福岡市南区の放火事件

2019-01-21

福岡市南区の放火事件

福岡市南区に住むAさん(45歳)は,自己所有の木造一軒家(地震保険有り,火災保険なし)に妻(43歳)と二人暮らしをしていましたが,まともに働かないAさんに愛想を尽かしたAさんの妻は,二度と戻らない決意で一人家を出て所在不明となってしまいました。一人になったAさんは,前途を悲観し,家に火を付けて自殺しようと考えました。Aさんは,かねて買い置いていたガソリン約6.4リットルを居間,廊下,台所等の床面に満遍なく散布したところで,最後に大好きなタバコを一服してから,家に火をつけ自殺しようと考え,タバコに火をつけようとライターを点火しました。そして,タバコを吸い終え,これを和室の畳の上に投げ入れて畳を燃え上がらせました。ところが,偶然,Aさん方を訪ねてきた隣人がこれに気づき,直ちに消火したことから畳一枚を焼損するにとどまりました。
(フィクションです)

~ 放火の罪 ~

放火及び失火の罪は刑法第9章の刑法109条から118条に規定があります。その中でも,今回は,主に

・現住建造物等放火罪(刑法108条)
・非現住建造物等放火罪(刑法109条)

などが関係しそうです。

刑法108条
 放火して,現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物(略)を焼損した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

刑法109条1項
 放火して,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない建造物(略)を焼損した者は,2年以上の有期懲役に処する。
刑法109条2項
 前項の物が自己の所有に係るときは,6月以上7年以下の懲役に処する。ただし,公共の危険を生じなかったときは,罰しない。

刑法112条
 第108条及び第109条1項の罪の未遂は,罰する。

刑法115条
 第109条1項(略)に規定する物が自己所有に係るものであっても,(略),又は保険に付したものである場合において,これを焼損したときは,他人の物を焼損した者の例による。

~ 現住建造物か非現住建造物か ~

Aさんは妻と暮らしていましたので,本件家屋は現住建造物でしょうか?この点,まず,Aさんの妻は二度と家に戻らない決意で家出をしていますから,Aさんは一人暮らしであると考えられます。そして,現住建造物における「人」とは,犯人以外の者のことを指しますから,Aさんが一人で暮らしている本件家屋は現住建造物ではなく,非現住建造物に当たります(刑法109条が適用されます)。

~ 刑法109条1項か刑法109条2項か ~

では,非現住建造物であるとして,刑法109条2項の適用となるのでしょうか?この点,Aさんは,本件家屋に地震保険をかけていました。刑法115条にいう「保険」とは,物の滅失,損傷に対する保険をいい,火災保険に限らず,海上保険,運送保険も含まれるとされているので,地震保険も「保険」に含まれると解されます。そして,刑法115条によれば,自己所有の非現住建造物を焼損した場合であっても他人の物を焼損したことにする,というのですから,本件では刑法109条2項ではなく刑法109条1項が適用されることになります。ちなみに,刑法115条の「例による」というのは,法定刑を刑法109条1項と同様,「2年以上の有期懲役にする」という意味です。

~ 既遂か未遂か ~

Aさんは,本件家屋に放火しようと火をつけたものの,畳一枚を焼損するに止まったというのですから,これが「焼損」といえるかが問題となります。この点,判例は,火が媒介物(火をつけた新聞紙等)を離れ目的物に燃え移り,目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達すれば焼損になるとしています。ところが,本件で燃やしたものは「畳」です。判例は,取り外し自由な雨戸,板戸,畳等は建造物の一部とは言えないと解しており,建造物を焼損する目的でこれらの物を焼損したにとどまったときは,建造物そのものを焼損したことにはなりません。よって,本件は未遂となります。

~ 未遂罪の刑の減軽 ~

刑法43条では未遂罪の減軽等につき規定しています。

刑法43条
 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は,その刑を減軽することができる。ただし,自己の意思により犯罪を中止したときは,その刑を減軽し,又は免除する。

前段は障害未遂,後段は中止未遂と呼ばれます。また,障害未遂は任意的減軽(裁判官の裁量による減軽)であるのに対し,中止未遂は必要的減軽(裁判官の裁量の余地のない減軽)である点が異なります。本件は非現住建造物放火罪の障害未遂で,「2年以下の有期懲役」が減軽されるかどうかは裁判官の裁量のよることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,放火の罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。放火の罪等でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービス24時間受け付けております。
福岡県南警察署までの初回接見費用:35,900円)

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