Archive for the ‘窃盗罪’ Category

【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(親子3人でコンビニエンスストアから電子タバコの機械2つを万引きした)

2024-04-17

【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(親子3人でコンビニエンスストアから電子タバコの機械2つを万引きした)

今回は、親子3人でコンビニから電子タバコ2個を万引きしたというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:親子3人でコンビニから電子タバコ2個を万引きしたケース

山口県警岩国警察署はコンビニエンスストアで万引きをしたとして、Aさんら親子3人を窃盗の疑いで逮捕しました。
窃盗の疑いで逮捕されたのは福岡県北九州市の建設業のAさんら親子3人です。
警察によりますと3人は2月15日、山口県岩国市内のコンビニエンスストアで電子タバコの機械2つ、8000円相当を盗んだ疑いがもたれています。
警察は防犯カメラを調べるなどして、20日午前10時ごろ北九州市内にいる親子3人を逮捕しました。 警察で詳しく調べています。
(tys テレビ山口 3/20(水) 16:48配信の記事を一部変更し引用しています。)

1,窃盗罪について

〈窃盗罪〉

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法235条

窃盗罪は、占有(財物に対する事実的支配)を保護法益とし、その占有を侵害することを処罰する犯罪であるため、①他人の財物を②窃取した場合に成立します。
①「他人の財物」とは、他人が占有する財物をいい、財物とは財産的価値がある物をいいます。
しかし、財物とは「所有権の対象となり得べき物を言い、それ自体が金銭的乃至経済的価値を有する否やは問うところではない」とした判例があります(最高裁判決昭和25年8月29日)。
このことから、所有権の対象であれば、経済的価値がなくても主観的に価値があるものであれば財物として保護されることになります。
しかし、経済的にも主観的にも価値が認められないものは財物として保護されず、例えば、メモ紙1枚やちり紙13枚などは財物性が否定された判例があります。
②「窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して、その占有を侵害して自己又は第三者の占有に移転させることを言います。
上記の事例で言えば、コンビニ店が占有する電子タバコ2個の占有を、コンビニ店の意思に反して、電子タバコ2個の占有を侵害してAさんら3人の占有に移転させたと言えるため、Vさんらは電子タバコ2個を「窃取した」と言えるでしょう。
また、窃盗罪は故意犯(罪を犯す意思を持ってした行為により成立する犯罪)であるため、上記の2つの要件の他に、③故意と④不法領得の意思が必要となります。
③の故意とは、犯罪事実の認識・認容を言い、窃盗罪の場合は、行為者が他人の財物を窃取することを認識し、窃取することになっても構わないと考えていること(認容)が必要となります。
不法領得の意思は、条文上記載はありませんが、窃盗罪をはじめとする財産犯の成立には必要となる要件です。
そして、不法領得の意思とは、Ⓐ権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてⒷその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思を言います。
Ⓐを権利者排除意思、Ⓑを利用処分意思と言い、Ⓐは不可罰の使用窃盗(例えば、自転車の一時的な使用)との区別のため、Ⓑは毀棄罪(器物損壊罪など)との区別のためにそれぞれ必要となります。

2,接見禁止の解除または一部解除を求める弁護活動

窃盗罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されてその間に警察と検察の取調べを受けることになります。
また、今回のような共犯事件において、事件の犯人がお互いに口裏合わせを行い証拠隠滅のおそれがあると判断された場合、身柄を拘束されている被疑者には接見禁止処分が付けられる可能性があります。
接見禁止とは、被疑者に逃亡または証拠隠滅のおそれが認められる場合に、弁護人または弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者以外の者との面会を禁止することを言います(刑事訴訟法207条1項本文81条本文)。
接見禁止処分が行われると、家族・親族・恋人・友人などが身柄拘束されている被疑者と面会できなくなります。
身柄を拘束されている被疑者は精神的にも身体的にも不安を抱えていることが多く、家族や友人と面会することでその不安の解消に繋がるだけでなく、その後の人生における更生の一助となることもあります。
しかし、接見禁止処分が行われるとそれらの実現が不可能となるため、弁護士は接見禁止の解除に向けた弁護活動を行います。
上記の通り、被疑者に接見禁止が認められるのは逃亡や証拠隠滅のおそれが認められるためです。
したがって、それらのおそれを否定する客観的な事情や証拠を収集することが主な活動となります。
例えば、捜査機関の捜査により犯罪の証拠となる物(例えば犯行が記録された防犯カメラ)は既に押収されている等の事情があれば、被疑者による証拠隠滅は不可能である旨の主張を行い、接見禁止の解除に繋がります。
以上から、逮捕・勾留により身柄を拘束され、接見禁止処分が行われてしまった場合、少しでも早く弁護士に依頼することが大切と言えます。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において窃盗罪の当事者となってしまった方、もしくは家族・親族が窃盗罪の当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、窃盗罪の当事者となってしまった方で在宅捜査を受けている等の場合には初回無料でご利用いただける法律相談を、家族・親族が窃盗罪の当事者となってしまい身柄を拘束されている方には初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)

2024-03-21

住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)

今回は、福岡県宇美町在住の公立中学校の教員Aさんが知人Vさんの住宅に侵入し物を盗んだというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:知人宅に侵入し物を盗んだケース

窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県志免町に住む公立中学校の教員Aさんです。
Aさんはおととし8月、福岡県宇美町の知人男性Vさんの住宅に侵入し、着物など7点、あわせて115万円相当を盗んだ疑いが持たれています。
警察によりますと、Vさんの住宅付近の防犯カメラに映った車の映像などから、Aさんの関与が浮上したということです。
取り調べに対し、Aさんは、「間違いありません」と容疑を認めているということです。
(RKBオンライン 2024/03/01 14:09の記事を一部変更し引用しています。)

1,住居侵入窃盗(侵入盗)とは

住居侵入窃盗(侵入盗)とは、窃盗犯の手口の一つであり、空き巣や事務所荒らしなどがその典型例です。
刑法上は、住居侵入罪(130条前段)と窃盗罪(235条)の別の犯罪が成立しますが、住居侵入が窃盗を行うための手段として行われた場合、両罪は牽連犯(刑法54条後段)としてその最も重い刑により処断されることになります(刑法54条)。

2,牽連犯とは

牽連犯とは、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名にふれる」場合をいいます(刑法54条後段)。
複数の行為の間に手段と目的、又は原因と結果の関係(牽連関係)が認められる場合には牽連犯が成立しますが、複数の行為に牽連関係が認められるかどうかの判断基準として、ある犯罪が手段若しくは結果とが経験上通常、手段と目的又は原因と結果の関係にあるか否かによって判断されます(客観説 大判明42.12.20)。
牽連犯として認められたものとして、住居侵入窃盗の他に住居侵入と殺人、住居侵入と強盗、住居侵入と放火などが挙げられます。
反対に、牽連犯として認められないものとして、監禁と傷害、殺人と死体遺棄、強盗殺人と証拠隠滅のためにした放火などが挙げられます。
牽連犯が成立した場合の効果として、「その最も重い刑により処断する」とありますが、これは複数の犯罪を行った場合でも科される刑罰はそのうちの最も重い刑しか科されないことを意味し、科刑上一罪として処理されます。
住居侵入窃盗の場合では、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であるため、その最も重い刑である窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰が科されることになります。
そのため、上記事例におけるAさんが有罪となった場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲で刑罰が科されることになります。

3,住居侵入窃盗とその弁護活動

住居侵入窃盗で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
逮捕・勾留により身柄を拘束されている被疑者は一人で精神的・肉体的に大きな不安を抱えるため冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなります。
そこで、弁護士による取調べ対応などの弁護活動が重要となります。
弁護士が接見に向かえば、被疑者はどのように取調べに臨めばいいか、何を話すべきかなどの丁寧かつ適切なアドバイスを受けることができるため、被疑者の不安の解消の一助となるでしょう。
また、勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれが認められるからです(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そこで、被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、証拠隠滅や逃亡のおそれを否定し得る客観的証拠や事情の収集活動を行います。
たとえば、被疑者が犯してしまった犯罪の証拠となる物は既に捜査機関に押収されているため証拠隠滅は不可能であるという客観的事情を主張することで証拠隠滅のおそれを否定し得るでしょう。
そして、住居侵入窃盗は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を進め示談を成立させることも重要な弁護活動と言えます。
被害者との示談が成立していれば、早期の身柄解放や起訴猶予による不起訴処分を得られる可能性が高くなり、前科の回避や身柄解放後の日常生活への支障を最小限に抑えることができます。
以上より、逮捕・勾留から起訴されるまでの23日間に、一刻も早い刑事弁護活動を受けることが重要となります。
仮に起訴されてしまった場合でも、被害者との示談が成立しているなどの事情があれば執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなるため、どちらにせよ刑事弁護はスピードが大事であることに変わりはありません。
そのため、住居侵入窃盗(侵入盗)で逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件に特化した弁護士による適切かつ適切なサポートを受けることがなによりも重要となります。

4,まずは弁護士に相談を

福岡県内において住居侵入窃盗でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、住居侵入窃盗でお困りの方には初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

万引きで逮捕、会社相手にする示談交渉

2024-02-22

万引きで逮捕、会社相手にする示談交渉

万引きの窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

福岡県筑紫野市に住んでいる会社員のAさんは、特定のコンビニで複数回万引きを繰り返していました。
そしてAさんがまたコンビニで万引きをした際、店員から万引きを見つかり取り押さえられてしまいました。
取り押さえた店員はすぐに警察に通報し、ほどなくして筑紫野警察署の警察官が臨場しました。
そしてAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)

万引き

窃盗罪刑法第235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」とあります。
窃取とは他人が占有(物に対する実質的な支配または管理を意味する)する他人の物を、その占有者(占有している人物)の意思に反して、自己または第三者へと占有を転移させることを指しています。
参考事件の場合、占有者はその商品を取り扱っている店舗になります。
そのためコンビニの商品を、対価を支払わずにその意思に反して、自身の占有下に置いたAさんの行為は窃盗罪で間違いありません。
Aさんのようにコンビニやスーパーなどの店舗から、商品を無断で持ち帰る窃盗罪は、万引きと呼ばれます。
あまり大きな犯罪ではないと思われている方もいますが、万引き刑法に定められた窃盗罪が適用されるため、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が刑罰です。
そのため決して軽い犯罪とは言えず、特に複数回繰り返したり転売を目的として万引きしたりといったケースでは逮捕リスクも高くなっていきます。

個人が被害者でない場合

万引きの初犯であれば正式な裁判は開かれず、不起訴や略式罰金で事件が終了することもあります。
しかし、Aさんの場合は繰り返して万引きを行っているため、その点を重く見られ裁判が開かれてしまう可能性もあります。
こういった万引き事件で不起訴や略式罰金を目指すのであれば、被害者、つまり店舗との示談を締結することがその第一歩です。
しかし、個人ではなく会社などの法人が被害者である場合、弁護士がいなければ示談交渉には応じないと言われてしまうケースも十分あり得ます。
また、弁護士不在でも被害弁償は行えることが多いですが、商品の買い取りを済ませたとしても、それだけでは示談が締結したことになりません。
法的に効果を持つ形で示談を締結するためには、やはり弁護士に依頼し正式な示談書を作成することが確実でしょう。
万引き事件であっても事態を軽く扱わず、弁護士に相談し、速やかに示談交渉を進めることが重要です。

万引き事件に詳しい弁護士事務所

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件または少年事件を中心に扱う弁護士事務所です。
当事務所では、初回無料でご利用いただける法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスなどを実施しています。
どちらも24時間体制で、土曜日、日曜日だけでなく、祝日もご予約を受け付けております。
万引き事件を起こしてしまった、またはご家族が窃盗罪の容疑で逮捕されてしまった際には、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部のフリーダイヤル「0120-631-881」にご連絡ください。

【事例解説】窃盗罪の余罪取調べと黙秘権の行使

2023-10-05

 窃盗(万引き)の容疑で逮捕され、取調べにおいて余罪を追及された架空の事件を参考に、余罪取調べにおける黙秘権の行使について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 令和5年8月12日、福岡市在住の男子大学生A(22歳)は、コンビニで万引きしたところを店員に通報され、窃盗の容疑で逮捕されました。
 Aは、それ以前に他のコンビニで複数回万引きをしたことがありますが、発覚して通報されたのは今回が初めてであり、取調べにおいて、余罪として過去に行った万引き(窃盗)の有無も聴取されましたが、曖昧な返答に終始しました。
 翌日、Aは身元引受人となる保護者と同居していることもあり、検察官に送致されず釈放され、次回取調べ予定を告げられました。
 Aは、次回取調べ時に、余罪を正直に申告した方が良いか悩んでおり、刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(事例はフィクションです。)

余罪とは

 余罪とは、ある犯罪事実が捜査や起訴の対象となっている場合に、まだ捜査や起訴の対象となっていない別の犯罪事実のことです。
 本件では、捜査の対象は、令和5年8月12日の窃盗ですが、それ以前(以後)にAが行った窃盗やその他の犯罪が余罪となります。

 特に、窃盗は、生活困窮という動機によるものや、窃盗症(クレプトマニア)などの精神疾患によるものなど、繰り返し行われることが多い犯罪のため、取調べにおいて余罪を厳しく追及されることがあります。

余罪取調べと黙秘権の行使について

 余罪取調べは、少なくとも任意で行われる限りは違法でないと解されますが、厳しい追及により余罪の申告を強要されるおそれがないとも言えないため、刑事訴訟法で保障される黙秘権の規定に留意する必要があります。

 「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」との憲法第38条第1項を受けて、取調べにおける被疑者の黙秘権の行使を保障するために、「被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨」の権利告知が規定されています(刑事訴訟法198条第2項)。

 よって、取調べに対し余罪の申告を行わないことは、被疑者の法的な権利として保障されています。

余罪取調べにおける黙秘権行使についての刑事弁護

 黙秘権の行使が被疑者の権利として保障されるとはいえ、余罪を追及された際に、正直に余罪を申告した方が良いかどうかは、個々の場合によるため一概には言えません。

 黙秘権の行使により不利益な取り扱いを行うことは本来許されないものですが、事実上、取調べが厳しくなることや、逮捕・勾留による身体拘束からの解放の判断に不利な影を及ぼすおそれがあります。
 また、防犯カメラ映像など、明らかな物的証拠があることが考えられる場合には、黙秘権を行使してもあまり意味をなさず、却って、後に発覚した場合に不利な情状となるおそれもあります。

 このように黙秘権行使による事実上の不利益がある一方、黙秘することで結局、捜査機関が犯罪を証明できるだけの証拠が得られず不起訴処分になる可能性もあります。

 余罪についての黙秘権の行使の判断は非常に難しい問題であること、捜査機関の厳しい追及や誘導に対して黙秘権を行使を貫くのは困難を伴う場合もあることから、被疑者本人が自分で対応を決めるのは避け、刑事事件に強い弁護士に相談した上で対応することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、窃盗罪をはじめとする様々な刑事事件において、取調べ対応の豊富な実績があります。
 自身やご家族が窃盗罪で警察の取調べを受け、余罪の申告のことでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【少年事件解説】同級生に万引きを行わせた中学生 窃盗容疑で警察の取調べ(後編)

2023-08-24

 前回に引き続き、同級生に万引きを行わせたことにより、中学生が窃盗容疑で警察の取調べを受けた架空の事件を参考に、間接正犯や教唆犯・共同正犯の成立について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 北九州市内の中学校に通う少年A(15歳)は、同校内の特別支援学級に通う知的障害を有する同級生のBに命じ、家電量販店で欲しかったゲームソフト1点の万引きを行わせ、Bから回収しました(X事件)。
 犯行後、Bは体調不良で学校を欠席するようになりました。Aは別の同級生Cに「前に成功した店だから絶対に大丈夫。」と唆し、同店でCにゲームソフト数点の万引きを行わせ、Cから情報提供料として内1点を譲り受けました(Y事件)。
 後日、被害に気づいた同店が警察に被害届を提出し、防犯カメラの映像からBとCの犯行が明らかになりました。BとCは、警察の取調べに際しAの関与を供述したことから、Aは窃盗の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、X事件における間接正犯の成立について解説しました。

教唆犯及び共同正犯の成立について

 人を教唆して犯罪を実行させた者は、教唆犯が成立します(刑法第61条)。

 Y事件で、CはAから唆されて万引きを実行しましたが、Aに意思を抑圧されるような両者の関係性は見受けられず、Cは万引きしたゲームソフトのほとんどを自分の物としている点で、X事件とは異なり、Cに窃盗罪正犯、Aに同罪の教唆犯が成立することがまず考えられます。

 なお、AがCから万引きしたゲームソフトを譲り受けた点について、盗品を無償で譲り受けたとして、Aに盗品等無償譲受け罪も成立し得ます(刑法第256条第1項)。

 他方で、Aは万引きにより得た利益を享受しており、自らの犯罪としてCに万引きを行わせる意思を有していたとも言い得ます。
 そのため、万引きの計画や実行の際に、Aが一定の役割を担った事実が認められるなどした場合、窃盗罪教唆犯ではなく、2人以上で共同して犯罪を実行したものとして、窃盗罪正犯(共同正犯)が成立する可能性もあります(刑法第60条)。

 なお、Aに窃盗罪正犯(共同正犯)が成立する場合は、AがCから万引きしたゲームソフトを譲り受けた点は、窃盗罪の正犯の中で評価されているため、別途、盗品等無償譲受け罪は成立しないと考えらえられます。

少年が万引きに関与して取調べを受ける場合の弁護活動

 窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科する、とされる罪ですが、本件は15歳の少年による事件のため、原則として刑事裁判や刑事罰の対象とはならず、少年法における少年事件として取り扱われます。

 ただし、捜査段階では成人の刑事事件と原則同じ手続きとなるため、逮捕・勾留され、長期の身体拘束を強いられる可能性はあります。
 そうした不利益を回避する可能性を高めるためにも、できるだけ早期の段階で刑事事件や少年事件の弁護活動の実績が豊富な弁護士に相談し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることをお勧めします。

福岡県の刑事事件・少年事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、窃盗の刑事事件・少年事件対応の豊富な実績があります。
 ご家族の少年が窃盗に関与したとして警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【少年事件解説】同級生に万引きを行わせた中学生 窃盗容疑で警察の取調べ(前編)

2023-08-21

 同級生に万引きを行わせたことにより、中学生が窃盗容疑で警察の取調べを受けた架空の事件を参考に、間接正犯や教唆犯・共同正犯の成立について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 北九州市内の中学校に通う少年A(15歳)は、同校内の特別支援学級に通う知的障害を有する同級生のBに命じ、家電量販店で欲しかったゲームソフト1点の万引きを行わせ、Bから回収しました(X事件)。
 犯行後、Bは体調不良で学校を欠席するようになりました。Aは別の同級生Cに「前に成功した店だから絶対に大丈夫。」と唆し、同店でCにゲームソフト数点の万引きを行わせ、Cから情報提供料として内1点を譲り受けました(Y事件)。
 後日、被害に気づいた同店が警察に被害届を提出し、防犯カメラの映像からBとCの犯行が明らかになりました。BとCは、警察の取調べに際しAの関与を供述したことから、Aは窃盗の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

間接正犯の成立について

 万引きは、他人の財物を窃取する行為であり、窃盗罪が成立します(刑法第235条)。

 万引きを直接実行したのは、X事件ではB、Y事件ではCですが、関与したAにも同罪が成立するか問題となります。

 自身で直接犯行を行わなくても、事情を知らない他人や、幼児などの是非を弁識する能力のない者を利用して犯行を行う場合、正犯が成立するとされます(これを「間接正犯」といいます。)。

 具体的には、他人を利用する者が、(1)自らの犯罪として行う意思を有し、(2)他人の行為を道具として一方的に支配・利用した、と認められる場合に間接正犯が成立し得ると解されます。

 X事件で、(1)について、Aは自分の欲しかったゲームソフトの万引きをBに行わせ、回収し自分の物としている点で、自らの犯罪として行う意思を有したと認定し得ると考えられます。
 (2)について、Bは特別支援学級に通う知的障害を有する生徒であることから、是非を弁識する能力のないBをAが一方的に利用したものと認められる可能性が十分にあります。

 以上のことから、X事件で、Aに間接正犯として窃盗罪が成立し得ると考えらえます。
 なお、この場合、Bは心神喪失(精神の障害により、善悪を区別する能力が全くない状態)に当たるとして、不可罰になると考えられます。

 次回の後編では、Y事件における教唆犯及び共同正犯の成立について解説していきます。 

少年が万引きに関与して取調べを受ける場合の弁護活動

 窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科する、とされる罪ですが、本件は15歳の少年による事件のため、原則として刑事裁判や刑事罰の対象とはならず、少年法における少年事件として取り扱われます。

 ただし、捜査段階では成人の刑事事件と原則同じ手続きとなるため、逮捕・勾留され、長期の身体拘束を強いられる可能性はあります。
 そうした不利益を回避する可能性を高めるためにも、できるだけ早期の段階で刑事事件や少年事件の弁護活動の実績が豊富な弁護士に相談し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることをお勧めします。

福岡県の刑事事件・少年事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、窃盗の刑事事件・少年事件対応の豊富な実績があります。
 ご家族の少年が窃盗に関与したとして警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事件解説】特殊詐欺グループの「出し子」を窃盗罪で逮捕

2023-07-04

 不正に入手した他人名義のキャッシュカードでATMから現金を引き出したとして、特殊詐欺グループの「出し子」が逮捕された窃盗事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市在住の会社員男性A(21歳)が、特殊詐欺「出し子」として、指示役の男が不正に入手したV名義のキャッシュカードを使用し、同市内のコンビニのATMで現金50万円を引き出したとして、窃盗の容疑で逮捕されました。Aは、窃盗の容疑を認めています。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

窃盗罪で逮捕された理由

 本件Aは、特殊詐欺の一環として犯行を行っていますが、窃盗罪で逮捕されています。詐欺罪は、「人を欺くこと」が要件ですが、Aの行為は、機械であるATMから現金を引き出したものであり、人を欺いたとは言えないため、詐欺罪が成立しないためです。

 他人の財物窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第235条)。

 「窃取」とは「財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すこと」を言います。

 預金口座の残高に相当する金員については、銀行が、保有している資金の一部としてATM内に現金で保管(「占有」)しています。
 また、銀行は預金者のみが使用することを前提にキャッシュカードを発行しており、預金者と何ら関係ない者が当該キャッシュカードを利用してATMから現金を引き出すことは、銀行の意思に反すると言えます。

 以上のことから、Aが「出し子」として行った行為は、ATM内の現金(「財物」)を占有する銀行の意思に反して、V名義のキャッシュカードで当該現金を引き出し、自己の占有に移したもの(「窃取」)として、被害者を銀行とする窃盗罪が成立すると考えられます(判例同旨)。

 なお、指示役の男がキャッシュカードを不正に入手した行為について、Vに対する詐欺罪等の犯罪が別途成立しているものと考えられます。

特殊詐欺事件の「出し子」として逮捕された場合の刑事弁護

 特殊詐欺事件「出し子」として窃盗罪で逮捕された場合、余罪や犯行グループの全容を解明するために、引き続き勾留され身柄拘束が長期化する可能性が非常に高いです。

 また、特殊詐欺事件は、組織的な犯行であり、被害額も高額で犯罪組織の資金源になる場合も多いため、「出し子」といった末端の一員に対しても厳しい処分が行われる傾向があり、初犯であっても起訴され実刑を科されることが少なくありません。

 そのため、弁護人は、捜査段階から裁判を見据えた弁護活動を行うことが多いです。具体的な弁護活動として、被害弁償、謝罪文の提出、示談交渉などが挙げられますが、これらの弁護活動を適切に行うことで、起訴された場合でも、刑の減軽執行猶予を得る可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
 特殊詐欺事件「出し子」として、窃盗罪でご家族が逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

窃盗事件で勾留中 警察はどんな捜査をしているの?

2023-04-13

窃盗事件で勾留中に、警察がどんな捜査をするのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

窃盗事件で勾留中の方からの質問

私は、1カ月ほど前に電車の中で酔払って寝ている男性のジャケットの中から財布を抜き取ったところを、張り込んでいた福岡県警の鉄道警察隊の警察官によって現行犯逮捕されました。
逮捕の二日後に窃盗罪での勾留が決定し、10日間の勾留を受けた後に窃盗罪起訴され被告人となり、現在は保釈中であります。
ところで私は逮捕直後から事実を認めており、勾留中も取調べがあったのは4回くらいでした。
勾留中に警察はどんな捜査をしていたのですか?
(フィクションです。)

勾留とは

勾留とは、警察等の捜査機関が逮捕した犯人に対して、48時間の留置期間を超えても、そのまま身体拘束を続けて取調べ等の捜査をする必要がある時に、警察から検察官に送致された後に、裁判官の許可を得て身体拘束を続ける刑事手続きで、勾留の期間は、まずは10日間、そして延長の必要が認められる場合は、更に10日間までとなります。
裁判官は、身体拘束を続けなければ逮捕した犯人が逃走したり、証拠を隠滅する可能性がある場合に勾留を許可します。
そして基本的には、この勾留期間中に、事件の犯罪捜査を指揮する検察官は犯人を起訴するかどうかを判断しなければなりませんので、捜査機関はその判断をするために必要な捜査を行います。

勾留期間中に行われる犯罪捜査

勾留期間中は、すでに検察庁に事件が送致されているので犯罪捜査の指揮権は検察官にありますが、実際は、ほとんどの捜査を警察が行い、警察の捜査結果をふまえて検察官が1度か2度ほど取調べを行います。
勾留期間中に警察が行う犯罪捜査は、犯人の取調べ、被害者や目撃者など事件関係者からの事情聴取、実況見分、証拠収集などで、この間に、犯人の自宅など関係先の捜索も行います。
ただ警察がどのような捜査を行って、どのような証拠を収集しているのかは起訴されて検察官が証拠を開示するまで弁護士であっても知ることができません。
また最近は、ほとんどの事件で押収したスマートホンのデータが解析も行われており、これによって余罪が発覚するケースも少なくないようです。

刑事事件に強い弁護士に相談を

刑事事件を起こしたほとんどの方は、自分にどのような刑事罰が科せられるのかに大きな不安を抱いているでしょう。
刑事裁判でどのような刑事罰が科せられるかは、刑事裁判で何を主張し、どのように減軽を求めるかに大きく左右される場合があります。
福岡県内の刑事事件でお悩みの方は、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の無料相談をご利用いただくことをお勧めします。

執行猶予中の再犯(万引き) 執行猶予の取消しについて~②~

2023-03-11

~前回(執行猶予)~の続き~

前回に引き続き、本日のコラムでは、執行猶予中に再犯(万引き)をしてしまった…この場合、執行猶予は取消されるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

執行猶予の取消し

執行猶予というのは、刑務所に行くことを免除したのではなく、あくまで「見送る」こと(猶予すること)にすぎません。
したがって、その執行猶予期間中に万引きなどの犯罪を犯せば、執行猶予が取り消される可能性が非常に高いのです。

刑法は執行猶予が取り消される場合として

①必要的取消し(必ず取消される)

②裁量的取消し(取り消される場合がある)

の2つの場合を定めています。

必要的取消しについて

執行猶予が必ず取り消されるのは、執行猶予期間中にさらに罪を犯し、その罪につき

禁錮以上の実刑に処せられた場合(刑法26条1号)

です。
ここで「禁錮以上」とは禁錮のほか懲役を含みますが罰金は含みません。

裁量的取消しについて

執行猶予が取り消される可能性があるのは、執行猶予期間中に罪を犯し、

  • 罰金に処せられた場合(刑法26条の2第1号)
  • 保護観察の遵守事項を遵守せず、情状が重いとき(刑法26条の2第2号)

などです。

A子さんの場合は?

万引きは窃盗罪にあたります。窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですから、A子さんが今回の万引きで起訴され刑事裁判で有罪とされれば懲役でも罰金でも処罰される可能性があります。
そして、懲役で処罰された場合は必要的に前の執行猶予が取り消され、罰金で処罰された場合でも前の執行猶予が取り消される可能性がある、ということになります。
もっとも、以上はA子さんが起訴された場合の話ですから、起訴されるまでは執行猶予が取り消されるということはありませんので、まずは不起訴処分の獲得を目指す必要があります。

執行猶予中に再犯(万引き)事件を起こしてしまった方は

執行猶予中に事件を起こしてしまった方は、まず刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
    『執行猶予中の犯行=実刑(刑務所に服役)』ではありません。
刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士は、わずかな可能性を信じ、お客様を権利を守るために全力で弁護活動を行っております。
執行猶予中の犯行であっても、諦めずに一度ご相談ください。
刑事事件のご相談は、フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)までお気軽にお問い合わせください。

執行猶予中の再犯(万引き) 執行猶予の取消しについて~①~

2023-03-08

執行猶予中に再犯(万引き)をしてしまった…この場合、執行猶予は取消されるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

執行猶予中の再犯(万引き)してしまった事件

福岡県飯塚市に住む主婦のA子さんは、これまで何度か万引き事件を起こして警察に検挙されており、最近では1年半ほど前に警察に捕まり、その後の刑事裁判で「懲役10月執行猶予3年」の判決を受けました。
そうした中、1週間ほど前に再び、福岡県飯塚市にあるスーパーで食料品など数千円程度の商品を万引きして店外に出たところで、店員に声をかけられました。
A子さんは店員の隙をついて自転車に飛び乗り、何とか自宅まで逃げ帰ることができました。
A子さんは、このままだと警察に逮捕されて、執行猶予が取り消されてしまうのではないかと不安で夜も眠れません。
※この事件はフィクションです。

執行猶予中に再犯を犯してしまうとどうなるのか…
執行猶予取り消されて刑務所に服役しなければいけないのでは…
そんな不安を抱えている方がいるかもしれません。
そこで本日と次回のコラムでは、執行猶予と、執行猶予の取消しについて、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士が解説します。

執行猶予

まず本日は執行猶予について解説します。
執行猶予とは、被告人が有罪であることは間違いないものの、被告人に酌むべき事情が認められ、社会生活を送りながらでも更生に期待できる場合に、一定期間(執行猶予の期間)、刑務所に行くことを猶予することです。
そして執行猶予期間中に何もなければ、判決時に言い渡された懲役刑禁錮刑は免除されて、刑務所に行かなくてもよくなります。
これが「執行猶予」という制度です。
A子さんは、1年半ほど前に万引きをした事件で、「懲役10月執行猶予3年」という判決を受けています。
この裁判でA子さんに酌むべき事情が認められ、社会生活を送りながらの更生が期待されたから、A子さんは執行猶予付き判決を受けることができ、すぐに10月の懲役刑が科せられずに済んだのです。
そして、そのまま執行猶予期間である3年間、何事もなく過ごしていれば10月の懲役刑は免れていたはずですが、結果的に再犯を犯してしまったので、執行猶予が取り消されてしまう可能性が非常に高くなります。
執行猶予が取り消しについては次回のコラムで解説します。
なお、執行猶予期間の起算点控訴期限日(判決の言い渡しの翌日から14日目)の翌日、つまり確定日からとなります。

~次回(執行猶予の取消し)に続く~

« Older Entries

keyboard_arrow_up

0120631881 無料相談予約はこちら LINE予約はこちら