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器物損壊罪となった放火、放火の罪になる条件とは

2024-03-14

器物損壊罪となった放火、放火の罪になる条件とは

参考事件

福岡県北九州市に住んでいる大学生のAさんは、市内にある無人の公園に来ました。
Aさんは持っていたマッチに火を付けると、公園内にあるゴミ箱に火のついたマッチを投げ入れました。
Aさんは公園の外から火に人が集まって消火する様子を眺め、消し止められるとその場を離れました。
その後、小倉北警察署が事件を捜査し、火を付けたのがAさんであることを突き止めました。
そしてAさんは器物損壊罪の疑いで逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

放火の罪と器物損壊罪

Aさんは物に火を付けましたが、器物損壊罪で逮捕されました。
参考事件の内容であれば、放火に関する罪が適用されるのではないかと疑問を浮かべる人も多いでしょう。
しかし、放火が行われたとしても事件状況によって問われる罪は変わってきます。
放火の罪とAさんに適用された器物損壊罪は、どちらも刑法に定められた犯罪です。
放火の罪は刑法第108条に「現住建造物等放火罪(人が住居にしている、又は人がいる建造物等に放火する罪)」、刑法第109条は「非現住建造物等放火(人か住居に使用せず、かつ人のいない建造物等に放火する罪)」、刑法第110条に「建造物等以外放火罪」が定められています。
参考事件は建造物に対する放火ではないため、仮に放火事件として扱われたのであれば刑法第110条に「放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。」と定められた建造物等以外放火罪が適用となった可能性はあります。
実際にAさんの逮捕容疑となったのは、刑法第261条に「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と定められた器物損壊罪です。
損壊とは物理的な破壊だけを意味するものではありません。
これは「物の効用を害する一切の行為」を意味し、隠す、汚すといった行為も損壊に含まれます。
この条文の傷害は、ペット等の他人が所有する動物を傷付けた場合に使われる表現です。
前3条とは、刑法第258条の「公用文書等毀棄罪(公務所で使用される文書または電磁的記録を毀棄する罪)」、刑法第259条の「私用文書等毀棄罪(法的な権利や義務を証明する文書または電磁的記録を毀棄する罪)」、刑法第260条の「建造物等損壊罪及び同致死傷罪(建造物等を損壊する罪)」を指し、ここに含まれない物を損壊するのが器物損壊罪です。

適用される条件

建造物等以外放火罪ではなく、器物損壊罪でAさんが逮捕された理由は、Aさんの放火行為が「公共の危険を生じさせ」ていないことにあります。
公共の危険とは、不特定および多数の人、他の建造物、財産に対する危険を意味します。
参考事件の場合、放火されたゴミ箱の周りに木や木製のベンチ等、延焼する危険性があると判断される物があれば、建造物等以外放火罪が成立した可能性がありました。
しかしAさんの放火したゴミ箱は、周りに何もなかった、もしくは延焼の危険性のあるものがなかったため、器物損壊罪が適用されたと考えられます。
参考事件のように、一般的なイメージや言葉から受ける印象とは違った運用となる事件は多々あります。
そのため刑事事件を起こしてしまった時は、速やかに弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受け自身の置かれた状況を正しく把握することが重要です。

刑事事件の専門知識を持つ弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、少年事件を含めた、刑事事件を中心に取り扱う弁護士事務所です。
当事務所は初回無料の法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスのご予約を24時間体制で受け付けております。
ご予約のフリーダイヤルは、「0120-631-881」となっております。
建造物等以外放火罪の容疑でご家族が逮捕されてしまった方、または器物損壊罪事件を起こしてしまった方、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。

人を突き飛ばし傷害罪で逮捕、傷害致死に発展する危険性は

2024-03-05

人を突き飛ばし傷害罪で逮捕、傷害致死に発展する危険性は

傷害罪と傷害致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県太宰府市に住んでいる大学生Aさんは、家に帰る途中で同じ大学に通うVさんに話しかけられました。
Vさんは酔っ払っており、絡まれたことでAさんは苛立ちました。
そしてVさんに肩を組まれた際にAさんはVさんを突き飛ばしました。
倒れたVさんが血を流して動かなくなったため、Aさんは救急車を呼ぶことにしました。
Vさんは幸い命に別状はありませんでしたが、Aさんは筑紫野警察署傷害罪の疑いで逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

傷害罪と傷害致死罪

Aさんの逮捕容疑は傷害罪でしたが、参考事件は傷害致死罪になってもおかしくない事例でした。
傷害罪傷害致死罪は、どちらも刑法に定められた犯罪です。
まず、刑法204条に定められているのが傷害罪で、条文は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」となっています。
傷害」の代表例として、人の生理的機能に傷害を与えることがあります。
怪我を負わせる行為は典型的な傷害であり、Vさんを突き飛ばし、血を流すほどの怪我を負わせたAさんは傷害罪に該当します。
また、健康状態を悪化させることも傷害に含まれるため、外傷のない、病気にかからせる行為も傷害罪となります。
その他にも、人の意識作用に障害を与える、例えば眠らせたり気絶させたりする行為もこの条文で言う「傷害」です。
参考事件では傷害罪にとどまりましたが、このような傷害事件で被害者の方が亡くなってすまうと、適用されるのは刑法第205条傷害致死罪になります。
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。傷害致死罪は、傷害罪と違い拘禁刑のみで期間も最低3年の刑罰です。
傷害罪も怪我の程度によっては拘禁刑が3年を超えてしまう可能性もありますが、罰金刑に抑えることもできる傷害罪と比べ非常に罪が重くなっていることがわかります。

傷害事件の弁護活動

傷害罪傷害致死罪ともに弁護活動で注力すべきはなのは示談交渉です。
示談交渉は処分に与える影響が大きいため、示談の締結は減刑のための大きな一歩になります。
しかし、傷害事件の被害者が赤の他人である場合、示談交渉のため連絡先を知る必要があります。
多くの場合、被害者は怪我をさせられた恐怖から、連絡先を教えようとはせず、警察なども被害者の連絡先を教えることはありません。
そのため示談を締結するためには間に弁護士を入れ、弁護士限りの連絡で示談交渉を進める必要があります。
傷害致死罪の場合は親族と示談交渉を進める必要がありますが、被害者が死亡していることから処罰感情強くなりやすい傾向にあります。
そのため傷害罪よりも示談交渉は困難になり、示談金もより高い金額になることが予想されます。
そういった際にも、経験豊富な弁護士によるサポートが必要です。

傷害事件の際はご相談ください

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件(及び少年事件)を中心に取り扱っている弁護士事務所です。
当事務所は初回であれば無料の法律相談逮捕(または勾留)された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスを実施しております。
ご予約はどちらも24時間体制で、土曜日、日曜日だけでなく祝日もお電話を受け付けております。
傷害罪で事件を起こしてしまった方、またはご家族が傷害致死罪の疑いで逮捕されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部のフリーダイヤル「0120-631-881」に、お気軽にご相談ください。

【事例解説】凶器準備集合罪とその弁護活動(金属バットを持って喧嘩に参加して逮捕された架空の事例に基づく解説)

2024-01-03

 この記事では、架空の事例を基に、凶器準備集合罪の成立とその弁護活動について、解説します。

事例:金属バットを持って喧嘩に参加したケース

 対立する不良グループと喧嘩するために凶器を準備して集合したとして、不良グループに所属する男性A(21歳)ら8名が逮捕されました。
 Aらは、対立する不良グループと喧嘩するために、北九州市内の公園で鉄パイプや金属バットなどの凶器を準備して集合していたとみられ、異変に気付いた近隣住民が警察に通報し、駆け付けた福岡県小倉南警察署の警察官に現行犯逮捕されました。
 Aは、喧嘩に参加するために金属バットを持って集合したとして、凶器準備集合の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)

凶器準備集合罪とは

 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第208条の2第1項)。

 凶器準備集合罪は、他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的(共同加害目的)での集合を処罰の対象とすることで、後に予想される、殺人、傷害、暴行、建造物損壊、器物損壊など、個人の生命・身体・財産に対する危険からの保護とともに、公共的社会生活の平穏を保護するものとされています。

 凶器準備集合罪における「凶器」とは、その性質上、又は使用方法によっては、人を殺傷し得る器具、とされます。
 銃砲刀剣類のように、その器具本来の性質上、人を殺傷する用に供されるもののみならず、ゴルフクラブ等、使用方法によっては、人を殺傷し得る器具も含まれます。

 なお、同罪における「準備」とは、必要に応じていつでも加害行為に使用しうる状態に置くこといい、「集合」とは、2人以上の者が共同の行為をする目的で、一定の時刻、一定の場所に集まることをいいます。

 本件Aは、対立する不良グループとの喧嘩という「共同加害目的」で、身体に殴打すれば人を殺傷し得る「凶器」となる金属バットを準備して「集合」したとして、凶器準備集合罪が成立し得ると考えられます。

凶器準備集合事件で逮捕された場合の刑事弁護

 凶器準備集合罪のように、共犯者や関係者が多数にわたることのある事件では、口裏合わせ等の罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕に引き続き勾留される可能性が高く、さらに、事件の全容解明のための捜査に時間を要することから、勾留が延長されるなど、身体拘束が長期化する可能性もあります。

 弁護活動としては、身体拘束からの早期解放を目指して、検察官や裁判官に対し、勾留の理由(逃亡・罪証隠滅のおそれ等)や勾留の必要性がないことを主張し、勾留請求や勾留決定を行わないよう意見を申述することや、勾留が決定した後でも、その決定に対して不服申し立て(準抗告)を行うことが考えられます。

 また、凶器準備集合事件では、共犯者間の役割等によって刑事責任の重さも変わってくると考えられますが、主導的な役割(凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた)を果たした者には凶器準備結集罪が成立し、3年以下の懲役と刑が加重され得るため、不当に重い責任を負わされることのないよう、弁護士が被疑者との接見に際し、取調べ対応についてアドバイスを行うことも重要になると考えられます。

福岡県の凶器準備集合事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、凶器準備集合などの暴力事件において、身体拘束からの早期解放、不起訴処分や刑の減軽を獲得した実績が多数あります。
 凶器準備集合の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】傷害事件における「同時傷害の特例」の適用と弁護活動(遭遇した暴行現場に乗じた架空の事例に基づく解説)

2023-12-16

 共犯関係によらずに同時に加えられた暴行により発生した架空の傷害事件を参考に、傷害罪における「同時傷害の特例」の適用とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市内在住の男性Aは、帰宅途中に、以前トラブルが起きた知人のVが、Bに暴行されている現場に遭遇しました。Bが現場を立ち去った後、AはVへの恨みから、路上に倒れ込んでいるVの顔面を1回足蹴し、立ち去りました。
 なお、AとBに面識はなく、共同してVに暴行するという意思の疎通はありませんでした。
 Vは、一連の暴行により、鼻骨骨折と肋骨骨折の怪我を負い、Aは、後日、Vに対する傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

傷害罪における「同時傷害の特例」とは

 本件で、AとBに共同してVに暴行するという意思の疎通は認められないため、「二人以上共同して犯罪を実行した」として共犯(刑法第60条)が成立する可能性は低いと考えられます。
 この場合、Aの暴行(顔面の足蹴)がVの傷害(鼻骨骨折と肋骨骨折)に寄与したという、個別の因果関係が証明されなければ、「疑わしきは被告人の利益に」の原則により、Aに傷害罪が成立しないとも考えられそうです。

 しかしながら、こうした傷害事件においては、個々の暴行と傷害の因果関係の証明が一般的に容易でないことから、暴行を加えた者全員に傷害罪が成立しないという不合理な結論を回避するため、刑法207条で、2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくとも、共犯の例による、と規定されています。
 これを「同時傷害の特例」と呼び、この特例が適用されると、Aの暴行とVの傷害の個別の因果関係の証明がなくとも、AにVに対する傷害罪が成立し得ることとなります。

「同時傷害の特例」が適用され得る傷害事件の弁護活動

 「同時傷害の特例」は、あくまで、個別の因果関係を推定する規定とされるため、自身の暴行が特定の傷害の発生に寄与していないとして、個別の因果関係がないことを立証し、推定を覆すことができれば、特定の傷害に対する傷害罪の責任を回避することが可能であると考えられます。

 また、判例によると、「同時傷害の特例」の適用の前提として、各人の暴行が特定の傷害を生じさせ得る危険性を有することが必要とされるため、例えば、暴行を加えた部位と全く異なる部位に生じた傷害については、そもそも特例の適用の前提を欠くと判断されることもあり得ます。

 そのため、本件で、Vの肋骨骨折の傷害については、Aの暴行(顔面の足蹴)が当該傷害を生じさせ得る危険性を有しない、又は発生に寄与していないとして、「同時傷害の特例」の適用や因果関係を争う余地があると考えられます。

 傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金と幅があり、負わせた傷害の程度が量刑に大きく影響し得ると考えられるため、本件で、鼻骨骨折での傷害罪の責任は争い難い場合であっても、肋骨骨折での傷害罪の責任を回避できれば、その分量刑を軽減できる可能性があります。

 このような事件では、同時に暴行を行った者が、自らの責任を軽くするため、暴行の態様について虚偽の供述をする可能性もあることから、不当に重い責任を負わされることのないよう、弁護士が被疑者との接見に際し、取調べ対応についてアドバイスを行うことが重要になると考えられます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、傷害事件において、不起訴処分や刑の減軽を獲得している実績が数多くあります。
 傷害事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】「撮り鉄」で列車が緊急停止 電汽車往来危険罪で捜査開始(後編)

2023-10-26

 前回に引き続き、列車を撮影するために線路脇に立ち入った「撮り鉄」行為により、列車が緊急停止した架空の事件を参考に、電汽車往来危険罪と自首の成立する要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 久留米市在住の鉄道ファンAは、鉄道会社Vが運行する特急列車Wを至近距離で撮影するため、同市内の線路脇に立ち入ったところ、Wの運転士が線路脇に立ち入ったAを確認し、Wは緊急停止しました。Wの乗客に怪我はありませんでしたが、停止の影響で運行が大幅に遅延しました。
 Aは後日の報道で、本件について、電汽車往来危険などの容疑で福岡県久留米警察署の捜査が開始されたことを知り、自首すべきか刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、電汽車往来危険罪について、解説しました。

自首の成立する要件について

 本件Aは、事件について捜査が開始されたことをされたことを報道で知り、自首すべきか悩んでいます。

 刑法第42条第1項では、罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる、と規定されています。
 「自首」とは、犯罪行為を行った者が、捜査機関に発覚する前に自ら進んで捜査機関に自己の犯罪事実を申告し、その処分に委ねる意思表示、とされます。

 「捜査機関に発覚する前」とは、(1)犯罪自体が捜査機関に発覚していない場合と、(2)犯罪自体は捜査機関に発覚しているが犯人が誰であるかが発覚していない場合を指します。
 そのため、捜査機関が、犯罪の事実と犯人が誰であるかについては既に把握しているものの、犯人の居場所だけが分からないという状況で警察などに出頭したとしても、「捜査機関に発覚する前」に自首したことにはなりません。
 例えば、本件Aの犯行が防犯カメラなどの映像で残っていたことなどから、Aが警察に出頭した時点で、捜査の進展によりAが犯人であることが特定されていた場合は、自首は成立しないこととなります。

 その反面、自首が成立しないとしても、自ら進んで自己の犯罪事実を申告したことは、事件の内容などにもよりますが、逃亡や証拠隠滅等のおそれがないとして逮捕を回避できる要因となり得るほか、自首による刑の減軽が適用されなくても、被疑者の反省を示す有利な情状として、不起訴処分や刑の減軽を得られる可能性を高めることができます。

 自己の犯罪事実について自首を検討している場合は、自首のメリット・デメリットや自首が成立する見込みの有無、自首した後に予想される刑事手続きなどについて、刑事事件に強い弁護士に事前に相談し、身体拘束回避の可能性を高めるための弁護士による同伴等も検討した上で、慎重に対応することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、様々な刑事事件における弁護活動の豊富な実績があります。
 自身やご家族が電汽車往来危険罪に該当する可能性がある行為をしてしまい、取るべき対応のことなどでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】「撮り鉄」で列車が緊急停止 電汽車往来危険罪で捜査開始(前編)

2023-10-23

 列車を撮影するために線路脇に立ち入った「撮り鉄」行為により、列車が緊急停止した架空の事件を参考に、電汽車往来危険罪と自首の成立する要件について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 鳥取市在住の鉄道ファンAは、鉄道会社Vが運行する特急列車Wを至近距離で撮影するため、同市内の線路脇に立ち入ったところ、Wの運転士が線路脇に立ち入ったAを確認し、Wは緊急停止しました。Wの乗客に怪我はありませんでしたが、停止の影響で運行が大幅に遅延しました。
 Aは後日の報道で、本件について、電汽車往来危険などの容疑で福岡県久留米警察署の捜査が開始されたことを知り、自首すべきか刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

電汽車往来危険罪とは

 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する、と定められています(電汽車往来危険罪、刑法第125条第1項)。

 電汽車往来危険罪における「往来の危険」とは、衝突・脱線など、電車等の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態とされます。
 具体的には、単に電車等の交通の妨害を生じさせた程度では足りないが、脱線等の実害の発生が必然的ないし蓋然的であることまで必要とするものではなく、上記実害の発生する一般的可能性があれば足りる、とされます。
 つまり、その行為により、電車等の衝突・脱線などの危険が生じる可能性があれば、「往来の危険」を生じさせたと認められる可能性があると考えられます。

 本件Aは、特急列車Wを至近距離で撮影するため、線路脇への立ち入りという、衝突・脱線などの危険が生じる可能性のある行為を行っています。
 そのため、「その他の方法」により、電車の「往来の危険」を生じさせたとして、電汽車往来危険罪が成立し得ると考えられます。

 なお、電汽車往来危険罪が成立しない場合でも、鉄道地内にみだりに立ち入ったとして、鉄道営業法(第37条)違反により処罰される可能性があります。

 その他、Wは停止の影響で運行が大幅に遅延したことから、Aの立ち入り行為により鉄道会社V の業務が妨害されたといえるため、Aは、「威力を用いて人の業務を妨害」として、威力業務妨害罪(刑法第234条)が別途成立する可能性もあります。

次回の後編では、自首の成立する要件について、解説します。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、様々な刑事事件における弁護活動の豊富な実績があります。
 自身やご家族が電汽車往来危険罪に該当する可能性がある行為をしてしまい、取るべき対応のことなどでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】正当防衛における「侵害の急迫性」について

2023-09-20

 運転手間でトラブルになり、相手を突き飛ばし負傷させた架空の傷害事件を参考に、正当防衛における「侵害の急迫性」の要件などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市内在住の自営業男性A(42歳)は、県道を自動車で走行中、男性V(48歳)の運転する自動車の割り込みに腹を立て、クラクションを鳴らしました。
 Aのクラクションに怒ったVが停車し、後続のA車両に駆け寄って来て口論となり、Vが窓からAの手首を掴んできたため、AはVを突き飛ばして転倒させ、車を発進させました。
 Vは転倒の際に全治3週間の手首の捻挫を負い、警察に被害届を提出したことで傷害事件として捜査が開始され、後日、Aは警察から取調べのための呼び出しを受けました。
(事例はフィクションです。)

正当防衛における「侵害の急迫性」の要件

 AがVを突き飛ばし転倒させたことで、全治3週間の怪我を負わせたことから、Aに傷害罪(刑法第204条)が成立すると考えられますが、Aは、手首を掴んできたVの暴行から身を守るために行った正当防衛であると主張することが考えられます。

 正当防衛の要件は、(1)急迫不正の侵害に対して(「侵害の急迫性」)、(2)自己又は他人の権利を防衛するため(「防衛の意思」)、(3)やむを得ずにした行為であること(「防衛行為の必要性・相当性」)、と定められています(刑法第36条第1項)。

 (1)「侵害の急迫性」について、「急迫」とは、相手方からの暴行などの法益侵害の危険が、現存又は切迫していること、とされます。
 侵害を予期できた場合でも急迫性は否定されないとされますが、その機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思(「積極的加害意思」といいます。)で侵害行為を待っていたときなどは、侵害の急迫性の要件を充たさないとされます。

 「積極的加害意思」までなかったとしても、侵害の予期の程度や侵害回避の容易性などの観点から、警察などの公的機関の保護を求めずに反撃行為を行うことは相当でないとして、要件を充たさないとされる可能性があります。

 本件Aは、VがA車両に駆け寄ってきた時点で、Vから何らかの危害を加えられることも予期し得たと考えられるところ、すぐに自動車の窓や鍵を閉め、必要に応じて警察に通報するなどして、Vの暴行を容易に回避し得たともいえることから、この要件を充たさないと判断される可能性もあります。

傷害事件の弁護活動

 傷害罪で起訴され、正当防衛の主張が認められず有罪となれば、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることとなります。

 本件は、先に述べたように、正当防衛の主張が容易に認められない可能性もあるため、被害者の怪我の程度も比較的軽微であることから、被害者との示談を成立させることにより不起訴処分で事件の終了を目指すことも、現実的な選択肢の一つと考えられます。

 弁護士であれば通常、示談交渉のために捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえると考えられ、刑事事件に強い弁護士であれば、しっかりした内容の示談が成立する可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることが期待できます。

 仮に起訴されたとしても、刑事事件に強い弁護士であれば、現場の状況や目撃証言など被疑者に有利な証拠を収集し、正当防衛の成立が認められなかったとしても、刑の減軽や執行猶予の獲得に繋げる弁護活動を行うことが期待できます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、傷害事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
 傷害事件で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方、正当防衛が成立するのではないかと疑問を持たれる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】配偶者の虐待を黙認した場合に罪に問われる可能性(後編)

2023-08-15

 前回に引き続き、同居の母に対する虐待の疑いで、傷害の容疑で息子夫婦が逮捕された架空の事件を参考に、配偶者による虐待を黙認した場合に共謀共同正犯や不作為の幇助犯として罪に問われる可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性A(55歳)は、妻B(54歳)と母V(88歳)と3人で同居していましたが、Bは要介護認定を受け寝たきりのVの在宅介護のストレスから、Vの腕をつねるなどの虐待を行うようになりました。
 Aは、BからVに対する虐待が行われている様子を目にすることがあっても、Bとの関係悪化を恐れ、見て見ぬふりをしていました。
 Vの娘XがA宅を訪問した際、Vの腕の多数の内出血に気づき、AとBによる虐待を疑い警察に通報したことにより捜査が開始され、AとBはVへの傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

 前回の前編では、共謀共同正犯の成立について解説しました。

不作為の幇助犯の成立について

 Aに傷害罪共謀共同正犯が認められなかった場合でも、BのVに対する暴行を黙認したことが、Aの犯行を手助けしたものとして、なお傷害罪幇助犯が成立するか問題となります。

 幇助犯の成立には、正犯の犯行を容易にする行為がなされたこと(作為)が通常必要とされるため、具体的な行為を行わなかったこと(不作為)を、作為と同視して処罰するには、(1)正犯の犯行を阻止する義務を有すること、(2)阻止することが可能かつ容易であったこと、が必要とされます。

 本件では、(1)について、Aは実母であるVの扶養義務(民法877条)を負う上、要介護認定を受け寝たきりのVと妻Bの3人で同居していることから、BのVに対する虐待が行われている様子を目にした場合は、それを阻止する義務を有すると認められる可能性があります。
 (2)について、AはBの夫であり、特段の事情がない限り、Vに対する暴行を阻止することが可能かつ容易であったと認められる可能性が高いと考えられます。

 なお、子の虐待死事件において、夫から子への暴行を阻止する行為をとらなかった妻に対し、傷害致死罪の幇助犯を認定した裁判例があります。

虐待を黙認したことで逮捕された場合の弁護活動

 傷害罪共謀共同正犯の場合、通常の法定刑である15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があり、幇助犯の場合でも、刑の減軽はされますが、なお懲役刑の実刑などの重い処罰を受ける可能性はあります。

 共謀共同正犯不作為の幇助犯の成立の認定に際し、実行行為者との意思の連絡の有無犯行への関与の形態などについて、逮捕後の取調べで厳しく追及されることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 また、捜査機関が押さえている物的証拠実行行為者の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分刑の減軽などを獲得した実績があります。

 配偶者による虐待を黙認したことによる傷害の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】配偶者の虐待を黙認した場合に罪に問われる可能性(前編)

2023-08-12

 同居の母に対する虐待の疑いで、傷害の容疑で息子夫婦が逮捕された架空の事件を参考に、配偶者による虐待を黙認した場合に共謀共同正犯や不作為の幇助犯として罪に問われる可能性について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性A(55歳)は、妻B(54歳)と母V(88歳)と3人で同居していましたが、Bは要介護認定を受け寝たきりのVの在宅介護のストレスから、Vの腕をつねるなどの虐待を行うようになりました。
 Aは、BからVに対する虐待が行われている様子を目にすることがあっても、Bとの関係悪化を恐れ、見て見ぬふりをしていました。
 Vの娘XがA宅を訪問した際、Vの腕の多数の内出血に気づき、AとBによる虐待を疑い警察に通報したことにより捜査が開始され、AとBはVへの傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

共謀共同正犯の成立について

 人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立します(刑法第204条)。

 本件で、Vの腕をつねる暴行を加え、内出血を負わせたBに同罪が成立することは明らかですが、Bの当該行為を黙認したAにも同罪が成立するか問題となります。

 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする、と定められています(刑法第60条)。
 「正犯」とは、自ら犯罪を実行する者とされ、原則、法定刑で処罰されるのに対し、正犯を幇助、つまり手助けするに過ぎない者は「従犯」とされ、刑が軽減されます(刑法第62条)。

 2人以上の者がそれぞれ、(1)互いに共同で犯罪を実行するという意思の連絡のもと、(2)犯行の一部を実行した、という(1)及び(2)の要件を充たす場合に正犯と認められるのが通常ですが、(2)の要件を欠く、つまり犯行の一部を実行していない者であっても、実行した者との関係性、犯行に至るまでに果たした役割、犯行による分け前の分与その他の事情を考慮し、正犯と認められることがあります(これを「共謀共同正犯」といいます。)

 本件で、BはVへ暴行を加えていませんが、Vへの暴行についてAとBの間で意思の連絡があったと認められる場合、共謀共同正犯としてBも傷害罪が成立する可能性があります。

 なお、子の虐待死事件において、子に死因となる暴行を加えたのは妻であっても、それをあえて制止せず黙認した夫との間の意思の連絡を認め、夫に傷害致死罪の共謀共同正犯を認定した裁判例があります。

 次回の後編では、不作為の幇助犯の成立について解説していきます。

虐待を黙認したことで逮捕された場合の弁護活動

 傷害罪共謀共同正犯の場合、通常の法定刑である15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があり、幇助犯の場合でも、刑の減軽はされますが、なお懲役刑の実刑などの重い処罰を受ける可能性はあります。

 共謀共同正犯不作為の幇助犯の成立の認定に際し、実行行為者との意思の連絡の有無犯行への関与の形態などについて、逮捕後の取調べで厳しく追及されることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 また、捜査機関が押さえている物的証拠実行行為者の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分刑の減軽などを獲得した実績があります。

 配偶者による虐待を黙認したことによる傷害の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事件解説】支払い念書への署名 強要罪で逮捕

2023-07-16

 客を脅して支払い念書に署名させたとして、飲食店店主が強要罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市中央区中洲の飲食店で、客Vを脅して支払い義務があることを認める念書に署名させたとして、店主の男性Aが強要罪の容疑で逮捕されました。
 福岡県中央警察署の調べによると、Vは「1時間5千円」と説明されて入店したところ、会計時にAから20万円を請求された上、「期日までに支払わなかった場合は親族に一括で請求されることを許します」などと書かれた念書に署名させられた、とのことです。Aは強要の容疑を認めています。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

強要罪とは

 相手方又はその親族の、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせた者は、3年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第223条)。

 「脅迫」とは、一般人に恐怖心を抱かせる程度の害悪の告知、とされます。
 なお、「害悪の告知」の対象は、「相手方又はその親族の、生命、身体、自由、名誉若しくは財産」とされているため、親族ではない恋人や友人等に対して害を加えることを告知する場合は、強要罪は成立しないと考えられます。

 「義務のないこと」とは、法律上又は社会通念上なすべきとされていないことを指すと考えられています。
 義務のないこと強要する具体的な例として、謝罪や土下座の強要があげられることが多いですが、その他にも、性的な写真を拡散するなどと脅迫して、性行為や面会を強要して逮捕されたなどの事件報道が見受けられます。

 本件で、V本人に対する脅迫において、いかなる内容の「害悪の告知」あったかは定かでありませんが、少なくとも「期日までに支払わなかった場合は親族に一括で請求されることを許します」という念書については、その記載内容自体が「親族の財産に対する害悪の告知」であり、脅迫にあたると考えられます。

 また、本件の状況からは可能性は低いと思われますが、仮にVがAに20万円を支払う民事上の法的義務が発生するとしても、親族への請求を承諾する旨の念書に署名する法的義務や社会通念上の義務は通常発生しないと考えられます。

 よって、Aは、Vの「親族の財産に対する害悪を告知」して脅迫し、Vに念書の署名という「義務のないことを行わせた」として、強要罪が成立する可能性があります。

強要事件の刑事弁護

 脅迫罪と異なり、強要罪の場合、法定刑は懲役刑のみであるため、起訴されると通常、公開の法廷での正式な裁判となります。
 そのため、不起訴処分の獲得を目指して、早期に被害者に対する謝罪や被害弁償を行った上、示談成立に向けた交渉を行うことが重要です。

 本件のような強要事件の場合、被害者は加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、被害者の連絡先を教えてもらい示談交渉を直接行うことは困難です。
 弁護士であれば、被害者も話を聞いてもよいとなることも多く示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、双方十分に納得のいく示談がまとまる可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、強要などの暴力事件において、示談成立などによる不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
 強要罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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