飲酒運転の犯人隠避罪

飲酒運転の犯人隠避罪

福岡市小郡市に住むAさんは,飲酒帰りの友人Bさん,Cさん及びDさんから,自動車でそれぞれの自宅まで送って欲しいと頼まれ,B,C及びDを自動車に乗せて出発しましたが,その途中,自動車の運転をBさんに交代しました。すると,飲酒運転をしていたBさんが運転操作を誤ったため,自動車は崖下に転落し,Bさん及びCさんは即死しました。Aさん及びDさんは軽傷で済みましたが,Bさんの飲酒運転の発覚を恐れ,Aさんが運転していて事故を起こしたことにしようと相談し,Aさんは,通報を受けて事故現場に臨場した福岡県小郡警察署の警察官に対し,自分が自動車を運転していて事故を起こしたと説明しました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

酒酔い・酒気帯び運転,無免許運転などの同乗者が,運転者の身代わりとなって,警察官に「自分が犯人だ」などと虚偽の供述をする,又は運転者等にさせられるというケースが散見されます。これは事故発生から警察官の現場臨場まで時間があること,同乗者が複数人いる場合,実際の運転行為はその同乗者しか現認していないことなどの理由から比較的,同乗者間で口裏合わせをしやすいからだと思われます。
本件でも,Aさんが虚偽の供述をしています。Aさんはどんな罪に問われるのかみていきます。

~ 犯人蔵匿・隠避罪(刑法103条) ~

刑法103条
 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(略)を蔵匿し,又は隠避させた者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

= 罰金以上の刑に当たる罪 =

「罰金以上の刑に当たる罪」とは,法定刑として罰金刑以上の刑が規定されていればよく,選択刑として拘留・科料が規定されていても構わないとされています。Bさんが問われる罪として考えられるのは,

1 過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)
2 危険運転致死傷罪(同法律2条)

ですが,1は選択刑として罰金刑が,2は懲役刑しか規定されていませんから,いずれの罪の場合でも「罰金以上の刑に当たる罪」に当たります。

= 罪を犯した者 =

では,Bさんは「罪を犯した者」といえるでしょうか?
この点については,犯人蔵匿・隠避罪が何に重点を置いて規定された罪なのかとうことに対する考え方で結論が異なってきます。つまり,犯人蔵匿・隠避罪が,捜査機関による犯人の身柄確保に重点を置いているという考え方をとれば,Bさんはすでに死亡していますから,Bさんは「罪を犯した者」に当たります。他方で,捜査機関による犯人の特定に重点を置いているという考え方をとれば,本件のように,小郡警察署の警察官が犯人がまだ誰なのかを特定していない段階で,Aさんが「犯人は自分だ」と名乗り出る行為は,犯人の特定を妨げる行為となりますから,Bさんは「罪を犯した者」には当たりません。
過去には,死亡した犯人の身代わりとなって出頭した事案について,犯人隠避罪を認めた裁判例があります(札幌高判平17年8月18日)。

= 蔵匿・隠避 =

蔵匿とは,犯人に場所を提供してかくまってやることをいいます。隠避とは,蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れされる一切の行為を指し,Aさんのように,Bさんの代わりに警察官に「自分が犯人だ」と言う行為,自首する行為,犯人に変装用の衣服や旅費を与える行為などがあります。

= 故意 =

本件の故意としては,Aさんが被蔵匿者又は被隠避者が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」であることの認識が必要ですが,判例は,罰金以上の刑に当たる材質の犯罪事実を犯した者であることを知っていれば,その罪の法定刑が罰金以上であることの認識までは必要ないとしています。つまり,Aさんが,Bさんが「交通事故を起こし,怪我を負わせた人」であるということが分かっていれば故意は認められそうです。

以上から,Aさんには犯人隠避罪が成立しそうです。

~ 車両提供罪 ~

本罪は,相手方が酒気を帯びている者で,酒気を帯びて車両等を運転すること(飲酒運転すること)となるおそれがあることを認識しながら,相手方に車両等を提供した場合に成立する犯罪です(道路交通法65条2項)。罰則は,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です(道路交通法117条の2第2号)。「提供」とは,提供を受ける者が利用し得る状態に置くことをいい,Aさんのように車の運転を代わる行為,エンジンキーを渡す行為,車の所在を教える行為などがこれに当たります。ただ,車両提供罪が成立するには,提供を受けた者が実際に飲酒運転を行ったことが必要とされており,Bさんが飲酒運転をしていたことが立証されれば,Aさんは,車両提供罪でも問われる可能性が出てくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,飲酒運転をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。飲酒運転でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービス24時間受け付けております。
福岡県小郡警察署までの初回接見費用:39,200円)

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