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DV法と保護命令②
DV法と保護命令②
~ 先日の続き ~
北九州市小倉北区に住むAさんは,妻Vさんと口論となり,Vさんの顔面や腹部等を足蹴にするなどの暴行を加え,Vさんに加療約1か月間を要する傷害を負わせた傷害罪で福岡県小倉北警察署に逮捕されてしまいました。その後,Aさんは勾留期間中に,VさんからDV法に基づき保護命令の申し立てをされました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
先日の「DV法と保護命令①」のコラムでは,Aさんから暴力を加えられた妻Vさんが申し立てた「保護命令」の解説をいたしました。では,申し立てられた側のAさんは,それに対し,不服を申し立てることはできないのでしょうか?また,Aさんが保護命令に違反した場合はどんな刑罰が科されるのでしょうか?
~ 保護命令に対する不服申し立て ~
保護命令に対して不服がある場合は,高等裁判所に対して不服申し立て(即時抗告)をすることができます。即時抗告は決定があった日から1週間以内に,抗告状という書面を原裁判所(保護命令を出した裁判所)に提出しなければなりません。ただし,即時抗告をしただけでは保護命令の効力が失われるわけではありませんから注意が必要です。
~ 保護命令に違反した場合の刑罰 ~
保護命令に違反した場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に処せられます。
ここで保護命令とは,
①接近禁止命令
②退去,はいかい禁止命令
③電話等禁止命令
④子への接近禁止命令
⑤親族等への接近禁止命令
のことをいいます(ただし,③から⑤については,①の接近禁止命令が発令されている場合のみ発令されます)。
* ①接近禁止命令 *
接近禁止命令は,命令の効力が生じた日から起算して6か月間,被害者(※)の住居その他の場所において被害者の身辺につきまとい,又は被害者の住居,勤務先その他のその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
※ 被害者
DV法では,被害者を「配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた者」と定義しています。
* ②退去命令 *
②退去命令は,命令の効力が生じた日から2か月間,被害者と生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
* ③電話等禁止命令 *
③電話等禁止命令は,命令の効力が生じた日から6か月間,電話などをかけてはならない旨の命令を指します。電話の他にしてはならないことの代表として,面会要求,著しく粗野又は乱暴な言動,メールの送信などがあります。
* ④子への接近禁止命令 *
④子への接近禁止命令は,命令の効力が生じた日から6か月間,当該子の住居,就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい,又は当該子の住居,就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
当該命令の発布には,次の要件が必要となります。
・被害者が子と同居していること
・配偶者が子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があること
・被害者がその同居している子に関しては配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めること
* ⑤親族等への接近禁止命令 *
⑤親族等への接近禁止命令は,命令の効力が生じた日から6か月間,当該親族等の住居,その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい,又は当該親族等の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
当該命令の発布には,次の要件が必要となります。
・配偶者が被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があること
・被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めること
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,傷害罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。傷害罪でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。
景品交換シール剥がしは窃盗罪・器物損壊罪
景品交換シール剥がしは窃盗罪・器物損壊罪
福岡市早良区に住む主婦のAさんは,食料品の買い物途中,食パンや菓子パンなどに貼られた景品交換シールを剥がしてポケット内に入れました。そうしたところ,Aさんは,以前からAさんの行動に目を付けていた保安員Xさんに犯行を一部始終を目撃されており,その場で現行犯逮捕されてしまいました。Xさんから身柄を受け取った福岡県早良警察署の警察官がAさんに話を聴くと,Aさんはこれまでに,同じ店で約100枚ものシールを剥がしたと話しています。
(フィクションです)
~ はじめに ~
春のパンといえば,山崎製パンの「山崎春のパン祭り」?ではないでしょうか? 「山崎春のパン祭り」では,食パン,菓子パンなどの対象商品の袋に景品交換用のシールを張り,一定数のシールが集め,はがきに添付して応募したら景品と交換できるというキャンペーンを行っています。また,山崎製パンだけではなく,他社も同様のキャンペーンを行っています。
筆者もかつて,頻繁にコンビニを利用していたころ,山崎製パンの景品交換シールを集め応募し,ミッキーマウスやプーさんの絵の載った皿などと交換した記憶があります。
こうしたことからも,景品交換用シールを剥がす行為は窃盗罪に当たるということが何となくお分かりいただけるのではないでしょうか?先日,3月12日,インターネットのヤフーニュースに「「パンまつり泥棒」は絶対にダメ!シールを剥がすだけでも犯罪です」というタイトルの記事が掲載されていました。その記事の中では,「シールを剥がされた商品は売り物にならない」などと嘆く悲痛な販売店店員の声が紹介されていました。
そこで,今回は,景品交換シールはどんな犯罪に当たるのかご紹介いたします。
~ その1 窃盗罪 ~
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
本件で??と感じるは,景品交換シールの財物性と剥がすという行為が窃盗に当たるのかという点ではないでしょうか?
= 景品交換シールの財物性 =
「財物」というためには,およそ財産的価値を有するものでなくてはならないとされています。財産的価値のない物を刑法で保護する必要はないからです。どの程度の価値を有することが必要かどうかは問題となります。もっとも,客観的な経済的価値,つまり,金銭的交換価値が認められるものは財産的価値を有するとしていいでしょう。
本件の景品交換シールも客観的な経済的価値が認められると考えます。景品交換シールは商品(食パンなど)と一体となっている(その理由としては,景品交換シールは商品を購入してはじめて取得できる,シールが貼付されていない商品は経済的価値が落ちることなどかが挙げられます)こと,シールを集めると経済的価値のあるものと交換できること,がその理由です。
= 剥がす行為と窃取 =
窃取というと「人から物を盗る」というイメージでしょうか?これをもう少し専門的にいえば,「占有者(お店の店長)の意思に反してその占有を排除し,目的物を自己又は第三者の占有に移すこと」とされています。この点,景品交換シールを「剥がす」という行為もこれに当たりますからやはり「窃取」したことになるのです。
~ その2 器物損壊罪 ~
窃盗罪の他に成立する罪として考えられるのは器物損壊罪です。
刑法261条
前3条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
窃盗罪と器物損壊罪を区別する基準は,犯人に,
景品交換シールをその用途に従って使用する意図があったか否か(不法領得の意思の有無)
によります。使用する意図があった場合は窃盗罪が成立し,使用する意図がなかった場合(例えば,店に対する嫌がらせ目的など)は器物損壊罪が成立します。
~ おわりに ~
このように,景品交換シール剥がしは単に「迷惑行為」にとどまらず,列記とした「犯罪」となります。発覚すれば当然,逮捕されることもあります。また,お店にとっては商品が売れなくなるなどの損害が発生しますから,刑事上のみならず民事上の責任も負う必要が出てきます。景品交換シール剥がしは絶対にやめましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。窃盗罪でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。
DV法と保護命令①
DV法と保護命令①
北九州市小倉北区に住むAさんは,妻Vさんと口論となり,Vさんの顔面や腹部等を足蹴にするなどの暴行を加え,Vさんに加療約1か月間を要する傷害を負わせた傷害罪で福岡県小倉北警察署に逮捕されてしまいました。その後,Aさんは勾留期間中に,VさんからDV法に基づき保護命令の申し立てをされました。
(フィクションです)
~ DV法とは ~
DV法とは,正式名称,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律といいます。
DV法では,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的として,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等に関する規定を設けており,平成26年1月3日から施行されています。
夫婦間での暴力・傷害事件では,相手方から保護命令というものを申し立てられることがあります。そこで,今回は,DV法に基づく保護命令に関しご紹介いたします。
~ 保護命令とは ~
DV法では「保護命令」に関する規定を設けています。
保護命令とは,相手方(Aさん)からの申立人(Vさん)に対する身体への暴力を防ぐため,裁判所が相手方に対し,申立人に近寄らないよう命じる決定のことをいいます。
= どんな決定が出るの? =
まずは,①接近禁止命令,②退去命令を受けることが考えられます。
①接近禁止命令とは,6か月間,申立人の身辺につきまとったり,申立人の住居(同居する住居は除く。)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令です。②退去命令とは,申立人と相手方とが同居している場合で,申立人が同居する住居から引越しをする準備等のために,相手方に対して,2か月間家から出ていくことを命じ,かつ同期間その家の付近をうろつくことを禁止する命令です。
= その他の命令は? =
その他の命令として③子へ接近禁止命令,④親族等への接近禁止命令,⑤電話等禁止命令があります。③から⑤の命令は,必要な場面に応じて被害者本人への接近禁止命令の実効性を確保する付随的な制度ですから,単独で発令されることはなく,申立人に対する接近禁止命令が同時に出る場合か,既に出ている場合のみ発令されます。
③子への接近禁止命令とは,子を幼稚園から連れ去られるなど子に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに,6か月間,申立人と同居している子の身辺につきまとったり,住居や学校等その通常いる場所の付近をうろつくことを禁止する命令です。
④親族等への接近禁止命令とは,相手方が申立人の実家など密接な関係にある親族等の住居に押し掛けて暴れるなどその親族等に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに,6か月間,その親族等の身辺につきまとったり,住居(その親族等が相手方と同居する住居は除く。)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令です。
⑤電話等禁止命令とは,6か月間,相手方から申立人に対する面会の要求,深夜の電話やFAX送信,メール送信など一定の迷惑行為を禁止する命令です。
= 誰が申立てできるのか? =
被害者です。ここでいう「被害者」とは,配偶者(Aさん)からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫)を受けた者のことをいいます。
= どのような場合に申立される(できる)のか? =
基本的には申立て現在において婚姻関係にあることが必要ですが,離婚をし,婚姻関係が解消された場合でも申立てされることがあります。
* 婚姻関係にある場合 *
身体への暴力(性的暴力・精神的暴力はこれに含まれません。)又は生命・身体に対する脅迫を受けた申立人が,今後,身体に対する暴力を受けて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき。
* 婚姻関係が解消されている場合 *
暴力・脅迫を受けた申立人が,離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き身体に対する暴力を受けて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき。つまり,この場合,以前に受けた暴力・脅迫を基に保護命令を申し立てられるのであって,婚姻関係解消後の暴力・脅迫を基に保護命令を申し立てられることはありません。
次回は,DV法に規定されている罪などについてご紹介いたします。
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夫が痴漢で逮捕!そのとき妻は?
夫が痴漢で逮捕!そのとき妻は?
福岡県春日市に住む会社員Aさんは,西鉄春日原駅から乗車して西鉄天神駅へ行く通勤電車内で,女性Vさんに対して痴漢したとして福岡県中央警察署の警察官に現行犯逮捕されました。専業主婦のBさんは,中央警察署から「旦那さんを逮捕した」との連絡を受けました。Bさんはどうしていいかわからず,インターネットで痴漢事件専門の弁護士を検索し,弁護士に接見を依頼しました。
(フィクション)
~ はじめに ~
ある日,突然,警察からの連絡。「普段,真面目に生活しており,警察沙汰になるようなことはしていないのに,なぜ警察から電話が来るの?」。普段,警察と接点がない方は,警察から電話が来るというだけでも驚きですのに,さらに「夫が痴漢」「逮捕」というワードを聞けば,なおさら驚かれ,ショックを受けられることは間違いないのではないでしょうか?
そして,次に,考えることは,
・家庭,家族=これからの家族の生活はどうなる?
・会社,仕事=会社に連絡した方がいいのか?クビにはならないか?
・夫との関係=夫と離婚できるか?離婚すべきか?
などといったことではないでしょうか?
そこで,このコラムでは
~ 夫(家族)が痴漢で逮捕されたときに取るべき対応 ~
まずは,気持ちを落ち着けましょう。そして,冷静に判断して次の対応を取られるとよいでしょう。
= 痴漢事件に強い弁護士に接見(面会)してもらう =
まずは,夫が痴漢を認めるか,認めないのか,冤罪の可能性があるのか見極める必要があります。それによって,その後の弁護活動が異なってくるからです。その見極めをするためには,ご本人と接見する必要がありますが,逮捕直後のご家族の面会は認められていません。したがって,この時点では,弁護士に接見を依頼するしかありません。また,接見後の有効かつスピーディーな弁護活動をお望みであれば,痴漢事件に強い私選の弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。
= 会社・職場に連絡する =
逮捕された日が勤務日である場合は,会社・職場の連絡先をご存知の場合は一報を入れておいた方が無難です。何の連絡もなく休むと「欠勤」扱いとなり減給出勤停止などの対象となるばかりか,欠勤が続けば「解雇」の対象となり得ます。ケースにもよりますが,2,3日程度であれば痴漢のことは伏せて「体調不良」「家族の所要」などといって誤魔化すことはできるかもしれません。お悩みの場合は弁護士に相談しましょう。
* 逮捕されただけで解雇になるの? *
会社の解雇などの懲戒処分の事由(理由)については,会社の就業規則に定められています。通常,「逮捕」のみでは解雇事由に当たらないことが多いかと思われます。ただし,逮捕されたことが世間に知れ渡り,そのことで会社の信用を失墜させたとか,経済的に大損害を与えたなどという場合,痴漢事件で有罪の判決を受けた場合などは解雇事由に当たるでしょう。
* 早期釈放を! *
このようなことから,一刻も早い釈放が望まれます。刑事処分はともかくとして,釈放されれば,ご本人自身で会社・職場への対応が可能となるからです。また,逮捕から本格的に身柄拘束される(勾留される)まで最大で3日間あります。できれば,この期間内での釈放を目指したいところです。
= 弁護士に協力する =
弁護士が接見したあとは,通常,接見時の内容をご家族(依頼者)に報告してくれます。そこで,まず,ご本人が痴漢を認めているのか,認めていないのか,冤罪の危険はあるかなど事件のことについて報告を受けましょう。そして,それによって,今後の事件の見通しや弁護活動の内容の報告,ご家族としての対応方法などについての助言・アドバイスがあると思います。ご本人が痴漢を認める場合は,被害者との示談が中心となります。ですが,被害者との示談は,事実上弁護士しかできません。ご家族としては早急に示談金を準備しましょう。また,釈放に向けて,いろいろ弁護士から指示があると思います。面倒くさがらず指示に従いましょう。疑問点がある場合は遠慮なく弁護士に尋ねましょう。
~ おわりに ~
これまで,夫などのご家族が逮捕された場合に,ご家族としてできることをご紹介してきました。
ある日,突然,警察から連絡が来て気が動転し,冷静さを保つことは大変だと思います。しかし,ご家族には,夫や家族の日常生活を守る役割が求められます。大変だとは思いますが,家族としてできる限りのことを行いましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,痴漢事件をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。痴漢事件での示談交渉や刑事弁護なら刑事事件専門の弁護士にご用命ください。まずは,0120-631-881で無料法律相談を受け付けております。
盗撮と欠格事由
盗撮と欠格事由
看護学生であるAさんは,通学中の地下鉄内で盗撮したとして福岡県中央警察署に福岡県迷惑防止条例(条例6条2項1号違反)で逮捕されました。逮捕の知らせを受けたAさんのご両親は,Aさんが逮捕されたことからAさんは看護師になれないのではないかと心配になり,盗撮事件に強い弁護士に刑事弁護を依頼しました。
(フィクションです)
~ 盗撮はどんな犯罪?罰則は? ~
福岡県では「福岡県迷惑行為防止条例」という条例の6条2項,3項で盗撮行為を禁じています。
6条2項と3項に書かれてあることをまとめると以下のとおりとなります。
★ 6条2項 ★
【禁じられる場所】→公共の場所,公共の乗物,その他の公衆の目に触れるような場所
【禁じられる行為】→のぞき見,写真機,ビデオカメラその他これらに類する機器(以下,写真機等)を用いて撮影すること(以下,盗撮行為)
→盗撮行為をする目的で写真機等を設置し,又は他人の身体に向けること
【上記行為の対象】→通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着
★ 6条3項 ★
【禁じられる場所】→公衆便所,公衆浴場,公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服の全部又は一部を着けないでいつような場所
【禁じられる行為】→盗撮行為
→盗撮行為をする目的で写真機等を設置し,又は他人の身体に向けること
【上記行為の対象】→通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる状態にある人の姿態
罰則については条例の11条2項により「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」,常習として行った場合は,12条1項により「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
~ 盗撮と看護師の欠格事由 ~
ある職種に就くにあたり必要とされる資格を欠くことを欠格といい,その欠格の事由(理由)を欠格事由といいます。たとえば,国家公務員の欠格について規定した国家公務員法38条2号では
禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
と規定され,国家公務員の職に就く能力を有しないとされています。
では,看護師の場合どうでしょうか?
この点,保険師,助産師,看護師,准看護師の免許,試験,業務等について定めた保険師助産師看護師法9条には次の定めがあります。
9条 次の各号のいずれかに該当する者には,前二条による免許を与えないことがある
1 罰金以上の刑に処せられた者
「罰金以上の刑」とは,罰金刑,禁錮刑,懲役刑,死刑のことを指し,処せられたとは裁判を受け,その裁判が確定したことを言います。したがって,逮捕中の場合はまだ裁判すら受けていない段階ですので,逮捕された事実のみをもって看護師等になれないということはありません。また,9条は「与えないことがある」と免許を与えないことにつき任意的としています。つまり,罰金以上の刑に処せられたからといって,必ず免許が与えられないかといえばそうではありません。
ところで,上記でみたように,盗撮の罰則には懲役刑も罰金刑も規定されています。
よって,Aさんは罰金刑を受け,その刑が確定してしまえば「罰金以上の刑に処せられた者」として看護師の免許を受けられない可能性が出てきます。
~ 欠格事由に当たるのを回避するには? ~
では,欠格事由に当たるのを回避するにはどうすればよいでしょうか?
もちろん,裁判で事実関係を争い無罪判決を獲得することができれば回避することはできます。しかし,事実関係に争いのない場合,この手法はあまりにも非現実的です。むしろ,不起訴処分獲得を目指す方がより現実的と言えます。不起訴処分を処分を獲得するには,まずは何より被害者に謝罪し,示談交渉を始めて示談を締結することが何よりも大切です。示談締結により被害者の処罰感情が緩和されれば,不起訴処分獲得の可能性は高まると言えるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,盗撮事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
(福岡県中央警察署までの初回接見費用:35,000円)
銃刀法違反で逮捕
銃刀法違反で逮捕
福岡県田川郡香春町に住むAさんは,深夜,アルバイトから帰宅途中路上を歩いていたところ,福岡県田川警察署の警察官の職務質問に遭いました。Aさんは,警察官から職務質問と同時に所持品検査も求められました。そして,警察官がAさんの衣服の上から手を押し付けるようにしてポケットの中身などを確認したところ,Aさんのズボンの後ろポケットの中から「はさみ」を発見されてしまいました。Aさんは「はさみ」を警察官に提出しました。その後,Aさんは銃砲刀剣類所持等取締法違反の被疑者として田川警察署に出頭するよう要請されました。
(フィクションです)
~ 銃刀法違反 ~
銃刀法は,正式名称「銃砲刀剣類所持等取締法(以下,法)」といいます。法は,銃砲,刀剣類等の所持,使用等に関する危害予防上必要な規制について定める法律です(法1条)。
= 刀剣類,刀剣類に関する規制 =
法2条2項では,「刀剣類」を
刃渡り15センチメートル以上の刀,やり及びなぎなた,刃渡り5.5センチメートル以上の剣,あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ(略)
と定義しています。そして,刀剣類については,所持の動機目的を問わず,何人も,その所持許可ないし登録のない刀剣類の所持を禁止されており(法3条1項1号),これに罰則を設けています(法31条の16第1項1号)。
法3条 何人も,次の各号のいずれかに該当する場合を除いては,銃砲又は刀剣類を所持してはならない
1号 法令に基づき職務のため所持する場合
法31条の16 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 第3条第1項の規定に違反して銃砲(略)又は刀剣類を所持した者
= 刃物,刃物に関する規制 =
法は,「刀剣類」に該当しない刃物であっても,刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を規制の対象としてます。すなわち,法22条は,
何人も,業務その他正当な理由による場合を除いては,内閣府省令で定めるところにより計った刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし,内閣府省令で定めるところにより計った刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で,政令で定める種類又は形状のものについては,この限りではない。
とし,その違反に対する罰則を設けています。
法31条の18 次の各号のいずれかに該当する者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
3号 第22条の規定に違反した者
* 「業務その他正当な理由による場合」とは *
「業務その他正当な理由による場合」とは,研磨,修理,鑑定,売買等携帯・運搬することが社会通念上正当と認められる場合をいいます。犯罪を実行するための携帯等はもとより,「ただ何となく」など特段の事由なく携帯等することは「正当な理由による場合」とはいえません。また,「護身用のため」であっても同様です。
* 刃体の長さの計り方 *
法22条では,「内閣府省令で定めるところにより」としています。内閣府省令とは「銃砲刀剣類所持等取締法施行規則」を指し,計り方についてはその101条に規定されています。
~ Aさんの場合 ~
Aさんは「はさみ」を携帯していました。なお,本件の「はさみ」がそのような外観,形状をしているか分かりませんが,ねじがある「はさみ」の刃体の長さの計り方については,銃砲刀剣類所持等取締法施行規則101条2項2号で
切先とねじの中心とを結ぶ直線の長さを計る。
とされています。今回は,この計り方によって,Aさんが携帯していた「はさみ」の刃体が8センチメートルをこえると判断された可能性があります。
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脅迫罪と強要罪
脅迫罪と強要罪
Aさんは,自動車を運転して久留米市内の道路を走行していたところ,後方から走行してきたVさん運転の自動車に煽り運転を受けました。
これに腹を立てたAさんは,信号待ちの際に車から降り,Vさんの車の窓を叩いて降りるよう要求しました。そして,Aさんは,Vさんが車から降りたため,Vさんに「なに煽り運転してんだよ!」「オレには,バックに〇〇組(暴力団組員)が付いているからな」「車のナンバーも写メしたし,命が欲しいならでここで土下座しろ」などと言いました。Vさんは,「煽り運転はしていない」「車間距離が短かったのであれば謝罪する」などと言いましたが,Aさんの怒りはいっこうに収まることはありませんでした。そうしたところ,後続車が通報したのか,Aさんは,現場に駆け付けた福岡県久留米警察署の警察官から,脅迫罪,強要罪で事情を聴かれることとなりました。
(フィクションです。)
~ 脅迫罪 ~
脅迫罪は刑法222条に規定されています。
1項 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。
= 害を加える旨の告知(害悪の告知) =
害悪の告知は,一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならないとされています。
人を畏怖させるに足りるものであったか否かは,害悪の告知の内容を四囲の状況に照らして判断されます。
この点,Aさんの「〇〇組(暴力団組員)が付いているからな」,「車のナンバーも写メしたし,命が欲しいなら~」という行為は,Aさん,もしくは暴力団組員がVさん,もしくはVさんの車に何らかの危害を加える旨を想起させる言葉であり,生命,身体,財産に対する害悪の告知といえそうです。
* 脅迫行為に関する特別法 *
「暴力行為等処罰に関する法律」という法律に,脅迫行為に関する特別規定が設けられています。すなわち,その1条には,「団体」若しくは「多衆」の威力を示すなどして刑法222条の罪などを犯した場合は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処する旨の規定が設けられているのです。本件では,「〇〇組」が「団体」若しくは「多衆」に当たるかどうかがポイントとなるでしょう。
~ 強要罪 ~
強要罪は刑法223条に規定されています。
1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害 した者は,3年以下の懲役に処する。
強要罪でも「害悪の告知」が必要とされています。ただし,強要罪は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害したことが必要ですから,強要罪の「害悪の告知」はその程度のものであることが必要とされています。
* 土下座の要求は強要罪に当たるのか? *
まず,単に土下座を要求しただけでは強要罪には当たりません(「人に義務のないことを行わせ」たとはいえません)。強要罪の成立には,あくまで「暴行」「脅迫」が必要だからです。また,行為者の言い分が正当な場合など「ここで土下座を要求されても仕方がない」といえる状況の場合も同様です。結局は,社会通念に照らし,ケースバイケースで判断されるものと思われます。本件の場合,道路上で土下座を要求している点を重く見られて(他の交通の妨げになるため),強要罪に当たると判断される可能性があります。
~ 本件の行方 ~
Aさんの土下座要求行為が強要罪に当たると判断されればAさんは強要罪に問われることになります。その際,脅迫罪は強要罪に吸収され,別個に脅迫罪を問われることはありません。強要罪に当たらないとされた場合は,刑法もしくは暴力行為等処罰に関する法律の脅迫罪に問われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,強要罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
準強制わいせつで逮捕
準強制わいせつで逮捕
福岡市西区に住む大学生のAさん(21歳)は友人Bさんとともに,SNSで知り合った女子大生2人(Xさん,Yさん)を誘い,福岡市西区の居酒屋で合コンを開きました。その後,AさんとBさんは,二次会のため,Xさん,YさんをAさんの自宅マンションへ誘いました。Aさんらは,Aさんの自宅マンションで再びお酒などを飲み始めたのですが,しばらくするとXさんと,Yさんはお酒に酔って寝てしまいました。そこで,AさんとBさんはこの機会を利用してXさん,Yさんにわいせつなことをしようと考え,Xさん,Yさんの胸や陰部などを触るなどのわいせつ行為に及び,その様子をスマートフォンで動画撮影しました。そして後日,Aさんがその動画をインターネットの動画投稿サイトに投稿したことから,Xさんが被害を知ることとなり,西警察署に被害届を提出しました。そうしたところ,Aさんと,Bさんは準強制わいせつ罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ 準強制わいせつ罪 ~
準強制わいせつ罪は刑法178条1項に規定されています。
刑法178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,わいせつな行為をした者は,第176条の例による。
= 主体 =
わいせつ行為と聞けば男性が女性に対して行う犯罪と思われがちですが,本罪は「わいせつ行為をした者」とだけ規定しており,本罪の主体(加害者)に男女の区別はありません。また,客体(被害者)についても同様です。したがって,男性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合,女性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合,女性が女性に対してわいせつ行為に及んだ場合でも本罪が成立します。
= 心神喪失 =
精神上の障害によって正常な判断を失っている状態をいいます。具体的には,熟睡,泥酔・麻酔状態・高度の精神病などがこれに当たります。責任能力における心神喪失(刑法39条1項)とは若干意味が異なります。
* 責任能力における心神喪失とは *
精神病や薬物中毒などによる精神障害のために,自分のしていることが善いことか悪いことかを判断したり,その能力に従って行動する能力のないことを心神喪失といいます。
= 抗拒不能 =
心神喪失以外の理由によって心理的・物理的に抵抗することが不可能又は著しく困難な状態をいいます。睡眠中,泥酔中,麻酔中,催眠状態など,心神喪失以外の理由でわいせつな行為をされていることを認識していない場合がこれに当たります。また,わいせつな行為をされること自体認識していても,加害者の言動によりこれを拒むことを期待することが著しく困難な状態なども含まれます。
* 抗拒不能に当たるとされた裁判例 *
上の後者に関する裁判例として
女子高生が家庭教師の巧みな言葉に従えば英語が上達できるようになると誤信しているのに乗じてわいせつな行為をした場合には,「抗拒不能」の状態にあった
として準強制わいせつ罪の成立を認めています。(東京高裁平成15年9月29日)。
= ~乗じ,~させ =
「(心身喪失・抗拒不能に)乗じる」とは既存の当該状態を利用することをいいます。当該状態を作出した者とわいせつ行為をした者が同一であることは必要ではありません。ただし,この場合,本罪が成立するには,わいせつ行為をした者が,被害者が当該状態にあることを認識しておく必要があるでしょう。「(心神喪失・抗拒不能)にさせる」手段には制限はありません。麻酔薬,睡眠薬の投与・使用,催眠術の施用,欺罔などはいずれもその手段となり得るでしょう。
= 故意 =
本罪は故意犯です。加害者において,「被害者が心神喪失,抗拒不能の状態にあること」,「被害者を心神喪失,抗拒不能の状態にさせたこと」,「わいせつ行為に及んだこと」を認識している必要があります。なお,わいせつ行為か否かは社会通念から判断されます。胸,陰部を触る行為は,社会通念上「わいせつな行為」と判断されますから,いくら「わいせつな行為ではない」と反論しても意味がありません。
~ 準強制わいせつ罪の刑の重さ ~
準強制わいせつ罪の法定刑は「176条の例による」として強制わいせつ罪と同様,
6月以上10年以下の懲役
です。
頭に「準」とついていますから,強制わいせつ罪よりも刑が軽くなるイメージを持たれる方もおられるかもしれませんが,そうではありませんから注意が必要です。罰金刑がありませんから,起訴されれば正式裁判を受けなければなりません。裁判で「有罪」となれば「実刑」判決を受ける可能性ももちろんあります。起訴を回避する,「実刑」判決を回避するには被害者と示談を締結することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,準強制わいせつ罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
暴行罪と微罪処分
暴行罪と微罪処分
福岡県直方市に住むのAさんは会社の送別会の席で,Vさんから陰口を言われたことに憤慨し,Vさんを店の外に呼び出し,いきなり左拳でVさんの左頬を1回殴りました。ちょうどそのとき,二人のことが心配になって後をついてきたAさんとVさんの上司が二人の間に入り,事はいったん収まりました。ところが,Vさんが福岡県直方警察署に電話し,被害届を提出したいなどと言ったため,Aさんは警察官から事情を聴かれることになりました。その数日後,事件のことを振り返り反省したAさんは,Vさんと示談したいと考えています。Aさん微罪処分獲得を目指し,示談交渉を弁護士に依頼しました。
(フィクションです)
~ 傷害未遂罪って存在するの? ~
人の物を盗もうとして盗めなかったら窃盗未遂罪,人を殺すつもりでナイフで刺そうとしたところ失敗して人を殺すことができなかった場合は殺人未遂罪となります。では,人に怪我させるつもりで人に暴行を加えたところ怪我させることができなかった場合はどうでしょうか?
この点,未遂罪を処罰するには,その罪について「未遂罪を処罰する」旨の規定を設けられていなければならないところ(刑法44条),傷害罪には「未遂罪を処罰する」旨の規定が設けられていません。したがって,傷害未遂罪という罪は存在しません。では,Aさんは無罪放免かというとそうではありません。
実は,暴行罪を規定する刑法208条に,傷害未遂罪的な文言が取り込まれています。
刑法208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった」という文言が,まさに傷害未遂罪的な文言です。つまり,人に怪我させるつもりで人に暴行を加えたところ怪我させることができなかった場合は刑法208条により「暴行罪」に問われることになります。
~ 微罪処分 ~
微罪処分とは,警察が事件を検察庁を送致せず,被疑者への厳重注意,訓戒等で終了させる手続きのことをいいます。微罪処分と聞けば,万引きなどの窃盗罪
を最初に思い浮かべる方も多いかもしれませんが,実は,暴行罪も対象事件に含まれていることが多いです。どんな罪を,どんな要件に従って微罪処分とするかは各都道府県の検察庁の検事正という方が決め,それを各警察本部を通じて警察官に指示しています。暴行罪については,概ね,
・示談が成立していること
・被害者が処罰を望んでいないこと
・犯行態様が軽微であること(武器を使用していないことなど)
・粗暴歴(前科,前歴)がないこと
が要件として考えられます。
最終的には,警察官が,検察官から指示さた要件を満たしているかどうかを確認し微罪処分を下します。「処分」と言われていますが,何らかの刑罰がくだるというわけではありません。警察署に呼び出され,警察官から注意,訓戒を受け,二度と再犯をしない旨の誓約書を書いて終わり,というケースが多いです。事件は検察庁へ送致されませんから,検察庁から呼び出しを受けたり,刑事処分(起訴,不起訴)を受けたり,裁判を受ける必要がなくなります。裁判を受ける必要がないということは,刑罰を科されることはありまえせんし,前科が付くこともありません。
~ 微罪処分を受けるには? ~
上記要件のところでご紹介したように,微罪処分を受けるには,
被害者と示談を成立させること
が重要だということがお分かりいただけるかと思います。ただし,暴行事件の場合,当事者同士で示談交渉をすることは,感情の縺れなどから決裂する可能性が高いですから避けた方が無難です。これはたとえ顔見知り,同僚等関係が近い場合であっても同様です。最初は,「知っている人だからこのくらいで示談してくれるだろう」と軽い気持ちで交渉したつもりが,その過程で思わぬ方向へと話が縺れ,結局示談を締結できなかったということがあります。また,微罪処分の獲得を目指すには,警察官が事件を検察庁へ送致する前に示談を締結させ,その結果を警察へ報告しなければなりません。つまり,警察の捜査状況も確認しながら示談交渉を進めていく必要があるのです。
このように,対被害者の面でも,対警察の面でも,ご自身一人で示談交渉を進めていくことには限界がありますから,示談交渉は法律の専門家である弁護士に任せた方が安心,安全です。
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強盗と中止未遂
強盗と中止未遂
福岡市城南区に住む無職のAさん(26歳)は,小遣い銭欲しさに,深夜,一人で自宅に帰宅途中のBさんにナイフを突きつけて脅迫し現金を強取しようしましたが,風で木立が揺れた音を他人の通行人が来た音と誤認し,事件の発覚を恐れて何も奪わずに逃走しました。ところが,後日,Bさんの被害状況などに関する供述や現場周辺の防犯ビデオカメラの解析結果などからAさんの犯行であることが判明し,Aさんは,福岡県早良警察署に強盗未遂罪で逮捕されました。Aさんの家族は,刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです)
~ 強盗既遂罪が成立するまで ~
強盗罪は刑法236条に規定されています。その1項をご紹介すると次の規定となっています。
刑法236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。
これからすると強盗罪が成立するには,通常,
①強盗をするぞという意図・動機(故意・犯意)→②実行の着手(強盗罪の暴行・脅迫)→(③相手方の反抗抑圧)→④他人の財物の取得(強取)
という経過をたどることになります。
~ 未遂犯とは ~
未遂犯とは,特定の犯罪の②実行に着手したものの,何らかの事情によって結果が発生しなかった場合をいいます。本件における②実行の着手とは,AさんがBさんにナイフを突きつけるという脅迫行為です。強盗罪における「結果」とは,④他人の財物を取得することです。しかしながら,AさんはBさんの財物を取得していません。つまり,④まで至っていないことからAさんは強盗未遂罪で逮捕されているのです。未遂罪について規定する刑法43条前段には次のように書かれています。
刑法43条前段
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は,その刑を減軽することができる。
未遂犯として処罰されるためには,罪ごとに未遂犯の規定を設けていなければなりません。強盗罪については243条に未遂犯を罰する旨の規定が設けられています。
~ 中止未遂とは ~
ところで,刑法43条には,先ほどの規定に続いて,次の規定が設けられています。
刑法43条前段
(略),その刑を軽減することができる。ただし,自己の意思により犯罪を中止したときは,その刑を減軽し,又は免除することができる。
このように,犯罪の実行に着手したものの,「自己の意思により犯罪を中止した」ため,結果が発生しなかった(犯罪が既遂とならなかった)場合を中止未遂といいます。これに対して,犯罪の実行に着手したものの,「自己の意思により犯罪を中止した」場合以外で,結果が発生しなかった(犯罪が既遂とならなかった)場合を障害未遂といいます。
中止未遂が成立するためには,
①犯罪の実行に着手した者が
②自己の意思により
③犯罪を中止し
④結果発生が防止されること
が必要です。Aさんは強盗罪の脅迫行為を行っていますから①の要件は満たします。では,②についてはどうでしょうか?これについての考え方はいろいろありますが,最高裁は,客観説の立場を採っていると理解されています。客観説とは,未遂に終わった原因が,一般人を基準とした場合,通常障害と考えられるものは否かを基準とする見解です。障害と考えらえる場合は障害未遂となり,障害と考えられない場合は中止未遂となります。
この基準を本件に当てはめると,Aさんは木立が揺れた音を通行人が来た音と誤認しているようですが,通常,通行人が来て犯行が発覚するという事情は,犯行を継続する上で障害となるものと考えられます。よって,Aさんには中止未遂は成立せず,障害未遂が成立するにとどまります。
* 障害未遂と中止未遂 *
障害未遂と中止未遂は上記の違いがありますが,その他に,障害未遂は刑が任意的に減軽されるのに対し,中止未遂は必要的に(必ず)減軽されます。障害未遂の場合,刑を減軽するかづおかは裁判官しだいとなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,強盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
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