暴行罪と微罪処分

2019-03-29

暴行罪と微罪処分

福岡県直方市に住むのAさんは会社の送別会の席で,Vさんから陰口を言われたことに憤慨し,Vさんを店の外に呼び出し,いきなり左拳でVさんの左頬を1回殴りました。ちょうどそのとき,二人のことが心配になって後をついてきたAさんとVさんの上司が二人の間に入り,事はいったん収まりました。ところが,Vさんが福岡県直方警察署に電話し,被害届を提出したいなどと言ったため,Aさんは警察官から事情を聴かれることになりました。その数日後,事件のことを振り返り反省したAさんは,Vさんと示談したいと考えています。Aさん微罪処分獲得を目指し,示談交渉を弁護士に依頼しました。
(フィクションです)

~ 傷害未遂罪って存在するの? ~

人の物を盗もうとして盗めなかったら窃盗未遂罪,人を殺すつもりでナイフで刺そうとしたところ失敗して人を殺すことができなかった場合は殺人未遂罪となります。では,人に怪我させるつもりで人に暴行を加えたところ怪我させることができなかった場合はどうでしょうか?

この点,未遂罪を処罰するには,その罪について「未遂罪を処罰する」旨の規定を設けられていなければならないところ(刑法44条),傷害罪には「未遂罪を処罰する」旨の規定が設けられていません。したがって,傷害未遂罪という罪は存在しません。では,Aさんは無罪放免かというとそうではありません。
実は,暴行罪を規定する刑法208条に,傷害未遂罪的な文言が取り込まれています。

刑法208条
 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった」という文言が,まさに傷害未遂罪的な文言です。つまり,人に怪我させるつもりで人に暴行を加えたところ怪我させることができなかった場合は刑法208条により「暴行罪」に問われることになります。

~ 微罪処分 ~

微罪処分とは,警察が事件を検察庁を送致せず,被疑者への厳重注意,訓戒等で終了させる手続きのことをいいます。微罪処分と聞けば,万引きなどの窃盗罪
を最初に思い浮かべる方も多いかもしれませんが,実は,暴行罪も対象事件に含まれていることが多いです。どんな罪を,どんな要件に従って微罪処分とするかは各都道府県の検察庁の検事正という方が決め,それを各警察本部を通じて警察官に指示しています。暴行罪については,概ね,

・示談が成立していること
・被害者が処罰を望んでいないこと
・犯行態様が軽微であること(武器を使用していないことなど)
・粗暴歴(前科,前歴)がないこと

が要件として考えられます。
最終的には,警察官が,検察官から指示さた要件を満たしているかどうかを確認し微罪処分を下します。「処分」と言われていますが,何らかの刑罰がくだるというわけではありません。警察署に呼び出され,警察官から注意,訓戒を受け,二度と再犯をしない旨の誓約書を書いて終わり,というケースが多いです。事件は検察庁へ送致されませんから,検察庁から呼び出しを受けたり,刑事処分(起訴,不起訴)を受けたり,裁判を受ける必要がなくなります。裁判を受ける必要がないということは,刑罰を科されることはありまえせんし,前科が付くこともありません。

~ 微罪処分を受けるには? ~

上記要件のところでご紹介したように,微罪処分を受けるには,

被害者と示談を成立させること

が重要だということがお分かりいただけるかと思います。ただし,暴行事件の場合,当事者同士で示談交渉をすることは,感情の縺れなどから決裂する可能性が高いですから避けた方が無難です。これはたとえ顔見知り,同僚等関係が近い場合であっても同様です。最初は,「知っている人だからこのくらいで示談してくれるだろう」と軽い気持ちで交渉したつもりが,その過程で思わぬ方向へと話が縺れ,結局示談を締結できなかったということがあります。また,微罪処分の獲得を目指すには,警察官が事件を検察庁へ送致する前に示談を締結させ,その結果を警察へ報告しなければなりません。つまり,警察の捜査状況も確認しながら示談交渉を進めていく必要があるのです。
このように,対被害者の面でも,対警察の面でも,ご自身一人で示談交渉を進めていくことには限界がありますから,示談交渉は法律の専門家である弁護士に任せた方が安心,安全です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,暴行罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方0120-631-881までお気軽にお電話ください。初回接見無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。

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