脅迫罪と強要罪

2019-03-31

脅迫罪と強要罪

Aさんは,自動車を運転して久留米市内の道路を走行していたところ,後方から走行してきたVさん運転の自動車に煽り運転を受けました。
これに腹を立てたAさんは,信号待ちの際に車から降り,Vさんの車の窓を叩いて降りるよう要求しました。そして,Aさんは,Vさんが車から降りたため,Vさんに「なに煽り運転してんだよ!」「オレには,バックに〇〇組(暴力団組員)が付いているからな」「車のナンバーも写メしたし,命が欲しいならでここで土下座しろ」などと言いました。Vさんは,「煽り運転はしていない」「車間距離が短かったのであれば謝罪する」などと言いましたが,Aさんの怒りはいっこうに収まることはありませんでした。そうしたところ,後続車が通報したのか,Aさんは,現場に駆け付けた福岡県久留米警察署の警察官から,脅迫罪強要罪で事情を聴かれることとなりました。
(フィクションです。)

~ 脅迫罪 ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

1項 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。

= 害を加える旨の告知(害悪の告知) =

害悪の告知は,一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならないとされています。
人を畏怖させるに足りるものであったか否かは,害悪の告知の内容を四囲の状況に照らして判断されます。
この点,Aさんの「〇〇組(暴力団組員)が付いているからな」,「車のナンバーも写メしたし,命が欲しいなら~」という行為は,Aさん,もしくは暴力団組員がVさん,もしくはVさんの車に何らかの危害を加える旨を想起させる言葉であり,生命,身体,財産に対する害悪の告知といえそうです。

* 脅迫行為に関する特別法 *

「暴力行為等処罰に関する法律」という法律に,脅迫行為に関する特別規定が設けられています。すなわち,その1条には,「団体」若しくは「多衆」の威力を示すなどして刑法222条の罪などを犯した場合は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処する旨の規定が設けられているのです。本件では,「〇〇組」が「団体」若しくは「多衆」に当たるかどうかがポイントとなるでしょう。

~ 強要罪 ~

強要罪は刑法223条に規定されています。

1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害  した者は,3年以下の懲役に処する。

強要罪でも「害悪の告知」が必要とされています。ただし,強要罪は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害したことが必要ですから,強要罪の「害悪の告知」はその程度のものであることが必要とされています。

* 土下座の要求は強要罪に当たるのか? *

まず,単に土下座を要求しただけでは強要罪には当たりません(「人に義務のないことを行わせ」たとはいえません)。強要罪の成立には,あくまで「暴行」「脅迫」が必要だからです。また,行為者の言い分が正当な場合など「ここで土下座を要求されても仕方がない」といえる状況の場合も同様です。結局は,社会通念に照らし,ケースバイケースで判断されるものと思われます。本件の場合,道路上で土下座を要求している点を重く見られて(他の交通の妨げになるため),強要罪に当たると判断される可能性があります。

~ 本件の行方 ~

Aさんの土下座要求行為が強要罪に当たると判断されればAさんは強要罪に問われることになります。その際,脅迫罪強要罪に吸収され,別個に脅迫罪を問われることはありません。強要罪に当たらないとされた場合は,刑法もしくは暴力行為等処罰に関する法律の脅迫罪に問われます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,強要罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

ページの上部へ戻る