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【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(経理として勤務する会社の口座から現金を引き出し横領したケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(経理として勤務する会社の口座から現金を引き出し横領したケース)
今回は、経理として勤務する会社の口座から現金を引き出し横領したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:経理として勤務する会社の口座から現金を引き出し横領したケース
経理として勤務する会社の口座から現金約50万円を引き出し横領したとして、福岡県警中央警察署は、同社従業員のAさんを業務上横領の疑いで逮捕しました。
警察によると、同社の別の従業員が通帳を確認し、被害が発覚。
その後、警察に被害を届け出、警察が捜査を経てAさんの犯行を特定し、逮捕に至りました。
警察の調べに対して、Aさんは「生活に困ってお金を降ろして使ってしまった」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉(刑法第253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪は、刑法に定められた通常の横領罪(刑法第252条第1項)を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条第1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言います。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法第254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法第643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
上記の事例では、Aさんは会社の経理として勤務しており、会社の金銭を管理する立場にあり、会社の口座から現金を引き出し使い込む行為は横領に該当するため、Aさんが勤務先の口座から現金約50万円を引き出し使い込む行為には業務上横領罪が成立することが考えられます。

2,示談交渉の重要性
業務上横領罪は、被害者が存在する犯罪です。
そこで、被害者と示談交渉を試み、示談成立を目指します。
被害者との間で示談が成立すれば、検察官の処分や裁判になった場合には判決に影響を持ちます。
また、被疑者が身柄を拘束されている場合には、身柄拘束からの解放も期待できます。
そのため、被害者と示談交渉を試み、示談の成立を目指すことは重要な弁護活動であると言えます。
示談交渉は、事件の当事者同士で行うこともできます。
しかし、上記の事例のような業務上横領事件では、行為者は被害者の財産などの所有権を侵害するだけでなく、被害者との間の信頼関係を破壊することにもなります。
そのような事情を考慮すると、被害者は加害者側に対して強い処罰感情を有し、当事者同士での示談交渉は上手くいかないこともあり得ます。
以上より、示談交渉は当事者同士で行うよりも、法律の専門家であり交渉に強い弁護士に相談することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内で業務上横領罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しており、これまでに業務上横領罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を取り扱ってきました。
業務上横領罪の当事者となりお困りの方は初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】横領罪とその弁護活動(返却期限が過ぎたレンタカーを返却せずに私的に乗り回したケース)
【事例解説】横領罪とその弁護活動(返却期限が過ぎたレンタカーを返却せずに私的に乗り回したケース)
今回は、返却期限が過ぎたレンタカーを返却せずに私的に乗り回したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:返却期限が過ぎたレンタカーを返却せずに私的に乗り回したケース
レンタカーの返却期限を約1年過ぎても返却しなかったとして、福岡県警は、福岡市に住むAさんを横領の疑いで逮捕しました。
警察によりますと、福岡市内のレンタカー会社Vで乗用車1台(時価80万円相当)を1カ月の期間を定めて契約しましたが、返却期限を約1年過ぎても車を返却しないまま仕事やプライベートで乗り回し、横領した疑いが持たれています。
返却期限を過ぎても車が返却されないため、レンタカー会社VがAさんに連絡したところ音信不通になり、被害届を提出したとのことです。
車は既に押収済みです。
警察の調べに対して、Aさんは「返却期限を過ぎても車を返さなかったのは間違いない」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,横領罪について
〈横領罪〉(刑法第252条)
第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
刑法の横領罪は、①自己の占有する②他人の物を③横領した場合に成立します。
また、窃盗罪や強盗罪など、他人の占有をその占有者の意思に反して自身または第三者の占有に移転する奪取罪とは異なり、横領罪は既に他人の物が自身の占有下にあるため、保護法益は第一次的には所有権であり、第二次的に物を預けた人との信任関係も保護の対象となります。
そのことから、横領罪は、委託信任関係により他人の物を占有している者という身分を持っている人に成立する犯罪と言えます。
①「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力をいい、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を及ぼす状態にあることを意味します。
法律上の支配とは、法律上自身が容易に他人の物を処分し得る状態にある場合を言います。
例えば、不動産の登記名義人は、当該不動産を自由に処分できる地位にあるため、法律上の支配が認められます。
②「他人の物」とは、他人の所有に属する物を言います。
③「横領」行為とは、不法領得の意思を発現する一切の行為をいいます。
不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
「横領」行為は、費消(使い込むこと)、着服(バレないように盗むこと)、拐帯(持ち逃げすること)、抑留(借りたものを返さないこと)などの事実行為だけでなく、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
上記の事例では、Aさんはレンタカー会社Vとの賃貸借契約により乗用車を借りており、当該乗用車の所有者はレンタカー会社Vです。(②)
また、借りているAさんには当該乗用車に対して事実上の支配力が認められます。(①)
そして、Aさんは、返却期限を過ぎても当該乗用車を返却することなく仕事やプライベートなどで乗り回しています。(③)
以上より、Aさんには横領罪が成立することが考えられます。
2,身体拘束の回避にむけた弁護活動
横領罪で逮捕・勾留されると、最長で23日間、身体拘束されて捜査機関の取調べを受けることになります。
その間、被疑者は生活を厳しく管理・規制され、家族や友人など外部との自由な接触も制限され、捜査機関の取調べにも一人きりで臨まなければならないなど、身体的・精神的に多大な負担を被ることになります。
また、身体拘束期間中は当然のことながら職場に出勤することもできなくなるので、そのような長期間を無断欠勤すれば、職場から解雇される可能性もあり、身体拘束前の社会生活を送ることができなくなるかもしれません。
しかし、勾留による身体拘束を回避すれば、そのような不利益を受けずに済むかもしれません。
被疑者に勾留の理由と必要性があると検察官が判断した場合、検察官が裁判所に勾留請求します。
検察官の勾留請求を裁判所が認めると、被疑者は勾留されることになり、最長で20日間身柄を身体拘束されることになります。
もっとも、弁護士であれば、検察官と裁判所に対して、意見書を提出することで被疑者勾留をしないようはたらきかけることができます。
勾留による身体拘束の理由とは、被疑者が住居不定、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合を言うため、それらの要件を否定し得る客観的な証拠や事情を収集し、意見書と一緒に提出することで、被疑者勾留の回避を目指します。
以上のような弁護活動は、被疑者勾留が決定する前に行う必要があるため、ご家族等が身体拘束されてしまったら、少しでも早く弁護士に依頼することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内で横領罪の当事者となってしまった方、あるいは横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
横領罪の当事者となり捜査機関に捜査されているなど身柄拘束を受けていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
フリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。
【事例解説】遺失物等横領罪とその弁護活動(拾った財布から現金を抜き取り持ち去ったケース)
【事例解説】遺失物等横領罪とその弁護活動(拾った財布から現金を抜き取り持ち去ったケース)
今回は、拾った財布から現金を抜き取り持ち去ったという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:拾った財布から現金を抜き取り持ち去ったケース
福岡市内のゲームセンターで、置き忘れられていた財布から現金2万円を抜き去り持ち去ったとして、福岡県警中央警察署は、同市中央区に住むAさんを遺失物等横領の疑いで逮捕しました。
財布は福岡市内に住むVさんの所有で、現金の他に運転免許証などが入っていました。
財布はAさんがゲームセンターの店員に届けており、その後、財布の所有者であるVさんが受け取っていました。
しかし、その場で財布を確認したVさんから「財布の中の現金がなくなっている」との届け出があり、被害が発覚しました。
そして、防犯カメラの映像などからAさんの犯行を特定して逮捕に至りました。
Vさんは、Aさんが届けた前日に店を訪れており、その際に財布を置き忘れていたとのことです。
警察の調べに対して、Aさんは「お金を抜き取って財布を届けたことに間違いありません」と容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,遺失物等横領罪について
〈遺失物等横領罪〉(刑法第254条)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

遺失物等横領罪は、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した場合に成立します。
そして、刑法に定められた単純横領罪(刑法第252条)や業務上横領罪(刑法第253条)と比べ、所有者との委託信任関係を裏切ることはなく、また、遺失物等横領罪が他人の占有を侵害しないことから、法定刑が軽くなっていると考えられています。
遺失物とは、占有者の意思によらず、その占有を離れ、まだ誰の占有にも属していないものを言い、いわゆる落とし物などがこれに該当します。
漂流物とは、遺失物のうち、水面又は水中に存在するものをいいます。
もっとも、これらは例示されたものであり、遺失物等横領罪の客体となるか否かは、他人の占有を離れたものであるかどうかによって判断されます。
占有とは、物に対する事実上の支配力が及んでいる状態をいい、「占有を離れた他人の物」とは、占有者の事実上の支配力が及んでおらず未だ誰の占有にも属していない物で、その占有が委託信任に基づかずに始まった物と考えられます。
「占有を離れた他人の物」にあたると判断されたものとして、電車内に乗客が置き忘れた荷物や被害者が無施錠のまま自転車を長時間空き地に放置して遠くへ出かけてしまった場合のその自転車などがあります。
なお、その物に占有が及んでいる場合、すなわち「占有を離れた他人の物」に当たらないものを自分の物にしてしまった場合には、それは占有者に意思に反してその占有を自分の占有下に移すことになり、遺失物等横領罪ではなく窃盗罪が成立する可能性があります。
横領とは、不法領得の意思を発現する一切の行為、すなわち、その物の経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をすることをいいます。
上記の事例では、Vさんが財布を店に置き忘れAさんが届けるまでに1日経っています。
そして、ゲームセンターは、通常、一日を通して不特定多数の人が間断なく出入りするため、仮に財布が置いてあったとしても、財布とその中身にVさんの事実上の支配力は及ばないといえ、置き忘れた財布とその中身はVさんの「占有を離れた」と言えます。
もっとも、置き忘れた財布とその中身がVさんの占有を離れたとしても、Vさんが所有権を有する所有物であることに変わりはありません。
そして、Aさんが財布の中身である現金2万円を抜き取る行為は、「占有を離れた他人の物」を「横領」したと言えます。
以上より、Aさんには遺失物等横領罪が成立することが考えられます。
2,前科回避に向けた弁護活動
遺失物等横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料です。
もし、遺失物等横領罪で逮捕され、起訴を経て有罪判決を受けると、たとえ罰金刑もしくは科料であったとしても、前科が付くことになります。
前科が付けば、職場からの解雇や、学生であれば停学や退学になる可能性があります。
また、就職面接時に前科の有無を確認されて、採用の判断材料になることもあり、就職に影響が生じることもあります。
しかし、遺失物横領罪は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
検察官が事件を不起訴処分にすれば、裁判が開かれず有罪判決を受けることはなくなるため、前科を回避することができます。
そのため、被害者と示談交渉を試み、示談の成立を目指します。
示談交渉は、当事者間でも行うことはできますが、被害者はお金をとられたことで怒りや悲しみから強い処罰感情を有していることが考えられ、交渉は上手くいかない、あるいは交渉に応じてすらもらえないこともあります。
しかし、弁護士であれば、加害者が反省・謝罪の意思を有していることや被害の弁償をする準備があることなどを冷静かつ丁寧に説明することができ、被害者の方に安心していただくことで交渉に応じてもらえることも珍しくありません。
以上より、示談交渉は、当事者同士で行うことはあまり得策とは言えず、法律の専門家であり交渉に強い弁護士に依頼することがオススメと言えます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において遺失物等横領罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が遺失物等横領罪の当事者となりお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験しており、当該分野において高い実績を誇ります。
逮捕などにより身柄拘束を受けていない方には初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が逮捕等により身柄拘束を受けている方には初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(勤務先の口座から現金を自分の口座に振り込み横領したケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(勤務先の口座から現金を自分の口座に振り込み横領したケース)
今回は、勤務先の口座から現金を自分の口座に振り込み横領したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:勤務先の口座から現金を自分の口座に振り込み横領したケース
福岡県警察中央警察署は、勤務先の口座から現金約2000万円を横領したとして、経理担当のAさんを業務上横領の疑いで逮捕しました。
警察によりますと、Aさんは、複数回にわたり、経理担当として勤務していた会社の口座から現金約2000万円を自身の口座に振り込み横領した疑いが持たれています。
警察の調べに対して、Aさんは「間違いありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉(刑法第253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪は、刑法に定められた通常の横領罪を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条第1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言います。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法第254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
上記の事例では、Aさんは会社の経理担当として勤務しており、会社の金銭を管理する立場にあったといえ、会社の金銭を自分の口座に振り込み横領した行為につき業務上横領罪が成立することが考えられます。
2,執行猶予付判決の獲得を目指す弁護活動
業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」のみで、執行猶予付判決を得るためには判決によって言い渡される量刑が3年以下であることが必要です。
また、業務上横領罪は被害者が存在する犯罪であり、被害者との間で示談が成立し被害が回復していれば執行猶予付判決を獲得できる可能性は高まります。
そのため、被害者との示談交渉を試みます。
示談と一口に言っても内容は多岐にわたり、事件の解決を当事者同士で約束し将来の民事訴訟を予防することを内容とする単なる示談や、被害届の取下げや刑事告訴の取消しを内容とする示談、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れ、加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する条項)付き示談などがあります。
被害者の意向を汲みながら加害者にとって最大限有利な内容で示談を成立させるためには、高度な知識や経験が要求されるといえます。
また、事件の当事者同士でも示談交渉を行うことはできますが、被害者は加害者に対して強い処罰感情を有しており、当事者同士での示談交渉はあまり得策とは言えません。
そのため、執行猶予付判決を獲得するための示談交渉は、法律の専門家であり刑事事件に関する高度な知識や経験を有する弁護士に依頼することがオススメです。

3,まずは弁護士に相談を
福岡県内で業務上横領罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しており、これまでに業務上横領罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を取り扱ってきました。
業務上横領罪の当事者となりお困りの方は初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(会社の預金口座から売上金などを横領したケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(会社の預金口座から売上金などを横領したケース)
今回は、会社の預金口座から売上金などを横領したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:会社の預金口座から売上金などを横領したケース
勤め先の預金口座から売上金など合わせて1000万円を横領したとして、那珂川市にある会社の執行役員Aさんが業務上横領の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、Aさんは、執行役員を務めている会社の預金口座からインターネットバンキングを使って、合わせて1000万円を自分の口座に振り込み、横領した疑いが持たれています。
警察の調べに対して、Aさんは「借金の返済や遊興費に使った」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉(刑法253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪は、刑法に定められた通常の横領罪を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言い、法律上の支配が問題となる場面は不動産の占有と銀行預金の占有です。
不動産の場合は、不動産の所有権の登記名義人は、当該不動産を実際に居住するなど事実上支配していなくても、売却など自由に処分できる立場にあるため、法律上支配していると言えます。
他人から預かった金銭を自分の口座で管理している場合は、金銭を自分の財布に入れて実際に管理しているわけではないため事実上支配しているとは言えませんが、その金銭はいつでも自分の口座から引き出すことができ、自由に処分できる立場にあるため、他人の金銭に対する法律上の支配が認められます。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法第254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。

以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
上記の事例で言えば、Aさんは、執行役員を務めており、会社から委託を受けて会社の金銭を管理する事務を反復又は継続的に行う業務者の立場にあり、会社の預金口座からインターネットバンキングを使って合計で1000万円を自分の口座に振り込み、借金の返済や遊興費に使い「横領」しているため、Aさんには業務上横領罪が成立することが考えられます。
2、執行猶予付き判決を求める弁護活動
業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役刑であり、執行猶予付き判決を得るためには、判決により言い渡される刑が3年以下の懲役である必要があります(刑法第25条第1項柱書)。
執行猶予が付かなかった場合、刑務所に服役することになりますが、そうなれば勤め先を解雇になる、被疑者・被告人が学生の場合には退学処分になるなどの不利益が生じることが考えられます。
執行猶予による不利益を回避するためには、被害者との示談を成立させられるかが重要なポイントになります。
もっとも、事件の被害者は、加害者に対して強い怒りや処罰感情を有していることも多く、加害者から直接連絡されることを拒み、示談交渉に応じてもらえない可能性もあります。
しかし、弁護士であれば、被害者に対して、加害者が反省・謝罪の意思を持ち、被害弁償をする意思を有していることなど冷静かつ丁寧に説明することにより、示談交渉に応じてもらい、示談の成立に期待が持てます。
執行猶予を獲得するためにも、示談交渉は法律の専門家であり交渉のプロである弁護士に依頼することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県那珂川市内で業務上横領罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しており、これまでに業務上横領罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を取り扱ってきました。
業務上横領罪の当事者となりお困りの方は初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】遺失物等横領罪とその弁護活動(拾った財布を警察に届け出ることなく横領したケース)
【事例解説】遺失物等横領罪とその弁護活動(拾った財布を警察に届け出ることなく横領したケース)
今回は、福岡市内の駐車場にて、現金が入った財布を警察に届け出ることなく横領したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:拾った財布を警察に届け出ることなく横領したケース
福岡市内の駐車場で、落ちていた現金5万円などが入った財布を拾い横領した疑いで、福岡市内に住むAさんが遺失物等横領の疑いで逮捕されました。
Aさんは、福岡市内のコインパーキングで、別の利用客Vさんが落とした現金5万円などが入った財布を持ち去り、警察に届け出ることなく横領した疑いが持たれています。
財布を落としてから2日後に財布を落としたことに気付いたVさんが警察に届出をし、コインパーキングや所の周辺の防犯カメラの映像を解析してAさんの犯行を特定し、逮捕に至りました。
警察の調べに対して、Aさんは「間違いありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,遺失物等横領罪について
〈遺失物等横領罪〉(刑法第254条)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

遺失物等横領罪は、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した場合に成立します。
そして、刑法に定められた単純横領罪(刑法第252条)や業務上横領罪(刑法第253条)と比べ、所有者との委託信任関係を裏切ることはなく、また、遺失物等横領罪が他人の占有を侵害しないことから、法定刑が軽くなっていると考えられています。
遺失物とは、占有者の意思によらず、その占有を離れ、まだ誰の占有にも属していないものをいいます。
漂流物とは、遺失物のうち、水面又は水中に存在するものをいいます。
もっとも、これらは例示されたものであり、遺失物等横領罪の客体となるか否かは、他人の占有を離れたものであるかどうかによって判断されます。
占有とは、物に対する事実上の支配力が及んでいる状態をいい、「占有を離れた他人の物」とは、占有者の事実上の支配力が及んでおらず未だ誰の占有にも属していない物で、その占有が委託信任に基づかずに始まった物と考えられます。
「占有を離れた他人の物」にあたると判断されたものとして、電車内に乗客が置き忘れた荷物や被害者が無施錠のまま自転車を長時間空き地に放置して遠くへ出かけてしまった場合のその自転車などがあります。
なお、その物に占有が及んでいる場合、すなわち「占有を離れた他人の物」に当たらないものを自分の物にしてしまった場合には、それは占有者に意思に反してその占有を自分の占有下に移すことになり、遺失物等横領罪ではなく窃盗罪が成立する可能性があります。
横領とは、不法領得の意思を発現する一切の行為、すなわち、その物の経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をすることをいいます。
上記の事例では、Vさんがコインパーキングに落としてから2日が経過しており、また、コインパーキングは日夜いろいろな人に利用されることなども考慮すると、Vさんが落とした財布にはVさんの占有が及んでいるとは考えづらいため、「占有を離れた他人の物」に該当し、それをAさんが拾って持ち去った行為には遺失物等横領罪が成立すると考えられます。
2,不起訴処分獲得に向けた弁護活動
前述の通り、遺失物等横領罪の客体は「占有を離れた他人の物」であるところ、その物をもともと占有していた人は、占有を失ってはいますが、所有権は失っていません。
そのため、被害者は所有権者ということになります。
そこで、被害者との示談交渉を試み、示談成立による不起訴処分獲得を目指します。
被害者に方に対して反省・謝罪の意思を示して、被害弁償等を行い、示談を成立させることができれば、不起訴処分獲得の期待が十分に持てます。
もっとも、示談交渉は、刑事事件に関する高度な知識や専門性が求められるため、示談交渉に強い弁護士に依頼することをオススメします。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において遺失物等横領罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が遺失物等横領罪の当事者となりお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験しており、当該分野において高い実績を誇ります。
逮捕などにより身柄拘束を受けていない方には初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が逮捕等により身柄拘束を受けている方には初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げしたケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げしたケース)
今回は、コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げして逮捕されたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げしたケース
福岡県北九州市のコンビニエンスストアの売上金約100万円を持ち逃げしたとして、業務上横領の疑いで、元店長のAさんが逮捕されました。
Aさんは、福岡県北九州市内のコンビニエンスストアに店長として勤務していた店の売上金約100万円を持ち逃げした疑いが持たれていて、福岡県警察小倉北警察署に業務上横領の容疑で逮捕されました。
警察の調べに対し、Aさんは「金額は正確には覚えていないが、お金を持ち逃げしたことに間違いはありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉(刑法253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪は、刑法に定められた通常の横領罪を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言い、法律上の支配が問題となる場面は不動産の占有と銀行預金の占有です。
不動産の場合は、不動産の所有権の登記名義人は、当該不動産を実際に居住するなど事実上支配していなくても、売却など自由に処分できる立場にあるため、法律上支配していると言えます。
他人から預かった金銭を自分の口座で管理している場合は、金銭を自分の財布に入れて実際に管理しているわけではないため事実上支配しているとは言えませんが、その金銭はいつでも自分の口座から引き出すことができ、自由に処分できる立場にあるため、他人の金銭に対する法律上の支配が認められます。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
上記の事例ですと、Aさんはコンビニエンスストアに店長として勤務しており、店のオーナーから委託を受けて店の売上金を保管・管理する事務を行う者であり、業務者に該当します。
そのため、Aさんが店の売上金約100万円を持ち逃げする行為には、業務上横領罪が成立することが考えられます。
2,示談成立に向けた弁護活動
業務上横領罪は、被害者が存在する犯罪です。
そのため、弁護士は被害者との示談交渉を試み、示談の成立に向けた活動を行います。
示談にも様々な種類があり、単に当事者間で事件が解決したと約束するものや、加害者が被害者に対して被害の弁償を行うことで、宥恕(加害者の刑事処罰を望まないこと)付き示談や、刑事告訴の取消しや被害届の取下げなどを内容に加えた示談があります。
被害者との示談を成立させる場合、宥恕付き示談や刑事告訴の取消しや被害届の取下げなどを内容に加えた示談を成立させることが望ましいといえます。
示談交渉は事件の当事者同士でも行うことはできますが、当事者同士での示談交渉は拗れて上手くいかないことも考えられます。
また、被害者がスーパーやコンビニエンスストア、書店などの場合は、そもそも示談を拒否しているところが多く、当事者同士では示談交渉すらできないこともあります。
しかし、弁護士が粘り強く交渉すれば、示談交渉に応じていただけることもあるため、示談の成立が期待できます。
そのため、示談交渉は交渉のプロである弁護士に依頼することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県北九州市内で業務上横領罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しており、これまでに業務上横領罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を取り扱ってきました。
業務上横領罪の当事者となりお困りの方は初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
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【事例解説】横領罪とその弁護活動(借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース)
【事例解説】横領罪とその弁護活動(借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース)
今回は、借りていたレンタカーの返却期限が過ぎていたにもかかわらず、返却せずに乗り回していたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース

Aさんは、福岡市にあるレンタカー会社Vからレンタカーを借り、返却期限が過ぎたにもかかわらず、少なくとも1か月以上レンタカーを乗り回していました。
Vが被害届を警察に提出したことで、警察は捜査を開始して、Aさんを横領の疑いで逮捕するに至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「間違いありません。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,横領罪について
〈横領罪〉(刑法第252条)
第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
刑法の横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、窃盗罪や強盗罪など、他人の占有をその占有者の意思に反して自身または第三者の占有に移転する奪取罪とは異なり、横領罪は既に他人の物が自身の占有下にあるため、保護法益は第一次的には所有権であり、第二次的に物を預けた人との信任関係も保護の対象となります。
そのことから、横領罪は、委託信任関係により他人の物を占有している者という身分を持っている人に成立する犯罪と言えます。
①「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力をいい、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を及ぼす状態にあることを意味します。
窃盗罪などの奪取罪は、物を自宅で保管しているなど事実上の支配のみが「占有」に該当します。
一方で、横領罪は、法律上の支配、すなわち法律上自身が容易に他人の物を処分し得る状態にある場合にも法律上の「占有」に該当します。
法律上の占有は、不動産や預金の場合に問題となり、不動産の場合は、当該不動産の所有権の登記名義人はその不動産に実際に居住して使用するなど事実上の支配がなくても、当該不動産を売却するなど自由に処分できる地位にあるため、法律上の支配が認められます。
また、他人から預かったお金を自分の口座に入れて管理している場合、そのお金を財布や自宅で保管しているというわけではないので事実上の支配は認められませんが、預金した人は、いつでも自分の口座からそのお金を引き出して自由に処分できる地位にあるため、預金した人に法律上の支配が認められ、他人の物を「占有」していることになります。
「物」とは、窃盗罪などの「財物」と同じで、管理可能性のある有体物(個体・液体・気体)をいい、動産だけでなく不動産も含まれます
②「横領」行為とは、不法領得の意思を発現する一切の行為をいいます。
不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
「横領」行為は、費消(使い込むこと)、着服(バレないように盗むこと)、拐帯(持ち逃げすること)、抑留(借りたものを返さないこと)などの事実行為だけでなく、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
上記の事例では、Aさんは借りたレンタカーを期限が過ぎても返すことなく乗り回している(抑留している)行為は「横領」に該当すると考えられます。
2,横領罪で逮捕された場合に考えられる弁護活動
(1)不起訴処分獲得に向けた弁護活動
横領罪の法定刑は5年以下の懲役刑が定められているのみで、窃盗罪などに定められているような罰金刑がありません。
そのため、起訴された場合には、正式裁判が開かれることになります。
そして、起訴・不起訴を決めるのは検察官です。(起訴便宜主義。刑事訴訟法248条)
不起訴処分獲得に向けた弁護活動としては、被害者との示談交渉を試みます。
弁護士が加害者の立場から、被害者に対して、加害者が反省・謝罪の意思を有していること、被害弁償や示談金の支払いの準備があることを申し入れます。
そして、示談といっても内容は千差万別で、単なる示談の成立(当事者間で紛争が解決したと約束すること)や宥恕付き示談(加害者の反省・謝罪を受け入れ、加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味するもの)など多岐にわたります。
そのため、単に示談を成立させるだけでなく、宥恕付き示談や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの約定を加えた内容での示談を成立させることが、不起訴処分を獲得するために重要となります。
(2)公判弁護
当事者間で示談が成立したとしても、必ず不起訴処分になるとは限りません。
被告人が行った犯罪の社会に対して大きな影響をもたらしたため、社会秩序を回復させるためなど、検察官が処罰することが相当と判断した場合には起訴される可能性があります。
起訴された場合の弁護活動としては、被告人と入念な打ち合わせを重ね裁判に備えることや、裁判では、示談が成立しており被告人は十分に反省していることなどを主張し、執行猶予付き判決の獲得など、少しでも被告人に有利な結果の実現を目指します。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内で横領罪の当事者となってしまった方、あるいは横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
横領罪の当事者となり捜査機関に捜査されているなど身柄拘束を受けていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
フリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(事務局の口座から現金を不正に払い出して横領したケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(事務局の口座から現金を不正に払い出して横領したケース)
今回は、事務局担当者として経理事務と金銭出納などの業務に従事していた町職員が、事務局の口座から現金約63万円を払い出し横領したというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:事務局担当者として経理事務や金銭出納などの業務に従事していた町職員が、事務局の口座から現金約63万円を払い出し横領したケース
松阪署は4日、業務上横領の疑いで明和町、同町職員Aさんを逮捕した。
逮捕容疑は多気郡町村会の令和4年度事務局担当者として町村会経理事務と金銭出納などの業務に従事していた同5年2月28日、同町の金融機関で2回にわたり同事務局口座から払い出した現金合計約63万円を横領した疑い。
Aさんは「私はやっていない」と否認している。
同署によると、令和5年4月の人事異動で新しい担当者が事務を引き継いだ時、使途不明金が見つかったため、同町が同署に同年7月下旬から8月上旬にかけて相談し、10月上旬に告訴、受理された。
同町長職務代理者の下村由美子副町長は「多くの皆さまにご迷惑をおかけしたことをおわびいたします」「捜査に全面協力しますとともに、厳正に対処する」とコメントを出した。
(伊勢新聞 3/5(火) 8:00配信のニュース記事を一部変更し引用しています。)
1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉
「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。」(刑法253条)
業務上横領罪は、通常の横領罪(刑法252条1項)を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言い、法律上の支配が問題となる場面は不動産の占有と銀行預金の占有です。
不動産の場合は、不動産の所有権の登記名義人は、当該不動産を実際に居住するなど事実上支配していなくても、売却など自由に処分できる立場にあるため、法律上支配していると言えます。
また、他人から預かった金銭を自分の口座で管理している場合は、金銭を自分の財布に入れて実際に管理しているわけではないため事実上支配しているとは言えませんが、その金銭はいつでも自分の口座から引き出すことができ、自由に処分できる立場にあるため、他人の金銭に対する法律上の支配が認められます。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずして開始した場合、その物は誰の占有にも属していないか偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
2,業務上横領罪で逮捕・勾留による身柄拘束を受けた場合における弁護活動
業務上横領罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間 、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
その後、検察官によって起訴されるか否かが判断され、起訴されてしまった場合には公判が開かれることになります。
窃盗罪などの他の財産犯に比べて、業務上横領罪は未遂犯を処罰する規定が存在しないため、業務上横領罪に当たる行為を行った時点で結果が発生していなくとも既遂となります。
未遂犯は既遂犯に比べて刑罰を減軽される可能性がありますが(刑法43条本文)、業務上横領罪はすべて既遂として処罰されることになります。
また、横領行為は信頼して預けていた財物に手を出すという信頼を失墜させる行為であること、「業務上」という反復継続して行う立場でありながら犯行に及んだという点で非難の度合いが高く、起訴されてしまった場合には実刑判決を受ける可能性が高いと言えます。
業務上横領罪の刑罰は10年以下の懲役刑のみであるところ、執行猶予付き判決を獲得するためには、判決によって言い渡される刑罰が懲役又は禁錮3年以下である必要があります(刑法25条柱書)。
そのため、業務上横領罪で逮捕・勾留された場合、それに引き続いて起訴されてしまった場合いは、弁護士による迅速なサポートを受けることが重要となります。
まず、勾留による身柄拘束が認められるのは、被疑者・被告人に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
そこで、弁護士はそれらの事情を否定し得る客観的な事情や証拠を収集する活動を通じて早期の身柄解放を行います。
具体的な活動の一例としては、被疑者・被告人の家族や親族に働きかけて身元引受人となってもらい、被疑者・被告人の裁判所や捜査機関への出頭の機会を確保することができれば、逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となり、早期の身柄解放が期待できます。

次に、業務上横領罪は被害者が存在する犯罪でもあります。
そのため、弁護士が被疑者・被告人に代わって被害者との示談交渉を行い、示談の成立に向けた活動を行います。
示談と一口に言っても内容は種々様々で、加害者側にだけ都合のいい内容で示談交渉を進めると交渉が拗れてしまい、示談が成立する可能性は低くなります。
そのため、被害者側の意向をくみ取りつつ、宥恕条項(加害者側の謝罪を受け入れて、加害者の刑事処罰を望まないことを意味する条項)や刑事告訴取消といった約定を入れた内容で示談交渉を進める必要があります。
また、身柄を拘束されている事件では、逮捕から起訴までの間 に示談を成立させることができれば、証拠隠滅や逃亡のおそれが低いと判断され早期の身柄拘束が、起訴猶予による不起訴処分の獲得がそれぞれ期待できます。
そのため、身柄を拘束されてしまった場合には、短い期間で示談交渉を行い必要があるため、速やかな示談交渉が必要不可欠となります。
もし起訴されてしまった場合でも、示談が成立していれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まるため、示談交渉の成立に向けた弁護活動が重要であることに変わりはありません。
以上より、業務上横領罪など逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することがとても重要と言えます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内で業務上横領罪の当事者となってしまった方、もしくは家族・親族が当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事弁護の経験・実績が豊富で刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、業務上横領罪で在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、家族・親族が当事者となってしまった方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(母親の預金を着服した成年後見人の息子が逮捕された架空の事例に基づく解説)

母親の預金を着服したとして、成年後見人の息子が業務上横領罪で逮捕された事件とその弁護活動ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
成年後見人として財産管理をしていた認知症の母親Vの預金口座から500万円を着服したとして、福岡市在住の会社員の長男Aが、業務上横領の容疑で逮捕されました。
警察の調べによると、Aは家庭裁判所から成年後見人に選任された後、数年間にわたり、Vの口座から計500万円を引き出し、着服したとのことです。Aは、業務上横領の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)
成年後見人による業務上横領罪について
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第253条)。
業務上横領罪における「業務」とは、人がその社会生活上の地位に基づき反復・継続して行う事務とされ、職業である必要はありません。
成年後見人は、認知症、知的障害などの理由で、財産管理や各種契約等が困難になった方々を保護し、支援することを目的として、家庭裁判所から選任されるなどされ、その地位に基づき、被後見人に代わって、法律行為を行ったり財産の管理を行います。
よって、成年後見人が、自己が管理してその占有下にある被後見人の財産を着服する行為は、横領に当たることから、業務上横領罪が成立する可能性が高いです。
親族間での業務上横領罪の取り扱い
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で、窃盗、詐欺、横領などの財産犯を犯した場合は、その刑を免除する、と定められています(刑法第244条、第255条参照)。
これは、「法律は家庭に入らず」との思想の下、これらの場合には、国の刑罰権の行使を差し控え、家庭内の規律に委ねるのが望ましいとの政策的考慮によるものとされ、「親族相盗例」と呼ばれます。
業務上横領罪も親族相盗例の対象とされるため、Aが直系血族である母親Vの財産を横領した場合は、刑が免除されるのではないかとも思われますが、判例上、「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見事務は、公的性格を有する」ことから、家庭内での規律に委ねるべきものと言えず、その適用はないとされます。
よって、本件Aに業務上横領罪が成立する場合、親族相盗例は適用されず、10年以下の懲役が科される可能性があります
業務上横領罪の刑事弁護
業務上横領罪は罰金刑の定めがないため、起訴された場合、正式な裁判となります。不起訴処分を得て裁判を回避するためには、財産犯であることから、被害弁償と示談締結が極めて重要と言えます。
本件のように被害金額が高額の場合、被害弁償を一括で行うことが難しいことが考えられるため、被疑者の収入や資産の状況を説明し、分割での被害弁償に応じてもらえるよう、粘り強く交渉することも必要になると考えられます。
また、成年後見人による業務上横領の場合、通常、成年後見人は解任され、新たな成年後見人が選任されると考えられ、この場合、新たに選任された成年後見人と示談交渉する必要があり、一般的な業務上横領の場合よりも、複雑な対応が求められると考えられます。
以上のことから、業務上横領罪における被害者との示談交渉は、刑事事件に強く、財産犯における示談交渉の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、業務上横領事件において、示談成立による不起訴処分などを獲得している実績があります。
業務上横領罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。