【事件解説】警察官にいたずら行為を行い偽計業務妨害罪で逮捕

 いたずら行為(偽計)により警察官の職務を妨害したとして、偽計業務妨害罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市在住の自営業男性A(23歳)は、警察官へのいたずら目的で、同市内の交番勤務の警察官Vの面前で、小麦粉の入った小さなビニール袋を故意に落とし、慌てた様子で拾って逃走しました。
 Vは、違法薬物を所持したAが逃走を図ったと誤信してAを追跡し、その後Aの所持していたものは小麦粉であると判明しましたが、Aは、偽計を用いて警察官の職務を妨害したとして、偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されました。
(過去に起きた実際の事件(判例)に基づき、一部事実関係を変更したフィクションです。)

偽計業務妨害罪の「偽計」とは

 公務員の職務の執行の妨害に対する罪としては公務執行妨害罪(刑法第95条)がありますが、本件AはVに対し、同罪の要件である「暴行又は脅迫」を加えた訳ではないため、偽計を用いて人の業務を妨害した場合に成立する偽計業務妨害罪(刑法第233条)で逮捕されたと考えられます。

 「偽計を用いて」とは、詐欺罪の欺罔行為よりその範囲は広く、人を欺罔・誘惑すること、又は人の錯誤・無知を利用することとされます。

 通常、警察官の面前で白い粉の入った小さなビニール袋を落とし、慌てて拾って逃走すれば、警察官は白い粉を違法な薬物ではないかと誤信することが予想されるため、本件AはV対し、「偽計を用いた」と認定され得ます。

偽計業務妨害罪の「業務」と本件で妨害された業務

 「業務」とは、職業その他の社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務・事業とされますが、公務員の職務が業務妨害罪の保護する「業務」に該当するかについて、妨害行為を排除する自力執行力を有する「権力的公務」でなければ、「業務」に該当し得るとされます。

 警察官の職務であっても、「権力的公務」でない限り「業務」に該当し得るため、例えば110番へ無言電話を多数行い警察官の通常業務(「非権力的公務」)を妨害した場合は、(威力)業務妨害罪が成立するとされます。

 本件Vの追跡行為は、薬物事犯の取締りという「権力的公務」のため、偽計業務妨害罪は成立しないというAの主張も考えられますが、妨害されたのはあくまで、いたずら行為がなければ本来遂行されたはずの当直等の警察官Vの通常業務(「非権力的公務」)であるとして、偽計業務妨害罪の成立が認定される可能性は高いです(判例同旨)。

警察官に対する偽計業務妨害罪の弁護活動

 偽計業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
 通常、被害者が存在する事件で犯罪の成立に争いがない場合、有効な弁護活動として被害者への被害弁償及び示談交渉を行うことが考えられますが、本件被害者は警察官Vであるため、示談成立により不起訴を目指すということはあまり考えられません。
 しかし、そのような場合であっても、反省の態度を示すため、Vに対して誠意のある謝罪を行うことや、被害弁償示談金の代わりとして贖罪寄付を行うことなど、不起訴処分刑の減軽の可能性を高める弁護活動を行うことは可能です。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分刑の減軽を獲得した実績があります。
 偽計業務妨害罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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