Archive for the ‘暴力事件’ Category

傷害事件で正当防衛を主張

2019-07-08

傷害事件で正当防衛を主張

福岡県筑紫野市に住むAさんは、天神でお酒を飲んだ後、一人で西鉄天神駅へと向かっていたところ、すれ違いざまに男性Vさんの肩と軽くぶつかってしまいました。Aさんは酒に酔っていたこともあって、Vさんがわざと自分にぶつかってきたものと思い、Vさんに「なんやこのやろう!」と大声を上げました。すると、Aさんは、「何だって。」などと言いながら近づいてくるVさんに胸ぐらをつかまれたため、Vさんの両肩を両手で押して払いのけた、Vさんを地面に転倒させました。その後、周囲の人がAさんとVさんとの間に割って入り、事が収まりました。AさんとVさんは現場に駆けつけてきた福岡県中央警察署の警察官に事情を聴かれました。Aさんは警察官に「正当防衛だ。」などと主張しています。Vさんは、病院へ連れていかれ、診断の結果、加療約2週間の傷害と診断されました。
(フィクションです。)

~ 正当防衛 ~

ある行為が犯罪に当たると思われても、その行為に違法性がなければ犯罪は成立しません。この違法性に該当しない事由のことを「違法性阻却事由」といいます。Aさんが主張している「正当防衛」(刑法36条)は違法性阻却事由の一つです。違法性阻却事由は、正当防衛のほかにも緊急避難(刑法37条)、正当行為(刑法35条)があります。

刑法36条
急迫不正の侵害に対して,自己又は他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為は,罰しない。
 
今回、Aさんのは、Vさんの両肩を両手で押すという「暴行」を加え、それによってVさんに怪我を負わせているのですからAさんの行為は刑法204条の傷害罪に当たります。しかし、Aさんの行為が上の正当防衛の要件に該当する場合は、傷害罪は成立しません。以下では、正当防衛が成立するための要件についてみていきたいと思います。

* 急迫不正の侵害 *

「急迫」とは、法益(今回でいえば、Aさんの身体)侵害が現に存在するか、目前に差し迫っていることをいいます。ですから、過去の侵害や将来の侵害に対しては正当防衛は認められません。例えば、相手から足を蹴られ、その侵害が一応去った後、相手を追っかけて相手の顔面を殴ったとしても正当防衛は成立しません。「不正」とは違法であることをいいます。「侵害」とは、法益に対する実害又はその危険を生じさせる行為をいいます。

* 自己又は他人の権利を防衛するため *

「権利」とは、法律で「〇〇権」と明文化されているものに限らず、広く法律上保護されている法益をいいます。
「防衛」とは、侵害から法益を守ることをいいます。防衛行為は、侵害者に向けられた行為でなければなりません。例えば、AさんがVさんから刃物で襲われたため、その場にいたWさんを盾にしてWさんに傷害を負わせたという場合、Wさんとの関係で緊急避難(刑法37条)が成立する余地はあっても正当防衛は成立しません。

※防衛の意思(防衛するため)
 防衛行為は、自己又は他人の権利を防衛するためのものでなければなりません。そこで、正当防衛が成立するには、防衛行為が防衛の意思に基づくことを要するかが問題となります。この点、判例は必要との立場をとっています(最判昭和46年11月16日など)。ただし、防衛行為は、緊急状況下で行われることが多いと思われますから、防衛の意思の意義を「急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態」と解する説もあります。

* やむを得ずにした行為 *

「やむを得ずにした」とは、具体的事情の下において、その防衛行為が、侵害を排除し、又は法益を防衛するために必要かつ相当なものであったことをいいます。防衛行為の相当性ともいわれています。防衛行為の相当性を超えたものが過剰防衛です(刑法36条2項)。防衛行為の相当性は、法益の権衡と防衛行為事態の態様の2つの面から検討し、具体的事情の下で社会的・一般的見地から見て必要かつ相当か否かと判断します。例えば、素手で向かってくる相手に対し、刃物を用いて対抗する場合は相当性を欠く場合が多いでしょうが、体格、腕力等において優勢な者に対して刃物で対抗してもなお相当性が認められる場合もあります。

~ おわりに ~

正当防衛を主張するケースでは、当事者双方から事件当時の出来事を詳細に聴き出した上で、上記要件に当てはまるかどうか判断するという極めて高度な技術と知識が必要となります。正当防衛を適切に主張するなら、刑事事件専門の弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談初回接見サービスを受け付けております。

間接正犯で器物損壊罪の告訴取消し

2019-07-07

間接正犯で器物損壊罪の告訴取消し

福岡県太宰府市に住むAさんは隣に住むVさん家族が夫婦仲睦まじく、週末は必ず遠出するなど裕福な生活を送っていることを妬んでいました。そこで、Aさんは、Vさんの夫が日頃運転している、Vさん方駐車場に停められている高級外車に傷をつけてやろうと考えました。しかし、自ら直接傷をつけると万が一見つかった場合に、今後の付き合いに支障が出てはいけないと思い、いたずら好きな息子B君(9歳)に、「ねえ、B君、あの車、隣の人が傷つけていいっていってたよ。」「傷つけてきてごらん。」といいました。B君はAさんから言われるがまま、Vさん夫が運転する高級外車の運転席ドアに長さ10センチほどの傷をつけました。そのとき、Vさんが自宅から出てきてB君を捕まえました。VさんがB君から事情を聴くと、B君は「お母さんから傷つけていいって言われたから。」といいました。そうして、後日、Aさんは、Vさんから福岡県筑紫野警察署告訴状を提出され、器物損壊罪で事情を聴かれることになりました。
(フィクションです)

~ 器物損壊罪とは ~

器物損壊罪は、刑法261条に規定されています。

刑法261条
 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「前三条に規定するもの」とは、公用文書等(刑法258条)、私用文書等(刑法259条)、建造物等(刑法260条)を指しますから、器物損壊罪の対象(客体=「他人の物」)とは、これら以外の有体物ということになります。ちなみに、動物も「物」に含まれます。
ここでの「損壊」とは動物以外への毀棄、「傷害」とは動物に対する毀棄をいいます。毀棄とは、物理的な毀損・破壊行為のみならず、ひろく物の本来の効用を失わせる行為を含むと解されています。

器物損壊罪の罰則は、上記のとおり

3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料

です。科料(1万円未満)も定められていますが、器物損壊罪において科料が科されるケースは稀だと思います。

~ Aさんは処罰される?(間接正犯について) ~

ところで、今回、実際に車に傷つけている人(これを「正犯」といいます)はV君です。法律上は、実際に犯罪に当たる行為をした者を処罰するのが原則です。しかし、V君は14歳未満の刑事未成年者であり、V君を刑法上の罪に問うことはできません。

では、Aさんはどうでしょうか?この場合、Aさんは実際に犯罪に手を下していない、犯罪に当たる行為をしていないからといって処罰できないとするのでは、あまりにも不合理です。そこで、実務などでは、Aさんを間接正犯として処罰できるとしています。
間接正犯とは、間接的に正犯を実行する、つまり

人を道具として使って犯罪を実行すること

をいいます。間接正犯には

・被利用者(V君)が責任能力を欠く場合(本件の場合)
・被利用者が強制により意思を抑圧されている場合
・被利用者に故意がない場合
・被利用者の行為が適法である場合

などがあります。
間接正犯も正犯と刑責は同じですから、減軽事由などはありません。正犯と同じく、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられる可能性があります。

~ 器物損壊罪は親告罪 ~

告訴がなければ、検察が公訴を提起(起訴)できない犯罪を親告罪といいます。器物損壊罪は親告罪です。他にも,未成年者略取・誘拐罪(刑法224条),名誉棄損罪(刑法230条),侮辱罪(刑法231条),過失傷害罪(刑法209条),親族間の窃盗罪(刑法244条2項,235条等)などがあります。

* かつては親告罪,現在は非親告罪 *

他方で、告訴が不要な犯罪を非親告罪といいます。ほとんどの罪が非親告罪ですが,性犯罪の中には親告罪だと誤解されやすい犯罪もありますから注意が必要です。以下の犯罪は、すべて非親告罪です。強制わいせつ罪(刑法176条),準強制わいせつ罪(刑法178条1項),強制性交等罪(旧強姦罪)(刑法177条),準強制性交等罪(旧準強姦罪)(178条2項),ストーカー規制法のストーカー行為の罪(同法18条),営利目的等(わいせつ・結婚目的等)略取・誘拐の罪(刑法225条)など。

~ 告訴取消し,不起訴を求めるなら示談を ~

親告罪において,告訴取消されれば起訴されることは絶対にありません。つまり,確実に不起訴処分を獲得できます。不起訴処分の獲得を目指すに当たっては,まずは被害者様に謝罪の意を示し,示談交渉を始めて示談締結を目指します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、器物損壊罪など親告罪などの刑事事件を専門の法律事務所です。被害者との示談から告訴取消し、不起訴処分獲得をご検討中の方は、弊所の無料法律相談初回接見サービスのご利用をご検討ください。

暴行再犯で逮捕されたら?

2019-07-03

暴行再犯で逮捕されたら?

福岡県直方市在住のAさんは、居酒屋店において、同じ客の男性Vさんと口論となり、Vさんの顔面を右拳で1回殴る暴行を加えました。その後、Aさんは、店員の110番通報により駆け付けた福岡県直方警察署の警察官により逮捕されてしまいました。実は、Aさんは、1年前に同じ暴行罪(懲役6月)で刑務所を出所したばかりでした。Aさんは、Vさんに暴行を加えたことは自分に非があることを素直に認め、Vさんに謝罪と被害弁償をしたいと考えています。また、接見に来た弁護士に、何とか不起訴処分を獲得できないか相談しました。
(フィクションです)

~ 法律上の再犯とは~

一般的に「再犯」という言葉は

・前科(古い、新しいにかかわらず)がありながら再び罪を犯した
・執行猶予期間中に再び罪を犯した

などという場合に使われるのではないでしょうか?しかし、法律上の再犯は若干これとは意味が異なります。法律上の再犯とは、

1 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に罪を犯したこと
2 その罪で有期懲役に処せられること

の2つの要件を満たした場合をいいます(刑法56条1項)。

刑法56条1項
 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。

* Aさんの場合 *

では、Aさんの場合、今回犯した罪(暴行罪)が「再犯」に当たるのでしょうか?
まず、Aさんは1年前に懲役6月の服役を終え出所したばかり、ということでした。したがって、上記1の「懲役に処せられた者がその執行を終わった日から5年以内に罪を犯した」に当たり、上記1の要件は満たします。
次に、暴行罪の法定刑は

2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料

ですので、暴行罪が上記2の「その罪で有期懲役に処せられること」に当たり、Aさんが今回犯した暴行罪が「再犯」に当たる可能性は十分にあります。

* 執行猶予期間が経過した場合はどうなの? *

執行猶予期間が経過した場合は、その刑の言渡しの効力は失われます(刑法27条)。
したがって、懲役刑の執行猶予期間が経過した後に、再び罪を犯したとしても、「懲役に処せられた者がその執行を終わった」ことには当たらず、再び犯した罪は「再犯」には当たりません。

~ 「再犯」とされた場合の効果は? ~

再び犯した罪が「再犯」に当たる場合は、

その罪について定めた懲役の長期の2倍以下の刑が科される

ことになります。つまり、暴行罪でいえば、懲役の法定刑は「2年以下」ですから、「再犯」とされた場合は

4年以下の懲役

の範囲で刑を科せられることになります。「再犯」の場合、執行猶予付き判決の言い渡しを受けることはかなり難しいと考えた方がいいでしょう。

~ 暴行罪で「再犯」なら罰金刑、不起訴を目指そう ~

上記でご説明したとおり、「再犯」となるのは、

暴行罪で有期懲役を受けたとき

ですから、罰金刑以下の罪であれば「再犯」とはならないのです。したがって、「再犯」となり、重い量刑を受けるのを避けるには、

罰金刑(略式起訴、略式裁判)か不起訴

を獲得する必要があります。そのためには、被害者に真摯に謝罪をした上で、

早期に示談交渉に入り、示談を締結させること

が先決といえます。示談交渉をするためには

弁護士の力が必要

ですから、お困りの方は、弊所の弁護士までお気軽にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,暴行罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

少年の逮捕、試験観察

2019-06-22

少年の逮捕、試験観察

かつて、学校内で暴行事件を起こし保護観察中だったA君(16歳)は,またしても学校内で暴行事件を起こして警察に逮捕されてしまいました。その後、A君の暴行事件は家庭裁判所へ送られ、A君は少年審判で「試験観察」の決定を受けました。A君とA君の母親は少年院だけは行きたくないと思い、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

~ 少年でも逮捕される? ~

少年とは20歳に満たない者(男女)をいいます。少年だから、警察、検察は甘く扱ってくれるのでは?などと考えていたら大間違いです。少年であっても、成人と同様

逮捕されることはあります

し、その後、勾留という逮捕よりも長い身柄拘束を受けることだってあります。

* 逮捕・勾留,観護措置への対応 *

仮に、少年逮捕された場合、弁護人は、釈放に向けて以下の対応を取ります。

逮捕段階
 警察官,検察官、裁判官宛に意見書を提出したり、場合によっては直接面談するなどして釈放を求めていきます。
勾留,勾留に代わる観護措置段階
 これらの決定に対しては準抗告申立てという異議申立てを行って釈放を求めていきます。
家庭裁判所送致段階
 勾留されている少年については,家庭裁判所送致時に,観護措置決定を出すか否かの判断がなされます。観護措置決定が出された場合,少年は 少年鑑別所に収容されます。そこでまず、裁判官宛に観護措置決定を出さないよう意見書等を提出するなどして釈放を求めていきます。勾留に代わる観護措置により少年鑑別所に収容されている少年については,事件が家庭裁判所に送致された場合,観護措置決定が出されたものとみなされます(つまり,引き続き少年鑑別所に収容されたままになります)。この場合の活動も勾留の場合と同様です。なお、観護措置決定が出た後でも異議申立てにより釈放を求めていくことは可能です。

~ 少年審判のおける試験観察とは ~

試験観察とは,保護処分を決定するために必要があると認めるときに,決定をもって,相当の期間,少年を調査官の観察に付するというもので,少年に対する終局処分を一定期間留保し,その期間の少年の行動等を調査官の観察に付するために行われる中間処分です。試験観察は,保護観察中に再非行を犯したような場合など,保護観察所・保護司による指導・監督・教育制度だけでは処遇として不十分と認められる場合などに行われるようです。
なお,試験観察はあくまで中間処分に過ぎないので,試験観察が終わってもそれで終了というわけではなく,最終的には試験観察の経過を見て終局処分(保護処分等)が決定されます。

* 試験観察の種類 *

試験観察の種類は2種類あります。一つは「在宅試験観察」と呼ばれるもの、もう一つは「補導委託」と呼ばれるものです。 
「在宅試験観察」の場合、少年審判の日に「釈放」され、自宅等へ戻ることができます。その後は、日記などを付けたり、定期的に家庭裁判所に出頭して調査官と面札するなどして、最終的に終局処分が下されます。
他方、「補導委託」の場合、少年審判の日に自宅へ戻ることはできません。つまり、補導委託先(農家やお寺など)へ身柄を移され、そこでの生活を経た後、最終的に終局処分が下されます。

* 試験観察と保護観察との違い *

試験観察と保護観察との違いについてご質問を受けることがあります。
保護観察処分は、保護観察所の指導監督の下、少年の更生を図る処分で「最終的な処分」、試験観察処分は、上記でもご説明したとおり、少年を少年院送致にするか保護観察処分にするかなどを判断する「中間的な処分」です。試験観察中の順守事項を言い渡されますが、それを破ると重い保護処分(少年院送致)を言い渡される可能性が高くなります。

~ 試験観察が予想される場合、試験観察となった場合の弁護活動 ~

試験観察が予想される場合は、まずは、在宅試験観察を求めていきます。そのためにも、早い段階から少年に更生を促し、在宅でも更生できる環境を整えておく必要があります。試験観察となった場合は、定期的に少年や保護者と面談するなどして、不処分や保護観察などの軽い処分を獲得できるよう努めます。

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脅迫罪で示談を目指す

2019-06-18

脅迫罪で示談を目指す

福岡県春日市に住むAさんは,交際していた女性Vさんのスマートフォンに,LINEで「俺と復縁しなければ,お前の家焼き払うぞ」などとメールを送りました。Aさんは福岡県春日警察署脅迫罪で逮捕されました。Aさんの母親は、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 脅迫罪 ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫したものは、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

害悪の告知は,一般に人を畏怖させる程度のものでなければなりません。
ただし,本罪は危険犯と言われ,人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があれば足り,それによって現実に相手方が畏怖したことは必要ではないと解されています。

また,害悪を告知する方法には制限がありません。その程度に達しているかどうかは、その内容を四囲の状況に照らして判断すべきとされています。しかし、これが真意にでたこと(本当に家を焼き払う気があったか、など)、相手が現実に畏怖したことなどを必要とするものではありません。
害悪告知の手段には制限はありません。直接言葉で伝えることはもとより、文書の掲示、郵送、最近では、事例のようにメール送信の他,SNS・ブログなどネット上への投稿で脅迫罪に問われた例もあります。

* 脅迫罪と強要罪の違い *

脅迫罪は人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があれば成立します。他方,強要罪は脅迫行為等の結果として,相手方に義務なきことを行わせ,又は行うべき権利を妨害したことで成立するという点に違いがあります。また、強要罪の法定刑は3年以下の懲役と、脅迫罪と異なり罰金刑が設けられていないことも大きな違いです。

* ストーカー行為に当たるかも!? *

ストーカー行為とは、同一の者に対し、「つきまとい等」を反復してすることをいいます。この「つきまとい等」には、相手方から拒まれたにもかかわらず、連続して電子メールを送信する行為も含まれています。恋愛絡みのこの種事件では、事案によっては、ストーカー行為に当たることもあります。

~ 脅迫罪において示談を目指す理由 ~

脅迫行為を認める場合は,被害者に真摯に謝罪し,慰謝の措置を取ることが必要不可欠です。これが脅迫罪において示談を目指す一番の理由です。その他,脅迫罪において示談を目指す理由としては以下の点が挙げられます。

= 早期釈放が可能となる =
 
一般的に,示談意向=罪を認める=罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれはないと判断されやすくなり,早期釈放に繋がりやすくなります。

* 勾留中に略式命令が出た場合 *

脅迫罪には罰金刑が設けられていますから、勾留中に略式裁判を受け、罰金刑の略式命令を受ける、という事態も想定しえます。略式命令が出ると、その時点で勾留状の効力は失われますから、その時点で釈放されます。正式起訴されるか、略式起訴されるか微妙な場合は、略式起訴するよう積極的に検察官に訴えかける必要があります。

= 不起訴獲得が可能となる  =
 
被疑者に有利な情状として考慮され,不起訴獲得の可能性が高くなります。被害者から「被疑者を処罰しないで欲しい」などという宥恕条項を獲得できれば,その可能性はさらに上がります。

= 執行猶予獲得が可能となる =
 
起訴され、仮に裁判になった場合でも、示談が成立していれば執行猶予獲得の可能性は高くなるでしょう。

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八女市で刃物を示して脅迫

2019-06-13

八女市で刃物を示して脅迫

福岡県八女市に住むAさんは、路上を歩いていた女性のVさん(70歳)に対し、剪定ばさみを見せながら「オレは刃物持っとるけんな」などと脅迫したところ、Vさんの110番通報により駆け付けた福岡県八女警察署の警察官に「暴力行為等処罰に関する法律違反」で逮捕されてしまいました。
(令和元年5月15日西日本新聞に掲載されたニュースを基に作成)

~ 認知度が低い?暴力行為等処罰に関する法律 ~

刑法の暴行罪(刑法208条)、脅迫罪(刑法222条)、器物損壊罪(刑法261条)はよく知られていると思いますが、

暴力行為等処罰に関する法律

はなかなか認知されていないのではないでしょうか?しかし、私たちに身近な暴力罪、脅迫罪、器物損壊罪に関連した法律ですし、実際に検挙者が出ていることも事実です。

~ 暴力行為等処罰に関する法律とは? ~

では、暴力行為等処罰に関する法律とはどんな法律なのでしょうか?

暴力行為等処罰に関する法律(以下、法律)は、集団的、常習的あるいは兇器を用いて行われる暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪、傷害罪(刑法204条)について刑法の刑を加重する(法律1条関係(2条関係の説明は省略します)などした法律です。
大正15年4月に制定されたふる~い法律で、第一次世界大戦後の社会的、経済的不満がまん延する大正末期に続発した集団的・常習的な暴力行為、面会強請、強談威迫などに対処するために制定されたと言われています。

~ 法律が適用される例 ~

2014年12月、神奈川県横浜市鶴見区の鶴見川河川敷で、少年3人が被害者(当時17歳)に殴るなどの暴行を加えた上、川で溺死させた事件ではこの法律が適用されています(加えて保護責任者遺棄致死罪も適用。少年3名はのちに少年院送致の保護処分を受けています)。

法律1条では、

多衆の威力を示して刑法208条の罪を犯した場合

は処罰する旨規定されています。「多衆」とは、多数自然人の単純な集合を意味し、何人以上なら「多衆」と決まっているわけではありません。具体的事案に応じて集合時間・場所、集合者各人の年齢・性別など各種事情を総合して判断されます。

法律1条に規定された刑法上の罪は暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪で、それぞれの罪を犯した場合に、

加重●●罪

と言われます。罰則は、

3年以下の懲役又は30万円以下の罰金

です。

~ 本件では? ~

本件でも法律1条が適用されます。法律1条では、上記のほかにも、

兇器を示して刑法222条の罪を犯した場合

を処罰する旨規定しています。「兇器」とは、人の生命・身体に害を加えるのに使用されるような器具をいいます。鉄棒、こん棒のように本来用途においては人を殺傷すべきものではないが、殺傷のために使えば使いえる器具(いわゆる「用法上の兇器」)も含むとされています。

~ 常習犯の場合はさらに重たい罪にも! ~

法律1条の3では、常習として傷害罪、暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪を犯した者が人を傷害した場合としなかった場合とで罰則を分けています。
前者の場合は「1年以上15年以下の懲役」、後者の場合は「3月以上5年以下の懲役」です。
いずれにしても罰金刑がありませんから、法律1条よりかは刑が重たくなっていることが分かります。

~ 示談交渉は弁護士に依頼 ~

この種事件においても示談交渉が、今後の刑事処分や量刑を決める上で大切になってきます。お困りの方は弁護士へご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談初回接見サービスの予約受付を承っております。

少年事件と少年院送致

2019-05-22

少年事件と少年院送致

福岡県春日市内の高校に通うAさん(16歳)は、お金の貸し借りの件で友人Vさんと口論となり、Vさんの顔や腹部を殴る蹴るなどの暴行を加え、Vさんに全治2か月の大怪我を負わせてしまいました。Aさんは、学校の通報により駆け付けた福岡県春日警察署の警察官に傷害罪で逮捕されてしまいました。逮捕を通知を受けたAさんの両親は、今後、息子が少年院送致されるのではないかと不安になり、弁護士に刑事弁護を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、当初、怪我させるつもりはあった場合はもちろん、なかった場合でも、行為と結果(傷害)との間に因果関係が認められる場合には成立します。また、傷害の結果、人を死亡させた場合は傷害致死罪に問われることになります。

* 傷害致死罪は原則逆送事件 *

故意の犯罪行為により被害者を死亡させ、行為時に16歳以上だった少年にかかる事件については、原則、家庭裁判所にある事件を検察官の元へ送致しなければなりません。これを原則逆送事件と呼んでおり、傷害致死罪もこの事件に含まれます。検察官の元へ送致されると、成人と同様の刑事手続で進められていきます。裁判となれば、一般人が裁判に参加する裁判員裁判を受けなければなりません。

~ 少年院送致とは ~

少年院送致は、家庭裁判所の少年審判において下される保護処分(少年院送致の他に、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致があります)の一つです。少年審判では、少年をどの種類の少年院送致するかまで決定されます(少年審判規則37条1項)。少年院の種類は以下のとおりです(少年院法4条1項1号から3号)。

第1種(1号)
 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く。)
第2種(2号)
 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
第3種(3号)
 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの

* 少年院の収容期間は? *

少年院の収容期間は、大きく短期処遇と長期処遇にわけられます。

短期処遇は、さらに特修短期処遇と一般短期処遇にわけられ、「特修短期処遇」の場合、「4か月」以内、「一般短期処遇」の場合、「6か月」以内です。長期処遇については10か月から2年です。

さきほど、少年審判では家庭裁判所から処遇に関する勧告が出されることがあります(少年審判規則38条2項)。ここで、家庭裁判所が特集短期処遇、一般短期処遇との勧告を出せば、少年院はこれに従うべきとされています(従う勧告)。また、長期処遇については、「比較的短期」の処遇勧告が出た場合、収容期間は10か月以内とされ、少年院はその勧告を尊重しなければならないとされています(尊重勧告)。しかし、長期処遇について何ら勧告がない場合は、少年院が1年から2年の範囲内で決めています。

~ 傷害事件における弁護活動(少年院送致回避に向けて) ~

相手に怪我を負わせている場合は、相手が肉体的にも精神的にも損失を被っています。ですから、一刻も早く被害弁償をして、示談を締結することが先決です。示談を成立させることができれば、反省の意を示す証拠ともなり得、少年院送致回避に向けた証拠としても使えます。

傷害事件の場合には,少年に強い暴力性が認められるケースが多く,自分の感情をコントロールすることができないなどの欠点が見受けられることも多いものです。そのため,弁護士が少年と同じ目線に立って,感情のコントロールの仕方を教えていくことが重要となります。その上で、少年の生活環境、家庭環境、交友関係などを見直し、更生のための環境を整えていく必要があります。 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。
福岡県春日警察署までの初回接見費用:36,600円)

バイトテロと犯罪

2019-05-21

バイトテロと犯罪

福岡市博多区のすし店でアルバイトをしているAさんは,廃棄済みの魚を拾って再度調理する動画をSNSを通じて公開しました。そうしたところ、この動画を見た店長が福岡県博多警察署に被害届を提出。Aさんは、信用毀損罪、偽計業務妨害罪の被疑者として博多警察署から呼び出しを受けました。大変なことをしてしまったと不安になったAさんは、弁護士に今後の対応を相談しました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

~ バイトテロとは ~

Aさんの行為は「バイトテロ」と呼ばれています。「バイトテロ」とは、主にアルバイトなどの非正規雇用で雇われている飲食店や小売店の(正社員も含めた)従業員が、勤務先の商品(特に食品)や什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなどで撮影し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿して炎上させる現象を指す日本の造語です。
これまでには、他に

・牛丼店のアルバイト店員が、メニューに存在しない超大盛りの豚丼を盛りつけ「テラ豚丼」として投稿。
・コンビニの店員がアイスのケースに入り込んで写真を撮影し、フェイスブックに投稿。
・定食店で、マスクをした男性の店員が下半身丸出しにしてお盆を股間にあてる動画を投稿。
・コンビニの店員が、売り物のおでん鍋から直接しらたきを食べて踊る動画をツイッターに投稿。

などの「バイトテロ」がありました。

Aさんとすれば面白半分で行った行為なのでしょうが、最悪の場合、刑事責任、民事責任を問われる場合も出てきます。そこで、今回は、どんな刑事責任を問われ得るのか解説したいと思います。

~ バイトテロは信用毀損罪、業務妨害罪に当たり得る ~

Aさんもしかり、バイトテロを行えば、刑法上の信用棄損罪、偽計業務妨害罪に当たり得ます。両罪は刑法233条に規定されています。

刑法233条 
 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

懲役刑が規定されているということは、

 刑務所に服役する可能性もある

ということを十分に自覚しましょう。

~ 「信用を毀損」、「業務を妨害」とは ~

まず、「信用を毀損し」の「信用」とは、人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼のみならず、

販売される商品の社会的な信頼も含まれる

とされています。「毀損」とは、人の信用を低下するおそれのある状態をつくることをいい、

現実に信用が低下したことを要しない

と解されています。
次に、「業務を妨害」とは、業務の執行自体を妨害する場合に限らず、ひろく業務の経営を阻害する一切の行為をいうとされており、通説・判例は、

業務妨害の結果を発生するおそれのある行為をすれば足り、現実にその結果の発生したことを要しない

としています(大判昭和11年5月7日)。

信用棄損罪も業務妨害罪も、

企業の損失・損害如何に関係なく、バイトテロ行為をしただけで成立する可能性がある

ということは十分自覚するべきでしょう。

~ 刑事責任の他にも民事責任 ~

刑事責任は刑罰を与えられ、与えられた刑に服さなければならない責任のことです。一方、バイトテロにおける民事責任とは、企業が被った損失・損害に対する損害賠償責任です。刑事責任を負ったからといって民事責任を免れるわけではありません。バイトテロによって

・売り上げが減った
・機材等を買い替えた
・株価が暴落した

などという場合は損失・損害が認められ、損害賠償責任を負う必要が出てくるものと考えます

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、信用棄損罪、偽計業務妨害罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

 

公妨,公文書毀棄と釈放

2019-05-05

公妨,公文書毀棄と釈放

Aさんは自動車をを運転中,非常点滅表示灯が点滅していなかったことから,パトカーを運転する福岡県久留米警察署の警察官に停止を求められました。Aさんは道路わきに車を止め,車から降りて警察官の職務質問を受けました。Aさんは,素直に罪を認め,はやく手続を終わらせたいと考えていましたが,警察官の態度があまりにも横柄すぎると感じたことから,警察官Aから交付を受けた「交通反則切符」をその場で破り捨てました。そこで,Aさんは公務執行妨害罪公文書毀棄罪で逮捕されてしまいました。Aさんは,妻と二人で痴ほう症の両親の面倒を看ています。そこで,逮捕の連絡を受けたAさんの妻は,一刻も早く釈放されることを願って刑事事件に強い弁護士に弁護活動を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 逮捕罪名について ~

まずは,Aさんの逮捕罪名である公務執行妨害罪公文書毀棄罪から解説したいと思います。

= 公務執行妨害罪 =

本罪は,刑法95条1項に規定されています。

刑法95条1項
 公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

* 破っただけで公妨? *

この記事をご覧になった方は,

・警察かに暴行,脅迫を加えてないのになぜ逮捕?
・切符破っただけで公妨?

などと疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか?実は,公務執行妨害罪の「暴行」とは,

公務員の身体に対して直接加えられる有形力の行使(直接暴行)に限られず,公務員に対して向けられてはいるものの,直接公務員の身体に対して加えられたものではない有形力の行使(間接暴行)をも含む

とされています。これは公務執行妨害罪が公務の円滑な遂行を保護することを目的としているからと説明されています。判例では,

・覚せい剤液注射液入りアンプルを足で踏み付け破壊する行為
・収税官吏が差し押さえた密造酒入りのカメを破壊する行為

なども「暴行」に当たるとされています。

= 公文書毀棄罪 =

本罪は,刑法258条に規定されています。

刑法258条
 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は,3月以上7年以下の懲役に処する。

「公務所」とは,官公庁その他公務員が職務を行う所をいいます。「公務所の用に供する文書(公用文書)」とは,公務所で使用されるための文書をいいます。過去の裁判例(東京高裁昭和41年11月11日)では,交通切符をも「公用文書」に当たると判断されています。なお,犯人が署名する前など,文書として未完成のものであっても「公用文書」であることに変わりはないとされています。「毀棄」とは,共用文書等の本来の効用を害する一切の行為をいうとされています。破り捨てる行為も「毀棄」に当たるでしょう。

~ 本件と釈放 ~

本件の場合,犯罪を立証し得る直接証拠は犯行を現認した警察官Aの供述です。しかし,Aさんが釈放された場合,わざわざ警察署まで出向いて警察官Aを威迫し,自分に有利に供述を変遷させるなどの罪証隠滅行為に出ることは通常考え難いです。そもそも,Aさんとしては,警察官Aの特定すらできないかもしれません。よって,本件の場合,罪証隠滅行為の現実的可能性は他の犯罪に比べ低いです。ですから,本罪では逃亡のおそれさえなくしてしまえば釈放される可能性はグンと高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,公務執行妨害罪公文書毀棄罪などをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。ご家族の一日でも早い釈放をお望みの方は,土日・祝日,24時間受付中の弊所の初回接見サービスのご利用をご検討ください。

殺人事件と取調べ 

2019-05-04

殺人事件と取調べ 

福岡県京都郡苅田町に住むAさんは,自宅内で,妻であるVさんの腕や顔を包丁で切り付けた上,その腹部を刺し,Vさんを死亡させた殺人罪で福岡県行橋警察署に逮捕されました。勾留後,接見した弁護士は,Aさんの様子を見て違法・不当な取調べが行われているのではないかと,取調べに対して強い懸念を抱いています。
(フィクションです)

~ 取調べに関する最近の流れ ~

報道によれば,政府は,4月16日,一部の事件の全過程について,取調べの可視化の義務化を6月1日から始めることを閣議決定したとのことです。これによって,今までとどう変わるのか,何が変わるのか,についてご紹介していきたいと思います。

* 取調べの可視化とは *

取調べの可視化とは,弁護人の取調べへの立会権を認めることや,取調べ状況をすべて録音・録画することをいいます。現時点(平成31年4月22日)では,弁護人の取調べへの立会権や取調べの録音・録画を許容する明文の規定はありません。しかし,録音・録画については,以下でみるとおり,捜査機関の内部の通達などで,一定の範囲の事件に限って実施されています。

* なぜ,取調べの可視化が必要なの? *

密室で行われていた取調べが第三者によって検証できるようにオープンになります。その結果,取調官の違法・不当な取調べに対する抑止が期待できます。これに伴い,取調べで認められている各種権利(黙秘権,増減変更申立権,署名・押印拒否権)も適切に行使できることが期待できます。また,被疑者・被告人が任意に供述(話)をしたかなどを事後的に検証しやすくなります。

~ 現在の対象事件 ~

現在,捜査機関(警察,検察)では,どんな事件(対象事件)を録音・録画の対象としているのでしょうか?

= 警察における対象事件 =

1 基本的に実施する事件
 ① 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件(殺人罪,強盗殺人罪,強盗致死罪,現住建造物放火罪 など)
 ② 短期1年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件(危険運転致死罪など)
2 試行対象事件
 ③ 知的障害,発達障害,精神障害等の被疑者にかかる事件
  
※①,②は裁判員裁判対象事件とも呼ばれます

= 検察における対象事件 =

1 基本的に実施する事件 
 ① 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
 ② 短期1年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件
 ③ 検察官独自捜査事件
 ④ 知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件
2 試行対象事件
 ⑤ 公判請求が見込まれる身柄事件であって,事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者の供述が立証上重要であるもの,証拠関係や供述状況等に照らし被疑者の取調べ増強をめぐって争いが生じる可能性があるものなど,被疑者の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件
 ⑥ 公判請求が見込まれる身柄事件であって,被害者・参考人の供述が立証の中核となることが見込まれるなどの個々の事情により、被害者・参考人の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件

※⑥については参考人も対象とされていることが特徴です。 

~ 取調べに関する改正法の内容 ~

改正法における対象事件は

① 裁判員裁判対象事件
② 検察官独自捜査事件

です。まず,法律(刑事訴訟法)で取調べの録音・録画が明文化されたことが特徴です。なお,これまでの運用より,対象事件の範囲が狭くなったと思いますが,対象外の事件については,引き続き通達などで運用されていくものと思われます。また,録音・録画が明文化されたといっても,割合としては全事件の数%程度だと思います。
弁護人としては,引き続き,対象事件以外の事件についても録音・録画を実施するよう捜査機関に申入れを行っていく必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

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