自転車の人身事故に適用される罪と対策は?

自転車人身事故で適用される罪と対策について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市博多区に住むAさんは同区内にある食品配達会社に勤め、自転車配達員として各家庭に食品を配達する仕事に従事していたところ、自転車配達の途中で人身事故を起こしてしまい、被害者Vさんに加療約2週間を要する怪我を負わせてしまいました。人身事故の後、AさんはVさんを救護し、110番通報しました。すると、福岡県博多警察署の警察官が人身事故現場に駆け付け、Aさんは重過失致傷罪の疑いで事情聴取等を受けることになってしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

自転車の人身事故に適用される罪とは?

自転車の人身事故に適用される罪は、主に

☑ 過失傷害罪(刑法209条)
☑ 過失致死罪(刑法210条)
☑ 重過失致死傷罪(刑法211条後段)

です。

(過失傷害)
第二百九条 
1 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)
第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

(業務上過失致死傷等) ※後段が重過失致死傷罪に関する規定
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

各罪の主な違い、特徴

上記の規定を見ると、まず

被害者を負傷(後遺症が残った場合も含む)させたのか、死亡させたのか

で罪の重さが異なることが分かります(過失傷害罪と過失致死罪の違い)。

次に、

過失か重過失か

で罪の重たさが異なることが分かります(過失傷害罪・過失致死罪と重過失致死傷罪との違い)。

重過失とは過失よりも自転車運転者の落ち度(責任)が甚だしい、ということです。たとえば

☑ スマートフォンを注視しながらの運転
☑ 交通ルールを大きく逸脱した運転(信号無視、スピード違反など)

は重過失致死傷罪が適用される可能性が高いです。また、通常の自転車運転で人身事故を起こした場合であれば業務上過失致死傷罪は適用されませんが、現在、流行りの「ウーバーイーツ(Uber Eats)」など自転車の運転を職業としている場合は同罪が適用される可能性があります。同罪はたとえ重過失でなくても適用されてしまい、かつ、罪の重さは重過失致死傷罪と同じです。

自転車で人身事故を起こしたら!?

自転車人身事故を起こしたら(起きたら)、声を大にして言いたいのが

絶対に人身事故現場から逃げないで!!

ということです。
法律上、自転車は「軽車両」と定義されています。つまり、車などと同様に「車両」の一部です。したがって、車で人身事故を起こした場合と同様に自転車人身事故を起こした場合もまずは自転車を停止させ

☑ 負傷者の救護(救護義務)
☑ 道路における危険の防止(危険防止義務)
☑ 警察官への事故報告(事故報告義務)

という3つの義務を果たす必要があります。
よくある過ちが、

自分は加害者ではないから関係ない

といって人身事故現場を立ち去ることです。しかし、あなたが加害者か被害者かは警察・検察の捜査を経なければ最終的には明らかにならないことです。法律上は、加害者・被害者に関係なく、交通事故(物損事故を含む)が起きれば上記義務が課されます。
また、

負傷者が怪我してなさそうだった

というのもよくある過ちです。しかし、負傷者が本当に怪我をしていないかどうかは医師の診察を経てみなければ分かりません。自己判断で人身事故現場から立ち去ることは絶対にやめましょう
なお、救護義務・危険防止義務を果たさなかった場合は前述の罪の罰則に加えて「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、事故報告義務を果たさなかった場合は「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」を科されてしまいます。

今一度自転車の交通ルールを確認してみて

なお、自転車で人身事故を起こした場合に負うのは刑事責任(懲役、罰金)だけではありません。損害賠償金の支払いという民事責任を負わされてしまう可能性もあります。過去には自転車の人身事故によって取り返しのつかない重度な後遺障害を残し、

1憶円

近い賠償金の支払いを命じられた方もいます(神戸地方裁判所 平成25年7月4日)。そうした取り返しのつかない事態を招かないためにも、今一度自転車の交通ルールを確認しておきましょう。

【主な自転車の交通ルール】

☑ 自転車は原則、(歩道ではなく)車道通行
☑ 車道を通行する場合は原則、車道の左側の左側端を通行する
☑ 歩道を通行する場合は車道よりを徐行(10キロ未満)して通行(歩行者優先!)
☑ スマートフォンを使いながらの運転、傘さし運転などは厳禁

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、自転車人身事故をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

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