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【事例解説】住居侵入罪とその弁護活動(のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース)

2024-04-26

【事例解説】住居侵入罪とその弁護活動(のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース)

今回は、私生活をのぞき見る目的で女性宅に侵入したというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律福岡支部が解説致します。

事例:のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース

女性の住宅に侵入した罪で起訴された福岡県春日市の職員Aさんが、18日付で懲戒免職処分を受けました。
懲戒免職処分を受けたのは、住居侵入の罪で起訴された福岡県春日市在住の公務員Aさん(43)です。
Aさんは先月14日、市内の30代女性Vさんの住宅に侵入した疑いで現行犯逮捕。
その後、Vさんの私生活をのぞき見る目的で、合い鍵を使って侵入したとして住居侵入の罪で起訴されていました。
テレビ愛媛 3/18日 21:40配信の記事を参考にし、地名や内容を変更し引用しています。)

1,住居侵入罪について

〈住居侵入罪〉

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」(刑法130条

刑法130条は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看取する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合(前段)と、要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合(後段)に分け、前段を住居等侵入罪、後段を不退去罪としてそれぞれ処罰することを規定しています。
前段の住居侵入罪は、一般的には不法侵入という言葉で広く社会で使われており、侵入した場所によって成立する犯罪の名前が異なります。
例えば、正当な理由がないにもかかわらず、他人の管理下にある建物のうち住居・邸宅以外のものに侵入した場合には、建造物侵入罪が成立することになります。
住居侵入罪は、①正当な理由がないのに、②人の住居若しくは④人の看取する邸宅建造物もしくは艦船に⑥侵入した場合に成立する犯罪です。
住居侵入罪の保護法益は住居権、すなわち住居に誰を立ち入らせ誰の滞留を許すかを決める自由であり、各要件に該当するか否かを判断するうえで重要となります。
②の「人の」とは犯人自身がその住居の居住者ではないことを意味します。
③「住居」とは、人が起臥寝食に利用する場所のことを言います。
起臥寝食とは起きたり寝たり食べたりすることを言うので、分かりやすく言えば、人が生活するために使う場所のことであり、具体的には家やマンション、さらに一時的に利用するホテルの部屋であっても「住居」に含まれます。
④「人の看取する」とは、犯人以外の人が事実上管理することを言います。
例えば守衛や監視人を置くことで立ち入りを禁止する場合のように、侵入を防止する人的・物的設備を施されている状態がこれに当たります。
⑤「邸宅」とは居住用の建造物で住居以外のものを言い、空き家などがこれに当たります。
建造物」とは、住居用以外の建物を言い、学校、遊園地などのテーマパークなどがこれに当たります。
艦船」とは、軍船及び船舶のことで人が侵入できる構造のものをいい、船着場にとまっている漁船や小型フェリーなどがこれに当たると考えられます。
⑥「侵入」とは、住居権者の意思に反する立ち入りを意味します(⑤に侵入する場合には管理権者の意思に反する立ち入り)。
違法な目的を隠して住居や建造物に侵入した場合、その目的を住居権者や管理権者が知っていれば立ち入ることを承諾していなかったであろうと言える場合には、130条前段の犯罪が成立します。
過去には、ATM利用客のカードの暗証番号を盗撮する目的でATMが設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合,その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立するとした裁判例があります。(最高裁平成19年7月2日 事件番号 平成18(あ)2664
最後に、①「正当な理由がないのに」とは、侵入の違法性を排除する理由がないことを意味します。
立ち入りに対して住居権者の承諾がある場合には、そもそも「侵入」に当たらず住居侵入罪は成立しないので、この要件は、住居権者の意思に反する立ち入りであることを前提に、例えば刑事訴訟法に基づく捜索のための立ち入りなど「侵入」を正当化する理由がないことを言います。

2,のぞきにおける住居侵入罪とその弁護活動

のぞき目的での「侵入」に「正当な理由」があるわけではなく、のぞいた対象は住居侵入罪にいう「住居」に該当するため、住居侵入罪が成立する可能性が高いです。
また、のぞき行為は都道府県の迷惑防止条例軽犯罪法に違反し、処罰の対象となります。
福岡県の迷惑防止条例では、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由なく、住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるよう な場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影することを禁止しており(6条3項1号)、これに違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の刑が科されます(11条1項)。
軽犯罪法では、正当な理由なく、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者には、拘留又は科料が、もしくは併科されます。(1条23号2条
迷惑防止条例軽犯罪法の両方で正当な理由がないのぞき行為を禁止していますが、その違いは、のぞき行為を公共の場所又は公共の乗物で行ったどうかにあることが考えられます。
上記の事例で言えば、AさんはVさんの自宅をのぞき見る目的で侵入しているため、軽犯罪法の処罰の対象となる可能性があります。
住居侵入罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されることになります。
その間に警察と検察の取調べを受け、起訴するか不起訴になるかが検察官によって判断されます。
そこで、弁護士に依頼するメリットの一つとして取調べ対応へのアドバイスが挙げられます。
弁護士であれば、身柄を拘束されている被疑者に対して、どのように取調べに臨めば良いかなど法律の専門家として適切かつ丁寧なアドバイスを授けることができます。
また、住居侵入罪は被害者が存在する犯罪でもあります。
そこで、被害者との示談交渉を行うことが考えられます。
示談交渉は加害者と被害者の当事者同士で行うこともできますが、通常、当事者同士での示談交渉は成立する可能性が低いです。
加害者が被害者に示談を迫れば捜査機関側からは証拠を隠滅するのではないかと疑われかねず、そもそも捜査機関側が被害者の連絡先を教えないことも考えられます。
しかし、弁護士が間に入れば、被害者に丁寧な説明ができ、安心して頂ける期待も高まります。
それにより、示談交渉の成立に向けた第一歩を踏み出すことができます。
また、示談と一口に言っても、加害者の一方的な主張だけを聞き入れてもらう交渉では成立は難しいと言えます。
被害者の意向を加味しながら、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れて、加害者の刑事処罰を求めないこと)などの条項を加えた示談を成立させる必要があります。
特に身柄を拘束されている事件の場合には、逮捕されてから起訴されるか否かの判断まではわずか23日間しかありません。
そのため、示談交渉は速やかに行い成立させることが必要不可欠です。
以上より、刑事弁護はスピードが大事です。
住居侵入罪で逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合には、一刻も早く弁護士に依頼することが重要となってきます。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において住居侵入罪の当事者となってしまった方、または親族が当事者となり逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事弁護の経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、初回無料でご利用いただける法律相談逮捕・勾留により身柄を拘束された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービス(有料)をご提供しております。
ぜひ一度、ご相談ください。

【事例解説】器物損壊罪とその弁護活動(知人の乗用車のタイヤから部品を取り外して脱輪させたケース)

2024-04-23

【事例解説】器物損壊罪とその弁護活動(知人の乗用車のタイヤから部品を取り外して脱輪させたケース)

今回は、公務員Aさんが、福岡市早良区在住の公務員Vさんの乗用車のタイヤから部品を取り外して脱輪させたというニュース記事をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:知人の乗用車のタイヤから部品を取り外して脱輪させたケース

福岡市早良区で、知人の乗用車のタイヤから部品を取り外して脱輪させたとして、消防士のAさんが器物損壊の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、公務員Aさんは去年11月、福岡市早良区に住む公務員男性Vさんの自宅敷地内で、車の左後輪からナット4本を外して損壊した疑いが持たれています。
Vさんが出勤のために車に乗った際に脱輪したことから被害に気付き、警察に相談しました。
警察は周辺の防犯カメラの映像などから、Vさんの知人であるAさんが関与した疑いが強まったとしています。
Aさんは、容疑を認めているということで、警察が詳しい動機を調べています。
(KBC 福岡 03/05 17:08の記事を一部変更し引用しています。)

1,器物損壊罪について

〈器物損壊罪〉

前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」(刑法261条

器物損壊罪は、①他人の物を②損壊し又は傷害した場合に成立する犯罪です。
①「他人の物」とは、「前3条に規定するもの」(公用文書等毀棄罪私用文書等毀棄罪建造物等損壊及び同致死傷罪)の客体として保護されるもの以外のすべての他人の物を言います。
例えば、土地などの不動産、動物や植物、また法令上違法なもの(公職選挙法違反の選挙ポスターなど)であっても刑法的な保護に値するものであれば、器物損壊罪の客体に含まれます。
②「損壊」とは、財物の効用を害する一切の行為(効用侵害説)を言い、財物の効用を害すれば足り、財物を物理的に破壊する必要はありません。
効用とは使い道や用途のことを言うため、飲食店等で使われている食器に放尿した場合には、その後そのお店では洗って他のお客に提供するために使うわけにはいかなくなり、食器という財物の効用を害し「損壊し」たといえるため、放尿した者に器物損壊罪が成立するとした判例があります。(大審院判決明治42年4月16日
また、「傷害」とは、傷害罪にいうそれとは意味が異なり、動物を客体とする場合を言います。
例えば、他人のペットを殺傷する行為や、勝手に逃がす行為などがこれに当たります。

2,器物損壊罪とその弁護活動

器物損壊罪で逮捕・勾留されると最長で23日間、身柄を拘束され、警察と検察の取調べを受けることになります。
被疑者が取調べで供述したことは調書となり、供述調書は裁判で証拠として使用されるため、取調べには慎重に臨む必要があります。
身柄を拘束されている被疑者は一人きりで検察と検察の取調べを受けることになるため、肉体的・精神的に不安を抱えていることが多く、冷静な態度で臨むことができず、警察や検察の都合のいい供述調書が作られるといったことも珍しくはありません。
弁護士であれば、どのように取調べに臨めば良いかについて法律の専門家として丁寧かつ適切なアドバイスをすることができます。
また、身柄を拘束されている被疑者としてもそのようなアドバイスを受けることができれば、精神的な不安の解消に繋がることが期待できます。
そのため、逮捕・勾留されてしまった場合には、少しでも早く弁護士のアドバイスを受けることが必要といえるでしょう。
また、器物損壊罪親告罪刑法264条)であるため、被害者の告訴が無ければ検察官は公訴を提起できません。
被害者に対して謝罪や被害の弁償をすることで告訴を取り消してもらえれば、検察官は起訴できず不起訴処分となり、前科が付くことを回避することができます。
被疑者が身柄拘束されて起訴されるまでは最長で23日間しかないため、その間に被害者との示談を成立させる必要があります。
以上より、刑事事件はスピードが大事であり、少しでも早く刑事弁護について経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士したサポートを受けることが重要となってきます。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において器物損壊罪でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、器物損壊罪でお困りの方からの法律相談を初回無料で承っております。
お気軽にご相談ください。

被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動(電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース)

2024-04-08

被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動(電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース)

今回は、電車内で喫煙していたAさんが男子高校生Vさんに喫煙を注意されたことに逆上し、Vさんに因縁をつけ土下座させ蹴る殴るなどの暴行を加えたというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース

JR宇都宮線内で喫煙を注意した高校生を暴行し、傷害強要などの罪に問われた元ホストクラブ従業員Aさんの判決公判が19日、宇都宮地裁栃木支部で開かれ、裁判長は懲役2年(求刑懲役3年)の実刑判決を言い渡した。
Aさんは今年1月23日、電車の優先席で寝転んで喫煙。男子高校生Vさんが注意すると、「くそがき、おまえ、俺にしゃべりかけられる分際とちゃうんや」「ぶっ殺すぞ、こら。けんか売ってるんじゃねえぞ」と因縁をつけ、土下座させた。Vさんの頭を踏み付けた上、蹴る殴るの暴行を加え、頬骨(きょうこつ)骨折など全治6カ月の重傷を負わせた。
また、送検後、検察官の取り調べに対して「あんまり人をばかにしたしゃべり方すんなよ」「カメラ関係あるか。俺、暴れるときまじで暴れるぞ」「女には手上げへんけど、男には手上げるからな」と脅迫し、公務執行妨害でも起訴された。
弁護側は「大々的に報道され、社会罰も受けている」と執行猶予を求めたが、裁判長は「感情に任せた犯行で、一方的で執拗(しつよう)。動機、経緯に酌量の余地はない」と量刑理由を説明した。
100万円を準備し、被害弁償の意向を持っていることや、交際相手が更生に協力する意向があることなど、「酌むべき事情を考慮しても、執行猶予は相当ではない」と実刑を選択した。
日刊スポーツ 2022年7月19日13時8分の記事を一部変更し引用しています。)

1, 傷害罪

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法204条

傷害罪は「人の身体を傷害した」場合に成立する犯罪で、「傷害」するとは、人の身体の生理的機能を侵害することを言います。
簡単に言うと、人に怪我を負わせたりすることで、上記の事例ではAさんはVさんに対して蹴る殴るなどの暴行を加えて骨折の怪我を負わせているため「傷害した」に該当し、傷害罪が成立したと言えます。

2, 強要罪

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」(刑法223条1項

強要罪は意思決定の自由を保護法益として、その自由を侵害することを処罰する犯罪です。
➀人の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して、②脅迫や暴行を用いて、③人に義務のないこと行わせ又は権利の行使を妨害した場合に成立します。
②の脅迫は「殺すぞ」や「殴るぞ」などの害悪を告知することで、暴行は殴る蹴るなどの人の身体に対する不法な有形力の行使を言います。
③の義務のないことを行わせるとは土下座させる行為などがその典型で、権利の行使を妨害するとは債権の回収をさせないことなどがこれに当たります。

3, 公務執行妨害罪

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法95条1項

公務執行妨害罪は、公務の執行を保護法益とし、また抽象的危険犯(現実に結果が発生することは要せず結果が発生するおそれがあれば足りる)であるため、現実に公務の執行が妨害されることを要せず、公務の執行が妨害される危険があれば成立します。

4, 弁護活動

上記の事例ではAさんは正当防衛の成立を主張していますが、正当防衛は成立するのでしょうか。
正当防衛とは、犯罪に該当する行為を行ってしまった場合でも、正当防衛であると認められれば、違法性が排除され犯罪が成立しなくなることを言います。

<正当防衛>

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」(刑法36条1項

正当防衛とは、①急迫不正の侵害が対して、②自己又は他人の権利を防衛するため、③やむを得ずにした行為である場合に成立します。
➀の「急迫」とは、法益の侵害が現に存在し又は間近に押し迫っていることを言い、過去の侵害行為、例えば一週間前に殴られたことに対して殴り返す場合などには急迫性は否定されます。
また、「不正」とは、違法であることを言います。
②の要件は自分や第三者の権利を「防衛するため」、つまり当該行為は防衛の意思をもってなされる必要があります。
防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しそれを避けようとする単純な心理状態をいいます。
ここで問題となるのは、防衛者が攻撃の意思を有していた場合に防衛の意思が否定されるのかということです。
判例通説では、行為者が攻撃の意思を持っていたとしてもただちに防衛の意思は否定されないとしています。
それは、攻撃することが防衛になることがあると考えられます。
しかし、侵害行為に対して、その機会を利用して積極的に加害を加える意思で防衛行為に及んだ場合には急迫性が否定され、正当防衛は成立しないことになります。
これは、正当防衛が緊急時に国家機関(例えば警察など)に助けを求めることが難しいなどの事情がある場合に、例外的に私人による自救行為を許容することを趣旨としているため、侵害を予期してその機会を利用して積極的に攻撃を加えることは、もはや防衛の意思から防衛行為に出たとは言えないとえるためです。
③の「やむを得ずにした行為」とは、防衛行為の相当性、すなわち防衛行為が社会的見て必要かつ相当であることを要します。
例えば、素手で一発殴るという侵害行為に対して金属バットで複数回殴り返すなどの行為は、防衛行為としての相当性を欠き正当防衛が成立しません。
なお、防衛行為の相当性を欠くが他の要件は満たすという場合には、過剰防衛刑法36条2項)の成立が別途検討されることになります。
上記の事例で言えば、VさんはAさんに対して電車内での喫煙を注意しただけであり、そもそもVさんのAさんに対する「急迫不正の侵害」が存在しないため、Aさんに正当防衛は成立しないと考えられます。
以上より、被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動としては、正当防衛の各要件の充足性を示すための客観的な証拠や事情の収集活動が主たる活動になると言えます。
例えば、相手方が攻撃してくることを予想して武器を持たずに相手方が居る場所に向かったが相手が凶器を持っていたなどの場合には、侵害を予期していたとは言えず、急迫性は肯定する客観的な事情と言えます。
弁護士による弁護活動としては、そのような客観的な事情や証拠の収集活動を行うことになります。
また、正当防衛が成立するか否かは判決により決まるため、たとえ自分で正当防衛に当たる行為をしたと思っていても、逮捕や勾留により身柄を拘束されるおそれがあります。
逮捕・勾留による身柄拘束は最長で23日間の間続き、その間に警察と検察による取調べを受けることになります。
逮捕・勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合になります(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そのため、弁護士による弁護活動としては、それらを否定する客観的な事情や証拠の収集活動を通じて被疑者の早期の身柄解放を目指します。

5, まずは弁護士に相談を

福岡県内において正当防衛の成立を争いたいなどをご希望の方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、正当防衛の成立を争いたい方に対しては初回無料の法律相談や身柄拘束中の方のご家族等の方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

裁判員裁判の対象となる現住建造物等放火罪で逮捕

2024-04-05

裁判員裁判の対象となる現住建造物等放火罪で逮捕

現住建造物等放火罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県嘉麻市に住んでいる大学生のAさんは、住んでいるアパートを燃やしての自殺を計画し、アパートのカーテンにライターで火を付けました。
火はカーテンから部屋の壁に燃え移って煙が上がったため、アパートの住人が燃えていることに気付き、119番通報しました。
駆け付けた消防隊の消火活動で火は消し止められ、捜査によって火災の原因がAさんの放火であることがわかりました。
その後、Aさんは嘉麻警察署現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

現住建造物等放火罪

放火の罪刑法に定められており、現住建造物等放火罪は「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と刑法第108条に定められています。
この場合の「建造物」は、屋根があり壁または柱によって支えられ土地に定着し、その内部に人が出入りし得る家屋、またはこれに類似する建造物と定義されています。
焼損」とは火が媒介物を離れても、建造物などの一部が独立しても燃え続ける状態で、参考事件の場合はカーテンに付いた日が壁に燃え移り、そのまま独立して燃え始めると焼損したと言えます。
また、「現に人が住居に使用」しているとは、犯人以外の人が起臥寝食の場所として日常使用することを意味しており、犯人以外の人が住居に使用している建造物であれば、仮に放火当時に人が現在していなくても現住建造物等放火罪は成立します。
ちなみに、「現に人がいる」とは犯人以外の人間が建造物内に現存することを指します。
これらのことから、Aさんには現住建造物等放火罪が適用されました。
現住建造物等放火罪の刑罰は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
死刑又は無期の懲役」の刑罰に当たる事件の場合、起訴されると裁判員裁判が開かれます。

裁判員裁判制度

裁判員裁判とは、ランダムで選ばれた一般の国民が裁判員となり、裁判に参加する形式の裁判です。
一般の方が裁判員となることから、裁判の前に裁判官、検察官、弁護士が事件の争点を明確にする公判前整理手続をとります。
また、裁判員裁判での弁護士は、裁判員の選任手続きにも弁護士は立ち合います。
これは弁護士のチェックを通し、被告人に不利または不公平な裁判をするおそれのある裁判員の選出を阻止して公平な裁判に行うためです。
このように、裁判員裁判は通常の事件とは勝手が違う裁判になります。
裁判員裁判の対応もスムーズに行えるよう、参考事件のような放火事件の場合、裁判員裁判制度にも詳しい弁護士に、弁護活動を依頼することが重要です。

裁判員裁判に詳しい弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件と少年事件に特化している法律事務所です。
当事務所では、初回無料の法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスを実施しております。
どちらのご予約も、24時間、年中無休で電話対応いたします。
裁判員裁判の対象となる事件を起こしてしまった、または現住建造物等放火罪の容疑でご家族が逮捕されてしまった、そのような場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、是非、ご相談ください。

住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)

2024-03-21

住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)

今回は、福岡県宇美町在住の公立中学校の教員Aさんが知人Vさんの住宅に侵入し物を盗んだというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:知人宅に侵入し物を盗んだケース

窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県志免町に住む公立中学校の教員Aさんです。
Aさんはおととし8月、福岡県宇美町の知人男性Vさんの住宅に侵入し、着物など7点、あわせて115万円相当を盗んだ疑いが持たれています。
警察によりますと、Vさんの住宅付近の防犯カメラに映った車の映像などから、Aさんの関与が浮上したということです。
取り調べに対し、Aさんは、「間違いありません」と容疑を認めているということです。
(RKBオンライン 2024/03/01 14:09の記事を一部変更し引用しています。)

1,住居侵入窃盗(侵入盗)とは

住居侵入窃盗(侵入盗)とは、窃盗犯の手口の一つであり、空き巣や事務所荒らしなどがその典型例です。
刑法上は、住居侵入罪(130条前段)と窃盗罪(235条)の別の犯罪が成立しますが、住居侵入が窃盗を行うための手段として行われた場合、両罪は牽連犯(刑法54条後段)としてその最も重い刑により処断されることになります(刑法54条)。

2,牽連犯とは

牽連犯とは、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名にふれる」場合をいいます(刑法54条後段)。
複数の行為の間に手段と目的、又は原因と結果の関係(牽連関係)が認められる場合には牽連犯が成立しますが、複数の行為に牽連関係が認められるかどうかの判断基準として、ある犯罪が手段若しくは結果とが経験上通常、手段と目的又は原因と結果の関係にあるか否かによって判断されます(客観説 大判明42.12.20)。
牽連犯として認められたものとして、住居侵入窃盗の他に住居侵入と殺人、住居侵入と強盗、住居侵入と放火などが挙げられます。
反対に、牽連犯として認められないものとして、監禁と傷害、殺人と死体遺棄、強盗殺人と証拠隠滅のためにした放火などが挙げられます。
牽連犯が成立した場合の効果として、「その最も重い刑により処断する」とありますが、これは複数の犯罪を行った場合でも科される刑罰はそのうちの最も重い刑しか科されないことを意味し、科刑上一罪として処理されます。
住居侵入窃盗の場合では、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であるため、その最も重い刑である窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰が科されることになります。
そのため、上記事例におけるAさんが有罪となった場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲で刑罰が科されることになります。

3,住居侵入窃盗とその弁護活動

住居侵入窃盗で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
逮捕・勾留により身柄を拘束されている被疑者は一人で精神的・肉体的に大きな不安を抱えるため冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなります。
そこで、弁護士による取調べ対応などの弁護活動が重要となります。
弁護士が接見に向かえば、被疑者はどのように取調べに臨めばいいか、何を話すべきかなどの丁寧かつ適切なアドバイスを受けることができるため、被疑者の不安の解消の一助となるでしょう。
また、勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれが認められるからです(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そこで、被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、証拠隠滅や逃亡のおそれを否定し得る客観的証拠や事情の収集活動を行います。
たとえば、被疑者が犯してしまった犯罪の証拠となる物は既に捜査機関に押収されているため証拠隠滅は不可能であるという客観的事情を主張することで証拠隠滅のおそれを否定し得るでしょう。
そして、住居侵入窃盗は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を進め示談を成立させることも重要な弁護活動と言えます。
被害者との示談が成立していれば、早期の身柄解放や起訴猶予による不起訴処分を得られる可能性が高くなり、前科の回避や身柄解放後の日常生活への支障を最小限に抑えることができます。
以上より、逮捕・勾留から起訴されるまでの23日間に、一刻も早い刑事弁護活動を受けることが重要となります。
仮に起訴されてしまった場合でも、被害者との示談が成立しているなどの事情があれば執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなるため、どちらにせよ刑事弁護はスピードが大事であることに変わりはありません。
そのため、住居侵入窃盗(侵入盗)で逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件に特化した弁護士による適切かつ適切なサポートを受けることがなによりも重要となります。

4,まずは弁護士に相談を

福岡県内において住居侵入窃盗でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、住居侵入窃盗でお困りの方には初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

器物損壊罪となった放火、放火の罪になる条件とは

2024-03-14

器物損壊罪となった放火、放火の罪になる条件とは

参考事件

福岡県北九州市に住んでいる大学生のAさんは、市内にある無人の公園に来ました。
Aさんは持っていたマッチに火を付けると、公園内にあるゴミ箱に火のついたマッチを投げ入れました。
Aさんは公園の外から火に人が集まって消火する様子を眺め、消し止められるとその場を離れました。
その後、小倉北警察署が事件を捜査し、火を付けたのがAさんであることを突き止めました。
そしてAさんは器物損壊罪の疑いで逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

放火の罪と器物損壊罪

Aさんは物に火を付けましたが、器物損壊罪で逮捕されました。
参考事件の内容であれば、放火に関する罪が適用されるのではないかと疑問を浮かべる人も多いでしょう。
しかし、放火が行われたとしても事件状況によって問われる罪は変わってきます。
放火の罪とAさんに適用された器物損壊罪は、どちらも刑法に定められた犯罪です。
放火の罪は刑法第108条に「現住建造物等放火罪(人が住居にしている、又は人がいる建造物等に放火する罪)」、刑法第109条は「非現住建造物等放火(人か住居に使用せず、かつ人のいない建造物等に放火する罪)」、刑法第110条に「建造物等以外放火罪」が定められています。
参考事件は建造物に対する放火ではないため、仮に放火事件として扱われたのであれば刑法第110条に「放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。」と定められた建造物等以外放火罪が適用となった可能性はあります。
実際にAさんの逮捕容疑となったのは、刑法第261条に「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と定められた器物損壊罪です。
損壊とは物理的な破壊だけを意味するものではありません。
これは「物の効用を害する一切の行為」を意味し、隠す、汚すといった行為も損壊に含まれます。
この条文の傷害は、ペット等の他人が所有する動物を傷付けた場合に使われる表現です。
前3条とは、刑法第258条の「公用文書等毀棄罪(公務所で使用される文書または電磁的記録を毀棄する罪)」、刑法第259条の「私用文書等毀棄罪(法的な権利や義務を証明する文書または電磁的記録を毀棄する罪)」、刑法第260条の「建造物等損壊罪及び同致死傷罪(建造物等を損壊する罪)」を指し、ここに含まれない物を損壊するのが器物損壊罪です。

適用される条件

建造物等以外放火罪ではなく、器物損壊罪でAさんが逮捕された理由は、Aさんの放火行為が「公共の危険を生じさせ」ていないことにあります。
公共の危険とは、不特定および多数の人、他の建造物、財産に対する危険を意味します。
参考事件の場合、放火されたゴミ箱の周りに木や木製のベンチ等、延焼する危険性があると判断される物があれば、建造物等以外放火罪が成立した可能性がありました。
しかしAさんの放火したゴミ箱は、周りに何もなかった、もしくは延焼の危険性のあるものがなかったため、器物損壊罪が適用されたと考えられます。
参考事件のように、一般的なイメージや言葉から受ける印象とは違った運用となる事件は多々あります。
そのため刑事事件を起こしてしまった時は、速やかに弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受け自身の置かれた状況を正しく把握することが重要です。

刑事事件の専門知識を持つ弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、少年事件を含めた、刑事事件を中心に取り扱う弁護士事務所です。
当事務所は初回無料の法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスのご予約を24時間体制で受け付けております。
ご予約のフリーダイヤルは、「0120-631-881」となっております。
建造物等以外放火罪の容疑でご家族が逮捕されてしまった方、または器物損壊罪事件を起こしてしまった方、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。

キャンプで使用したナイフをそのままに、銃刀法違反の適用

2024-03-11

キャンプで使用したナイフをそのままに、銃刀法違反の適用

銃刀法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県福岡市に住んでいる大学生のAさんは、刃渡り7センチメートルほどのナイフを持ってキャンプに行きました。
キャンプから帰って来た次の日、キャンプに持って行ったバッグそのままで出かけた際に、警察に呼び止められ職務質問を受けることになりました。
その際Aさんは、バッグに入れたままのナイフを警察に見つかってしまいました。
前日にキャンプに言っていたとAさんは説明しましたが、銃刀法違反の疑いで早良警察署にAさんは連行されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)

鉄砲刀剣類所持等取締法

銃刀法は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めているもので、正式名称を「鉄砲刀剣類所持等取締法」と言います。
銃刀法第22条には、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。」と定められています。
ここでいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて、継続・反復して行う事務又は事業のことです。
そのため職業だけでなくボランティア活動など、非営利な活動でも「業務」にあたります。
携帯」とは、刃物を手に持っている状態(自宅などの住居以外)や、刃物を身体に帯びるなどして使用できるようにしている状態の他、バッグに入れている状態や自動車などに積んでいる状態も「携帯」と判断されます。
また、「正当な理由」は、刃物の修理や購入して持ち帰る途中、キャンプやイベントで使用する目的での所持などがあげられます。
人に見せるために持ち歩く、護身用に携帯する行為も「正当な理由」になりません。
参考事件のAさんの場合、キャンプに行く途中であれば銃刀法違反になりませんでした。
しかし、キャンプから帰った後のナイフをそのままにし、不必要に携帯していたため、Aさんには銃刀法違反が成立しました。
この場合、Aさんの法定刑は銃刀法31条の18第2項第2号の「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。

事情聴取の対策

Aさんのように警察署へ連行されると、警察官の事情聴取を受けることになります。
事情聴取は事件の内容次第で時間が変化し、長時間拘束されたり複数回行われたりすることもあります。
事情聴取でどれだけ適切な対応ができるかで、最終的な処分も変わってきます。
しかし、事情聴取に慣れているという人は多くなく、どのような受け答えが事情聴取で適切かは専門知識がなければわからないでしょう。
事情聴取の前には弁護士に相談し、適切な受け答えをするためのアドバイスを受けることがお勧めです。
銃刀法違反で事件を起こしてしまった場合、刑事事件に詳しい弁護士に相談しましょう。

銃刀法違反に詳しい弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件および少年事件を中心に扱っている弁護士事務所です。
当事務所は、初回であれば無料でご利用いただける法律相談の他、逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスを実施しています。
ご予約はフリーダイヤル「0120-631-881」にて、土日祝含め24時間体制で受け付けております。
銃刀法違反事件の当事者となってしまった方、または銃刀法違反の容疑でご家族が逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。

【事例解説】堕胎罪とその弁護活動(妊娠中の女性が服薬により意図的に堕胎した架空の事例に基づく解説)

2024-02-02

 この記事では、架空の事例を基に、堕胎罪とその弁護活動について、解説します。

堕胎罪とは

 堕胎罪は、妊娠中の女性が自らの意思で胎児を堕胎した場合に適用される罪で、1年以下の懲役に処される可能性があります(刑法第212条)。
 堕胎した胎児がどれくらい発育していたかについては特に定めがないため、妊娠を認識していて、胎児を堕胎する目的で何かしらの方法で堕胎した場合、堕胎罪が成立し得ます。
 妊婦自身が薬を飲んだり腹を叩いたりして堕胎する場合は勿論のこと、それを他人に手伝わせた場合も含まれると考えられます。
 なお、第三者が堕胎させた場合は同意堕胎罪や業務上堕胎罪、不同意堕胎罪など、別の犯罪が成立し得ます。
※医師が行う人工妊娠中絶は、本来であれば妊婦が堕胎罪・ 医師は業務上堕胎罪が成立し得ますが、母体保護法14条等で定められた要件を満たした場合は合法的に行えます。

事例紹介:妊娠中の女性が服薬により意図的に堕胎したケース

 福岡県在住の会社員Aさんは、望まない妊娠をしてしまい、誰にも相談できずに悩んでいたところ、インターネットで見つけた薬を使用し、胎児をおろそうとしました。
 しかし、薬の副作用で卒倒して救急搬送され、一命を取り留めましたが胎児は死亡していました。病院で、Aさんは医師に服薬の目的を伝えたところ、警察に連絡がいき、Aさんは堕胎罪で警察の捜査を受けることになりました。
(事例はフィクションです。)

堕胎罪の弁護活動

 堕胎罪に関する刑事責任を判断する際、妊娠の経緯、被告人の心理状態、社会的背景、堕胎の方法とその動機など、多くの要因を考慮に入れる必要があります。
 また、被疑者(被告人)が、社会的、経済的、心理的な圧力の下で決断を迫られたなどの事情の有無や、適切な医療や支援を受ける機会を持っていたかどうかなども、重要な考慮事項になると考えられます。

 弁護士は、法的な知識と経験を活かして、被疑者(被告人)の権利を守り、適切な法的支援を提供します。また、堕胎罪のようなデリケートな事件では、弁護士は個々の事情を理解し、被疑者(被告人)に寄り添った弁護活動を行う必要があります。

 具体的には、取調べに際し、適切なアドバイスを提供することで、被疑者が不利な発言をしてしまうリスクを減らすこと、被疑者の状況から、堕胎を選択せざるを得なかった状況を捜査機関や検察官に的確に主張することなどが考えられます。

福岡県の堕胎罪に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件における弁護活動の豊富な実績があります。
 福岡県での堕胎罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】建造物侵入罪での否認事件の弁護活動(女性用浴場に侵入し逮捕された架空の事例に基づく解説)

2024-01-18

 入浴施設の女性用浴場に侵入したとして、建造物侵入の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、建造物侵入罪の成立と故意を否認する事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事例紹介: 入浴施設の女性用浴場に侵入したケース

 入浴施設の女性用浴場に侵入したとして、直方市在住の会社員男性Aが、建造物侵入の容疑で逮捕されました。
 福岡県直方警察署の調べによると、女性客から「男が入ってきた」と相談を受けた従業員が、女性用浴場でAを取り押さえ、警察に通報したとのことです。
 Aは、「女性用浴場に入った事実は認めるが、男性用浴場と間違えて入ってしまった」などと供述し、容疑を一部否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

建造物侵入罪とは

 正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入した場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する、とされています(刑法第130条)

 「建造物」とは、住居、邸宅以外の建物一般を指します。入浴施設は、人(施設の管理人)が看守している「建造物」にあたるといえます。

 建造物侵入罪における「侵入」とは、建造物の管理権者の意思に反して立ち入ることとされ、入浴施設の女性用浴場に男性が立ち入ることは、通常、施設の管理人の意思に反するものと考えられます。

故意を否認する事件の刑事弁護

 刑法第38条第1項で、罪を犯す意思がない行為は、法律に特別の規定がある場合を除いて罰しない、と規定されています。
 「罪を犯す意思」は「故意」とも呼ばれ、犯罪事実を認識・認容しているときに故意があるとされます。故意がない場合、外形的には犯罪の構成要件に該当する行為を行った場合であっても、過失犯処罰規定などの特別の規定がない限り、罰せられないこととなります。

 本件Aは、女性用浴場に男性用浴場と間違って入ったと供述しており、これは、入浴施設の管理人の意思に反する立ち入りという、建造物侵入罪における「侵入」を行うことの認識・認容、即ち故意がなかったという主張になります。
 建造物侵入罪には、過失犯処罰規定などの特別の規定がないため、故意が認定されなければ、Aは罰せられないことになります。

 故意を否認する事件の場合、弁護活動としては、被疑者の主張に合理性が認められるよう、被疑者や家族、関係者などから、被疑者の生活状況や事件の経緯などを聴き取ったり、客観的な証拠を収集したりした上で、嫌疑不十分による不起訴処分を目指すことが考えられます。

 本件でいえば、Aの入浴施設の利用状況・回数、女性用浴場と男性用浴場の入れ替えの有無や表示の仕方、利用客の多寡、取り押さえられた際のAの様子などの諸般の事情から、男性用浴場と間違って女性用浴場に入ったというAの供述が不合理でなく、故意が認められるか疑わしいことを、検察官に対して、意見書などで的確に主張する必要があると考えられます。

 なお、このような否認事件の場合は、逮捕後に勾留されて、身体拘束が長期化することや、捜査機関による取調べが厳しくなる可能性が高くなることが考えられるため、逮捕後早い段階で、刑事事件に強い弁護士に依頼し、身体拘束からの解放に向けた弁護活動を行ってもらうことや、取調べ対応についてのアドバイスを受けることをお勧めします。

福岡県の建造物侵入事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、否認事件において、嫌疑不十分による不起訴処分や無罪判決を獲得している実績があります。
 建造物侵入罪の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】偽造通貨行使罪とその弁護活動(タクシー料金支払いに偽札を使用した架空の事例に基づく解説)

2023-12-28

 タクシー料金の支払いに偽の1万円札を使用し、偽造通貨行使の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、偽造通貨行使罪の成立とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事例紹介:福岡市内でタクシーを利用したAさんのケース

 タクシー料金の支払いに偽の1万円札を使ったとして、福岡市在住の男性Aが偽造通貨行使の容疑で逮捕されました。
 福岡県博多警察署の調べによると、Aは同市内で夜間にタクシーを利用し、乗車料金1千円を支払う際、運転手のVに偽の1万円札を渡し、釣り銭約9千円を受け取ったとのことです。
 Aは偽造通貨行使の容疑を認めており、「カラープリンターを使って自分で偽札を作った」などと供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

偽造通貨行使罪とは

 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使した者は、無期又は3年以上の懲役に処する、とされています(刑法第148条第2項)。

 同罪における「偽造」とは、通貨(貨幣、紙幣又は銀行券)の発行権者(政府、日本銀行)でない者が、真正(本物)の通貨の外観を有するものを作ることとされ、真正の通貨を加工することによる「変造」と区別されます。
 カラープリンターを使って偽札を作るという単純な場合でも、一般人から見て、真正な通貨と誤認する程度に似ていれさえすれば、「偽造」となります。
 
 同罪における「行使」とは、偽造・変造された通貨を真正な通貨として流通に置くこととされます。
 本件で、Vに乗車料金の支払いの際に偽札を渡した行為は、偽札であることを知らない他者に、料金の支払いとして偽札の占有を移転するものであり、「真正な通貨として流通に置く」もの、即ち「行使」にあたり、Aに偽造通貨行使罪が成立し得ると考えられます。

偽造通貨行使罪以外に成立し得る罪の検討

 Aは、「自分で偽札をつくった」と供述しており、真正な通貨として流通に置くという「行使の目的」を有して偽造したのであれば、通貨偽造罪(刑法第148条第1項)も成立することになりますが、通貨偽造罪と偽造通貨行使罪は、目的と手段の関係にあたる牽連犯(刑法第54条第1項後段)として、その最も重い刑(無期又は3年以上の懲役)により処断されます。

 また、Aに詐欺罪が成立しないかも問題となると考えられますが、詐欺の手段として偽造通貨を行使した場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収されるため、別途成立しないとされます。なお、詐欺の事情は、偽造通貨行使罪の量刑判断に際して考慮され得る場合があると考えられます。

偽造通貨行使事件の刑事弁護

 偽造通貨行使罪は、罰金刑の定めがないため、起訴されると正式な裁判となる上、法定刑に無期懲役を含むことから、裁判員裁判の対象となり、通常の裁判よりも、期間が長期化することや手続きも複雑になることが考えられます。

 そのため、弁護活動としては、起訴され裁判となることを避けるために、行使の目的、回数、態様、悪質性、再犯防止の可能性などから、不起訴処分が妥当であると主張し、検察官と交渉することが考えられます。 

 また、偽造通貨行使罪は、通貨に対する公共の信用といった社会的法益を侵害する罪と考えられていますが、詐欺罪が吸収されている場合は、詐欺の被害者に対する被害弁償や示談交渉を行うことも弁護活動として必要になると考えられます。

 このように、偽造通貨行使罪は、求められる弁護活動が多岐にわたる可能性があるため、刑事事件に強い弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の偽造通貨行使罪に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、様々な刑事事件において、不起訴処分や刑の減軽を獲得している実績があります。
 偽造通貨行使事件の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

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