Archive for the ‘薬物事件’ Category
大麻所持で逮捕、被害者がいない事件での弁護活動
大麻所持で逮捕、被害者がいない事件での弁護活動
大麻取締法違反と贖罪寄付について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡県古賀市に住んでいる大学生のAさんは、インターネットで大麻を日常的に購入しており、自宅や友人宅で使用していました。
ある日、Aさんが友人と一緒に大麻を吸うため友人宅に向かっていたところ、パトロール中だった警察官に呼び止められました。
そして職務質問を受けていたところ、Aさんが隠し持っていた大麻が警察官に見つかってしまいました。
そしてAさんは大麻取締法違反の容疑で粕屋警察署に連行されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)
大麻取締法
大麻取締法違反は、その言葉通り大麻取締法の規定を破ったことを意味します。
大麻取締法第24条の2第1項には「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。」と定められています。
そのためAさんのように大麻を所持しているだけでも大麻取締法違反となります。
薬物事件の弁護活動
大麻の所持による大麻取締法違反の法定刑は、「5年以下の懲役」のみが定められています。
つまり、罰金処分にすることができず、起訴されて有罪判決が下ってしまった場合、刑務所へ服役することになってしまいます。
実刑判決を避けるためには執行猶予の獲得を目指す必要がありますが、薬物事件は基本的に被害者が存在しない事件であるため、刑事事件で減刑に効果的な示談の締結という手段が取れません。
しかし薬物事件のような被害者が存在しない事件でとれる手続きで、贖罪寄付というものがあります。
贖罪寄付とは、事件を起こしてしまったことを心から反省していると表明するために、公的な組織や団体に対して寄付を行うことです。
贖罪寄付は示談金と同様に、事件の内容次第で金額の相場が変わります。
また、贖罪寄付を受け入れている団体は、多くの場合弁護士を通してのみ贖罪寄付を行えます。
そのため贖罪寄付をお考えの際は、弁護士に依頼する必要があります。
また、薬物事件の場合、病院で薬物治療を受けることで再発防止に努めていることを、弁護士を通じてアピールすることも大切です。
大麻取締法違反の際は、弁護士に相談し、弁護活動を依頼することをお勧めいたします。
薬物事件の際はご連絡ください
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件及び少年事件を中心に取り扱っている弁護士事務所です。
当事務所ではフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回無料でご利用いただける法律相談の他、逮捕および勾留された方のもとに直接弁護士が赴く初回接見サービスのご予約を受け付けております。
薬物事件の当事者となってしまった、またはご家族が大麻取締法違反の容疑で逮捕または勾留されてしまった、このような場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご連絡ください。
【事例解説】薬物事件での弁護活動における贖罪寄付(麻薬を所持して逮捕された架空の事例に基づく解説)
この記事では、架空の麻薬及び向精神薬取締法違反事件を基に、薬物事件での弁護活動における贖罪寄付について、解説します。
麻薬及び向精神薬取締法違反とは
麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬や向精神薬の製造、輸出入、所持、使用、および販売を規制する法律です。この法律の主な目的は、薬物乱用の防止と公衆衛生の保護にあるとされます。
「麻薬」には、ジアセチルモルヒネ等(ヘロイン)、コカイン、モルヒネなど、76種の薬物が指定されています。麻薬の所持は、ジアセチルモルヒネ等の場合は特に重く10年以下の懲役、それ以外の麻薬の場合は7年以下の懲役に処するとされています(同法第64条の2、第66条)。
また、麻薬の販売や製造に関与した場合、さらに重い刑罰が科されることがあります。
事例紹介:福岡市の会社員の逮捕
福岡市在住のAさんは、友人から麻薬を購入し、定期的に自宅で使用していました。
Aさんの友人が逮捕されたことが契機となり、Aさんの自宅に警察の家宅捜索が行われて麻薬が発見され、Aさんは麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
薬物事件における贖罪寄付の意義
麻薬及び向精神薬取締法違反などの薬物事件においては、被疑者(被告人)の過去の犯罪歴、事件の具体的な状況、および被疑者(被告人)の再犯防止可能性など、様々な要素が考慮された上、刑事処分が決定されることとなりますが、贖罪寄付は一定の役割を果たすと考えられます。
贖罪寄付とは、公的な団体や社会福祉団体などに対して、反省の意を示すために行われる寄付のことです。この寄付は、被疑者(被告人)が自らの行為に対して真摯に反省していることを、捜査機関や裁判所に示す手段として用いられます。
薬物事件では一般的に、直接的な被害者が存在しないことから、被害者との示談締結による刑事処分の軽減を目指すことが難しいため、贖罪寄付は薬物事件での弁護活動における有用な手段の一つと考えられます。
当然ながら、贖罪寄付をおこなうだけでなく、薬物依存治療プログラムへの参加やカウンセリングの受講など、再発防止に向けた取組みを行うことも重要です。
贖罪寄付の実施方法
贖罪寄付の実施には、特定の手順と考慮すべき要素があるため、刑事事件の弁護活動の経験豊富な弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士は、寄付先の選定や寄付額の決定において、同種の前例なども考慮しながら、適切なアドバイスを提供することが可能です。
また、寄付の実施や寄付が行われたことの証明書の捜査機関や裁判所への提出も、通常、弁護士を通じて行うこととなります。この証明書は、被疑者(被告人)が反省していることを示す重要な証拠となり得ます。
福岡県の薬物事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、麻薬及び向精神薬取締法違反事件などの薬物事件における弁護活動の豊富な実績があります。
福岡県での薬物事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】危険ドラッグ所持とその弁護活動(危険ドラッグを所持して逮捕された架空の事例に基づく解説)
この記事では、架空の事例を基に、危険ドラッグ所持により成立する犯罪とその弁護活動について、解説します。
危険ドラッグとは
危険ドラッグは、合法的な薬物に似せて製造された、非合法な薬物です。
これらは、麻薬や覚せい剤のような既存の薬物に似た効果を持ちながら、法的な規制を逃れるために作られています。しかし、製造過程での不純物の混入などにより、予期せぬ危険性を持つことがあります。
日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」(薬機法)により、これらの薬物は「指定薬物」として規制されています。この法律は、医療目的以外での指定薬物の所持、売買、製造を禁じており、違反した場合には厳しい罰則が科されます。
事例紹介:危険ドラッグを所持して逮捕されたケース
Aさんは、福岡県在住の大学生で、友人の紹介で危険ドラッグを摂取するようになりました。ある日、危険ドラッグを使用した後に外出したAさんは、警察官に声を掛けられ、その様子から薬物使用の疑いを持たれました。
警察による家宅捜索の結果、Aさんの自宅から危険ドラッグが発見され、薬機法違反の疑いで逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
危険ドラッグ所持の法的な罰則
危険ドラッグの所持は、日本の法律において重大な違反行為とされています。
具体的には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」(薬機法)に基づき、厳しく罰せられます。この法律では、指定薬物の所持、売買、製造などを禁止しており、違反した場合、最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはこれらの両方が科される可能性があります。
特に、大量の危険ドラッグを所持していた場合や、販売目的であった場合など、犯罪の重大性に応じて、より厳しい刑罰が科されることもあります。
このように、危険ドラッグの所持は、個人の生活に深刻な影響を及ぼすだけでなく、社会的なリスクも高いため、法律によって厳しく規制されているのです。
情状弁護の概念と重要性
情状弁護は、刑事裁判において被告人に有利な事情を主張し、より軽い判決を求める法的な戦略です。この弁護の目的は、裁判所に被告人の状況や背景、犯罪に至った経緯を理解してもらい、刑罰の軽減を図ることにあります。
情状弁護では、犯罪の動機や背景、被告人の反省の態度、被害の弁償など、犯罪に至った具体的な事情が重視されます。特に、初犯である場合や、犯罪への反省が見られる場合には、執行猶予の付与など、より寛大な判決が下される可能性が高まります。
危険ドラッグ所持のような犯罪では、法定刑が比較的軽いため、情状弁護の効果が大きく現れやすいとされています。このため、弁護士は被告人の社会復帰を支援するためにも、情状弁護を適切に行うことが重要となるのです。
危険ドラッグ所持における弁護戦略
Aさんのケースでは、弁護士はまず、Aさんが危険ドラッグに手を出した背景と動機を詳細に調査しました。友人の影響や社会的圧力、知識の不足など、犯罪に至った要因を明らかにすることが重要です。
次に、Aさんが犯罪を行った後の反省の態度や、再犯防止のための具体的な計画を裁判所に提示しました。これには、薬物依存治療への参加や、社会復帰に向けた支援プログラムへの参加意向などが含まれます。
また、Aさんの家族や友人からの支援の証言も、弁護の一環として取り入れられました。
このように、Aさんの個人的な事情や社会復帰への意欲を強調することで、より寛大な判決を求める戦略が採用されたのです。
福岡県の危険ドラッグ所持事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、危険ドラッグ所持などの薬物事件における弁護活動の豊富な実績があります。
福岡県での大麻取締法違反事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】大麻取締法違反とその弁護活動(大麻の栽培で逮捕された架空の事例に基づく解説)
大麻取締法違反は、我が国において重大な犯罪とされています。
この記事では、架空の事例を基に、大麻取締法違反がどのように扱われ、弁護活動がどのように展開されるかを解説します。
大麻取締法とは
大麻取締法は、大麻の不正な使用を防止し、公衆衛生の保護などを目的とする法律です。
この法律は、大麻の所持、栽培、譲渡、輸入、および輸出などを厳しく規制しています。特に、営利を目的とした場合は、より重い刑罰が科されることになります。
事例紹介:高校教師の逮捕
福岡市内の高校教師であるAさんは、個人的な好奇心から、自宅で小規模ながら大麻草を栽培していました。ある日、福岡県博多警察署の警察がAさんの自宅を訪れ、Aさんは大麻取締法違反の容疑で逮捕されました。
Aさんの母親であるBさんは、警察官から、Aさんを大麻取締法違反の疑いで逮捕したとの連絡を受けました。
(事例はフィクションです。)
罪に問われる行為
大麻取締法における罰則は、大麻の不正な取り扱いを防ぐために厳格に設定されています。
例えば、Aさんのように個人的な使用目的であっても、大麻草を栽培する行為は法律により禁止されており、発覚した場合、刑事罰の対象となります。
大麻取締法第24条では、無許可の栽培はもちろん、所持や譲渡、輸入及び輸出も罰せられる行為と明記されています。
これらの行為が発覚した場合、最大で7年の懲役刑に処される可能性があり、営利目的であればさらに重い罰則が適用されます。
営利目的の栽培とその罰則
営利目的での大麻栽培は、個人的な使用を超えた重大な犯罪行為とみなされます。
大麻取締法では、営利を目的とした栽培は特に厳しく処罰され、第24条2項により、10年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方に処されることがあります。
このような重い罰則は、大麻の商業的な流通を抑制し、社会における大麻の悪影響を最小限に留めるために設けられていると考えられます。
弁護活動の重要性
Aさんのように大麻取締法違反事件といった薬物事件で逮捕された場合、逮捕、逮捕の後からの勾留、勾留期間経過後での検察官による起訴、起訴された後の勾留と、身体の拘束期間が長期化する傾向があります。
こうした、大麻取締法違反の疑いでの逮捕による、その後の生活への影響を何とか最小限に留めたいという場合には、いち早く薬物事件に精通した弁護士に初回接見を依頼して、逮捕されたご本人様の身体の拘束を解いてもらうような弁護活動をとることが重要になります。
福岡県の大麻取締法違反事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、大麻取締法違反などの薬物事件における弁護活動の豊富な実績があります。
福岡県での大麻取締法違反事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】覚醒剤使用事件における別件逮捕の違法性(後編)
前回に引き続き、軽犯罪法違反(凶器携帯)の容疑で逮捕中に行われた強制採尿により、覚醒剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、覚醒剤使用事件における別件逮捕の違法性とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市在住の自営業男性A(32歳)が深夜、同市中央区中洲の路地に佇んでいたところ、巡回中の福岡県中央警察署の警察官Pに気づき慌てた様子で立ち去ろうとしました
PはAを呼び止め、Aの様子から覚醒剤使用の疑いがあると考え、職務質問を行ったところ、Aは氏名や住所を明らかにしませんでした。
また、PはAの承諾を得て所持品を検査したところ、覚醒剤などの薬物は発見できませんでしたが、ポケットに刃渡り5.5センチメートルのカッターナイフを所持していたことから、軽犯罪法違反(凶器携帯)の容疑でAを現行犯逮捕しました。
警察署で取調べを行ったPは、Aに任意での尿検査を提案しましたが応じなかったため、令状により強制採尿したところ、覚醒剤の陽性反応が出たことにより、Aは覚醒剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
前回の前編では、軽犯罪法違反での逮捕について解説しました。
別件逮捕の違法性について
別件逮捕とは、警察等の捜査機関が本来目的としている事件(「本件」)の取調べなどを行うことを狙いとして、逮捕の要件を充たす、別の軽微な事件(「別件」)で被疑者を逮捕することとされます。
別件逮捕の問題点として、(1)身体拘束に関する令状主義(憲法第33条、刑事訴訟法第199条)を実質的に犯すものであること、(2)厳格な定めのある身体拘束期間(刑事訴訟法第203条以下)を潜脱するものであること、が指摘されます。
(1)について、逮捕による身体拘束は被疑者の人権の重大な制約であることとの均衡から、逮捕の要件を充たすかは、被疑事実ごとに裁判官の逮捕状発付の手続き(司法審査)を受けなければならないにも関わらず、別件逮捕によれば、本件について全く司法審査を経ることなく、実質的に本件による逮捕を行うことができるという問題があります。
(2)について、再逮捕・再勾留による例外を除き、1つの被疑事実における逮捕・勾留による身体拘束期間は、最長23日間と厳格に定められているにもかかわらず、別件逮捕によれば、実質本件のために、最長46日間の身体拘束を行うことができるという問題があります。
よって、本件取調べ目的での別件逮捕は違法と解すべきですが、本件取調べ目的の有無は、捜査機関の主観の問題であるため、(ア)別件での逮捕の必要性の程度、(イ)本件と別件との関連性(被害者、犯行日、犯行態様、法定刑の軽重等)、(ウ)逮捕後の取調状況(取調べ時間の比率等)、(エ)本件についての捜査状況、などの客観的資料から事後的に判断することになると考えられます。
覚醒剤使用事件で別件逮捕が行われた場合の弁護活動
覚醒剤使用が疑われる事件においては、被疑者が任意採尿に応じない場合、裁判官の強制採尿令状を得られるまでの間、被疑者を身体拘束する法的な根拠がないことなどから、被疑者を実質的に拘束する手段として別件逮捕が行われ、別件逮捕の違法性が争われる事例が見受けられます。
別件逮捕の違法性が認定されたことにより、違法な別件逮捕による身体拘束を利用して得られた証拠の証拠能力が否定された結果、無罪となった裁判例が数多くあります。
他方で、別件逮捕の違法性を認定しつつも、得られた証拠の証拠能力までは否定せず有罪とされた裁判例もあるため、公判で別件逮捕の違法性を主張することにより無罪を争うことは容易ではありませんが、弁護人が、起訴される前の段階で検察官に対し、別件逮捕の違法性を十分な説得力をもって主張することで、検察官が不起訴処分を選択する可能性を高めることができると考えられます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、覚醒剤使用などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
ご家族が覚醒剤使用の容疑で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事例解説】覚醒剤使用事件における別件逮捕の違法性(前編)
軽犯罪法違反(凶器携帯)の容疑で逮捕中に行われた強制採尿により、覚醒剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、覚醒剤使用事件における別件逮捕の違法性とその弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市在住の自営業男性A(32歳)が深夜、同市中央区中洲の路地に佇んでいたところ、巡回中の福岡県中央警察署の警察官Pに気づき慌てた様子で立ち去ろうとしました
PはAを呼び止め、Aの様子から覚醒剤使用の疑いがあると考え、職務質問を行ったところ、Aは氏名や住所を明らかにしませんでした。
また、PはAの承諾を得て所持品を検査したところ、覚醒剤などの薬物は発見できませんでしたが、ポケットに刃渡り5.5センチメートルのカッターナイフを所持していたことから、軽犯罪法違反(凶器携帯)の容疑でAを現行犯逮捕しました。
警察署で取調べを行ったPは、Aに任意での尿検査を提案しましたが応じなかったため、令状により強制採尿したところ、覚醒剤の陽性反応が出たことにより、Aは覚醒剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
軽犯罪法違反での逮捕について
Aは、正当な理由がなく刃物を隠して携帯していた、として軽犯罪法違反で逮捕されました(同法第1条第2号参照)。
軽犯罪法違反の法定刑は、拘留又は科料のみ規定されているため、いわゆる「軽微犯罪」として、通常の要件に加えて、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合、に限り現行犯逮捕が認められます(刑事訴訟法第217条)。
Aは、職務質問に対し氏名や住所を明らかにしなかったため、現行犯逮捕の要件を一応充たしていたものと考えられます。
軽犯罪法違反での逮捕が、要件を充たすため逮捕時点では違法でないと認められたとしても、取調べにおいて、Aに任意での尿検査を提案し、Aが応じなかったため強制採尿するなど、軽犯罪法違反での逮捕による身体拘束を利用して、覚醒剤取締法違反(使用)での捜査を行っていることから、違法な別件逮捕と言えないでしょうか。
次回の後編では、別件逮捕の違法性について、解説します。
覚醒剤使用事件で別件逮捕が行われた場合の弁護活動
覚醒剤使用が疑われる事件においては、被疑者が任意採尿に応じない場合、裁判官の強制採尿令状を得られるまでの間、被疑者を身体拘束する法的な根拠がないことなどから、被疑者を実質的に拘束する手段として別件逮捕が行われ、別件逮捕の違法性が争われる事例が見受けられます。
別件逮捕の違法性が認定されたことにより、違法な別件逮捕による身体拘束を利用して得られた証拠の証拠能力が否定された結果、無罪となった裁判例が数多くあります。
他方で、別件逮捕の違法性を認定しつつも、得られた証拠の証拠能力までは否定せず有罪とされた裁判例もあるため、公判で別件逮捕の違法性を主張することにより無罪を争うことは容易ではありませんが、弁護人が、起訴される前の段階で検察官に対し、別件逮捕の違法性を十分な説得力をもって主張することで、検察官が不起訴処分を選択する可能性を高めることができると考えられます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、覚醒剤使用などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
ご家族が覚醒剤使用の容疑で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事件解説】覚醒剤を麻薬と誤認して所持した被疑者を麻薬取締法違反で起訴
覚醒剤取締法違反(所持)で逮捕されていた被疑者が、覚醒剤を麻薬と誤認していたことなどから、罪名が切り替えられ麻薬取締法違反(所持)で起訴された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事件概要
福岡県宗像市内の自宅で覚醒剤を所持していたとして、覚醒剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕されていた会社員男性A(32歳)が、麻薬取締法違反(所持)で起訴されました。
Aは、覚醒剤の成分が入った錠剤0.2グラムを所持していたとして覚醒剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕されていました。Aは取調べにおいて、「錠剤は以前大麻を購入した際に、おまけでもらったものであり、覚醒剤とは知らなかった。MDMA(合成麻薬)だと思っていた。」と供述していたとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)
覚醒剤取締法違反(所持)と麻薬取締法違反(所持)について
「覚醒剤」とは、「覚醒剤取締法」において、フエニルアミノプロパン及びフエニルメチルアミノプロパン、又は同種の覚醒作用を有する物などと定義されています。
覚醒剤の所持は重大犯罪であり、10年以下の懲役に処するとされています(同法41条の2第1項)。
「麻薬」とは、「麻薬及び向精神薬取締法」(「麻薬取締法」)において規定される麻酔作用を持つ薬物の総称であり、ジアセチルモルヒネ等(ヘロイン)、コカイン、モルヒネなど、76種の薬物が指定されています。
麻薬の所持は、ジアセチルモルヒネ等の場合は特に重く10年以下の懲役、それ以外の麻薬の場合は7年以下の懲役に処するとされています(同法第64条の2、第66条)。
本件で、Aが誤認していたと主張するMDMA(合成麻薬)の所持は、それ以外の麻薬所持の場合にあたり、7年以下の懲役の対象となります。
覚醒剤を麻薬と誤認して所持した場合に成立し得る罪
本件Aは、法定刑が7年以下の懲役の麻薬取締法違反(所持)(「軽い罪」)の認識で、法定刑が10年以下の懲役の覚醒剤取締法違反(所持)(「重い罪」)を犯していることになりますが、この場合、Aに何罪が成立し得るのか問題となります。
「重い罪」に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその「重い罪」に当たることとなる事実を知らなかった者は、その「重い罪」によって処断することはできない、と規定されています(刑法第38条第2項)。
Aが、対象薬物が覚醒剤であると本当に知らなかったのか、関係者の証言や客観的証拠も踏まえて事実認定されることとなりますが、その立証ができない場合、同条により「重い罪」である覚醒剤取締法違反(所持)は成立しないこととなります。
しかし、覚醒剤取締法違反(所持)と麻薬取締法違反(所持)は、薬物の濫用による保健衛生上の危害を防止するために、禁止された薬物の所持に対する取締規定である点で共通していること、取締りの方法、対象薬物の有害性や外観等が類似していることから、罪名の異なる犯罪ではありますが、実質的に重なり合う犯罪であると考えられます。
このような場合、「重い罪」が成立しないとしても、「重い罪」と「軽い罪」が実質的に重なり合う限度で「軽い罪」が成立し得るとされることから、本件では、「軽い罪」である麻薬取締法違反(所持)が成立し得るとされるため、罪名が切り替えられ麻薬取締法違反(所持)で起訴されたと考えられます。
薬物事件で故意を否認する場合の弁護活動について
薬物事件において、対象薬物であることを知らなかったとして故意を否認する場合は、弁護活動としては、被疑者(被告人)の主張に合理性が認められるよう、被疑者(被告人)から事件の経緯を聴き取り、客観的な証拠を収集した上で、嫌疑不十分による不起訴処分などを求めることが考えられます。
このような否認事件の場合は、捜査機関による取調べが厳しくなる可能性が高くなるため、被疑者(被告人)と綿密な接見を行い、自己に不利な供述をしないよう取調べ対応についてのアドバイスを行うことが考えられます。
また、薬物事件では、逃亡や罪証隠滅の恐れがあるとして、勾留が決定・延長され身体拘束が長期化したり、接見等禁止決定が付いたりする可能性が高いため、身体拘束からの解放や接見等禁止決定の解除に向けた弁護活動も重要となってきます。
事件の内容によって対応も様々に異なるため、刑事事件に強く、薬物事件の刑事弁護の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、覚醒剤所持などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
ご家族が覚醒剤などの薬物所持の容疑で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事例解説】所持品検査に違法性の疑いのある覚醒剤所持事件
職務質問に伴う所持品検査により、覚醒剤所持が発覚し現行犯逮捕された架空の事件を参考に、所持品検査の違法性と押収された証拠の証拠能力について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市在住の自営業男性A(28歳)が深夜、同市中央区天神の路地に佇んでいたところ、巡回中の福岡県中央警察署の警察官Pに気づき慌てた様子で立ち去ろうとしました
PはAを呼び止め、Aの挙動不審な様子から、何らかの犯罪の嫌疑があると考え、Aに職務質問を行い、所持しているバッグの中身を見せるように言いました。
Aが拒否してその場を去ろうとしたため、PはAの進路を塞ぎ、Aのバッグを掴んで開き、中から粉末入りの小袋と注射器を発見しました。その場で検査したところ、粉末が覚醒剤であると判明したため、Aは覚醒剤所持の容疑で現行犯逮捕され、覚醒剤と注射器は証拠として押収されました。
(事例はフィクションです。)
所持品検査の違法性について
警察官は、何らかの犯罪の嫌疑がある者に対し、職務質問を行うことができます(警察官職務執行法第2条第1項)。
職務質問に伴い所持品検査を行うことは、職務質問の効果をあげる上で必要性、有効性の認められる行為であるとして、許容される場合があるとされますが、任意の職務質問に附随する行為として許容される以上、所持人の承諾を得て、その限度で行うのが原則とされます。
本件で、Aは所持品検査を承諾しておらず、Pはその場を立ち去ろうとするAの進路を塞いだ上、Aのバッグを掴んで開いています。
詳細な状況次第ではありますが、本件所持品検査は、Aの意思に反して、所持品の捜索・押収を受けることのない権利(憲法第35条)を侵害する強制処分(個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するもの)であるとして、捜索・差押令状なく行うことが違法と判断される可能性があります。
また、強制処分に至るものではないと判断された場合でも、本件所持品検査の必要性・緊急性を考慮の上、具体的状況の下で相当と認められる限度を超えた処分として、なお違法と判断される可能性はあります。
違法な所持品検査により押収された証拠の証拠能力
本件所持品検査が違法と判断されたとしても、Aが押収された覚醒剤を所持していた事実に変わりはないため、Aはこれを所持していたことによる覚醒剤取締法違反(所持)で有罪と認定され得るでしょうか。
これについて、証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法捜査抑止の見地からして相当でないと認められる場合、証拠能力を否定すべきと解されています。
証拠能力とは、証拠として公判廷に提出して事実認定に供しうる能力とされますので、証拠能力が否定される場合、当該証拠に基づく有罪認定はできなくなります。
本件に照らすと、所持品検査に、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これによって押収された覚醒剤等を証拠として許容することで、将来同様の違法な所持品検査が繰り返されるおそれがあり相当でないと認められる場合、押収された覚醒剤等の証拠能力が否定され、これらを証拠としては覚醒剤取締法違反(所持)で有罪と認定されないことになります。
所持品検査に違法性の疑いのある覚醒剤所持事件の弁護活動
覚醒剤使用・所持などの薬物事件では、令状又は本人の許可なく行われた居室への立ち入りや、実質逮捕に相当するような任意同行などについて、捜査の違法性が認定され、違法な捜査により得られた証拠の証拠能力が否定された結果、無罪となった裁判例が数多くあります。
他方で、捜査の違法性を認定しつつも、得られた証拠の証拠能力までは否定せず有罪とされる場合もあるため、公判で捜査の違法性を主張することにより無罪を争うことは容易ではありませんが、弁護人が、起訴される前の段階で検察官に対し、所持品検査の違法性を十分な説得力をもって主張することで、検察官が不起訴処分を選択する可能性を高めることができると考えられます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、覚醒剤所持などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
ご家族が覚醒剤所持の容疑で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事件解説】覚醒剤共同使用 保護責任者遺棄罪で逮捕
覚醒剤を共同使用し、容態が悪化した知人を放置したとして、保護責任者遺棄罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事件概要
覚醒剤を共同使用していたところ、容態が悪化した知人男性V(28歳)に対し適切な措置を怠り放置したとして、福岡市中央区在住の会社員男性A(32歳)が保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されました。
福岡県警中央警察署の調べによると、Aは、Aの自宅で覚醒剤を共同使用していたVの容態が悪化したにもかかわらず4時間ほど放置し、その後消防に通報しましたが、救急隊が駆け付けたときにはVの意識はなく、その後くも膜下出血で死亡が確認されたとのことです。
警察の調べに対し、Aは保護責任者遺棄罪の認否を明らかにしていません。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)
保護責任者遺棄罪とは
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者が、これらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する、と定めています(刑法第218条)。
保護責任者遺棄罪は、ある場所から別の場所へ運ぶという作為的な行為(移置)のみならず、置き去りや不保護といった不作為をも処罰対象とする犯罪のため、犯罪の成立には、「保護する責任」(作為義務)を有する者であることが求められます。
「保護する責任のある者」とは、子どもの親権者や老人ホームの介護職員など、法令や契約により義務を負う者のみならず、人気のない道路で倒れている他人を介抱した通行人や、飲み会で泥酔した人と同席の友人など、善意で引き受けた場合や社会通念上相当な場合(条理)に保護義務が生じることもあります。
本件のような薬物の共同使用の場合、元男性俳優が、MDMAを共同使用して薬物中毒で意識不明になった女性への適切な処置を怠ったとして保護責任者遺棄罪で有罪となった例があるなど、状況次第で、条理により「保護する責任のある者」と認定されることがあります。
本件で、例えば、当時Aの自宅にAとV以外の者がおらず、容態の悪化したVの保護はAが行うほかない状況だったとすれば、Aは「保護する責任のある者」と認定され得ます。
その場合、容態が悪化した「病者」のVを、「保護する責任のある者」であるAが4時間ほど放置したことは、「遺棄した」(置き去り)又は「生存に必要な保護をしなかった」ものとして、保護責任者遺棄罪が成立する可能性が高いです。
なお、逮捕時点での容疑は保護責任者遺棄罪ですが、今後の捜査で、Aが適切な措置をしていればVが死亡しなかった疑いが強まれば、被疑罪名が保護責任者遺棄致死罪、AがVへの殺意を持って放置した疑いが強まれば被疑罪名が殺人罪、となる可能性もあります。
覚醒剤共同使用による保護責任者遺棄罪の刑事弁護
保護責任者遺棄罪でも懲役刑しかない重い罪でありますが、保護責任者遺棄致死罪で有罪になると、3年以上20年以下の懲役が科せられる可能性があります。
本件では、Aは保護責任者遺棄罪の認否を明らかにしていないとのことですが、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。
また、被害者対応や覚醒剤取締法違反(使用)容疑への対応など、行うべき弁護活動が多岐にわたるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、保護責任者遺棄罪や薬物事件の弁護活動の実績が多数あります。
覚醒剤共同使用による保護責任者遺棄罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【福岡県の薬物事件】警察で採尿されました…逮捕されますか?
『警察で採尿されました…逮捕されますか?』
このご質問に、福岡県の薬物事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士がお答えします。
相談内容
私は覚醒剤の前科があります。
昨日、博多警察署の警察官に職務質問された際に任意採尿を求められたので、警察署に移動して自然排尿した尿を提出しました。
実は1週間前に友人からもらった覚醒剤を使用していたのですが、簡易鑑定では覚醒剤反応が出ずに帰宅することができました。
本鑑定では覚醒剤反応が出るのでしょうか?もし覚醒剤反応が出た場合、逮捕されますか?
(この相談内容は実際にあったご相談を基にしたフィクションです。)
この相談はフィクションですが、同じような内容の相談が、薬物事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部によくあります。
今回は、この質問に薬物事件に強い弁護士がお答えします。
Q1 本鑑定で覚醒剤反応が出るのか?
採尿直後に、警察官が行う鑑定は、簡易鑑定です。
もし、覚醒剤の使用直後から15日までの間に採尿された場合は、簡易鑑定で覚醒剤反応が出なかった場合でも、科学捜査研究所で行う本鑑定で覚醒剤反応が出る可能性はあります。
Q2 本鑑定で覚醒剤反応が出た場合逮捕されますか?
逮捕される可能性は非常に高いです。
覚醒剤の使用事件の取調べは、覚醒剤を使用した経緯や、覚醒剤の使用時期、使用量、使用方法だけでなく、覚醒剤の常習性や、使用した覚醒剤の入手先に至るまで幅広く行われるため、逮捕、勾留される可能性が非常に高いです。
またQ2の質問に続いて、多い皆様からの質問が
「採尿されてどれぐらいで逮捕されますか?」
といった内容です。
科学捜査研究所での本鑑定に要する時間や、逮捕状を請求するまでの時間が法律的に定まっていないことから、逮捕までの時間はハッキリとお答えできません。
採尿から数日後に逮捕された方もいますし、遅い方は採尿から1カ月以上経過して逮捕された方もいます。
まずは弁護士に相談を
覚醒剤の使用事件で警察に逮捕されるか不安のある方、福岡県で薬物事件に強い弁護士をお探しの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部では、薬物事件に関するご相談を初回無料で承っておりますので、ご相談を希望される方は フリーダイヤル 0120-631-881 までお気軽にお問い合わせください。