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示談を強要して強要未遂罪で逮捕 

2019-09-08

示談を強要して強要未遂罪で逮捕 

福岡県柳川市に住むAさんは、元交際相手だったVさんと喧嘩になり、Vさんに対し暴行を加えた件で柳川警察署に被害届を出されました。Aさんは自らのしたことを認めて反省し、Vさんと示談交渉をはじめました。しかし、Vさんの態度はかたく、示談交渉は一向に進展しませんでした。そこで業を煮やしたAさんは、Vさんに「はやく示談書にサインしろ」「示談しなければ、お前の過去のこととか写真をインスタに挙げるからな」などというメールを送りました。Aさんは、これでVさんが示談に応じるだろうと思っていましたが、Vさんから何ら音沙汰はなく、反対に強要罪の被害届を柳川警察署に提出され、その結果、暴行罪、強要未遂罪逮捕されてしまいました。Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 示談とは ~

示談」とは、紛争の当事者同士が合意によって事件を解決することをいいます。広い意味で和解といいます。通常、示談に記載された内容以外の損害賠償請求はできなくなるという条項が示談書に記載されます(清算条項)。一方、「被害弁償」とは、単に相手方に損害賠償金(示談金)を支払うことをいい、それ以上の損害賠償請求されないことを確約するものではありません。両者の違いに注意する必要があります。

~ 刑事事件で示談すると? ~

被害者が示談を成立させる場合、そこには事件に対する被害者の一定の納得が示されていることになります。
そして、被害者との間で交わした示談書を捜査機関(警察、検察)に提出すれば、警察の場合、

・事件の立件化の見送り
・立件されていたとしても検察への送致の見送り(不送致)

などという効果が期待できます。検察の場合、

・不起訴処分の獲得

などという効果が期待できます。なお、被害者が捜査機関に被害届や告訴状を提出する前に示談を成立させることができれば、捜査機関へ被害届、告訴状を提出されることを阻むことができるかもしれません。

~ 示談交渉は弁護士を入れなくてもできる? ~

もっとも、これらの効果は、示談が有効に成立した場合に期待できるものです。あなたがごり押しして作成した示談、内容に不備がある示談では有効とはいえず、上記の効果を期待できないかもしれません。
もちろん、示談は、当事者の紛争を話し合いによって解決するものですから、示談交渉は弁護士を入れず紛争の当事者同士(加害者、被害者)で進めていくことも可能です。しかし、法律の素人である当事者同士では、そもそも感情の縺れなどから示談交渉を進展させることが難しいでしょうし、仮に進展させることができたとしても、有効な示談かどうかが分かりません。
よって、示談交渉は弁護士に依頼した方が無難です。

~ もしもごり押しした場合は? ~

もしも、被害者に示談することを強要した場合は、Aさんのように強要罪で逮捕される可能性もあるということを頭に入れておかなければなりません。

強要罪は刑法223条に規定されています。

刑法223条1項
 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

Aさんの「示談しなければ、お前の過去のこととか写真をインスタに挙げるからな」という行為は、Vさんの「名誉」に対し「害を加える旨の告知(害悪の告知)」に当たるでしょう。また、示談するかどうかは、Vさんの意思に委ねられる事柄ですから、これを強要することは「人に義務のないことを行わせ」たことに当たるでしょう。なお、本件は、Vさんが実際に示談書にサインをしなかったことから未遂罪にとどまった模様です。強要罪は未遂罪を処罰する旨の規定も置かれていますから注意が必要です。

刑法223条3項
 前2項の罪の未遂は、罰する。

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恐喝罪と脅迫罪との違い

2019-09-06

恐喝罪と脅迫罪との違い

福岡県豊前市に住むAさんは、元交際相手だった知人Vに「お前、旦那に前科があること隠し取るやろ?」「ばらされたくなければ口止め料として100万円払いな」などというメールを送り、Vさんから自己の口座に100万円の振り込みを受けました。そうしたところ、Aさんは福岡県豊前警察署恐喝罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 恐喝罪 ~

恐喝罪は刑法249条に規定されています。

刑法249条
1項 人を恐喝して財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。

恐喝」とは,財物の交付又は財産上不法の利益を得るために行われる「暴行」又は「脅迫」のことをいいますが,恐喝罪の場合,一般的に脅迫行為(害悪の告知)が行われることが多いと思われます。
害悪の告知の「程度」は、

相手方の反抗を抑圧するに至らない程度

のもの、すなわち、

相手方に畏怖あるいは困惑、不安の念を生ぜしめるに足る程度

のものが必要とされています。
害悪の告知の「内容」は、相手方またはそれと密接な連帯感情にある者の

生命、身体、自由、財産に対する危害(生命に対する危害:「殺すぞ。」など、身体に対する危害:「殴るぞ。」など、自由に対する危害:「行動を見張っているぞ。」など、財産に対する危害:「車を焼くぞ。」など)

であることが通常ですが、これに限らず、

・相手方の名誉(「過去の不倫をネットに載せるぞ。」など)
・家庭の平和(本件)

などに対する危害も含まれるとされています。

害悪の告知の「方法」は、

言語、挙動、動作を問われませんし、明示、黙示をも問わず、自己の性行、経歴、地位、勢威を利用して財物の交付を要求し、これに応じなければ不当な不利益が加えられる危険があるとの危惧の念を生じさせる害悪の暗示でもよいとされています。

~ 脅迫罪との違い ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

刑法222条
1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

恐喝罪脅迫罪の一番大きな違いは、相手に

財産的被害を生じさせたか否か

という点です。生じさせた場合が「恐喝罪」、生じさせなかった場合は「脅迫罪」です(ただし、恐喝の意図で生じさせなかった場合は「恐喝未遂罪」です)。
また、

・害悪の告知の「相手」が、恐喝罪の場合限られない、のに対し、脅迫罪の場合「被害者」及び「その親族」に限られる
・害悪の告知の「内容」が、恐喝罪の場合限られない、のに対し、脅迫罪の場合、生命、身体、自由、名誉又は財産に限られる

などといった違いがあります。

~ 恐喝罪で逮捕され、示談交渉をお望みであれば? ~

恐喝罪で逮捕され、相手方との示談交渉をお望みであれば、弁護士に示談交渉を依頼しましょう。
弁護士を間に入れない示談交渉は、感情の縺れなどから進展は望めません。

仮に示談交渉を進めることができれば、その進展具合によっては早期釈放される可能性が高くなりますし、示談を成立させることができれば相手方が被害届を取り下げてくれる可能性が高くなりますから、その場合は釈放されることとなるでしょう。また、この場合、刑事処分としては不起訴処分を獲得することができます。

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傘で失明、傷害罪?過失傷害罪?

2019-08-31

傘で失明、傷害罪?過失傷害罪?

北州市八幡東区に住むの会社員の男性Aさんは、路上で肩がぶるかるなどしてVさんと口論となり、もっていたの先端でVさんの目を突き刺しまし、その場から逃走しました(Vさんはその後病院に搬送され、失明の障害を負ってしまいました)。ところが、現場に駆け付けた目撃者の話、防犯ビデオカメラの映像からVさんの目にの先端を突き刺したのはAさんだ、ということが判明し、Aさんは福岡県八幡東警察署傷害罪で逮捕、勾留されてしまいました。そして、Aさんは、福岡地方検察庁小倉支部の検察官に傷害罪で起訴され、実刑判決を受けてしまいました。
(実際にあった事例をもとに作成したフィクションです)

~ 傘も立派な凶器 ~

普段何気なく使っているでも、使い方によってはナイフなどと同様「凶器」に変わりえます。
本件のように、被害者に失明などの障害を与えてしまった場合は、「傷害罪(刑法204条)」、

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

あるいは、殺意が認められる場合は、「殺人未遂罪(刑法199条、203条)」

刑法199条
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法203条
 第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

に問われます。

~ 過失による場合は? ~

傷害罪は「人を傷めつけてやろう」、殺人未遂罪は「人を殺してやろう、死んでもかまわない」などという意図(故意)があってはじめて成立する犯罪です。
ところが、たとえば、

会社員Aさんが、雨の日、雨が止んだと思ってを折りたたみ、そのを地面と平行にして持って歩いていたところ、たまたまAさんの後方を歩いていた幼児Vちゃん(3歳)の目にの先端が当たってしまい失明させてしまった

という場合はどうでしょうか?
この場合、AさんにVちゃんを「痛めつけてやろう」とか、「殺してやろう」とする意図(故意)は認められません。
ただし、過失犯に問われることがあります。
ここで、「過失」とは「故意がないこと」とご説明すれば簡単ですが、それでは分かりにくいことからもう少し踏み込んでご説明すると「不注意」、つまり、「注意義務に違反すること」をいいます。
では、ここでの「注意義務」は何かといえば、雨の日ですからさすがに「を持ち歩くな」ということをAさんにいうことはできません。やはり、を持ち歩くことは認めるとしても、その「持ち歩き方に注意してね」ということ、つまり、「凶器となり得るの先端を人に当たらないよう地面に向けるなどして歩け」ということではないでしょうか?
そして、「凶器となり得るの先端を人に当たらないよう地面に向けるなどして歩かなかったこと」が注意義務違反、つまり「過失」となるのです。
過失により傷害を負わせた場合は、刑法209条の過失傷害罪に問われるとされています。なお、同罪は、被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪です。

刑法209条
1項 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2項 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

~ 民事上の不法行為責任も? ~

なお、過失傷害罪傷害罪や殺人未遂罪に比べ法定刑は低いですが、たとえ過失による場合であっても、失明などの重大な傷害を負わせた場合は民事上の不法行為責任を問われ
(刑事責任とは別に)何千万円という損害賠償金を請求されることもあります。

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少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」

2019-08-23

少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」

福岡市西区に住むA君(18歳)は、17歳のときにバイクの暴走(共同危険行為)で試験観察、その後保護観察処分を受けましたが、その保護観察期間中に学校内で暴力事件を起こし、福岡県西警察署に傷害罪で逮捕されました。その後、A君は20日間勾留され、取調べを受けるなどした後、事件を家庭裁判所へ送致(家裁送致)されました。家裁送致後は、少年鑑別所で専門技官による鑑別を受けたり、家庭裁判所調査官による面接を受けるなどし、最終的に少年審判を受けることになりました。そして、少年審判では、「少年院送致」の保護処分を言い渡されました。
(フィクションです。)

~ 少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」 ~

少年法の適用年齢を現行の「20歳未満」ではなく「18歳未満」に引き下げたらどうかという議論が、法務省の法制審議会が続けています。
この議論が開始されたのは、2017年(平成29年)3月からです。そして、今年6月までに部会は「16回」開催されています。
この議論の背景には、2016年からはじまった「18歳選挙権」、2022年施行の民法改正によって「18歳以上は成人」とされることがあると言われています。

* 法制審議会とは *

法制審議会とは、日本の法務省に設置された審議会等の一つで、法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議すること等を目的としています。法制審議会は学識経験者の中から法務大臣により任命された委員によって構成されています。

~ 引き下げられるとどうなるの? ~

引き下げられると、成人と同様の刑事手続を踏むことになります。
すなわち、逮捕され、勾留されるところまでは同じですが、その後が異なります。基本的には勾留期間内に、検察官による不起訴、起訴の刑事処分を受けます。仮に、起訴されると、皆さんもよくテレビドラマなどでご覧になったことのある「公開の法廷」で刑事裁判を受けなければなりません。刑事裁判を受け有罪と認定されれば、「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料」の刑事罰の言い渡しを受けます(懲役、禁錮、罰金については執行猶予付き判決の可能性もあり)。その裁判が確定すると前科となります。実刑判決を受けた場合は、少年院ではなく刑務所に収容されます。

~ 引き下げには異論も多い(理由①:少年犯罪の減少) ~

ただ、年齢引き下げには異論も多いようです。その理由の一つ目として、少年犯罪の減少です。

平成30年度版犯罪白書によれば、平成29年度に刑法犯で検挙された少年の数は

3万5108人

でした。近年を見ると、

平成24年 7万9430人
平成25年 6万9113人
平成26年 6万251人
平成27年 4万680人
平成28年 4万103人

と年々減少していることが分かります(ちなみに、少年犯罪がピークだったとされる昭和58年の検挙者数は、今と比べ少年の数が多かったものの、それでも「26万1634人」でしたから、いかに減少してきたかわかります)。

年齢引き下げ=少年犯罪の増加、少年犯罪の凶悪化?」とイメージしがちですが、実態としては、少年犯罪の数自体は年々減少してきており、世間のイメージと実態とが乖離しているかもしれません。

~ 引き下げには異論も多い(理由②:少年法が機能している) ~

理由の二つ目として、現在の少年法がきちんと機能している、と指摘する専門家もいます。また、現在議論を続けている法制審議会も、「少年法が機能していないから、年齢引き下げを検討しているものではない」ことを前提に議論を続けているようです。では、なぜ議論が続けらているのかといえば、それは「改正民法(18歳以上は成人)との整合性を保つだけ」と指摘する専門家もいます。

~ おわりに ~

少年院を経験した方からは、
・少年院を経験してよかった
・少年院があったから犯罪との縁を切れた
という声も。

このように、少年法が犯罪の目を早いうちから積むことに一役買っている、大きく貢献しているのであれば、年齢引き下げは必要ないのかもしれません。

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犯罪の実現過程③~中止未遂の中止行為~

2019-08-22

犯罪の実現過程③~中止未遂の中止行為~

Aは長年、Vに対する恨みを抱いており、隙あらば殺そうと考えていました。そして、Aは、知人からVがとある地域のアパートに一人暮らしをしているとの情報を得ました。そこで、AはいよいよVを殺す決意をしました。そこで、Aは殺害用のナイフを購入し、V方アパート付近の下見をするなどしました。そして、Aは、実行日当日、V方アパート近くでVを待ち伏せし、Vが帰宅するのを待ちました。そして、AはVが帰宅したのと同時に、その背後からいきなり、右手に把持していたナイフをVの背中に1回突き刺しました。しかし、AはVから「長年の付き合いではないか。」「頼む、命だけは奪わないでくれ。」と泣きながら懇願されたことから、それ以上突き刺すことをやめ、その場から逃走しました。その後、Vは付近の住民によって119番通報されて駆け付けた救急隊員による救命活動などによって一命をとりとめました。Aは殺人未遂罪で逮捕されてしまいました。

~ はじめに ~

前回、犯罪の実現過程②では、未遂の種類、障害未遂中止未遂の違い、中止未遂の成立要件などについてご説明いたしました。
今回は、中止未遂の残る一つの要件である「中止行為」についてご説明したいと思います。

~ 中止行為について ~

前回のおさらいですが、中止未遂が成立するには、

①犯罪の実行に着手したこと
②結果が発生しなかったこと

に加え、

③自己の意思により犯罪を中止したこと

が必要でした。そして、③の要件が認められるためには、ア「中止意思の任意性」とイ「中止行為」を検討する必要があり、前回はAさんに「中止行為の任意性」は認められるというお話をしました。では、「中止行為」は認められるのでしょうか?この点、中止行為には、実際の線引きは難しいですが、2つのパターンがあると言われています。

= 着手中止 =

犯罪の実行に着手した後、その終了前に実行行為の継続を放棄した場合です。本件は、AさんがVさんの背中を1回刺した後、Vさんから「助けてくれ」などと懇願されていることからも、実行行為の継続中と評価できなくもありません。そこで、本件の場合は、着手中止の場面とされる可能性が高いでしょう。

この場合は、その後の殺害の実行の継続を放棄する(やめる)ことで「中止行為」が認められます。

= 実行中止 =

実行行為の終了後において結果の発生を阻止する場合です。

この場合は、着手中止の場面より実害が発生する(相手が死亡する)危険が高いことから、着手中止と異なり、単なる放棄では足りず、行為者が積極的に結果の発生を阻止するための行為をしたことが必要とされています。
また、中止行為によって現実に結果発生が防止されたという、中止行為と結果不発生との間に因果関係があることを必要とし、それが認められない場合は障害未遂となると一般に考えられています。ただ、中には、「一生懸命中止行為を行ったのだから、中止行為と結果不発生との間に因果関係が認められない場合も中止行為を認めるべきである」と主張する学説もあります。

では、中止行為を一生懸命尽くしたものの、結果が発生してしまった(Vさんが死亡してしまった)場合はどうでしょうか?
この場合は、中止未遂の成立要件である「②結果が発生しなかったこと」の要件を満たしませんから中止行為は成立しないと考えられていますが、中には、先ほどと同様、「一生懸命中止行為を行ったのだから中止未遂を認めるべきだ」などと主張する学説もあるようです。

~ Aさんに中止未遂は成立する? ~

本件は、着手中止の場面である可能性が高いことは先ほどご説明しました。そして、Aさんは、さらにVさんをナイフで刺そうと思えばさすことができたにもかかわらずその場を立ち去っていますから、殺害の実行の継続を放棄しており「中止行為(着手中止)」が認められます。

よって、Aさんには中止未遂が成立する可能性はあると思われます。

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元風俗嬢に対する名誉棄損罪

2019-08-19

元風俗嬢に対する名誉棄損罪

福岡県博多区に住むAさんは、中州にある個室ヘルス店の常連客でした。Aさんは、長年指名し続けていたVさんと仲良くなり、Vさんから個人名などの個人情報を教えてもらったほか、店外で食事するなどしていました。ところが、後日、AさんはVさんから、「一身上の都合でヘルス店で働けなくなったこと」、「Aさんとデートすることはお断りすること」を告げられました。

Aさんははじめ、何度も何度もVさんに今までどおり交際(デート)を続けてくれないか懇願しましたが、Vさんの態度は頑なでした。そこで、Aさんは、SNS上で、「●●に住むVさんは●●の風俗店で働いていた」などという書き込みをしました。そうしたところ、Aさんは、Vさんの代理人弁護士から、「書き込みを削除すること」「慰謝料として50万円支払うこと」を言われ、これができなければ「●●警察署に名誉棄損罪で告訴する」と告げられました。そこで、Aさんは風俗トラブルに詳しい弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

近年は、ツイッター、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSで誰でも簡単に、しかも匿名でも書き込みできる時代です。ですから、自分の投稿が名誉棄損罪にあたり警察沙汰になるなど思わぬ事態に発展する可能性も考えられます。そこで今回は名誉棄損罪について詳しく見ていきましょう。

~ 名誉棄損罪とは ~

名誉棄損とは、文字通り、他人の名誉を傷つけることをいいます。名誉棄損を行うと刑事上の責任と民事上の責任に問われる可能性があります。

刑事上の名誉棄損罪については刑法230条に規定されています。

刑法230条
1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘時することによってした場合でなければ、罰しない。

刑法232条
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

「名誉」とは、社会の人に対する評価又は価値と解されています。
「公然」とは、不特定又は多数人が認識し得る状態と解されています。そして、不特定又は多数人が認識し得る状態は、不特定又は多数人の視聴に達し得べき状態であれば足り、現実に、人々が覚知したことを要しないとされています。
「事実を摘示する」とは、社会の人に対する評価を低下させるおそれのある具体的事実を指摘、表示することをいいます。

これを本件についてみると、Aさんが「●●に住むVさんは●●の風俗店で働いていた」などと書き込む行為は「事実を摘示する」に当たります。また、ご存知のように、SNSに掲示された内容は、インターネットを通じて誰でもいつでも閲覧することが可能ですから、AさんがSNSに書き込んだ行為は「公然」と「事実を摘示した」ことに当たるでしょう。そして、風俗嬢として働いている方は、一般に、自己の職業を知られたくないと考えられているでしょうから、Aさんのこうした行為は、Vさんの「名誉」を毀損する行為にも繋がりかねません。

* 侮辱罪(刑法231条)との違い *

侮辱罪は刑法231条に規定されています。

刑法231条 
 事実を摘示なくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

侮辱罪との違いは「事実を摘示したかどうか」です。
「●●の風俗嬢は馬鹿だ」などと意見、憶測を摘示したに過ぎない場合は侮辱罪です。

~ 名誉棄損罪、侮辱罪は親告罪 ~

告訴がなければ検察が公訴を提起(起訴)できない犯罪を親告罪といいます。この点、名誉棄損罪、侮辱罪は親告罪です。
親告罪において、被害者側が捜査機関に告訴状を提出しなければ起訴されることは絶対にありませんし、逮捕されることもありません。
そのため、本件のように「告訴するよ」と言われている場合は、何よりもまず被害者側の告訴状提出を阻む必要があります。そのためには、何よりもまず被害者側と示談交渉を進め、示談を成立させる必要があるでしょう。ただし、被害者側に弁護士が付いている場合は、相手の思い通りに話を進められる可能がありますから、弁護士を付けることも検討しましょう。

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犯罪の実現過程②~殺人罪の障害未遂と中止未遂~

2019-08-18

犯罪の実現過程②~殺人罪の障害未遂と中止未遂~

Aは長年、Vに対する恨みを抱いており、隙あらば殺そうと考えていました。そして、Aは、知人からVがとある地域のアパートに一人暮らしをしているとの情報を得ました。そこで、AはいよいよVを殺す決意をしました。そこで、Aは殺害用のナイフを購入し、V方アパート付近の下見をするなどしました。そして、Aは、実行日当日、V方アパート近くでVを待ち伏せし、Vが帰宅するのを待ちました。そして、AはVが帰宅したのと同時に、その背後からいきなり、右手に把持していたナイフをVの背中に1回突き刺しました。しかし、AはVから「長年の付き合いではないか。」「頼む、命だけは奪わないでくれ。」と泣きながら懇願されたことから、それ以上突き刺すことをやめ、その場から逃走しました。その後、Vは付近の住民によって119番通報されて駆け付けた救急隊員による救命活動などによって一命をとりとめました。Aは殺人未遂罪で逮捕されてしまいました。

~ はじめに ~

前回、犯罪実現過程②では、殺人罪における犯罪実現過程、予備罪や未遂罪の内容についてご説明しました。

今回は、Aが問われている未遂罪についてもう少し詳しくご説明したいと思います。

~ 未遂の種類 ~

実は、前回ご紹介した刑法43条の規定には続きがありました。その全文をご紹介すると、刑法43条は

 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

と規定さています。
講学上、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」場合を障害未遂犯罪の実行に着手してこれを遂げなかったときに、「自己の意思により犯罪を中止した」場合を中止未遂といいます。つまり、未遂障害未遂中止未遂の2つに分けられます。

障害未遂が成立するには、

犯罪の実行に着手したこと
②結果が発生しなかったこと

が必要です。他方で、中止未遂は、①、②の要件に加え、

③自己の意思により犯罪を中止したこと

が必要です。

~ 障害未遂と中止未遂の大きな違い ~

障害未遂の場合、刑が

任意的に(裁判官の裁量で)減軽される

のに対し、中止未遂の場合、刑が

必要的に(必ず)減軽される

点が大きく異なります。減軽されると、殺人罪の場合、有期懲役は法定刑の2分の1となり、

5年以上の懲役(上限20年)から2年6月以上10年以下の懲役

にまで短縮されます。
ちなみに、執行猶予付き判決の言い渡しを受けるための要件として、「3年以下の懲役又は禁錮」の判決の言い渡しを受けることが必要ですので、減軽されると

執行猶予判決を受けられる可能性が高まる

ことになります。

~ 本件で中止未遂は成立する? ~

では、本件で、中止未遂は成立するのでしょうか?
Aが「③自己の意思により犯罪を中止した」と言えるのかどうか、つまり、ア「中止意思の任意性」とイ「中止行為」の2つが認められるかどうか問題となります。

= 中止意思の任意性 =

自己の意思があったかどうか、中止意思に任性があったかどうかについては、大きく主観説と客観説に分けられます。
主観説は、

 犯人が自己の行為を後悔してやめた場合を中止未遂、それ以外の事由によってやめた場合を障害未遂

とするものです。
客観説は、
 
 犯人が社会一般の通念に照らして、犯罪の遂行を断念させるような事情又は表象がないにもかかわらずやめたときに中止未遂、そのような犯罪の遂行に障害となるような事情又は表象によってやめたときは障害未遂

とするものです。判例はこの客観説に立って判断しているものと思われます。
そこで、本件についても客観説に立って検討すると、AさんはVさんから「これ以上手を出さないでくれ」と哀願されていますが、このような事情が「犯罪の遂行を断念させるような事情又は表象」とは認めがたいとされれば、Aさんに「中止意思の任意性」を認めることはできます(つまり、中止未遂の成立する可能性が高くなります)。

次回は、残る要件である、イ「中止行為」などについてご説明いたします。

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犯罪の実現過程①~殺人罪の場合~

2019-08-17

犯罪の実現過程①~殺人罪の場合~

Aは長年、Vに対する恨みを抱いており、隙あらば殺そうと考えていました。そして、Aは、知人からVがとある地域のアパートに一人暮らしをしているとの情報を得ました。そこで、AはいよいよVを殺す決意をしました。そこで、Aは殺害用のナイフを購入し、V方アパート付近の下見をするなどしました。そして、Aは、実行日当日、V方アパート近くでVを待ち伏せし、Vが帰宅するのを待ちました。そして、AはVが帰宅したのと同時に、その背後からいきなり、右手に把持していたナイフをVの背中に1回突き刺しました。しかし、AはVから「長年の付き合いではないか。」「頼む、命だけは奪わないでくれ。」と泣きながら懇願されたことから、それ以上突き刺すことをやめ、その場から逃走しました。その後、Vは付近の住民によって119番通報されて駆け付けた救急隊員による救命活動などによって一命をとりとめました。Aは殺人未遂罪で逮捕されてしまいました。

~ 犯罪の実現過程 ~

本件は、大きく、

1 AがVを殺すことを決意。
2 Aがナイフを購入し、V方アパート付近を下見
3 AがVの背中をナイフで突き刺す(結果、Vは死亡しなかった)

の3段階に分けられると思います。犯罪は通常、どのような経緯を辿り、どの段階で犯罪となり得るのでしょうか?今回はイメージしやすい、殺人罪を例にとります。

~ 1の段階 ~

まず、1の段階の決意だけでは犯罪となりません。「何人も思想によりて処罰されることなし」の法諺が当てはまります。法は行為又は結果として客観化されない「人の内面」にまで踏み込むことはできないのです。

~ 2の段階 ~

一定の犯罪を実行するための準備行為を「予備」といいます。「予備」とは、犯罪行為の実行に着手する前の段階をいいますから、あらゆる犯罪について予備罪を設けてしまうと、人々の日常生活の行動を著しく制限してしまうことになりかねません(たとえば、窃盗罪に予備罪が設けられると、ホームセンターでマイナスドライバーを購入する行為が処罰されることになりかねません)。そこで、予備も原則として犯罪とはならず、重大な結果を引き起こす蓋然性が高い重大犯罪に限って予備罪が設けられ処罰するとされています。代表的な予備罪は以下のとおりです。
本件では、殺人の目的でナイフを購入する行為、V方あアパート付近を下見する行為が「予備」に当たります。

刑法113条(放火予備罪)
 第108条(現住建造物等放火罪)又は第109条1項の罪(非現住建造物等放火罪)を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

刑法201条(殺人予備罪)
 第199条の罪(殺人罪)を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

刑法237条(強盗予備罪)
 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。

~ 3の段階 ~

実行の着手に至ったが、何らかの事情によって結果が発生しなかった場合を「未遂」といいます。上の「予備」との決定的な違いは「実行の着手」があったか否かです。「実行の着手」とは、法益侵害に対する現実的危険性を有する行為、と言われていますが、何をもって「実行の着手」とするのかは事案によって個別に判断されます。本件では、少なくともAがVの背中を突き刺した時点で「実行の着手」ありとされるでしょう。未遂が処罰されるのも例外で、処罰されるためには個別に各本条の規定がなければなりません。

刑法43条本文
 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。

刑法44条
 未遂を罰する場合は、各本条で定める。

刑法203条 
 第199条及び前条の罪(自殺関与、自殺同意罪)の未遂は、罰する。

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余罪と身柄拘束の基本原則

2019-08-14

余罪と身柄拘束の基本原則

福岡県古賀市に住むAさんは、Vさんの死体を川に遺棄したとして福岡県粕屋警察署に死体遺棄罪で逮捕、勾留されました。Aさんは逮捕直後からVさんを殺害したことは一貫して否認していましたが、Aさんの取調べを担当した刑事からは「お前がやったんだろう。」などと執拗にVさん殺害の件の余罪について追及を受けました。そして、勾留20日目、Aさんは死体遺棄罪の件では処分保留とされ釈放され、直後に殺人罪で逮捕・勾留されてしまいました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

この記事をご覧の方の中にも、マスコミの報道などで「余罪」という言葉を聞いたことがある方は多いのではにないでしょうか?そこで、今回は、まずこの「余罪」や身柄拘束基本原則についてご説明することから始めたいと思います。

~ 余罪とは ~

余罪とは、現に疑いをかけられている事実(被疑事実、公訴事実)の罪以外の事実に関する罪で、同一人において同時訴追の可能性のあるものをいいます。
本件でいえば、

「AさんがVさんの死体を川に遺棄した」という事実に関する死体遺棄罪が「現に疑いをかけられている事実(起訴される前なので被疑事実)の罪」

で、それ以外の

「AさんがVさんを殺害した」という事実に関する殺人罪が「現に疑いをかけられている事実(被疑事実、公訴事実)の罪以外の事実に関する罪」であり「余罪

に当たります。なお、法律上は、同一人において同時訴追の可能性のある罪、つまり起訴される可能性のある罪を「余罪」といい、その可能性すらないものは「余罪」には当たりません。

余罪は、本人の自供・自白から発覚するケース(自白先行型)もあれば、自供・自白以外から発覚するケースまで様々です。

~ 捜査の基本原則(事件単位の原則) ~

実務上、逮捕などの身柄拘束は被疑事実を単位(基準)としてなされています。これを事件単位の原則といいます(事件単位の原則に対して、逮捕などの身柄拘束を「人」を基準とする人単位説もあります。)。そこで、逮捕、勾留の要件(身柄拘束の理由、必要性)、勾留延長事由及び保釈事由の有無などの身柄拘束にかかる判断は、逮捕、勾留された事実に基づいて判断されます。
また、事件単位の原則を基準とすると、同一人につき、複数の事実で逮捕、勾留の競合が可能で、また、事実を異にして逮捕・勾留を繰り返すことができます(再逮捕・再勾留)。

~ 再逮捕の原則 ~

上記のように、再逮捕、再勾留は、前に逮捕、勾留された事実と異なる事実を基礎にできるのが原則です。死体遺棄罪の事実と殺人罪の事実は異なる事実と考えられるため、事例のように死体遺棄罪で逮捕・勾留された後、殺人罪で逮捕・勾留されることは基本的には問題ないと考えられます。
「異なる事実」での再逮捕、再勾留に限定されたのは、同じ事実で再逮捕、再勾留されるとなると、逮捕から48時間以内に事件を検察官へ送致、勾留の日は最大で20日間などと法律が厳格に定めた時間、日数制限を無視することになるからです。

ですが、例外的に、新たに新証拠が発見されたとか、新たな拘束の必要性が生じたなどの釈放後の事情変更により、重ねて逮捕・勾留することが合理的な必要性があり、それが不当な逮捕・勾留の蒸し返しにならない場合にのみ「同一事実」につき逮捕・勾留できるとされています。

今回は余罪身柄拘束基本原則についてご説明いたしました。次回は、余罪と諸問題に関しご説明いたします。

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示談強要が犯罪

2019-08-12

示談強要が犯罪

福岡県小郡市に住むAさんは、会社の部下Vさんと仕事の進め方のことで口論となり、Vさんの胸ぐらをつかみ、左拳でVさんの顔面を殴る暴行を加え、結果、VさんにVさんの歯を折るなどの怪我を負わせてしまいました。しかし、Aさんは、会社上司の説諭から、自分に非があったことを認め、Vさんはまだ警察に被害届を出していないようでしたので、Vさんに謝罪し、被害弁償をして事を穏便に解決したいと考えました。そこで、Aさんは、会社上司を通じてVさんに、「謝罪したい」「被害弁償したい」旨を伝えたところ、会社上司を通じて、「お断りする」「警察に被害届を出す」と言われてしまいました。これに激高したAさんは、会社内部のメール機能を使って、Vさん宛に「謝罪、被害弁償を断るなんてどういうことだ」「断るとお前の将来どうなるか分かっているんだろうな」「おれが会社にこれなくすることぐらい簡単なんだぞ」などというメールを送って、謝罪や被害弁償に応じるように言いました。そうしたところ、Aさんは、福岡県小郡警察署に傷害罪、強要未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 被害弁償、示談交渉は弁護士へ依頼 ~

何らかの犯罪を犯したとき、その事実を認める場合に、すみやかに被害者に謝罪、被害弁償をすることは加害者としての当然の義務といえるでしょう。そして、加害者にとっても、被害弁償からさらに進んで示談を締結することは、その後の刑事処分や裁判での量刑を決める要素として非常に大切になってきます。
被害弁償がなされ、示談が締結されている場合は、そうでないときに比べ、検察官が不起訴処分とする可能性、裁判官が裁判で執行猶予付き判決を言い渡す可能性は高くなるからです。

しかし、被害弁償、示談交渉は、直接ご自身でなさってはいけません。
直接被害者と接触することは、それ自身、罪証隠滅行為をとらえられかねず本件(傷害罪)での逮捕のリスクを高めてしまうことに繋がりかねません。また、あとでご説明するとおり、他の犯罪を引き起こしてしまう可能性もあります。さらに、何より被害者の処罰感情が厳しいことが通常であるため、被害弁償、示談交渉を円滑に進めることができません。仮に示談に応じてくれたとしても、内容、形式が適切なものかどうか判断がつかないことが多いかと思われます。
そこで、被害弁償、示談交渉を円滑に進めるためには、弁護士に依頼した方がよろしいかと思います。

~ 示談を強要すると犯罪? ~

直接示談交渉を行うと、別の犯罪に当たる行為もしてしまいかねませんから注意が必要です。たとえば、強要罪です。強要罪は刑法233条に規定されていますが、本件と関係する同条1項をご紹介いたします。

刑法223条1項
 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して」とは「害悪の告知」と呼ばれ、一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければなりません。Aさんの「おれが会社にこれなくすることぐらい簡単なんだぞ」というメールの意図が不明ですが、メールの前後関係などから「害悪の告知」とされてしまう可能性があります。また、被害弁償に応じるか、示談に応じるか否かは、Vさんの意思の事由ですから、これらを強要することは「人に義務のないことを行わせ」たことに当たるでしょう。

~ 示談交渉は弁護士にご相談を ~

先ほども申し上げましたが、示談交渉は弁護士にお任せください。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、円滑、適切な形で示談を成立させることが可能です。Aさんのように、本件とは別の犯罪で逮捕されるという事態も防ぐことができますし、本件での不起訴処分獲得の可能性も高くなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

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