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【事例解説】危険運転致傷罪とその弁護活動(赤信号を故意に無視して歩行者を負傷させた架空の事例に基づく解説)

2024-01-12

 この記事では、福岡県での架空の交通事故を基に、危険運転致傷罪とその弁護活動について、解説します。

事例紹介:福岡県での赤信号無視事故

 福岡市在住のAは、仕事からの帰宅を急ぐあまり、赤信号を故意に無視し、時速約50キロで交差点に進入しました。その結果、横断歩道を渡っていた歩行者Vに衝突し、重傷を負わせる事故が発生しました。
(事例はフィクションです。)

赤信号無視と危険運転致傷罪の成立

 危険運転致死傷罪とは、以下の(1)~(6)の行為を行うことにより人を負傷又は死亡させた場合に成立する犯罪です。(「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下「自動車運転処罰法」)第2条に規定)

(1)アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状況で自動車を走行させる行為
(2)進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
(3)進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
(4)人・車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人・車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
(5)赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
(6)通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 本事例での赤信号無視は、(5)に該当し、Aに危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

危険運転致傷罪の法定刑

 赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役のため、危険運転致傷罪で有罪になった場合には必ず懲役刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条)
 危険運転致傷罪の場合、被告人の行為の故意性、危険性、及びその結果が重視され、これらの要素に基づいて刑罰が決定されることとなります。実際の判決では、事故の具体的な状況や被害者の状態、加害者の過去の運転歴などが考慮されることが一般的です。
 このように、危険運転致傷罪は、単なる交通違反を超えた重大な犯罪行為として扱われ、厳しい法的対応が求められます。

過失運転致傷罪との違い

 危険運転致傷罪と過失運転致傷罪は、運転中の行為の意図によって区別されます。
 過失運転致傷罪は、運転者が必要な注意を怠った結果、人に怪我を負わせた場合に成立します。例えば、赤信号を青信号と誤認して事故を起こした場合、これは過失によるものと認定されると、過失運転致傷罪が適用される可能性があります。過失運転致傷罪の法定刑は最大7年の懲役または100万円以下の罰金です。
 一方、危険運転致傷罪は、運転者が意図的に交通法規を無視し、その結果として人に怪我を負わせた場合に適用されます。この罪は、運転者の故意性と行為の危険性が重視され、上記の通り、過失運転致傷罪より重い刑罰が科される可能性があります。

取調べと供述の重要性

 取調べの過程は、危険運転致傷罪の訴訟において極めて重要です。警察や検察官による取調べでは、事故の状況や運転者の意図が詳細に調査されます。
 この過程での供述は、後の裁判での証拠として使用されるため、運転者の発言が法的な結果に大きな影響を及ぼすことがあります。例えば、赤信号を故意に無視したかどうか、事故当時の運転者の状態や意識などが重要な焦点となります。
 誘導された供述や誤解に基づく供述は、運転者に不利な証拠となる可能性があります。したがって、取調べにおいては、運転者が自身の行動を正確に、かつ慎重に説明することが求められます。
 また、弁護士のアドバイスやサポートを受けることは、適切な供述を行い、法的なリスクを最小限に抑える上で非常に重要です。この段階での正確な供述は、適切な法的評価を受けるための基盤となります。

福岡県の危険運転致傷事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、危険運転致傷事件などの交通違反事件における弁護活動の豊富な実績があります。
 福岡県での危険運転致傷事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

福岡県の交通事件に強い弁護士が危険運転致死傷罪を解説~②~

2023-03-30

~前回の続き~

前回は、いわゆる自動車運転死傷行為処罰法2条に規定されている危険運転致死傷罪について解説しました。
そこで本日は、同じ法律の第3条の危険運転致死傷罪について解説します。
第3条では、前回解説した第2条に比べると、危険性が比較的軽微な行為が対象となっています。

アルコールまたは薬物の影響による運転

第2条でも「アルコールまたは薬物の影響による走行」が対象となっていましたが、第2条では、アルコールや薬物によって酩酊や精神錯乱に陥っている状態で運転したのに対して、第3条では、アルコールまたは薬物の影響によって、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で車を運転し、それによって正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に成立します。
つまり、当初は軽く酔っているだけであっても、結果として正常な運転が困難な状態になれば成立することです。

特定の病気の影響下での運転

自動車の運転に支障があるおそれのある病気として、政令が定めるものを有しながら自動車を運転し、その病気の影響によって正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合も危険運転致死傷罪が適用されます。
統合失調症や、てんかん、躁鬱病や低血糖症、再発性の失神、重度の眠気の症状を伴う睡眠障害等の病気の影響によって交通事故を起こして、人を死傷させた場合に成立するということです。

罰則規定

3条の違反によって起訴されて有罪が確定した場合、人を負傷させた場合は12年以下の懲役が科され、人を死亡させた場合は15年以下の懲役が科されます。
前回紹介した2条の違反に比べると罰則規定は軽減されていますが、それでも過失運転致死傷罪の罰則規定よりかは比較にならないほど厳しいものです。

危険運転致死傷罪の弁護活動

まず危険運転致死傷罪が適用された場合、逮捕によって身体拘束を受ける可能性が非常に高いでしょう。
ただ逮捕時の罪名が「危険運転致死傷罪」であっても、起訴された時の罪名は「過失運転致死傷罪」と変更されることもあります。
危険運転致死傷罪に該当するかどうかは、逮捕後の取調べにどう対応するかにもよるので、まずはそういった取調べに対して誤った対応をしないように弁護士がサポートすることができます。
また危険運転致死傷罪起訴されて有罪が確定すると、執行猶予が付きにくい事件でもあります。
そんな状況下で執行猶予を得るために大きく影響するのが被害者との示談です。
被害者との示談締結し、宥恕を得ることができていれば執行猶予を得る可能性が高いかと思われます。

まずは弁護士に相談を

福岡県内の危険運転致死傷罪でお困りの方は、今回このコラムを監修している、刑事事件に特化した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部では、危険運転致死傷罪でお困りの方からの法律相談初回無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

福岡県の交通事件に強い弁護士が危険運転致死傷罪を解説~①~

2023-03-27

福岡県の交通事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士が危険運転致死傷罪を解説します。

車やバイクを運転中に、人身事故を起こしてしまうと、過失とはいえ刑事責任を問われる可能性があります。
その際に適用されるのは、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」という法律の中で規定されている「過失運転致死傷罪」ですが、一定の危険な状態や、危険な運転によって起こした交通事故については、同じ法律の中で規定されている「危険運転致死傷罪」という、別の罪が適用される場合があります。

今から20年以上前は、交通事故は刑法という法律の中で規定されていましたが、飲酒運転無免許運転など悪質な違反によって発生する交通事故が後を絶たないことから、同じ刑法の中に危険運転致死傷罪が新たに規定されました。
ただ施行当初の危険運転致死傷罪は、特に危険な行為にしか適用されなかったため、なかなか適用が難しく、危険運転致死傷罪での立件は非常にハードルが高いものでした。
そういった問題点を改善すべく2013年に施行されたのが、冒頭で紹介した「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」で、この法律の中で危険運転致死傷罪も規定されるようになったのです。

どんな行為が危険運転致死傷罪の対象になるの?

危険運転致死傷罪に該当する適用条件として以下の行為が規定されています。

  • アルコールまたは薬物の影響による走行
  • 制御困難なスピードによる走行
  • 制御する技能を持たずに運転
  • 人や車の通行を妨害する目的での運転
  • 赤信号を無視して危険な速度での走行
  • 通行禁止の道路を危険な速度での走行

以上6項目の何れかの行為によって交通事故を起こし、人を負傷させたり死亡させたりした場合に適用されるのが、危険運転致死傷罪です。

危険運転致死傷罪の罰則

危険運転致死傷罪は、悪質危険な運転によって交通事故を起こして人に死傷を負わせた運転手を厳罰化するための法律です。
そのため過失運転致死傷罪の法定刑「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」よりも厳しい罰則が規定されています。
危険運転致死傷罪の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役が科され、人を死亡させた場合は、1年以上の有期懲役が科されます。

~次回に続く~

一般道でスピード違反 速度超過でも前科が付く~②~

2022-09-19

~昨日の続き~

法定最高速度違反

本日は法定速度違反について解説します。

法定最高速度違反が成立するのは

①当該区域、区間等において公安委員会による速度指定がなされていないこと
②当該車両について定められている法定最高速度を超えて進行したこと

が必要となります。
なお、法定最高速度を知らなかったといっても、それは理由とはならず、速度違反の故意を阻却する(故意がなかった)ものではありません。
法定最高速度違反の場合の罰則も指定最高速度違反の罰則と同じです。

速度超過で検挙されると

速度違反の場合、一般道なら30キロ未満、高速道なら40キロ未満の速度超過であれば、拒否をしない限りは、交通反則通告制度(青切符)によって処理されるので、反則金を納めたり、違反点数が累積されるだけの行政手続きで済み、刑事手続きはおこなわれません。
しかしそれ以上を超過すると、赤切符で処理され、その場合は刑事事件となります。。
刑事手続きがとられたとしても、Aさんのように逮捕されるとは限りません。
ただ違反があまりにも悪質、逃亡のおそれがある場合などはその場で逮捕されることもあります。
Aさんは、停止を求めたパトカーから実際に逃走しているので、逮捕されたのでしょう。
また、すでにご紹介したように、速度違反の罪についても懲役刑が規定されていますから、起訴されれば正式裁判を受けなければならない場合もあります。
初犯であれば執行猶予が付く可能性が高いと思われますが、執行猶予期間中である場合、常習性が認められ悪質な場合などは実刑となる可能性がないわけではありません。

交通事件に関するご相談は

刑事事件を専門にしている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡では、速度超過のような交通違反であっても、刑事事件に移行する可能性がある事件については無料で法律相談を承っております。
秋の行楽シーズンになり、車をご利用する機会が増える方も多いかと思いますが、速度超過のような交通事件にお困りの方がいらっしゃいましたら、是非一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の無料法律相談をご利用ください。
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一般道でスピード違反 速度超過で逮捕~①~

2022-09-18

一般道でスピード違反した事例を参考に、速度超過でも逮捕される可能性があることを、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事例

福岡県嘉麻市で自営業を営むAさんは、ドライブを趣味にしています。
特に昨年、若いころから憧れていたスポーツカーを購入してからは毎週末のように市外にまで足をのばしてドライブを楽しんでいます。
そんなある日のドライブで、Aさんは、道がすいていたので思わずアクセルを踏み込んでしまい、40キロ規制の一般道路を、60キロメートル超過する時速約100キロメートルで走行してしまい、パトカーに停止を求められました。
しかし、逃げ切れるかもしれないと思ったAさんは停止命令に従わず数百メートル逃走しました。
そしてその先の赤信号で停止したAさんは、その場で福岡県嘉麻塚警察署の警察官によって道路交通法違反(速度超過)で逮捕されたのです。
(フィクションです)

道路交通法違反~速度超過~

道路交通法に定められた速度超過の違反は、大きく2種類あります。
一つは指定最高速度違反の罪、もう一つは法定最高速度違反の罪です。
Aさんの場合は、40キロ規制のある道路で速度超過しているので、指定最高速度違反の罪となります。

指定最高速度違反

それでは指定速度違反について解説します。
指定最高速度違反が成立するには

①当該日時に、公安委員会によって適式な道路標識等による最高速度の指定がなされていること
②指定最高速度を超えて走行したこと

に加えて、運転者が上記①、②を認識していることが必要です。
この認識が、指定速度違反の「故意」となり、故意的に速度違反した際の罰則は「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

仮に、運転者に①、②の認識がないと認められる場合は、過失による速度違反の罪に問われることになります。
この時の罰則は軽減され「3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金」です。

それでは、Aさんが違反した道路のように、法定最高速度(60キロメートル)を下回る最高速度指定(40キロメートル)がなされている道路において、Aさんが最高速度の道路標識を看過して(つまり、上記①の認識がなく)、法定最高速度(60キロメートル)を超える速度(100キロメートル)で運転した場合の罪責はどうなるのでしょうか?

その場合

ア 法定最高速度違反の故意犯が成立
イ 指定最高速度違反の過失犯が成立

ウ 指定最高速度違反の故意犯が成立

が考えられますが、裁判例の多くはウ説が採用されています。

~明日のコラムに続く~

福岡県豊前警察署の人身事故 危険運転と過失運転の違いについて②

2022-06-30

昨日に続いて、福岡県豊前警察署の人身事故を参考に、危険運転と過失運転の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の違い

まず、大きな違いは法定刑です。
過失運転致傷罪が「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」であるのに対し、危険運転致死傷罪は「人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役」です。
特に、危険運転致死罪の場合、1年以上の有期懲役ですから、起訴され、有罪となれば実刑判決を受ける可能性も十分にあります。

次に、前者は過失、すなわち不注意によって交通事故を起こした場合に適用されるのに対し、後者は故意、すなわち法律5条各号に規定されている状態・状況を運転者が認識しながらあえて自動車を運転して交通事故を起こした場合に適用される法律です。

たとえば、法律5条5号の「赤色信号」を例にしましょう。
運転者が前方の赤色信号を認識しつつ、あえてこれに従わず交差点に進入したと認められる場合(かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転した場合)は危険運転が適用される可能性が高いでしょう。他方、不注意によって赤色信号を示していた交差点に進入してしまい交通事故を起こした場合は過失運転が適用されるでしょう。

危険運転か過失運転かは、交通事故態様や事故時。事故後の状況などを総合して判断されます。
よって、捜査の結果、危険運転から過失運転になったり、あるいはその逆となることもあります。

危険運転致死罪は裁判員裁判になる

危険運転致死罪で起訴(公判請求)されると、刑事裁判は裁判員裁判によって行われます。
裁判員裁判は、裁判所によって無作為に選出された国民が、裁判に参加し、裁判官と共に被告人の処分を決定する裁判のことです。
通常の刑事裁判では裁判官が判決を決定していたことから、法律家目線からの刑事罰しか決定していませんでしたが、裁判員裁判制度が導入されてからは、一般人も審議に参加するようになり、少なからず一般人の意思が刑事罰に反映されるようになりました。
そういった事が影響しているのか、かつては年間10人以上の死刑判決が言い渡されていましたが、裁判員裁判制度が導入されてからは死刑判決が減少傾向にあると言われています。。

危険運転で捜査を受けてお困りの方は弁護士までご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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福岡県豊前警察署の人身事故 危険運転と過失運転の違いについて①

2022-06-29

福岡県豊前警察署の人身事故を参考に、危険運転と過失運転の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県豊前警察署の人身事故

福岡県豊前市の運送会社に勤務するAさんは、福岡県豊前市内の道路をトラックで走行中、対面信号が赤色信号表示を示していたにもかかららず交差点に進入し、青色信号表示に従って横断歩道上を横断していた歩行者の女性をはねて死亡させる交通事故を起こしました。この交通死亡事故により、Aさんは危険運転致死罪の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は、危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪の適用と求めていこうと考えています。
(フィクションです。)

人身事故で適用される罪

人身事故で適用される罪の一つに、過失運転致死傷罪危険運転致死傷罪があります。
ともに、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律)」という法律の中で規定され、前者は法律5条に、後者は法律2条に規定されています。

過失運転致死傷罪

法律5条 
 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

危険運転致死傷罪

法律5条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

明日のコラムでは、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の違いを解説します。

東名あおり運転事故の控訴審はじまる 

2019-11-13

東名あおり運転事故の控訴審はじまる 

東名あおり運転事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

11月6日、東京高等裁判所で、2017年に起きた東名高速道あおり運転の控訴審がはじまります。

~ 東名あおり運転事故とは ~

東名あおり運転事故とは、2017年(平成29年)6月5日、神奈川県足柄上郡大井町の東名高速道路下り線で、夫婦(以下、夫をV1、妻をV2といいます。)及びその娘2人が乗る車(以下、V車といいます。)に対しあおり運転を繰り返した男(以下、男をA、Aの乗る車をA車といいます。)が追い越し車線上にV車を停止させたところ(A車はV車の前方に停止していた)、追い越し車線上を走行してきたトラックにV車を衝突させ、V1、V2を死亡させたほか、娘2人を負傷させた事故です。「東名あおり事故」とも呼ばれています。

事故の経緯を要約すると以下のとおりです。

①A車は、約700メートル,32秒間にわたり,4回,V車の直前に割り込むなどのあおり運転をした
②A車は、V車の前に割り込み,V車を追い越し車線上に停車させた
③V車の停車から約2分後,別の大型トラックがV車後部に衝突
④V1、V2死亡、娘2名負傷

~ 一審の結果は ~

第一審の横浜地方裁判所は、男に「危険運転致死傷罪」を適用し、

懲役18年

を言い渡しています。
この判決に弁護側が不服として控訴し、東京高等裁判所で控訴審が開かれることになった、というわけです。

~ 危険運転致死傷罪の内容 ~

危険運転致死傷罪は、

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律といいます)

の第2条に規定されており、第2条には罰則(死亡の場合は1年以上の有期懲役、負傷の場合は15年以下の懲役)のほか、以下のとおりその1号から6号までに危険運転の類型が規定されています。

1号:正常な運転が困難になるほどの飲酒・薬物使用運
2号:進行を制御することが困難なほどの高速度での運転
3号:車を制御する技能を有しないでする運転
4号:人や車の通行を妨害する目的でに著しく接近するなどし、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での危険な運転
5号:赤信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転
6号:通行禁止道路の進行し、かつ重大な危険を生じさせる速度での運転

このうち、東名あおり運転事故で適用されたのは4号の

人や車の通行を妨害する目的でに著しく接近するなどし、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での危険な運転

~ 東名あおり運転事故の争点 ~

ところが、東名あおり運転事故では、A車は停止していたことから(速度は0kmだったことから)、

重大な交通の危険を生じさせる速度

で危険運転をしたと認めらえれるかどうかが争点となりました。

この点に関し、検察側は「高速道路上では停止行為も危険運転に当たるため危険運転致死傷罪は成立する。」と主張したのに対し、弁護側は「A車が停止した時点で危険運転は終わっているため危険運転致死傷罪は成立しない。」と主張しました。
これを受けて横浜地方裁判所は、

高速道路上で停車させた速度ゼロの状態が同罪の構成要件の「重大な危険を生じさせる速度」とするのは解釈上無理がある

とた上で、。

停車させる行為以前のあおり運転(①行為)については通行妨害運転に当たり、停止させた行為(②行為)はあおり運転(①行為)に密接に関連した行為であり、死傷の結果はあおり運転(①行為)によって現実化した

として複数のあおり運転と停止行為とを一連一体の「通行妨害運転」と認め、危険運転致死傷罪を適用しています。

~ 第一審判決に批判的な見方も ~

そもそもV1、V2さんを死亡するなどさせたのはトラック運転手による追突行為が直接の原因です。
弁護側は、「多くの後続車はV車をよけていた。」「事故は追い越し車線を走行してきたトラックの過失に基づくものでAに責任はない。」などと主張して無罪を求める方針のようです。
専門家からも「危険運転致死傷罪を拡大解釈しすぎだ。」との批判もあり、今後の裁判の行方が注目されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

【福岡市東区 危険運転刑事事件】罪名変更で起訴 弁護士接見

2018-08-04

福岡市東区 危険運転刑事事件 罪名変更で起訴 弁護士接見

Aさんは,深夜午前1時頃,普通乗用自動車を運転して帰宅途中,前方約70メートルにある交差点の対面信号が赤色表示をしていたにも関わらず,「深夜だし交差点を通過する車はいないだろう」「早く家に帰ってゆっくりしたい」などと思って,時速約60キロメートルで交差点に進入したところ,右方から交差点に進入してきたVさん運転の軽自動車に自車を衝突させ,Vさん運転の軽自動車を電柱に衝突させてVさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。
Aさんは,福岡県東警察署の警察官に過失運転致傷罪現行犯逮捕され,その後,福岡地方検察庁において,罪名を危険運転致傷罪に切り替えられて起訴されました。
(フィクションです)

~ 過失運転致傷罪,危険運転致傷罪 ~

過失運転致傷罪危険運転致傷罪とも「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下,法律)」に規定されています。
過失運転致傷罪法律5条に,危険運転致傷罪法律2条に定められています。
危険運転致死傷罪については法律2条1号から6号にその類型が定められており,本件は法律2条5号が適用されそうです(罰則15年以下の懲役)。

~ 危険運転致傷(法律2条5号) ~

法律2条5号には

 赤色信号(略)を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

定められています。

赤色信号を殊更に無視し」とは,故意に赤色信号に従わない行為のうち,およそ赤色信号に従う意思のないものをいいます。この意思があるかどうかは,運転者が,どの地点で対面信号が赤色表示していたのを認識していたかにもよります。

次に,「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは,自車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度,あるいは,相手方の動作に即応するなどしてそのような大きな事故を回避することが困難と認められる速度のことをいい,通常時速20~30キロメートルであればこれに当たると考えられています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は交通事故などの刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件化した交通事故でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。
福岡県東警察署までの初回接見費用:36,000円)

福岡県糟屋郡の危険運転致傷罪で逮捕 刑事事件に強い弁護士が初回接見

2018-03-02

福岡県糟屋郡の危険運転致傷罪で逮捕 刑事事件に強い弁護士が初回接見

Aさんは、薬物の影響で正常な運転が困難な状態であるのに、軽乗用車を運転しました。
その結果、交差点で、自分の進行方向が赤になっているのに気づかず進行し、横断歩道を渡っていた通行人を撥ね、けがをさせました。
Aさんが福岡県警察粕屋警察署の警察官に危険運転致傷罪の容疑で逮捕されたので、Aさんの家族は刑事事件に強い弁護士初回接見を依頼することにしました。
(平成30年2月1日西日本新聞掲載事案を基に作成)

《 危険運転致傷罪 》

近年、交通事故において、飲酒運転や妨害運転など事故原因が悪質な加害者に対して厳罰化を望む声が高まっています。
そこで、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が新たに制定されることになりました。
危険運転致傷罪は、この法律の規定の一つです。

危険運転により人を負傷させた場合には危険運転致傷罪が成立しますが、危険運転には色々な種類があります。
危険運転の例として、酩酊・薬物運転、制御困難運転、未熟運転、妨害運転、信号無視運転、通行禁止道路運転、準酩酊・準薬物運転、病気運転があります。

上の事案のAさんの運転は、薬物の影響で正常な運転が困難であるにもかかわらず運転したということで薬物運転にあたると考えられます。
ここでの「薬物」は、大麻覚せい剤のみならず、副作用で眠気を誘発するような一般の市販薬も含まれます。
赤信号に気づかなかったとして信号無視運転にも当たりそうですが、危険運転致傷罪における信号無視運転とは、赤信号を「殊更に」無視したことをいいます。
つまり、少なくとも赤信号であることを認識している必要があり、Aさんのように赤信号に気づかなかった場合には信号無視運転には当たりません。

危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役ですので、起訴された場合にはこのような刑を受ける場合があります。
危険運転致傷罪は重大事件と考えられていますので、不起訴となるのは稀です。
とはいえ、起訴された場合でも執行猶予付き判決を得ることで、実刑を回避することは可能です。
早い段階で刑事事件に強い弁護士に相談しておくことで、執行猶予を得られる場合もあります。
危険運転致傷罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

(初回法律相談:無料)
(福岡県粕屋警察署までの初回接見費用:3万7,200円)

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