景品交換シール剥がしは窃盗罪・器物損壊罪

景品交換シール剥がしは窃盗罪・器物損壊罪

福岡市早良区に住む主婦のAさんは,食料品の買い物途中,食パンや菓子パンなどに貼られた景品交換シール剥がしてポケット内に入れました。そうしたところ,Aさんは,以前からAさんの行動に目を付けていた保安員Xさんに犯行を一部始終を目撃されており,その場で現行犯逮捕されてしまいました。Xさんから身柄を受け取った福岡県早良警察署の警察官がAさんに話を聴くと,Aさんはこれまでに,同じ店で約100枚ものシール剥がしたと話しています。
(フィクションです)

~ はじめに ~

春のパンといえば,山崎製パンの「山崎春のパン祭り」?ではないでしょうか? 「山崎春のパン祭り」では,食パン,菓子パンなどの対象商品の袋に景品交換用のシールを張り,一定数のシールが集め,はがきに添付して応募したら景品と交換できるというキャンペーンを行っています。また,山崎製パンだけではなく,他社も同様のキャンペーンを行っています。
筆者もかつて,頻繁にコンビニを利用していたころ,山崎製パンの景品交換シールを集め応募し,ミッキーマウスやプーさんの絵の載った皿などと交換した記憶があります。

こうしたことからも,景品交換用シール剥がす行為は窃盗罪に当たるということが何となくお分かりいただけるのではないでしょうか?先日,3月12日,インターネットのヤフーニュースに「「パンまつり泥棒」は絶対にダメ!シール剥がすだけでも犯罪です」というタイトルの記事が掲載されていました。その記事の中では,「シール剥がされた商品は売り物にならない」などと嘆く悲痛な販売店店員の声が紹介されていました。

そこで,今回は,景品交換シールはどんな犯罪に当たるのかご紹介いたします。

~ その1 窃盗罪 ~

窃盗罪は刑法235条に規定されています。

刑法235条
 他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

本件で??と感じるは,景品交換シールの財物性と剥がすという行為が窃盗に当たるのかという点ではないでしょうか?

= 景品交換シールの財物性 =

「財物」というためには,およそ財産的価値を有するものでなくてはならないとされています。財産的価値のない物を刑法で保護する必要はないからです。どの程度の価値を有することが必要かどうかは問題となります。もっとも,客観的な経済的価値,つまり,金銭的交換価値が認められるものは財産的価値を有するとしていいでしょう。
本件の景品交換シールも客観的な経済的価値が認められると考えます。景品交換シールは商品(食パンなど)と一体となっている(その理由としては,景品交換シールは商品を購入してはじめて取得できる,シールが貼付されていない商品は経済的価値が落ちることなどかが挙げられます)こと,シールを集めると経済的価値のあるものと交換できること,がその理由です。

= 剥がす行為と窃取 =

窃取というと「人から物を盗る」というイメージでしょうか?これをもう少し専門的にいえば,「占有者(お店の店長)の意思に反してその占有を排除し,目的物を自己又は第三者の占有に移すこと」とされています。この点,景品交換シールを「剥がす」という行為もこれに当たりますからやはり「窃取」したことになるのです。

~ その2 器物損壊罪 ~

窃盗罪の他に成立する罪として考えられるのは器物損壊罪です。

刑法261条
 前3条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

窃盗罪器物損壊罪を区別する基準は,犯人に,

景品交換シールをその用途に従って使用する意図があったか否か(不法領得の意思の有無)

によります。使用する意図があった場合は窃盗罪が成立し,使用する意図がなかった場合(例えば,店に対する嫌がらせ目的など)は器物損壊罪が成立します。

~ おわりに ~

このように,景品交換シール剥がしは単に「迷惑行為」にとどまらず,列記とした「犯罪」となります。発覚すれば当然,逮捕されることもあります。また,お店にとっては商品が売れなくなるなどの損害が発生しますから,刑事上のみならず民事上の責任も負う必要が出てきます。景品交換シール剥がしは絶対にやめましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。窃盗罪でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談初回接見サービスを受け付けております。

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