

常習累犯窃盗罪は,①窃盗罪又は未遂罪を犯したこと,②窃盗罪を常習として犯したこと,③行為から10年以内に窃盗罪(又は他の罪との併合罪)につき刑の執行を受けたこと又はその執行の免除を得たことが3回以上あること,が成立の要件です。
刑の執行を受けた」とは,要は,窃盗罪等で服役しそれが終了したことを意味します。

常習累犯窃盗罪でも執行猶予付の判決を獲得することは可能です。
しかし,そのハードルは高く,弁護士との接見等を通じて,より詳細な,より具体的な(有利な)情状を裁判で主張・立証する必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けています。
福岡県警若松署までの初回接見費用:41,400円)

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