Archive for the ‘刑事事件’ Category
歩きスマホと過失傷害罪
歩きスマホと過失傷害罪
福岡市早良区に住むAさん(24歳)は、地下鉄西新駅の駅構内をスマホを操作しながら歩いていました。そうしたところ、Aさんは、前方を歩いていた高齢のVさん(80歳)に気づかず、Vさんの背後からVさんにぶつかってしまい、Vさんを前のめりに転倒させて、Vさんに全治2週間の怪我を負わせてしまいました。Aさんは、駅員を呼び、救急車を手配してVさんを近くの病院まで運んでもらいました。そして、後日、AさんはVさんの息子Wさんと会い、事故の状況などを話したところ、Wさんから「治療費を支払って欲しい。」「誠意が見られなければ警察に告訴する。」と言われました。不安になったAさんは、今後の対応について弁護士に相談しました。
(フィクションです)
~ 歩きスマホ ~
スマホの普及とともに社会問題となっているのが、歩きスマホによる事故の多発です。このブログをお読みになっている方の中にも、歩きスマホをした、あるいは歩きスマホをしている人を見た、という方がほとんどではないかと思います。歩行者は、通常、交通弱者と呼ばれ、道路交通法上は車などの車両よりも優先的に取り扱われていますが、歩きスマホの場合は別です。歩きスマホをしながら他人に怪我を負わせた場合は、
過失傷害罪(刑法209条)
他人を死亡させた場合は、
過失致死罪(刑法210条)
重大な過失により人を死傷させた場合は、
重過失致死傷罪(刑法211条後段)
に問われる可能性があります。歩きスマホによって、自ら負傷した場合、もちろん刑事的な責任を問われることはありませんが、上記のように他人に怪我を負わせたあり、死亡させた場合は、
刑事責任を問われる
ことがありますので注意が必要です。以下では、上記の罪についてご紹介していきたいと思います。
~ 過失傷害罪 ~
過失傷害罪は刑法209条に規定されています。
刑法209条
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
「過失」とは、要は、注意義務違反のことで、「~すべきだったのに(~することができたのに)、~しなかった」といえる場合に成立します。これを歩きスマホに当てはめると、歩行者としては、前や周囲をよく見て歩くべきだったのに、(スマホの画面に注意を取られ)、前や周囲をよく見て歩かなかった,といえ「過失」は優に認めることができます。「より」とは過失と傷害との間に「因果関係」が必要であることを意味しています。よって、本件では、Aさんの「過失」と傷害との間に「因果関係」が認められる場合は、Aさんは過失傷害罪で処罰されそうです。
* 過失傷害罪は親告罪 *
過失傷害罪は、検察官が公訴を提起する(起訴する)に当たって被害者の告訴を必要とする親告罪です。検察官が公訴を提起する前に、被害者が告訴を取消せば、刑事処分は自動的に「不起訴」となります。
~ 過失致死罪、重過失致死傷罪 ~
過失傷害罪のほか、過失致死罪は刑法210条、重過失致死傷罪は刑法211条後段に規定されています。
刑法210条
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。
刑法211条後段
重大な過失により、人を死傷させた場合も、同様とする。(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)
「重大な過失」とは、重過失、つまり、過失の程度が酷い、悪質なことをいいます。歩きスマホの場合、どんな場合に酷い、悪質かと判断するかについては、当時の交通状況、歩きスマホの態様などによって判断されるものと思われます。
なお、両罪は過失傷害罪と異なり、親告罪ではありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、歩きスマホに関する刑事事件も取り扱う刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談等を24時間受け付けております。
裁判員裁判で性犯罪は厳罰化傾向
裁判員裁判で性犯罪は厳罰化傾向
Aさんは,北九州市八幡東区内の路上で,帰宅途中のVさんの背後からVさんの胸に両手をまわし,Vさんの胸を揉もうとしましたが,Vさんから両手を払いのけられてしまいました。Aさんは、逃げるVさんを追いかけました。そして、Aさんは、逃げるVさんが転倒したため、さらにわいせつな行為をしようと思いましたが、ちょうど近くを人が通りかかったため、顔を見られたと思い、その場から逃げました。Vさんは転倒した際,左腕に加療約1週間の打撲の怪我を負ったようです。Aさんは,後日,福岡県八幡東警察署に強制わいせつ致傷罪で通常逮捕され、検察に、同罪で起訴されてしまいました。Aさんは裁判員裁判を受けなければなりません。
(フィクション。)
~ 裁判員裁判 ~
裁判員制度は、国民が裁判員として刑事事件の裁判に参加し、裁判官とともに①被告人がの有罪か・無罪かや、②有罪とした場合にどの程度のの場合にどのような量刑刑罰(刑の種類とその重さ)がふさわしいのかを決める考える制度のことをいいます。2009年5月21日から始まり、先日、5月21日で10年を経過しました。
~ 性犯罪は厳罰化傾向 ~
報道によれば、裁判員裁判で審理される強姦罪(現在、強制性交等罪)や準強姦罪(現在、準強制性交等罪)を犯し、人を死傷させた場合に成立する強姦致死傷罪(現在、強制性交等致死傷罪)の裁判員裁判では厳罰化の傾向にあるといわれています。
裁判官だけの裁判(2008年から2012年3月)では、
懲役3年以上、5年以下
の量刑が全体の35.4%と最も多かったのですが、裁判員裁判(2012年6月から2018年12月末)では、
懲役5年以上、7年以下
の量刑が全体の26.4%と最も多かったそうです。2年前の、強姦罪(現在、強制性交等罪)、準強姦罪(現在、準強制性交等罪)の法定刑の引き上げ、同罪や強制わいせつ罪などの非親告罪化など、法改正の面でも性犯罪に対する厳罰化の傾向は顕著であるように思えます。そこで、今回は、裁判員裁判において、どんな性犯罪が審理されるのかご紹介したいと思います。
~ 裁判員裁判対象事件 ~
裁判員裁判は刑事事件の審判を対象とする制度ですが、全ての刑事事件を対象としているわけではありません。どの刑事事件が裁判員裁判の対象となるのかは、
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下、裁判員法)の2条1項
によって決められています。
裁判員法2条1項
1号 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
2号 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
= 1号について =
性犯罪で無期に当たる罪といえば、
・強制わいせつ致死傷罪(刑法181条1項、176条)
・準強制わいせつ致死傷罪(刑法181条1項、178条1項)
・監護者わいせつ致死傷罪(刑法181条1項、179条1項)
・強制性交等致死傷罪(刑法181条2項、177条)
・準強制性交等致死傷罪(刑法181条2項、178条2項)
・監護者性交等致死傷罪(刑法181条2項、179条2項)
などがあります。いずれも、基本罪(たとえば、強制わいせつ罪でいえば、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をすること)が未遂に終わった場合でも、相手方が怪我をしたり、死亡すれば、上記の罪に問われ得ることになりますから注意が必要です。
= 2号について =
「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件」とは、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪に係る事件、をいいます。これにあたる直接的な性犯罪はありませんが、たとえば、性交、わいせつ行為目的で被害者を監禁し、監禁によって人を死傷させた場合は監禁致死傷罪(刑法221条、220条)に問われることになり、同罪は2号に当たります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、裁判員裁判にも対応する刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談等を24時間受け付けております。
知人に児童買春の紹介を依頼
知人に児童買春の紹介を依頼
福岡県志免町に住むAさんは、以前、知人Bに買春の相手方となってくれる児童(18歳未満の者)を紹介するよう依頼したことがありました。ところが、その知人Bが福岡県粕屋警察署に逮捕されたことから自身も逮捕されるのではないかと不安になりました。そこで、Aさんは児童買春に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクション)
~ 児童買春とは? ~
Aさんの不安を解消するためには、そもそも「児童買春」とは何なのかという点を確認する必要があります。この点、「児童買春」とは、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、法律という)」の2条2項で、
次の各号に掲げる者(※)に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう
※次の各号に掲げる者
1号:児童
2号:児童に対する性交等の周旋をした者
3号:児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監督するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
とされています。
ちなみに「対償」とは、児童に対して性交(淫行)等をすることに対する反対給付としての経済的利益をいい、現金のみならず、物品,、債務の免除などの財産上の利益も対償に含まれるとされています。金額の多寡は問われません。
~ Aさんの場合、児童買春に当たるか? ~
以上をまとめると、「児童買春」とは、
・上記の1号から3号の者に対し、
・対償を供与し、又はその供与の約束をし、
・その上で、性交等
をすることによって成立する犯罪だ、ということができます。
この点、Aさんは、Bさん(上記2号の児童に対する性交等の周旋をした者に当たり得る)に対償の供与の約束をしたかもしれませんが、実際に、児童とは性交等はしていないようです。したがって、Aさんが
児童買春の罪(5年以下の懲役又は300万円以下の罰金)
に問われることはありません。
なお、児童買春の罪に未遂犯を処罰する旨の規定もありません。
~ Bさんの罪 ~
ところで、Bさん、つまり児童買春を仲介する側は何らかの罪に問われるのでしょうか?この点、法律5条では、児童買春周旋の罪に関する規定を設けています。
法律5条1項
児童買春の周旋をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
法律5条2項
児童買春の周旋をすることを業とした者は、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。
「周旋」とは,児童買春をしようとする者(Aさん)と児童買春の相手方となる児童との間に立って,児童買春が行われることを仲介することをいいます。「業とした者」とは,反復継続して行う意思の下に児童買春の周旋を行う者を言います。通常は、一定期間、児童買春の周旋を行って利益を上げたと認められる場合がこれに該当するものと思われます。
法定刑を見てみると、実際に児童買春をした者よりも刑が重たいことが分かります。法律が、児童買春を助長・援助する行為を悪質だとみなし、厳罰をもって対処しようとしていることが分かります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、児童買春の罪をはじめとする刑事事件、少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件、少年事件でお困りの方は、まずは、お気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
風俗トラブル~本番をしていないのに~
風俗トラブル~本番をしていないのに~
Aさんは、福岡市東区内のラブホテルにデリヘル嬢(21歳)を呼び、そこでサービスを受けました。その後、Aさんは、サービスを受け終え客室を出たところ、玄関先に店員が待っていて、「女の子が無理矢理に性交されそうになったと言ってきた。レイプの未遂だから、示談金として100万円を払え。払えなければ告訴するからな。」と言われました。Aさんは、デリヘル嬢に暴行や脅迫はもちろん、性交もしていないのですが、店員の高圧的かつ執拗な態度に困っています。Aさんは「弁護士に相談する」などといってその場を逃れ、後日、弊所の弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです。)
~ いわゆるレイプをしてしまった場合 ~
無理矢理、相手方と性交する行為を一般的に「レイプ」と呼びますが、刑法上このような行為は「強制性交等罪」(刑法第177条)に当たるおそれがあります。
刑法177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役とする。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法180条
刑法176条から前条までの罪の未遂は、罰する。
強制性交等罪の「暴行、脅迫」とは、例えば、相手方を殴ったり、蹴ったりすることはもちろん、馬乗りになる、羽交い絞めにする、「性交に応じなければ殺すぞ」などと言うなど、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることが必要とされています。「性交」とは、膣内に陰茎を入れる行為をいいます。
刑法180条から分かるとおり、未遂犯も処罰されます。相手方と性交等をするつもりで、相手方に暴行・脅迫を加えたが、何らかの事情により性交等できなかった(性交の場合は陰茎を膣内に挿入できなかった)場合に未遂犯が成立します。
~ 今回のケースの場合は? ~
もっとも、今回のAさんは相手方に暴行、脅迫を加えていないことはもちろん、性交もしていないようです。したがって、Aさんが強制性交等の罪に問われることはありません。刑事事件化することもありませんし、警察に逮捕されたり、呼び出されることもないでしょう。
しかし、風俗利用の場合、ときに、Aさんのように、
犯罪に当たる行為をやってもいないのに、いろいろと因縁を付けられてお金を巻き上げられる
というケースもあり得ます。
~ 対処法 ~
ありもしない行為について因縁を付けられた場合の対処法についてご紹介いたします。
= 冷静に対処する =
犯罪に当たる行為をしていない場合、あなたに何ら落ち度はありません。また、上記で述べましたように、警察に逮捕されたり、呼び出されるということもありません。したがって、相手方から「警察に告訴するぞ」などと言われても、まずは落ち着いて対処しましょう。具体的には、Aさんのように「(知り合いの)弁護士に相談する」「警察官に相談する」などと言ってみてもいいでしょう。
= 言われたことを記録する、診断書を取る =
相手方から何を言われたか、については後々、刑事事件や民事事件に発展した場合の事認定の際に重要な要素となります。したがって、大変かもしれませんが、記憶の鮮明なうちに、相手方から何を言われたのかメモするなどして記憶にとどめておきましょう。場合によっては、録音機器等を利用することも有効です。
また、相手方から暴行を受け怪我をしたという場合は、その日のうちに病院を受診し、診断書(警察提出用)を取りましょう。その日にうちに受診しないと、後で裁判になった場合に、「本当に加害者の暴行によって怪我をしたの?」と疑念を持たれかねません。
= 絶対にお金を払わない、個人情報は教えない =
相手方は、いろいろ難癖をつけてあなたにお金を払わせようとしますが、絶対にお金を払ってはダメです。一度、払ってしまうと、取り返すのに時間と手間がかかってしまいます。また、「後で電話するなど」と言って電話番号などの個人情報は絶対に教えてはいけません。一度、個人情報を教えると、それを元にいろいろと詮索され、あなたはもちろん、ご家族や職場の方などにも迷惑をかけることになってしまいます。
~ 悪質な場合は弁護士に相談 ~
上記対処法でも対処しきれないなどの悪質な場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼することで不当な請求を毅然とした態度で突き放すことができます。あまりにも悪質な場合は、法的措置(警察への告訴等)を取ることも可能です。お困りの際は、弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、風俗トラブルをはじめとする刑事事件、少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件、少年事件でお困りの方は、まずは、お気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
塾講師が教え子と淫行
塾講師が教え子と淫行
福岡市西区に住む大学生のAさん(21歳)は,学習塾でVさん(16歳)に対する個別指導を担当していました。Aさんには結婚を意識していた交際中の女性(24歳)がいた一方で,塾以外でもVさんと会いたいと思い,指導が終わるとVさんを自分の車に乗せて,Vさんの自宅近くまで送り届けていました。Aさんは,個別指導中や車内などで,Vさんにキスをしたり,胸を揉むなどした上,ホテルで性交を繰り返していました。そうしたところ,Aさんは,福岡県西警察署に児童福祉法違反、福岡県青少年健全育成条例違反で逮捕されました。
(平成28年6月21日最高裁決定に関する事例を基に作成したフィクションです)
~ 児童福祉法 ~
児童福祉法は戦後まもない頃、児童(18歳に満たない者)の健やかな成長と最低限度の生活を保障するために制定された法律です。児童福祉法には第1章から第8章まで設けられており、児童を保護するための様々な手続や措置等が定められています。先日、市が北九州市小倉北区の認可外保育施設へ立ち入り調査もこの児童福祉法という法律に基づくものでした。
児童への行為に対する「罰則」については第8章に設けられています。児童福祉法の第8章の60条には1項から5項まで罰則規定が設けられています。その第1項では、
第34条第1項第6号の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
と規定されています。
~ 第34条第1項第6号(児童に淫行をさせる罪) ~
第34条第1項第6号を見ると
児童に淫行をさせる行為
と規定されています。
「させる行為」と規定されていますから、
自ら児童と性交した場合は含まれないのではないか??
との疑念を持たれるかもしれませんが、「させる行為」の意義につき、最高裁判所は、
直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいい,そのような行為に当たるか否かは①行為者と児童との関係,②助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,③淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,④児童の年齢,⑤その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である(①から⑤までのナンバリングは筆者による)
旨判示しており、①から⑤の要件を満たす場合は、
自ら児童と性交に及んだ場合でも「させる行為」に当たる
としています。
* 最近の逮捕事例 *
5月20日、支援学校の寄宿舎指導員が、車の中で児童にみだらな行為をしたとして児童福祉法違反で逮捕されています(郡山署)。
~ 青少年健全育成条例も成立 ~
青少年健全育成条例(以下、条例)31条1項では、
何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない
と規定しています。ここで「いん行」とは、先ほどの児童福祉法の「淫行」と同義で、
広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性行為類似行為
をいうとされています。
罰則は「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
~ 児童福祉法違反が基準に処罰される ~
本件で、児童福祉法違反と福岡県青少年健全育成条例の2つの罪が成立した場合は、児童福祉法違反の法定刑を基準に刑を科されます。このように、一個の行為(いん行)が2個以上の罪名に触れる場合を法律上「観念的競合」といいます。
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福岡県の盗撮条例改正
福岡県の盗撮条例改正
先日、痴漢行為、盗撮行為などを規制する福岡県迷惑行為防止条例が改正、平成31年3月1日に公布されています(以下、改正条例という)。施行日は、令和元年6月1日です。改正条例では、「痴漢行為」「盗撮行為」「嫌がらせ行為」を規制する規定の内容及びそれらの罰則を改正しています。そこで、今回は、そもそもどうして改正する必要があったのか、「盗撮行為」に関して、改正前と改正後ではどのように変わったのか、についてみていきたいと思います。
~ 改正の理由 ~
福岡県警察のホームページでは改正の理由を以下のように説明しています。
「スマートフォンの急速な普及や情報技術の発達等により、改正前の条例では取締りができない住居の浴室、ホテルの客室等での盗撮事案等が発生し、また、インターネット上の掲示板やブログ等への嫌がらせ行為などの新たな迷惑行為が出現しています。このような悪質な迷惑行為を未然に防止し、県民生活の安全、安心を確保するために、今回、条例の一部改正を行ったものです。」
~ 盗撮行為の改正 ~
では、盗撮行為に関する改正の内容について具体的にみていきたいと思います。盗撮行為に関しては「盗撮行為の追加」「被写体(盗撮される人)の変更」及び「罰則の引き上げ」があされています。
~ 盗撮行為の追加 ~
改正条例6条2項2号に次の規定が追加されました。
衣服等を透かして見ることができる機能を有する写真機等(写真機、、ビデオカメラその他これらに類する機器)の当該機能を用いて、衣服等で覆われている他人の身体又は他人が着用している下着の映像を見、又は撮影すること
なお、従前から設けられている
写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること(行為)
については改正条例6条2項3号に移動しましたから、
2項2号の行為をする目的で、写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること(行為)
も処罰の対象となります。
~ 被写体の変更 ~
改正前の条例6条3項1号では、被写体として、
「公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服の全部又は一部を着けないでいるような場所」で当該状態にいる人
としていたところ、改正条例6条3項1号では
「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けないでいるような場所」で当該状態にある人
の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影することを禁じることとされました。
ここでは住居が追加されたこと、また「公衆」が削除され、あるいは「公衆」から「人」とされたことが特徴です。したがって、これまで条例では規制されなかった、
・住居の部屋の中、浴室
・ホテルの一室
・病院の診察室
・風俗店の個室
なども含まれ、そこにいる人の姿態を盗撮した場合は改正条例で処罰されることになりますから注意が必要です。
~ 罰則の引き上げ ~
改正前までは、通常の盗撮行為については、
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
とされていたところ、改正条例11条1項では
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
とされています。また、盗撮行為を常習として行った場合にちうては改正前は
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
とされていたところ、改正条例12条1項では
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
とされており、刑が重たくなっています。
~ 施行は令和元年6月1日から ~
冒頭でもご紹介したとおり、改正条例の施行日は令和元年6月1日からです。ということは、この日以降の盗撮行為については改正条例が適用されることになります。なお、施行日前の盗撮行為については従前の条例が適用されることになります(改正条例附則2条)。
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博多区の卑わいな言動と釈放
博多区の卑わいな言動と釈放
福岡市博多区に住むAさんは、同区内の公園において、スパッツの股間部分にペットボトルなどを入れた状態で、同公園にいた女子中学生2人にその状態を見せつけるつもりで背後から近づいたところ、その様子を不審に思った男性のWさんに「おい、何しているんだ」などと声をかけられたことから、その場を立ち去りました。しかし、Aさんは追いかけてきたWさんらにつかまり、通報を受け駆け付けた福岡県博多警察署の警察官に、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動の罪)の被疑者として現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ 条例の卑わいな言動 ~
福岡県迷惑行為防止条例(以下、条例)といえば、
盗撮、痴漢を禁止する条例
とイメージしがちですが、実は、盗撮、痴漢を禁止する条文と同じ条文の中で「卑わいな言動」を禁止する規定を設けています。条例6条1項では
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
とし、その1号、2号で、
1号 他人の身体に直接触れ、、又は衣服の上から振れること。
2号 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
としています。1号が、いわゆる痴漢に関する規定で、2号が「卑わいな言動」に関する規定です。ここで、「卑わいな言動」とは
社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう
とされています。Aさんの行為は、世間一般人の目から見れば、男性の陰茎を勃起させることを想起させるもので「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作」ということができ、「卑わいな言動」に当たるでしょう。なお、過去には、
・女性に対して執拗に卑わいな言葉をかけ続ける
・女子学生に卑わいな画像や動画を見せる
などの行為も「卑わいな言動」に当たるとされています。
* 女子中学生は見ていないが?? *
本件で、Aさんは女子中学生の背後から近づいていますので、女子中学生はAさんの行為を認識していないと思われます。しかし、このような場合、つまり直接の被害者が犯人の行動を認識していなくても罪は成立します。条例は、個人というよりかは社会の平穏な生活を保持することを目的(条例1条)としているからです。公共の場所や乗物において、他人から見て嫌悪感を催す行為をすれば、直接の被害者が認識していなくても処罰の対象となり得ますので注意しましょう。
~ 罰則は ~
条例11条2項では
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
また、「卑わいな言動」を常習として行った場合の条例12条1項では
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
としています。
~ 釈放に向けた弁護活動 ~
Aさんは逮捕後は,「警察→検察→裁判所」での手続を踏むことが予定されます。ただし、「警察」、「検察」、「裁判所」の段階で釈放との判断がなされることがあります。仮に、「裁判所」でも釈放と判断されない場合は、勾留されたことになるでしょう。勾留期間は、検察官の勾留請求があってから10日間,その後は「やむを得ない事由」がある場合に限り,最大10日間の勾留延長が認められています。このように,勾留されてしまうと,比較的長期間の身柄拘束を受け,その期間が長引けば長引くほど,日常生活へ与える影響は大きくなります。したがって,早めの早めに釈放に向けた弁護活動を開始することが望まれます。
釈放に向けた弁護活動(起訴前)には,①検察官に送致前,②検察官の勾留請求前,③勾留後の3段階があります。①,②の段階では,警察や検察官,裁判官に対し意見書などを提出するなどして身柄を拘束しないよう働きかけます。また,③の段階では,法律上の不服申し立ての手段を用いたり,不起訴処分を求める意見書を提出するなどして,満期(勾留請求から10日後)前の身柄解放,勾留延長期間の短縮などにも努めます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与②
小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与②
福岡県小倉北区に住む会社役員の男性は、仕事の関係者が集う立食パーティーに参加し、そこで多量のお酒を飲んだ後、飲酒運転して(のちの捜査で呼気からアルコール濃度0.5mg/lが検出)帰宅しました。その途中、Aさんは信号待ちのVさんが運転する前車に気づかず追突してしまいました(のちに、Vさんは加療約2週間の怪我を負ったことが判明)。Aさんは「大変なことをしてしまった」と思い、車から降りて運転席に乗車したままのVさんの元へ歩いていきました。Aさんは、ドアガラスを開けたVさんに「大丈夫ですか」と声をかけると、Vさんから「何とか」「きちんと賠償してくれるんでしょうよね」と言われました。Aさんは、「怪我だけは大したことなかった」と思い、Vさんに連絡先の電話番号を書いたメモ紙とお見舞金としての5万円を手渡しました。しかし、Aさんは、「ここで現場に留まり、警察を呼ぶと飲酒運転したことがばれる」と思い、Vさんに別れを告げてその場から離れ帰宅しました。後日、Aさんは、福岡県小倉北警察署に、過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪、道路交通法違反(救護義務違反、報告義務違反)で逮捕されてしまいました。
(令和5月16日に掲載された西日本新聞記事を基に作成したフィクションです。)
~ はじめに ~
前回の「小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与①」では、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪の趣旨や規定の概要、成立要件について解説いたしました。そして、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪の成立要件として、
① アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者であること
② 運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させたこと
③ アルコール又は薬物の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたこと
が必要ということを解説したと思います。そこで、その成立要件について細かく解説したいと思います。
~ 要件①について ~
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、危険運転致傷罪における「正常な運転が困難な状態」と異なります。すなわち、正常な運転が困難な状態には至っていないが、アルコール等の影響で自動車を運転するのに必要な注意力・判断能力や操作能力が相当程度低下して危険な状態のことをいいます。
具体的には、道路交通法上の
酒気帯び運転程度のアルコール(血中アルコール濃度0.3mg/ml以上、呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上)
が体内にあれば「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」に当たると思います。
* 主観的には「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」である認識が必要 *
ご本人に(アルコールの影響で)「身体が火照っている」「血の巡りが早い」「ボーっとしている」などの自覚症状がある場合、仮になくても、飲酒から検挙までの時間、千鳥足、脚元がふらついている、顔が赤い、目が充血している、言葉の羅列が回らないなどの客観的状況から認識有りとされます。
~ 要件②について ~
「運転上必要な注意義務を怠り」とは、過失、を意味します。自動車を運転する上では守るべきルールがありますが、そのルールを守るべきとされ、当時の状況から守ることができ、事故を回避することができたのに、守らなかっため事故を回避することができなかった場合に「過失」があるとされます。本件では、Aさんが前をよく見て運転することが当然のルールで、前をよく見て運転することは容易にでき、しかも被害者であるVさんは信号待ちのため停まっていただけですから、事故(追突)は容易に回避できたといえます。
「よって人を死傷させたこと」とは、人の死、傷害(怪我など)という結果を発生させ、かつ、その結果と上記の過失行為との間に因果関係がある場合をいいます。基本的に、追突(過失行為)がなければ怪我が発生しなかったであろうといえる場合は、因果関係が認められます。
~ 要件③について ~
実際にアルコールの影響の有無・程度の発覚を免れる必要はなく、 「免れるべき行為」 といえる程度の行為が行われれば足りるとされています。法律4条では、「免れるべき行為」の例として、「アルコールを摂取する行為」、「その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させる行為」を挙げています。どの時点で、 「免れるべき行為」 といえる程度の行為、といえるのか、つまり行為が既遂に達したかについては、前者については、
事故後にアルコールを摂取した時点
後者については、概ね、現場から立ち去ってから
40分が経過した時点
とされています。
なお、「その他の免れるべき行為」としては、アルコールの分解を促進する薬を服用することが挙げられます。大量の水を飲む行為については、立法時は、, 「その他の免れるべき行為」 に含まれるとの見方が示されていますが、 水を大量に体内に入れたとしても, 体内のアルコール量自体が変化するものではないので,当たらないと指摘する人もいます。
* 主観的には「アルコールの有無又は程度が発覚することを免れる目的」が認識が必要 *
通常は、事故後にアルコールを摂取することが発覚免脱になること、 事故現場を離れて身体のアルコール濃度を減少させる行為をその旨認識して行ったときには, 通常は, 発覚免脱の目的もあったとの認定がなされることになるでしょう。
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小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与①
小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与①
福岡県小倉北区に住む会社役員の男性は、仕事の関係者が集う立食パーティーに参加し、そこで多量のお酒を飲んだ後、飲酒運転して(のちの捜査で呼気からアルコール濃度0.5mg/lが検出)帰宅しました。その途中、Aさんは信号待ちのVさんが運転する前車に気づかず追突してしまいました(のちに、Vさんは加療約2週間の怪我を負ったことが判明)。Aさんは「大変なことをしてしまった」と思い、車から降りて運転席に乗車したままのVさんの元へ歩いていきました。Aさんは、ドアガラスを開けたVさんに「大丈夫ですか」と声をかけると、Vさんから「何とか」「きちんと賠償してくれるんでしょうよね」と言われました。Aさんは、「怪我だけは大したことなかった」と思い、Vさんに連絡先の電話番号を書いたメモ紙とお見舞金としての5万円を手渡しました。しかし、Aさんは、「ここで現場に留まり、警察を呼ぶと飲酒運転したことがばれる」と思い、Vさんに別れを告げてその場から離れ帰宅しました。後日、Aさんは、福岡県小倉北警察署に、過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪、道路交通法違反(救護義務違反、報告義務違反)で逮捕されてしまいました。
(令和5月16日に掲載された西日本新聞記事を基に作成したフィクションです。)
~ はじめに ~
上記事例は実際の事例を基に作成しています。新聞記事等では「過失傷害アルコール等影響発覚免脱罪」と書かれていますが、正確には、
過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪
といいます。この罪は
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律)
という法律が新設された際(施行日は平成26年5月20日)に設けられた罪で、法律の4条に規定されています。
~ 新設の趣旨 ~
過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪が新設された趣旨は、学説からは様々な批判があるものの、一般に
「逃げ得」を防止するため
と説明されています。
つまり、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死亡させた場合には危険運転致死罪が適用されますが (法律2条1号、。法定刑の上限は懲役20年)、 その場合に犯人が逃走することで、 アルコールによる影響の程度を立証できないために危険運転致死罪の適用を免れる事態が生じてしまいます。 こうした法制の下では、 救護義務違反罪 (いわゆる、ひき逃げ) を犯してでも、罪の重たい危険運転致死傷罪の適用を免れるためにその場を逃走する者が生じやすくなり、結果として、過失運転致死罪と救護義務違反でしか処罰できないということになりかねません(この場合の刑(処断刑)の上限は懲役15年)。 そこで, このような「逃げ得」を防止し, 適正な処罰を可能とするために本罪を新設したと説明されています。
~ 過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪とは ~
では、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪の内容について具体的にみていきましょう。法律4条では次の規定が設けられています。
法律4条
アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、さらにアルコールを摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。
仮に、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪と救護義務違反が成立した場合の刑の上限は
懲役18年
で、過失運転致死罪と救護義務違反で処罰する場合よりも刑が重たくなったことがお分かりいただけると思います。
法律4条の規定が長いので、これを箇条書きにしてまとめると、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪は
(行為者):アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者
(条 件):運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた場合
(行 為):アルコール又は薬物の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為
をした場合に成立し得る犯罪だ、ということをまず押さえておきましょう。次回は、この要件の具体的内容について解説したいと思います。
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福岡県薬物の濫用防止に関する条例②
福岡県薬物の濫用防止に関する条例②
福岡県みやま市に住むAさんは、特定危険薬物を使用しないよう福岡県知事から警告を受けていたにもかかわらずこれを使用したことから、さらに知事から特定危険薬物を使用をしないよう中止命令を受けていました。それでも、Aさんは特定危険薬物を使用したことから、福岡県柳川警察署に福岡県薬物の濫用防止に関する条例違反の件で逮捕されてしまいました。逮捕の通知を受けたAさん母親が、Aさんとの接見を弁護士に依頼しました。
(フィクションです。)
~ 前回の続き ~
福岡県薬物の濫用防止に関する条例(以下、条例)①では、
特定危険薬物を使用して福岡県知事から警告を受けたAさんが、さらに特定危険薬物を使用したことから福岡県から呼び出しを受けた
という事案で、罰則として設けられている過料の意味などについて解説いたしました。前回も解説いたしましたが、過料は刑罰ではありません。しかし、条例では刑罰である懲役刑や罰金刑を設けた規定もありますから、今回は、その規定を中心に解説したいと思います。
~ 基本的には警告→中止命令 ~
まず、刑罰を科すまでの基本的な流れとしては、警告(条例19条)→中止命令(条例20条)という手続を踏みます。条例20条1項では、
知事は、前条第1項の規定による警告に従わず、第17条第1号から第5号までのいずれかに該当する行為をした者に対し、当該行為の中止を命じ、又は特定危険薬物の廃棄、回収その他必要な措置を取るべきことを命ずることができる。
としています。そして、条例22条と条例23条では
第20条第1項又は第2項の規定による命令(略)に違反した者
を処罰する旨を定めているのです。なお、条例22条は、特定危険薬物の製造、加工、販売、授与、販売若しくは授与目的での購入、譲り受け、所持をした者に対する罰則で「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」としています。他方、条例23条は、特定危険薬物の販売又は授与目的での広告、販売又は授与目的による場合を除く、購入・譲り受け・所持、使用、使用するための場所の提供又はあっせんをした者に対する罰則で「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
~ いきなり中止命令の場合も! ~
条例22条2項では、次の場合には、警告を経ずにいきなり中止命令を発することができるとされていますから注意が必要です。
1号 県民の生命、健康又は安全に対する危害を防止するため緊急を要する場合で、警告を発するいとまがないとき
2号 前条(条例21条)第1号から第5号までのいずれかに該当する者が、過去に同項第1号から第5号までの規定による警告を受けたことがあるとき
~ 悪質な場合は逮捕されることも ~
中止命令に違反した場合は懲役刑や罰金刑が科されるおそれがあります。ということは純然たる刑事事件であり、発覚すれば、前回の場合と異なり県職員の調査ではなく、警察の捜査を受けることになります。ということは、逮捕の可能性もあるということです。逮捕されれば間違いなく日常の生活は送れなくなります。様々な不利益を被るおそれがあります。条例での摘発はマスコミの注目を集めやすそうですから、逮捕されれば実名で報道されるかもしれません。
まずは、逮捕されないことが第一ですが、仮に逮捕されてしまった場合は、早めに弁護士に接見をご依頼ください。弁護士であれば逮捕直後からの接見が可能で、身柄の釈放に向けた弁護活動にも移りやすくなります。
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