身代わり出頭と刑事責任

2019-11-05

身代わり出頭と刑事責任

身代わり出頭と刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

Aさんは、福岡県太宰府市内の高速道路を、法定速度を約60キロメートル超過した時速約160キロメートルで車を運転していた際、オービスに反応したことに気づきました。その1週間後、Aさんはスピード違反の疑いで福岡県筑紫野警察署から呼び出しを受けてしまいました。Aさんは過去にも同じスピード違反で検挙されており、裁判を受けた経験もあったことから(執行猶予付き判決)、「今後こそは実刑になる」「免許を取り消されたくない」と思い、違反の際、後部座席に同乗していた知人Bさんに代わりに出頭してもらいたい旨を言いました。すると、Bさんはこれを了承して筑紫野警察署へ出頭しましたが、身代わり出頭が発覚して犯人隠避罪の疑いで事情聴取を受けることになりました。そして、Aさんも道路交通法違反(スピード違反)、犯人隠避罪の教唆犯の被疑者として事情聴取を受けることになりました。
(フィクションです。)

~ 身代わり出頭 ~

警察署から呼び出しを受けた際、自らの代わりに他者を警察に出頭させることを身代わり出頭といいます。
出頭させた本人はばれないだろうと思って行っているかもしれませんが、オービスの場合、車のナンバーのほか、顔写真まではっきりと撮影されてしまいますから、出頭した方が双子などあなたと似た人物でない限りは身代わり出頭がばれてしまう可能性は高いでしょう。

~ 身代わり出頭した方が問われる罪 ~

身代わり出頭した方は犯人隠避罪に問われる可能性があります。
犯人隠避罪は刑法103条に規定されています。

刑法103条
 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(略)を蔵匿し,又は隠避させた者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

「罰金以上の刑に当たる罪」とは,法定刑として罰金刑以上の刑が規定されていればよく,選択刑として拘留・科料が規定されていても構わないとされています。
Aさんが犯した罪はスピード違反で、スピード違反の法定刑は

6月以下の懲役又は10万円以下の罰金

ですから、「罰金以上の刑に当たる罪」に当たります。
「蔵匿」とは,犯人に場所を提供してかくまってやることをいいます。「隠避」とは,蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れされる一切の行為をいいます。身代わり出頭は「隠避」に当たるでしょう。そのほか、犯人に代わって警察官に「自分が犯人だ」と言う行為,自首する行為,犯人に変装用の衣服や旅費を与える行為なども「隠避」に当たります。
最後に、本罪に問われるには、相手方(Aさん)が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」との認識(故意)が必要です。しかし、その程度につき判例は,罰金以上の刑に当たる材質の犯罪事実を犯した者であることを知っていれば,その罪の法定刑が罰金以上であることの認識までは必要ない、としています。つまり,「Aさんがスピード違反を犯した人」という認識があれば故意があるとされてしまう可能性があります。

~ 身代わり出頭を依頼した方が問われる罪 ~

本来、罪を犯した人が自ら逃げ隠れしても、そのこと自体罪に問われることはありません。罪を犯した犯人に「逃げ隠れするな」と期待することはできないからです。
しかし、他人を唆してまで自ら逃げ隠れすることは許されない、とするのが現在の実務の立場です。裁判所は次のように述べています。

犯人自身の隠匿行為が不可罰とされるのは,これらの行為を罰することが刑事訴訟法における被告人の防御の地位と相容れないからであるのに対して,他人を教唆してまでその目的を達成しようとすることは,もはや法の放任する防御の範囲を逸脱する

なお、唆すことを法律上は「教唆」といいます。もう少し詳しくご説明すると、まだその犯罪に対する実行の決意を生じていない他人を唆して,犯罪実行の決意を生じさせること、をいいます。教唆は,特定の犯罪の実行を決意させるに足りるものでなければならないとされています。よって,例えば,単に「何か犯罪をやってこい」とか,漠然と「何か金になるものを盗ってこい」といっても教唆には当たりません。しかし,実行すべき犯罪を特定して教唆すれば,いちいち,犯罪の日時,場所,方法,客体など詳細まで指示する必要はないとされています。

教唆犯の場合、正犯(Bさん)と同じ刑が科されます(刑法61条)。また、情状によってはBさんよりも刑が重たくなることが想定されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

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