Archive for the ‘暴力事件’ Category

ちょっとした暴行で傷害致死罪?

2019-11-08

ちょっとした暴行で傷害致死罪?

傷害致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県太宰府市に住むAさんは、Vさん、Wさんと福岡市内の居酒屋で飲んだ後、カラオケに行くことになりました。しかし、カラオケ店に行く途中、AさんとVさんはお金の貸し借りのことで喧嘩となりました。Aさんは、もともとVさんが一向にお金を返さないことに不満を抱いており、さらに今回のVさんとの言動からVさんがAさんにお金を返す気がない、と思いました。Aさんは、そんなVさんがカラオケ代までおごってくれ、と頼んできたことから、Vさんに対する怒りが頂点に達し、「お前いいかげんにしろ!」と言って両手でVさんの胸を勢いよく押したところ、Vさんは酔った勢いも加勢して仰向けに転倒させてしまいました。その結果、Vさんの後頭部を道路の縁石に打ちつけさせ意識不明の状態に陥らせてしまいました。Aさんはパニック状態となっていたため、Wさんの119番通報により、Vさんは駆け付けた救急隊員により病院へ搬送されましたが搬送先で死亡してしまいました。その後、Aさんは、警察に傷害致死罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 傷害致死罪 ~

傷害致死罪は刑法205条に規定されています。

刑法205条
 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

本罪は傷害罪(刑法204条)の

結果的加重犯

です。
結果的加重犯とは、

一定の基本となる犯罪(基本犯)の構成要件を実現した後、犯罪行為から行為者(Aさん)の予期しない重い結果が生じたときに、その重い結果について刑が加重される犯罪

のことをいいます。

~ 傷害罪(基本犯) ~

では、傷害致死罪の基本犯である傷害罪をみていきましょう。
同罪は、刑法204条に規定されています。

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、他方で、傷害致死罪は「3年以上の有期懲役(上限は懲役20年)」ですから、確かに刑が加重されている(重くなっている)ことが分かります。

傷害罪が成立するためには(構成要件)、

①暴行行為(暴行の認識(故意))→②傷害→③、①と②との間の因果関係(パターン1)

あるいは、

①傷害故意(傷害の認識(故意))→②傷害→③、①と②との間の因果関係(パターン2)

が必要です。

~ 「予期しない重い結果が生じたこと」 ~

傷害致死罪が成立するには、さらに、上記要件に加えて

予期しない重い結果(人の死)が生じたこと

が必要です。
「予期しない」という点がポイントで、予期していた場合は、殺人罪(刑法199条)が成立します。

刑法199条
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

予期していたか、予期していなかったかで法定刑に大きな開きがあることがお分かりいただけるかと思います。

~ 因果関係が必要 ~

傷害罪では、暴行行為や傷害行為と傷害との間に因果関係が必要とされましたが、傷害致死罪でも同様に、

傷害と人の死との間に因果関係が必要

とされます。
仮に、因果関係が認められない場合は、行為者に人の死についての責任を問うことはできませんから、傷害罪が成立するにとどまります。

~ ちょっとした暴行でも傷害致死罪に! ~

これまでご説明してきたことからすると、傷害致死罪は、パターン1によっても成立する可能性があるということになります。
つまり、ちょっとした暴行でも、それによって相手方を死亡させ、その暴行と死亡との間に因果関係が認められる場合は、傷害致死罪に問われることがあるということです。

~ 傷害致死罪は裁判員裁判対象事件 ~

傷害致死罪は、一般人も裁判に参加する裁判員裁判対象事件です。
裁判員裁判対象事件で適切な事実認定、量刑をお求めの方は、ぜひ私選の弁護人選任もご検討ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

玄関ドアをバットで叩いて建造物損壊罪

2019-11-02

玄関ドアをバットで叩いて建造物損壊罪

建造物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県小郡市に住むAさんは伯父の葬式に参列しましたが、かねてから不仲であった実父Vさんが葬式に参列していないことに不満を募らせていました。そこで、AさんはVさんを葬式に連れてこようと思い、葬式を途中で抜け出し、車を運転取り外してVさんが住む市営住宅まで行きました。Aさんは駐車場に車を停め、5階建て市営住宅の1階「101号室」の玄関ドア前に立って玄関ベルを鳴らしたもののVさんは出てきませんでした。Aさんは部屋の明かりが点いていることから「居留守をつかわれている」と思ってますます腹が立ち、車のトランクに載せていた鉄製の野球バットを持ってきて再度玄関ベルを鳴らしましたが、やはりVさんは出てきませんでした。そこで、Aさんは右手に持っていた野球バットを振り上げ、Vさん宅の玄関ドアに向かって勢いよく振りかざしました。すると、ドスンという音が辺りに鳴り響きました。しかし、Aさんはこれにかまわず、同様の行為を3、4回繰り返し、玄関ドアを凹損させました。結局、Vさんは玄関に出てきませんでしたが、Aさんは110番通報を受け現場に駆け付けた福岡県小郡警察署の警察官に建造物損壊罪の疑いで準現行犯逮捕されてしまいました。逮捕の知らせを受けたAさんの妻が、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 建造物損壊罪 ~

建造物損壊罪は刑法260条に規定されています。

刑法260条
 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。よって、人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処する。

「他人の」とは、他人所有のという意味です。「建造物」とは、屋蓋を有し、障壁又は柱材で支持されて土地に定着し、その内部に人が出入りできる構造を持つ家屋その他これに類する工作物をいうとされています。
もちろん、建造物の一部を損壊した場合でも本罪に問われますが、そのものが建造物の一部なのか、あるいは器物損壊罪(刑法261条)の「器物」なのか問題となることがあります。本件では、玄関ドアが建造物の一部なのか「器物」なのか問題となりえるところです。

この点、「建造物」と「器物」とは、容易に取り外しが可能か否かで区別するのが通説・判例です。壁板は毀棄しなければならず、取り外しが容易でないことから「建造物」に当たります。。他方、雨戸、畳、建具は工具等を使えば容易に取り外しが可能であることから「建造物」ではなく「器物」に当たります。

では、本件の玄関ドアはどうでしょうか?
同様の事案で、弁護人は、

玄関ドアは、適切な工具を使用すれば容易に取り外しが可能であって、損壊しなければ取り外すことができないような状態にあったとはいえないから、器物損壊罪が成立するに過ぎない

と主張したのに対し、最高裁判所は、

建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほか、当該物の建造部における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ、(略)、本件ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界との遮断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしているから、建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ、適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても、この結論は左右されない

と判示しています(建造物損壊罪の成立を認めています)。

そのほか、「損壊」とは、建造物・艦船の実質を毀損すること、又はその他の方法で、それらの使用価値を滅却し、あるいは減損することをいいます。物理的に形態を変更又は滅却させる場合だけでなく、事実上その本来の用法・効用に従い使用することができない状態に至らせる場合も含まれます。

~ 器物損壊罪 ~

すでに出てきた器物損壊罪は刑法261条に規定されています。

刑法261条
 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」であるのに対し、建造物損壊罪は「5年以下の懲役」と罰金刑以下の刑の規定がありません。
器物損壊罪は、起訴するにあたり、告訴を必要とする親告罪です。
他方、建造物損壊罪は非親告罪です。つまり、建造物損壊罪の場合、被害届や告発状によっても捜査を受けたり、起訴されたりする可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

暴行罪から傷害罪へ?

2019-10-28

暴行罪から傷害罪へ?

暴行罪、傷害罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市東区に住むAさんは、福岡市博多区内の繁華街を歩いている際、Vさんの肩にぶつかったことがきっかけでVさんと口論になりました。Aさんは、Vさんから「何かオレに文句あっとか。」などと言われ喧嘩を売られたように感じたことから、Vさんに近づき右手でVさんの胸ぐらをつかみ、左手でVさんの右頬を1回殴打しました。すると、前を歩いていたAさんの知人WがAさんとVさんとの間に割って入り、さらに周囲の人が110番通報して現場に福岡県博多警察署の警察官が駆け付けたことから事態は収まりました。しかし、警察官がAさんとVさんから事情を聴くと、AさんのVさんに対する暴行の事実が明らかとなったことから、Aさんは暴行罪で逮捕されてしまいました。また、その後、Vさんから博多警察署に「加療約1週間を要する」との診断書が提出されたことから、Aさんに対する容疑が暴行罪から傷害罪へと切り替わりました。
(フィクションです。)

~ 暴行罪から傷害罪に切り替わることも!? ~

Aさんは当初、暴行罪で逮捕されています。
暴行罪は刑法208条に規定されています。

刑法208条
 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

他方、容疑切り替え後の傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

これらの規定からもお分かりいただけるように、傷害罪は「傷害」という結果が生じた場合の罪、暴行罪は「傷害」」の結果が生じなかった場合の罪ということになります。この「傷害」が何を意味するか、については諸説ありますが、ここではとりあえず、人に怪我をさせたこと、という風に理解しておきましょう。

ところで、Aさんのように当初、暴行罪で逮捕されたものの、その後、被害者から捜査機関に医師の診断書が提出されることによって容疑が傷害罪に切り替わることがあります。
ここで、罪名が変化したのだから傷害罪で新たに逮捕されるのかといえばそうではありません。
なぜなら、暴行罪の基礎となる事実(犯行日時・場所、被害者、犯行態様など)と傷害罪の基礎となる事実は、結果の部分を除くほかは同じだからです。同じ考え方で、たとえば、傷害罪で逮捕された方の容疑が、その後、被害者が死亡したことによって傷害致死罪(刑法205条、3年以上の有期懲役)に切り替わるということはよくあり、この場合でも改めて傷害致死罪で逮捕されることはありません。

~ 逮捕後の流れ ~

逮捕後は、①送検→②検察官による弁解録取→④勾留請求→⑤勾留質問→⑥勾留決定、という流れとなります。

①から②まで
警察に逮捕されると警察署内の留置施設に収容されます。その後、警察署内で被疑者の話を聴く「弁解録取」という手続きを受けます。その後、釈放か否か判断されますが、釈放されない場合は、逮捕から48時間以内に送検(検察官の元へ身柄と事件が送られること)の手続きが取られます。この間、警察官の取調べを受けることもあります。

③から④まで
送検されると検察官の元でも「弁解録取」の手続きを受けます。この手続きを経て釈放か否か判断されますが、釈放されない場合は勾留請求の手続きを取られたと考えてよいでしょう。
   
⑤から⑥まで
勾留請求されると、今度は、裁判所で裁判官による「勾留質問」を受けます。勾留質問でも事件について聴かれます。そして、勾留質問を経て検察官の勾留請求を許可するのか、却下するのか判断されます。
勾留請求の許可された場合、10日間の身柄拘束が決定します。ですが、その勾留決定の裁判に対して不服を申し立てることができ、これが認められれば10日間を待たずとも釈放されることがあります。
勾留請求が却下された場合、検察官に不服を申し立てる権利が認められています。検察官が不服申し立てをしない場合は釈放されます。

~ 早期釈放なら弁護士に依頼 ~

早期釈放を望まれるのであれば私選の弁護人を選任されることをお勧めいたします。
なぜなら、上記の①から⑥までには概ね3日間を要しますが、この間、国選の弁護人は選任されないからです。また、国選の弁護人の選任を期待しても、条件を満たさなければ国選の弁護人は選任されず、その場合、弁護人を選任しないか、私選の弁護人を選任するといういずれかの選択肢を取ることになります。
そうした場合、対応が後手後手になる場合もありますから、上記⑥までの段階までに弁護士に弁護活動をはじめて欲しいという方は、私選の弁護人を選任する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

暴行罪か傷害罪か

2019-10-05

暴行罪か傷害罪か

暴行罪傷害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県篠栗町に住むAさんは、職場の同僚の勤務態度に腹を立て、Vさんの胸ぐらをつかみ、右拳でVさんの顔面を1回殴る暴行を加えました。その際、Vさんの鼻などから出血は確認できず、Vさんも病院には行かなかったようです。
ところが、それから1週間後、Aさんは福岡県粕屋警察署の警察官に呼び出され、取調べで「Vさんから医師の診断書が出た」「診断名は歯牙破折だ」ということを聞かされ、傷害罪の被疑者として捜査すると言われました。
Aさんとすれば、暴行自体は認めているものの、事件当時、Vさんから歯が折れたなどとは聞かされていなかったため、怪我の点については納得できずにいます。
そこで、Aさんは、今後どう対応すればいいのか刑事事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ 暴行罪 ~

Aさんが

・Vさんの胸ぐらをつかんだり
・Vさんの顔面を右拳で殴る

行為は、暴行罪の「暴行」に当たります。

暴行罪は刑法208条に規定されています。

刑法208条
 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行罪の「暴行」とは、人の身体に向けられた不法な有形力の行使をいうとされています。
殴る、蹴る、突く、押す、投げ飛ばすなどの行為がその典型でしょう。もっとも、最近、マスコミで報じられている

あおり運転

もこの「暴行」に当たるとして、あおり運転をしたを暴行罪で処罰した例もあります。

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

見た感じ、暴行罪よりも、どのような要件がそろった場合に傷害罪が成立するのか分かりにくいですが、刑法208条と併せてみてみると、

「暴行」を加えた者が「傷害」するに至ったとき

傷害罪が成立するものと解されます。

なお、「傷害」とは、

単に相手方に怪我をさること

のみならず、それよりももっと広く、

人の生理機能に障害を与えること、又は人の健康状態を不良に変更すること

と解されています。

~ 暴行罪と傷害罪との違い ~

以上から、暴行罪傷害罪との違いは、

「傷害」の結果が発生したか否か

によります。そして、その「発生したか否か」には、

もとから傷害が発生しなかった

という場合と、

傷害は発生したが、暴行との因果関係が認められない

という場合の2つのパターンがあることに注意が必要です。

~ 本件の刑事弁護 ~

本件で、Aさんは、「暴行」の事実自体は認めているものの、「暴行」と「傷害」との因果関係について疑問を持たれているようですから、まずは「暴行罪」での処分を主張していかなければなりません。
具体的には、Aさんはもちろん、周囲に直接の目撃者あるいはVさんの様子を知る人がいなかったかどうか調べ、その方たちからもお話を聴く必要があるでしょう。
そして、その聴取した結果を意見書という形にまとめ、処分を決める検察官に提出するといったことが考えられます。

それと同時に、「暴行」の事実に限っての示談交渉を進めていく必要があります。
仮に、傷害罪で起訴され裁判になった場合は、裁判で診察をした医師を尋問するなどして作成した診断書の証明力を減退させる必要も出てくる可能性があります。

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刃物を示して脅迫~北九州市

2019-09-28

刃物を示して脅迫~北九州市

刃物を示しての脅迫について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市小倉南区に住むAさんは、近所に住むVさんが決められた日にごみを捨てていないことに憤慨し、Vさんに苦情を言いに行こうと思い、用心のためポケットに刃物を入れ自宅を出て、自宅から約300メートル離れたVさん宅敷地内に立ち入りました。そして、Aさんは玄関ベルを押したところ、Vさんが玄関に出てきたことからVさんに「おい、ごみの捨て方まちがっとるぞ。」、「悪臭がしよるって、近所中評判になっとるぞ。」と言うと、Vさんから「俺が出しよるとこみよるとか。」などと言われました。これに憤慨したAさんは、ポケットに入れていた刃物を取り出し、刃物の刃先をVさんに見せながら「おれをなめんな!」、「いい加減にしろ!」、「殺すぞ!」などと怒号しました。すると、Vさんの後方にいたVさんの妻が110番通報し、Aさんは「暴力行為等処罰に関する法律違反」で現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 脅迫罪 ~

一般に、「殺すぞ」などと言った場合は脅迫罪が成立します。
脅迫罪は刑法222条に規定されています。

刑法222条

1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫したものは、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

~ 刃物を示して脅迫した場合は? ~

ところが、刃物を示して脅迫した場合は、暴力行為等処罰に関する法律(以下、法律)、が適用されることがあります。
この法律は、集団的、常習的あるいは兇器を用いて行われる暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪、傷害罪(刑法204条)について刑法の刑を加重する(法律1条関係(2条関係の説明は省略します)などした法律です。
大正15年4月に制定されたふる~い法律で、第一次世界大戦後の社会的、経済的不満がまん延する大正末期に続発した集団的・常習的な暴力行為、面会強請、強談威迫などに対処するために制定されたと言われています。

この法律1条をそのまま引用すると、

 団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス

と書かれてあります。

~ 法律1条の内容 ~

法律1条の内容をまとめると、

手段としては

・団体の威力を示すこと
・多衆の威力を示すこと
・団体を仮装して威力を示すこと
・多衆を仮装して威力を示すこと
・凶器(兇器)を示すこと
・数人共同すること

とされ、これらの手段を用いて、

・刑法208条(暴行罪)
・刑法222条(脅迫罪)
・刑法261条(器物損壊罪)

に当たる行為をした場合に法律1条が適用されます。法定刑は

3年以下の懲役又は30万円以下の罰金

脅迫罪よりも重たいことが分かります。

~ 本件では? ~

本件では、

凶器を示して刑法222条の罪を犯した

場合に当たる可能があります。「凶器」とは、人の生命・身体に害を加えるのに使用されるような器具をいいます。鉄棒、こん棒のように本来用途においては人を殺傷すべきものではないが、殺傷のために使えば使いえる器具(いわゆる「用法上の兇器」)も含むとされています。

~ その他の罪にも問われる可能性も!? ~

Aさんは、その他の罪にも問われる可能性があります。
まず、刃物を携帯した点は、銃砲刀剣類所持等取締法の刃物の携帯禁止の罪に、Vさん方敷地内に立ち入った行為については刑法(130条前段)の住居侵入罪に当たる可能性があります。
前者の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」、後者の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
なお、ここでの刃物とは、基本的に、決められた方法で計った刃体の長さが6センチメートルを超える刃物をいいます。また、敷地内でも住居の一部ですから、正当な理由なく立ち入れば住居侵入罪に当たる可能性があります。

~ 示談交渉は弁護士に依頼 ~

この種事件においても示談交渉が、今後の刑事処分や量刑を決める上で大切になってきます。お困りの方は弁護士へご相談ください。

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児童虐待で懲役2年求刑~北九州市

2019-09-17

児童虐待で懲役2年求刑~北九州市

児童虐待と刑事罰(懲役)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市小倉南区に住むAさんは、自宅で、犬のしつけ用の通電装置を使用し、同居する長女V1さん(15歳)、次女V2ちゃん(10歳)、長男V3君(8歳)の腕に同装置を押し当て、V3君に加療約1週間を要する怪我を負わせました。Aさんは、福岡県小倉南警察署に暴行罪、傷害罪で逮捕され、捜査を経た後、福岡地方裁判所小倉支部宛てに起訴されました。Aさんは、裁判で起訴事実を認め、検察官から懲役2年求刑されてしまいました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

先日、8月19日、子ども3人に電気ショックを与えて虐待したとして暴行罪と傷害の罪で起訴された北九州市小倉南区の無職男性の初公判が福岡地方裁判所小倉支部で開かれ、検察側から懲役2年求刑されています。この求刑を受けて、裁判所がどのような量刑を科すのか注目されます。

ちなみに、千葉県野田市で小学4年の少女を児童虐待死したとして傷害罪の幇助犯に問われた女性には、検察側から懲役2年求刑がなされましたが、判決ではそれを超える懲役2年6か月(保護観察付き執行猶予5年)が言い渡されています。

~ 児童虐待とは ~

ところで、児童虐待といいますが、「児童虐待罪」という罪やその罪を規定した法律はありません。
ただし、児童虐待の定義については、児童虐待の防止等に関する法律という法律(2条)(以下、児童虐待防止法)に明確に規定されています。
それによると、児童虐待とは、

保護者(略)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ)について次に掲げる行為をいう

とされています。
そして、「次に掲げる行為」とは、以下の行為です。

1号 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれがある暴行を加えること(身体的虐待)
2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
3号 児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)
4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(略)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)

以下、「北九州市子どもを虐待から守る条例」に記載されている身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の例をご紹介します。

身体的虐待の例
・殴る、蹴る、叩く、投げ落とす
・激しく揺さぶる
・戸外に締め出す
・あざや火傷など外傷を負わせる
・溺れさせる
・首を絞める

性的虐待の例
・子どもへの性的行為(そそのかしを含む)
・性的行為を見せる
・ポルノグラフィの被写体とする

ネグレクト(保護の怠慢、拒否)の例
・衣食住の世話をしない
・重大な病気になっても病院へ連れていかない
・乳幼児を家や車に放置する
・子どもの意思に反して学校に登校させない
・保護者以外の人による虐待を放置する
・ひどく不衛生にする

心理的虐待の例
・言葉による脅し・脅迫
・拒否的な態度や無視
・きょうだい間で差別的な扱い
・自尊心を傷つける
・子どもの目の前で配偶者や家族に暴力や暴言を行う(面前DV)

~ 児童虐待と刑事罰 ~

児童虐待に当たる行為は、刑法などに規定される罪によって処罰され得ることになります。
本件は、身体的虐待の事例で、暴行罪(208条)、傷害罪(204条)に問われています。

刑法208条
 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

さらに、児童を死亡させた場合は、傷害致死罪(刑法205条)に問われる可能性もあります。

身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

示談を強要して強要未遂罪で逮捕 

2019-09-08

示談を強要して強要未遂罪で逮捕 

示談強要行為による強要未遂罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県柳川市に住むAさんは、元交際相手だったVさんと喧嘩になり、Vさんに対し暴行を加えた件で柳川警察署に被害届を出されました。Aさんは自らのしたことを認めて反省し、Vさんと示談交渉をはじめました。しかし、Vさんの態度はかたく、示談交渉は一向に進展しませんでした。そこで業を煮やしたAさんは、Vさんに「はやく示談書にサインしろ」「示談しなければ、お前の過去のこととか写真をインスタに挙げるからな」などというメールを送りました。Aさんは、これでVさんが示談に応じるだろうと思っていましたが、Vさんから何ら音沙汰はなく、反対に強要罪の被害届を柳川警察署に提出され、その結果、暴行罪、強要未遂罪逮捕されてしまいました。Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 示談とは ~

示談」とは、紛争の当事者同士が合意によって事件を解決することをいいます。広い意味で和解といいます。通常、示談に記載された内容以外の損害賠償請求はできなくなるという条項が示談書に記載されます(清算条項)。一方、「被害弁償」とは、単に相手方に損害賠償金(示談金)を支払うことをいい、それ以上の損害賠償請求されないことを確約するものではありません。両者の違いに注意する必要があります。

~ 刑事事件で示談すると? ~

被害者が示談を成立させる場合、そこには事件に対する被害者の一定の納得が示されていることになります。
そして、被害者との間で交わした示談書を捜査機関(警察、検察)に提出すれば、警察の場合、

・事件の立件化の見送り
・立件されていたとしても検察への送致の見送り(不送致)

などという効果が期待できます。検察の場合、

・不起訴処分の獲得

などという効果が期待できます。なお、被害者が捜査機関に被害届や告訴状を提出する前に示談を成立させることができれば、捜査機関へ被害届、告訴状を提出されることを阻むことができるかもしれません。

~ 示談交渉は弁護士を入れなくてもできる? ~

もっとも、これらの効果は、示談が有効に成立した場合に期待できるものです。あなたがごり押しして作成した示談、内容に不備がある示談では有効とはいえず、上記の効果を期待できないかもしれません。
もちろん、示談は、当事者の紛争を話し合いによって解決するものですから、示談交渉は弁護士を入れず紛争の当事者同士(加害者、被害者)で進めていくことも可能です。しかし、法律の素人である当事者同士では、そもそも感情の縺れなどから示談交渉を進展させることが難しいでしょうし、仮に進展させることができたとしても、有効な示談かどうかが分かりません。
よって、示談交渉は弁護士に依頼した方が無難です。

~ もしもごり押しした場合は? ~

もしも、被害者に示談することを強要した場合は、Aさんのように強要罪で逮捕される可能性もあるということを頭に入れておかなければなりません。

強要罪は刑法223条に規定されています。

刑法223条1項
 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

Aさんの「示談しなければ、お前の過去のこととか写真をインスタに挙げるからな」という行為は、Vさんの「名誉」に対し「害を加える旨の告知(害悪の告知)」に当たるでしょう。また、示談するかどうかは、Vさんの意思に委ねられる事柄ですから、これを強要することは「人に義務のないことを行わせ」たことに当たるでしょう。なお、本件は、Vさんが実際に示談書にサインをしなかったことから未遂罪にとどまった模様です。強要罪は未遂罪を処罰する旨の規定も置かれていますから注意が必要です。

刑法223条3項
 前2項の罪の未遂は、罰する。

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恐喝罪と脅迫罪との違い

2019-09-06

恐喝罪と脅迫罪との違い

恐喝罪脅迫罪との違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県豊前市に住むAさんは、元交際相手だった知人Vに「お前、旦那に前科があること隠し取るやろ?」「ばらされたくなければ口止め料として100万円払いな」などというメールを送り、Vさんから自己の口座に100万円の振り込みを受けました。そうしたところ、Aさんは福岡県豊前警察署恐喝罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 恐喝罪 ~

恐喝罪は刑法249条に規定されています。

刑法249条
1項 人を恐喝して財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。

恐喝」とは,財物の交付又は財産上不法の利益を得るために行われる「暴行」又は「脅迫」のことをいいますが,恐喝罪の場合,一般的に脅迫行為(害悪の告知)が行われることが多いと思われます。
害悪の告知の「程度」は、

相手方の反抗を抑圧するに至らない程度

のもの、すなわち、

相手方に畏怖あるいは困惑、不安の念を生ぜしめるに足る程度

のものが必要とされています。
害悪の告知の「内容」は、相手方またはそれと密接な連帯感情にある者の

生命、身体、自由、財産に対する危害(生命に対する危害:「殺すぞ。」など、身体に対する危害:「殴るぞ。」など、自由に対する危害:「行動を見張っているぞ。」など、財産に対する危害:「車を焼くぞ。」など)

であることが通常ですが、これに限らず、

・相手方の名誉(「過去の不倫をネットに載せるぞ。」など)
・家庭の平和(本件)

などに対する危害も含まれるとされています。

害悪の告知の「方法」は、

言語、挙動、動作を問われませんし、明示、黙示をも問わず、自己の性行、経歴、地位、勢威を利用して財物の交付を要求し、これに応じなければ不当な不利益が加えられる危険があるとの危惧の念を生じさせる害悪の暗示でもよいとされています。

~ 脅迫罪との違い ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

刑法222条
1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

恐喝罪脅迫罪の一番大きな違いは、相手に

財産的被害を生じさせたか否か

という点です。生じさせた場合が「恐喝罪」、生じさせなかった場合は「脅迫罪」です(ただし、恐喝の意図で生じさせなかった場合は「恐喝未遂罪」です)。
また、

・害悪の告知の「相手」が、恐喝罪の場合限られない、のに対し、脅迫罪の場合「被害者」及び「その親族」に限られる
・害悪の告知の「内容」が、恐喝罪の場合限られない、のに対し、脅迫罪の場合、生命、身体、自由、名誉又は財産に限られる

などといった違いがあります。

~ 恐喝罪で逮捕され、示談交渉をお望みであれば? ~

恐喝罪で逮捕され、相手方との示談交渉をお望みであれば、弁護士に示談交渉を依頼しましょう。
弁護士を間に入れない示談交渉は、感情の縺れなどから進展は望めません。

仮に示談交渉を進めることができれば、その進展具合によっては早期釈放される可能性が高くなりますし、示談を成立させることができれば相手方が被害届を取り下げてくれる可能性が高くなりますから、その場合は釈放されることとなるでしょう。また、この場合、刑事処分としては不起訴処分を獲得することができます。

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傘で失明、傷害罪?過失傷害罪?

2019-08-31

傘で失明、傷害罪?過失傷害罪?

傷害罪過失傷害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北州市八幡東区に住むの会社員の男性Aさんは、路上で肩がぶるかるなどしてVさんと口論となり、もっていたの先端でVさんの目を突き刺しまし、その場から逃走しました(Vさんはその後病院に搬送され、失明の障害を負ってしまいました)。ところが、現場に駆け付けた目撃者の話、防犯ビデオカメラの映像からVさんの目にの先端を突き刺したのはAさんだ、ということが判明し、Aさんは福岡県八幡東警察署傷害罪で逮捕、勾留されてしまいました。そして、Aさんは、福岡地方検察庁小倉支部の検察官に傷害罪で起訴され、実刑判決を受けてしまいました。
(実際にあった事例をもとに作成したフィクションです)

~ 傘も立派な凶器 ~

普段何気なく使っているでも、使い方によってはナイフなどと同様「凶器」に変わりえます。
本件のように、被害者に失明などの障害を与えてしまった場合は、「傷害罪(刑法204条)」、

刑法204条
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

あるいは、殺意が認められる場合は、「殺人未遂罪(刑法199条、203条)」

刑法199条
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法203条
 第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

に問われます。

~ 過失による場合は? ~

傷害罪は「人を傷めつけてやろう」、殺人未遂罪は「人を殺してやろう、死んでもかまわない」などという意図(故意)があってはじめて成立する犯罪です。
ところが、たとえば、

会社員Aさんが、雨の日、雨が止んだと思ってを折りたたみ、そのを地面と平行にして持って歩いていたところ、たまたまAさんの後方を歩いていた幼児Vちゃん(3歳)の目にの先端が当たってしまい失明させてしまった

という場合はどうでしょうか?
この場合、AさんにVちゃんを「痛めつけてやろう」とか、「殺してやろう」とする意図(故意)は認められません。
ただし、過失犯に問われることがあります。
ここで、「過失」とは「故意がないこと」とご説明すれば簡単ですが、それでは分かりにくいことからもう少し踏み込んでご説明すると「不注意」、つまり、「注意義務に違反すること」をいいます。
では、ここでの「注意義務」は何かといえば、雨の日ですからさすがに「を持ち歩くな」ということをAさんにいうことはできません。やはり、を持ち歩くことは認めるとしても、その「持ち歩き方に注意してね」ということ、つまり、「凶器となり得るの先端を人に当たらないよう地面に向けるなどして歩け」ということではないでしょうか?
そして、「凶器となり得るの先端を人に当たらないよう地面に向けるなどして歩かなかったこと」が注意義務違反、つまり「過失」となるのです。
過失により傷害を負わせた場合は、刑法209条の過失傷害罪に問われるとされています。なお、同罪は、被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪です。

刑法209条
1項 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2項 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

~ 民事上の不法行為責任も? ~

なお、過失傷害罪傷害罪や殺人未遂罪に比べ法定刑は低いですが、たとえ過失による場合であっても、失明などの重大な傷害を負わせた場合は民事上の不法行為責任を問われ
(刑事責任とは別に)何千万円という損害賠償金を請求されることもあります。

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少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」

2019-08-23

少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」

福岡市西区に住むA君(18歳)は、17歳のときにバイクの暴走(共同危険行為)で試験観察、その後保護観察処分を受けましたが、その保護観察期間中に学校内で暴力事件を起こし、福岡県西警察署に傷害罪で逮捕されました。その後、A君は20日間勾留され、取調べを受けるなどした後、事件を家庭裁判所へ送致(家裁送致)されました。家裁送致後は、少年鑑別所で専門技官による鑑別を受けたり、家庭裁判所調査官による面接を受けるなどし、最終的に少年審判を受けることになりました。そして、少年審判では、「少年院送致」の保護処分を言い渡されました。
(フィクションです。)

~ 少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」 ~

少年法の適用年齢を現行の「20歳未満」ではなく「18歳未満」に引き下げたらどうかという議論が、法務省の法制審議会が続けています。
この議論が開始されたのは、2017年(平成29年)3月からです。そして、今年6月までに部会は「16回」開催されています。
この議論の背景には、2016年からはじまった「18歳選挙権」、2022年施行の民法改正によって「18歳以上は成人」とされることがあると言われています。

* 法制審議会とは *

法制審議会とは、日本の法務省に設置された審議会等の一つで、法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議すること等を目的としています。法制審議会は学識経験者の中から法務大臣により任命された委員によって構成されています。

~ 引き下げられるとどうなるの? ~

引き下げられると、成人と同様の刑事手続を踏むことになります。
すなわち、逮捕され、勾留されるところまでは同じですが、その後が異なります。基本的には勾留期間内に、検察官による不起訴、起訴の刑事処分を受けます。仮に、起訴されると、皆さんもよくテレビドラマなどでご覧になったことのある「公開の法廷」で刑事裁判を受けなければなりません。刑事裁判を受け有罪と認定されれば、「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料」の刑事罰の言い渡しを受けます(懲役、禁錮、罰金については執行猶予付き判決の可能性もあり)。その裁判が確定すると前科となります。実刑判決を受けた場合は、少年院ではなく刑務所に収容されます。

~ 引き下げには異論も多い(理由①:少年犯罪の減少) ~

ただ、年齢引き下げには異論も多いようです。その理由の一つ目として、少年犯罪の減少です。

平成30年度版犯罪白書によれば、平成29年度に刑法犯で検挙された少年の数は

3万5108人

でした。近年を見ると、

平成24年 7万9430人
平成25年 6万9113人
平成26年 6万251人
平成27年 4万680人
平成28年 4万103人

と年々減少していることが分かります(ちなみに、少年犯罪がピークだったとされる昭和58年の検挙者数は、今と比べ少年の数が多かったものの、それでも「26万1634人」でしたから、いかに減少してきたかわかります)。

年齢引き下げ=少年犯罪の増加、少年犯罪の凶悪化?」とイメージしがちですが、実態としては、少年犯罪の数自体は年々減少してきており、世間のイメージと実態とが乖離しているかもしれません。

~ 引き下げには異論も多い(理由②:少年法が機能している) ~

理由の二つ目として、現在の少年法がきちんと機能している、と指摘する専門家もいます。また、現在議論を続けている法制審議会も、「少年法が機能していないから、年齢引き下げを検討しているものではない」ことを前提に議論を続けているようです。では、なぜ議論が続けらているのかといえば、それは「改正民法(18歳以上は成人)との整合性を保つだけ」と指摘する専門家もいます。

~ おわりに ~

少年院を経験した方からは、
・少年院を経験してよかった
・少年院があったから犯罪との縁を切れた
という声も。

このように、少年法が犯罪の目を早いうちから積むことに一役買っている、大きく貢献しているのであれば、年齢引き下げは必要ないのかもしれません。

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