【事件解説】ひき逃げの身代わり出頭 犯人隠避罪で父親を逮捕

 ひき逃げ事件を起こした息子の身代わりで警察に出頭したことで、父親が犯人隠避罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 ひき逃げ事件を起こした大学生の息子X(22歳)の身代わりで警察に出頭したとして、北九州市内在住の父親の無職男性A(66歳)が犯人隠避の容疑で逮捕されました。
 福岡県警折尾警察署の調べによると、Xは、アルバイト先からの帰りで車両を運転中、自転車に乗るVに接触して負傷させ、そのまま逃走しました。
 帰宅したXから事故のことを聞いたAは、Xの就職活動等への影響を懸念し、身代わりで警察に出頭し、自分が起こした事故だと虚偽の申し出を行ったとのことです。
(令和5年6月13日に配信された「日テレNEWS」の記事をもとに、一部事実を変更したフィクションです。)

ひき逃げ(道路交通法の救護義務違反)とは

 人身事故を起こした場合、直ちに車両の運転を停止して、負傷者の救護を行う義務(救護義務)があります(道路交通法第72条第1項)。

 人身事故を起こし、救護義務を怠り逃走することを一般的にひき逃げと呼びますが、負傷の原因が自らの運転である場合は、ひき逃げ(道路交通法の救護義務違反)で有罪になると、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます(道路交通法第117条第2項)。

犯人隠避罪とは

 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第103条)。

 「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑に懲役・禁固・罰金いずれかの刑罰が含まれている犯罪のことであり、「罪を犯した者」とは、犯罪の嫌疑を受けて捜査又は訴追されている者をいいますが、捜査開始前の真犯人もこれに含むとされます。

 「隠避」とは、場所を提供して匿う以外の方法で、捜査機関などによる発見・逮捕から免れさせる一切の行為のことです。身代わりで警察に出頭することは、例え一時的でも、捜査機関による真犯人の発見・逮捕を免れさせる効果を持つため、これに該当するとされます。

 本件Xが犯したひき逃げ(道路交通法の救護義務違反)は、前述のとおり「罰金以上の刑に当たる罪」であり、罪を犯したXの身代わりで警察に出頭し、自分が起こした事故だと虚偽の申し出を行うことは「隠避」に該当するため、Aに犯人隠避罪が成立し得ます。

犯人隠避罪の弁護活動

 犯人隠避罪は、犯人の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる、と規定されています(刑法第105条)。

 犯人の親族が犯人隠避罪を犯してしまうのは、自然の人情として当該行為を行わないことに対する期待可能性が少ないことを鑑みた規定ですが、任意的規定であり必ず刑が免除されるとは限らないため、不起訴処分を目指す弁護活動を行うことが考えられます。

 犯人隠避罪の保護する法益は国家の刑事司法作用とされるため、被害者との示談により不起訴処分を目指すことはあまり考えられませんが、その場合でも、反省の態度を示すことや、罪を犯すに至った経緯などにつき酌量すべき情状を申述することで、不起訴処分の可能性を高める弁護活動を行うことは可能です。

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