準強制わいせつで逮捕

準強制わいせつで逮捕

福岡市西区に住む大学生のAさん(21歳)は友人Bさんとともに,SNSで知り合った女子大生2人(Xさん,Yさん)を誘い,福岡市西区の居酒屋で合コンを開きました。その後,AさんとBさんは,二次会のため,Xさん,YさんをAさんの自宅マンションへ誘いました。Aさんらは,Aさんの自宅マンションで再びお酒などを飲み始めたのですが,しばらくするとXさんと,Yさんはお酒に酔って寝てしまいました。そこで,AさんとBさんはこの機会を利用してXさん,Yさんにわいせつなことをしようと考え,Xさん,Yさんの胸や陰部などを触るなどのわいせつ行為に及び,その様子をスマートフォンで動画撮影しました。そして後日,Aさんがその動画をインターネットの動画投稿サイトに投稿したことから,Xさんが被害を知ることとなり,西警察署に被害届を提出しました。そうしたところ,Aさんと,Bさんは準強制わいせつ罪で逮捕されました。
(フィクションです)

~ 準強制わいせつ罪 ~

準強制わいせつ罪は刑法178条1項に規定されています。

刑法178条1項
 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,わいせつな行為をした者は,第176条の例による。

= 主体 =

わいせつ行為と聞けば男性が女性に対して行う犯罪と思われがちですが,本罪は「わいせつ行為をした者」とだけ規定しており,本罪の主体(加害者)に男女の区別はありません。また,客体(被害者)についても同様です。したがって,男性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合,女性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合,女性が女性に対してわいせつ行為に及んだ場合でも本罪が成立します。

= 心神喪失 =

精神上の障害によって正常な判断を失っている状態をいいます。具体的には,熟睡,泥酔・麻酔状態・高度の精神病などがこれに当たります。責任能力における心神喪失(刑法39条1項)とは若干意味が異なります。

* 責任能力における心神喪失とは *

精神病や薬物中毒などによる精神障害のために,自分のしていることが善いことか悪いことかを判断したり,その能力に従って行動する能力のないことを心神喪失といいます。

= 抗拒不能 =

心神喪失以外の理由によって心理的・物理的に抵抗することが不可能又は著しく困難な状態をいいます。睡眠中,泥酔中,麻酔中,催眠状態など,心神喪失以外の理由でわいせつな行為をされていることを認識していない場合がこれに当たります。また,わいせつな行為をされること自体認識していても,加害者の言動によりこれを拒むことを期待することが著しく困難な状態なども含まれます。

* 抗拒不能に当たるとされた裁判例 *

上の後者に関する裁判例として

 女子高生が家庭教師の巧みな言葉に従えば英語が上達できるようになると誤信しているのに乗じてわいせつな行為をした場合には,「抗拒不能」の状態にあった

として準強制わいせつ罪の成立を認めています。(東京高裁平成15年9月29日)。

= ~乗じ,~させ =

「(心身喪失・抗拒不能に)乗じる」とは既存の当該状態を利用することをいいます。当該状態を作出した者とわいせつ行為をした者が同一であることは必要ではありません。ただし,この場合,本罪が成立するには,わいせつ行為をした者が,被害者が当該状態にあることを認識しておく必要があるでしょう。「(心神喪失・抗拒不能)にさせる」手段には制限はありません。麻酔薬,睡眠薬の投与・使用,催眠術の施用,欺罔などはいずれもその手段となり得るでしょう。

= 故意 =

本罪は故意犯です。加害者において,「被害者が心神喪失,抗拒不能の状態にあること」,「被害者を心神喪失,抗拒不能の状態にさせたこと」,「わいせつ行為に及んだこと」を認識している必要があります。なお,わいせつ行為か否かは社会通念から判断されます。胸,陰部を触る行為は,社会通念上「わいせつな行為」と判断されますから,いくら「わいせつな行為ではない」と反論しても意味がありません。

~ 準強制わいせつ罪の刑の重さ ~

準強制わいせつ罪の法定刑は「176条の例による」として強制わいせつ罪と同様,

 6月以上10年以下の懲役

です。
頭に「準」とついていますから,強制わいせつ罪よりも刑が軽くなるイメージを持たれる方もおられるかもしれませんが,そうではありませんから注意が必要です。罰金刑がありませんから,起訴されれば正式裁判を受けなければなりません。裁判で「有罪」となれば「実刑」判決を受ける可能性ももちろんあります。起訴を回避する,「実刑」判決を回避するには被害者と示談を締結することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,準強制わいせつ罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

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