神奈川県愛川町での逃走事件について②~逃走罪~

神奈川県愛川町での逃走事件について②~逃走罪~

逃走罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

Aさんは、福岡地方裁判所で窃盗罪、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反などで審理を受け、懲役4年の実刑判決を受けました。Aさんは、審理の対象となった事実については全面的に認めていたものの、量刑に不服がありました。そこで、Aさんは、福岡高等裁判所宛に控訴の申し立てをすると同時に、選任されていた国選弁護人に保釈請求してもらったところ、請求が許可されたため、知人の援助を得て保釈保証金を納付し釈放されました。その後、控訴審では、Aさんの控訴申し立ては棄却され、裁判は確定したことから、Aさんは、福岡高等検察庁から、刑(懲役4年)執行のため検察庁へ出頭するよう要請されました。Aさんは刑務所に入所するのが嫌でその要請を無視し続けていたところ、突然、検察庁職員らの訪問を受け、職員から収容状を呈示されながら、「あなたに収容状が出ている。」「今すぐ荷物をまとめて刑務所に行く準備をしてください。」などと言われました。しかし、Aさんは、「なんで突然くっとや。」「心の準備ができとらんばってん。」などと言いながら台所から包丁を取り出し、職員との距離約1メートルのところで職員に包丁を示しながら、「オレに近づくとこれで刺すけんな。」などと言って職員の間を走り抜け、玄関を出てそのまま逃走してしまいました。Aさんは、検察庁職員などに対する公務執行妨害罪で逮捕状が出て全国に指名手配されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

~ はじめに ~

上記事例は、先日、神奈川県愛川町で起きた事件を基に作成しています。実際の事件では、男性は控訴審で保釈中であったところ控訴棄却の判決を受け裁判が確定し、検察庁職員の再三の呼び出しにも応じず、職員が男性宅に収容に訪れたところ、台所から包丁を持ち出して自宅から逃走した、とのことでした。
この事件に関するニュースなどを見られて、

・なぜ、公務執行妨害罪で逮捕状?
・なぜ、逃走罪ではないの?

などという疑問を持たれた方も多いかと思います。そこで、先日は「公務執行妨害罪」についてご説明しました。本日は「逃走罪」についてご説明したいと思います。

~ 逃走罪の概要 ~

逃走罪に関する規定については刑法97条から刑法102条まで設けられています。
そのうち、拘束された本人を処罰するための規定は

刑法97条の単純逃走罪及びその未遂罪(刑法102条)
刑法98条の加重逃走罪及びその未遂罪(刑法102条)

で、逃走を援助した人を処罰するための規定は

刑法99条の被拘禁者奪取罪及びその未遂罪(刑法102条)
刑法100条の逃走援助罪及びその未遂罪(刑法102条)
刑法101条の看守者等による逃走援助罪及びその未遂罪(刑法102条)

です。Aさんは保釈される前は拘束されていましたから、以下、単純逃走罪、加重逃走罪についてご説明します。

~ 単純逃走罪 ~

刑法97条 
 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する

「裁判の執行により拘禁された」者とは、留置場と呼ばれる「留置施設」、あるいは刑務所、拘置所などの「刑事施設」などに留置、収容(拘束)されている者をいいます。
「既決の者」とは、刑事裁判が確定し、その刑の執行を受ける者(死刑確定者、労役場留置者を含む)をいいます。
「未決の者」とは、刑事裁判が確定する前に勾留されている被疑者・被告人をいいます。なお、逮捕中の者はこれに当たりません。
逃走」とは、拘束から離脱することをいい、看守者の実力支配を脱したときに既遂となり、その前段階では未遂にとどまります。

~ 加重逃走罪 ~

刑法98条
 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、3月以上の

「勾引状の執行を受けた者」とは、勾引状により勾引された者のほか、通常逮捕状、緊急逮捕状により逮捕された者も含まれます。
本罪が成立するには、単に逃走しただけでは足りず、
・拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊したこと
・暴行若しくは脅迫をしたこと
・二人以上通謀したこと
が必要です。

~ まとめ ~

以上からすると、保釈中に逃走したAは、

・裁判の執行により拘禁された既決・未決の者(刑法97条)

にも、

・前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者(刑法98条)

にも当たりません(確かに、Aさんは刑事裁判が確定した既決者ではありますが、拘禁(拘束)はされていません)。したがって、Aさんには逃走罪は成立しません。なお、Aさんに逃走罪が成立しませんから、Aさんの逃走を援助した者にも、

・被拘禁者奪取罪(刑法99条)
逃走援助罪(刑法100条)

などは成立しません。

では、何罪が成立するのかという点を次回ご説明したいと思います。

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