歩きスマホと過失傷害罪

歩きスマホと過失傷害罪

福岡市早良区に住むAさん(24歳)は、地下鉄西新駅の駅構内をスマホを操作しながら歩いていました。そうしたところ、Aさんは、前方を歩いていた高齢のVさん(80歳)に気づかず、Vさんの背後からVさんにぶつかってしまい、Vさんを前のめりに転倒させて、Vさんに全治2週間の怪我を負わせてしまいました。Aさんは、駅員を呼び、救急車を手配してVさんを近くの病院まで運んでもらいました。そして、後日、AさんはVさんの息子Wさんと会い、事故の状況などを話したところ、Wさんから「治療費を支払って欲しい。」「誠意が見られなければ警察に告訴する。」と言われました。不安になったAさんは、今後の対応について弁護士に相談しました。
(フィクションです)

~ 歩きスマホ ~

スマホの普及とともに社会問題となっているのが、歩きスマホによる事故の多発です。このブログをお読みになっている方の中にも、歩きスマホをした、あるいは歩きスマホをしている人を見た、という方がほとんどではないかと思います。歩行者は、通常、交通弱者と呼ばれ、道路交通法上は車などの車両よりも優先的に取り扱われていますが、歩きスマホの場合は別です。歩きスマホをしながら他人に怪我を負わせた場合は、

過失傷害罪(刑法209条)

他人を死亡させた場合は、

過失致死罪(刑法210条)

重大な過失により人を死傷させた場合は、

重過失致死傷罪(刑法211条後段)

に問われる可能性があります。歩きスマホによって、自ら負傷した場合、もちろん刑事的な責任を問われることはありませんが、上記のように他人に怪我を負わせたあり、死亡させた場合は、

刑事責任を問われる

ことがありますので注意が必要です。以下では、上記の罪についてご紹介していきたいと思います。

~ 過失傷害罪 ~

過失傷害罪は刑法209条に規定されています。

刑法209条
 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。

「過失」とは、要は、注意義務違反のことで、「~すべきだったのに(~することができたのに)、~しなかった」といえる場合に成立します。これを歩きスマホに当てはめると、歩行者としては、前や周囲をよく見て歩くべきだったのに、(スマホの画面に注意を取られ)、前や周囲をよく見て歩かなかった,といえ「過失」は優に認めることができます。「より」とは過失と傷害との間に「因果関係」が必要であることを意味しています。よって、本件では、Aさんの「過失」と傷害との間に「因果関係」が認められる場合は、Aさんは過失傷害罪で処罰されそうです。

* 過失傷害罪は親告罪 *

過失傷害罪は、検察官が公訴を提起する(起訴する)に当たって被害者の告訴を必要とする親告罪です。検察官が公訴を提起する前に、被害者が告訴を取消せば、刑事処分は自動的に「不起訴」となります。

~ 過失致死罪、重過失致死傷罪 ~

過失傷害罪のほか、過失致死罪は刑法210条、重過失致死傷罪は刑法211条後段に規定されています。

刑法210条
 過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

刑法211条後段
 重大な過失により、人を死傷させた場合も、同様とする。(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)

「重大な過失」とは、重過失、つまり、過失の程度が酷い、悪質なことをいいます。歩きスマホの場合、どんな場合に酷い、悪質かと判断するかについては、当時の交通状況、歩きスマホの態様などによって判断されるものと思われます。
なお、両罪は過失傷害罪と異なり、親告罪ではありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、歩きスマホに関する刑事事件も取り扱う刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談等を24時間受け付けております。

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