人身事故・死亡事故

1. 人身事故

交通事故によって被害者の身体に傷害結果が発生した場合、その結果を招いた交通事故のことを「人身事故」といいます。

人身事故の中でも、自動車の運転中に不注意により交通事故を起こし相手にケガを負わせてしまった場合は、過失運転致傷罪(自動車運転死傷行為処罰法)が成立します。

また,ケガにとどまらず相手を死亡させてしまった場合にも,過失運転致死罪が成立します。

自動車運転死傷行為処罰法の正式名称は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」です。

そして、この法律は大きく2つのポイントがあります。

① これまで刑法211条2項に定められていた自動車運転致死傷罪と刑法208条の2に定められていた危険運転致死傷罪を刑法から削除して、自動車運転死傷行為処罰法に組み入れる。

② 危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪を犯した者が、そのときに無免許運転だった場合には免許ある場合に比べ刑罰を加重する。

自動車運転死傷行為処罰法は、わずか6つの条文しかありませんが人身事故の犯罪と刑罰が網羅されています。

 

2.過失運転致死傷罪

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます(自動車運転死傷行為処罰法5条)。

例えば、前方不注視、後方確認義務違反、スピード違反などの過失により、人を負傷させたり、死亡させたりした場合に成立します。

 

3.危険運転致死傷罪

酒酔い運転や無免許運転、無謀運転などで事故を起こし、人を死に至らしめたにもかかわらずわずか数年の服役で刑罰が終了するのは妥当ではなく、国民の納得のいく処罰の観点から規定されました。

運転者が単なる過失でなく、故意に危険な下記①~⑥に該当する行為をし、その結果、事故で死傷した場合に成立します。

 

① 酩酊運転(2条1号)

「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」で自動車を走行させ、よって、人を死傷させる罪です。道路交通法上の酒酔い運転罪よりも要件が厳しい一方で刑罰が重くなっています。

なお、飲酒だけでなく、薬物(危険ドラッグ)により正常な運転が困難な場合も該当します。

「正常な運転が困難な場合」の具体例としては、運動能力が低下してハンドルやブレーキがうまく操作できない場合等が挙げられます。

そして、捜査機関は「呼気検査」「歩行検査」「ビデオカメラによる蛇行運転の事実」「目撃者による飲酒量についての供述」等によって、立証してゆきます。

 

② 制御困難運転(2条2号)

進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させ、よって、人を死傷させる罪です。

速度違反のように、何キロオーバーということが数値で決まっているわけではなく、道路状況や事故状況に応じて判断されます。

例えば、高速道路で時速80kmを出しても制御困難とはいいがたいですが、曲がりくねった道で時速80kmを出して運転していると「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させ」と判断されやすいです。

 

③ 未熟運転(2条3号)

進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって、人を死傷させる罪です。

「進行を制御する技能を有しない」とは、基本的な自動車操作の技能を有しないことをいいます。

免許の有無にかかわらず、事故当時のその人の運転技術に着目して未熟運転は判断されます。

 

④ 妨害運転致死傷(2条4号)

人または車の通行を妨害する目的で、通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって、人を死傷させる罪です。

急な割り込み、幅寄せ、あおり、対向車線へのはみだし行為などにより、他車のハンドル操作を誤らせて死傷事故を起こしたような場合をいいます。

 

⑤ 信号無視運転致死傷(2条5号)

赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって、人を死傷させる罪です。

「殊更に無視」とは、赤信号であることを認識している場合のみでなく、およそ赤色信号標識に従う意思のない場合をいいます。

 

⑥ 通行禁止道路運転(2条6号)

新法により通行禁止道路運転が追加されました。

具体例として、「自転車および歩行者の専用道路」「一方通行道路の逆送」「高速道路の逆送」等が想定されています。

 

4.準危険運転致死傷罪

新法により追加されました。

アルコールや薬物、あるいは一定の病気による影響により、「正常な運転が困難な状態」までいかなくとも、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で「正常な運転が困難な状態に陥り」人を死傷させた場合に成立します。

危険運転致死傷罪の適用のハードルが高かったことから、飲酒や薬物による影響が比較的軽度であっても同罪が成立しうることになりました。

なお、アルコールの影響については、道路交通法で酒気帯び運転罪になる程度の血中アルコール濃度があれば、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」に該当しうると理解されています。

一方、病気による影響に関しては、「政令で定める病気に限定」(※)されています。

ただし、政令で定める病気にあたる方が運転すれば必ず本罪で処罰されるというものではなく、自らの症状がどのようなものであるかを知っていて、そのために正常な運転に支障が生じるおそれがあることを知っている場合に限定して本罪は適用されます。

※政令で定める病気とは、「てんかん」「統合失調症」「躁うつ病」「低血糖症」「再発性失神」「重度の睡眠障害」のことをいいます。

 

5.アルコール等影響発覚免脱罪

新法により追加されました。

アルコール又は薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こし、人を死傷させた場合に、運転当時のアルコール又は薬物の影響の有無や程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときに成立します。

例えば、飲酒運転をして人身事故・死亡事故を起こし、(危険運転致死傷罪で処罰されるのがこわくなり)水を大量に摂取してアルコール濃度を減少させたり、アルコールを大量にのみいつの時点でアルコールを摂取したのかはわからないようにする場合などが、発覚免脱罪にあたる行為です。

飲酒運転の逃げ得を許さないため、通常の場合に比べ、重い罰則を科しています。

なお、この犯罪類型を新設したことにより、その場から逃走した場合には、アルコール等影響発覚免脱罪(最高で懲役12年)とひき逃げ(最高で懲役10年)が成立し、併合罪(※)により最高刑は懲役18年になります。

※併合罪
確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪といい、併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁固に処するときは、その最も重い罪について定めた系の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた系の長期の合計を超えることはできない。

 

6.無免許による加重(6条)

2から5までの罪を犯した者が、無免許だった場合、刑がさらに重くなることになりました。(「未熟運転」は除く)

 

7.自動車運転死傷行為処罰法の法定刑

罪名 結果 刑罰・法定刑
無免許運転以外の場合 無免許運転の場合(6条)
危険運転致死傷罪 (2条) 死亡 1年以上の有期懲役
(最高20年)
負傷 15年以下の懲役 6月以上の有期懲役(1項)
(最高20年)
準危険運転致死傷罪 (3条) 
アルコール・薬物・病気
死亡 15年以下の懲役 6月以上の有期懲役
(最高20年)
負傷 12年以下の懲役 15年以下の懲役(2項)
発覚免脱罪(4条) 死亡・負傷 12年以下の懲役 15年以下の懲役(3項)
過失運転死傷罪(5条) 死亡・負傷 7年以下の懲役、禁錮
又は
100万円以下の罰金
10年以下の懲役(4項)

 

8.人身事故の場合のペナルティー(行政処分)

人身事故を起こすと、3つの責任を負います。

① 行政処分
累積した点数に応じて運転免許証の効力を一定期間停止させたり、取消されたりされます。

② 刑事処分

③ 民事処分
被害者に対して与えた損害を賠償するものです。

 

(行政処分について)

違反をする度に点数が累積されていき、累積点数が一定の基準を超えた場合に処分を受ける(免許停止・免許取消し)ことになります。

交通違反や交通事故をした日から起算して、過去3年間の点数が計算されることとなります。

ただし、「免許を受けている者が過去1年以上の間、無事故・無違反ですごした場合」「運転免許の取消しや停止処分を受けて、無事故、無違反で取消期間、又は停止期間をすごしたとき」等の場合には、その以前の交通違反や交通事故の点数は加算されないこととなります。点数がリセットされます。

【免許停止】
一時的に免許の効力を停止させられます。指定期間が過ぎれば、再び免許の効力を取り戻すことができます。

【免許取消し】
免許を取り上げられる処分になります。
ただ単に取り上げられるだけでなく、「欠格期間」という制限期間も付属してきます。
欠陥期間を経てから、もう一度免許を取り直さないといけません。

 

 ~人身事故・死亡事故における弁護活動~

1 被害弁償と示談交渉

自動車事故などによる犯罪成立に争いがない場合、主な弁護活動は被害者・遺族の方に対する被害弁償や示談交渉になります。

示談が成立すると、被害者の方に生じた被害結果が大きい場合や犯行態様が悪質な場合を除いて、起訴猶予による不起訴処分や執行猶予判決を受けられる可能性があります。

 

2 情状弁護活動

自動車事故などについて有罪判決が下されることを免れないとしても、被害者や遺族の方などに対する被害弁償や示談成立の事実、加害者の不注意の程度が軽微であったことなど被告人に有利な事情を主張・立証して、減刑・執行猶予判決の獲得を目指します。

また、重大事故を起こしてしまった場合や、無免許で事故を起こしてしまったような場合、今後車に乗ることがないように廃車にするなどの環境を整えることも検討します。

 

3 身柄解放活動

人身事故・死亡事故で逮捕・勾留されてしまった場合でも、証拠隠滅・逃亡のおそれがないことや養うべき家族がいることなど、加害者の酌むべき事情を警察・検察や裁判所に対して積極的に主張し早期の釈放・保釈を目指します。

 

4 裁判員裁判

危険運転により人を死亡させた場合には、裁判員対象事件となります。

裁判員裁判では、連日の集中審理が行われますので、そのために入念な事前準備が必要となります。 

裁判員裁判において、充実した弁護を行うためには、高い弁護技術が求められます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、数多くの刑事事件の経験を基に、裁判員裁判についてもお力になれるはずです。

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