神奈川県愛川町での逃走事件について③~犯人隠避罪~

2019-07-29

神奈川県愛川町での逃走事件について③~犯人隠避罪~

Aさんは、福岡地方裁判所で窃盗罪、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反などで審理を受け、懲役4年の実刑判決を受けました。Aさんは、審理の対象となった事実については全面的に認めていたものの、量刑に不服がありました。そこで、Aさんは、福岡高等裁判所宛に控訴の申し立てをすると同時に、選任されていた国選弁護人に保釈請求してもらったところ、請求が許可されたため、知人の援助を得て保釈保証金を納付し釈放されました。その後、控訴審では、Aさんの控訴申し立ては棄却され、裁判は確定したことから、Aさんは、福岡高等検察庁から、刑(懲役4年)執行のため検察庁へ出頭するよう要請されました。Aさんは刑務所に入所するのが嫌でその要請を無視し続けていたところ、突然、検察庁職員らの訪問を受け、職員から収容状を呈示されながら、「あなたに収容状が出ている。」「今すぐ荷物をまとめて刑務所に行く準備をしてください。」などと言われました。しかし、Aさんは、「なんで突然くっとや。」「心の準備ができとらんばってん。」などと言いながら台所から包丁を取り出し、職員との距離約1メートルのところで職員に包丁を示しながら、「オレに近づくとこれで刺すけんな。」などと言って職員の間を走り抜け、玄関を出てそのまま逃走してしまいました。その後、Aさんは、友人宅Bさん方アパートにいたところ、公務執行妨害罪で逮捕されてしまいました。また、Bさんも、犯人蔵匿罪で逮捕されてしまいました。 
(事実を基に作成したフィクションです。)

~ はじめに ~

前回までの「神奈川県愛川町での逃走事件について①」では、Aさんに公務執行妨害罪が成立すること、「神奈川県愛川町での逃走事件について②」では、Aさんに逃走罪が成立しないことをご説明いたしました。今回は、Bさんが逮捕された罪、すなわち犯人蔵匿・隠避罪についてご説明したいと思います(なお、Aさんに逃走罪が成立しにため、Bさんには被拘禁者奪取罪(刑法99条)、逃走援助罪(刑法100条)が成立しないことは前回ご説明したとおりです)。

~ 犯人蔵匿・隠避罪 ~

本罪は刑法103条に規定されています。

刑法103条
 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(略)を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

= 罰金以上の刑に当たる罪 =

「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑として罰金刑以上の刑が規定されていればよく、選択刑として拘留・科料が規定されていても構わないとされています。「罰金以上の刑」とは、罰金刑を含む、禁錮刑、懲役刑、死刑のことを指します。
この点、Aさんが疑われている公務執行妨害罪の法定刑は

3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金

ですから、公務執行妨害罪は「罰金以上の刑に当たる罪」に当たります。

= 罪を犯した者 =

「罪を犯した者」については、真犯人に限るという説と、真犯人に限らず、犯罪の嫌疑を受けて捜査又は訴追されている者も含むとする見解がありますが、判例(昭和33年2月18日など)は真犯人であることを要しないとして後者の立場をとっています。
つまり、結果として、Aさんが不起訴処分を受けたり、刑事裁判で無罪判決を受けるなどしても、Bさんの犯罪の成否には影響を与えないということになります。

= 蔵匿・隠避 =

蔵匿とは、犯人に場所を提供してかくまってやることをいいます。隠避とは、蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れされる一切の行為をいいます。
この点、Bさんは、自分のアパートでAさんを匿っていたことから蔵匿罪で逮捕されています。

= 故意 =

犯人蔵匿罪の故意としては、Bさんに、Aさん(被蔵匿者)が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」であることの認識が必要です。この点、判例(昭和29年9月30日)は、罰金以上の刑に当たる罪質の犯罪事実を犯した者であることを知っていれば、その罪の法定刑が罰金以上であることの認識までは必要ないとしています。つまり、Bさんに、Aさんが「公務執行妨害罪に当たる行為を犯して逃げていた人」という認識が認められれば、犯人蔵匿罪の故意が認められるでしょう。

~ まとめ ~

本件では、「故意」以外の外形的事実については容易に認められそうですが、問題は、BさんがAさんを「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」と認識していたかどうかだと思われます。その点は、BさんがAさんから何と説明を受けてAさんをアパートに匿ったのか、BさんとAさんとの間でどんなやり取りが行われたのか、BさんがニュースなどでAさんのことをどこまで認識していたのかにもよるものと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談初回接見サービスの受け付けを行っております。

ページの上部へ戻る