Archive for the ‘刑事事件’ Category
【窃盗罪】アルバイトがお店のお金を盗んで窃盗罪~佐賀市
【窃盗罪】アルバイトがお店のお金を盗んで窃盗罪~佐賀市
窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
佐賀市に住むAさんは、同市内のコンビニで深夜アルバイトの仕事をしていました。そして、Aさんは、深夜、誰もいなくなったところを見計らって、店のレジの中から1万円札10枚を取り、これを自分のものにしました。ところが、それから週数間経ったある日、Aさんは店長に呼ばれ、「お店の売上額と実際に手元に残っている額が異なる。」「あなたがレジのお金を盗ったのではないか。」「佐賀北警察署に被害届を提出する。」と言われました。そこで、Aさんは、「このままでは逮捕されるかもしれない」と思い、お店側に被害弁償することを申し出ましたが、「本当に被害弁償してくれるか分からない。」「被害金額が大きいので、警察に被害届を出すことになると思う。」などと言われて受け付けてもらえませんでした。困ったAさんは、被害弁償と示談交渉を弁護士に依頼するため、無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)
~ 窃盗罪について ~
他人の物を勝手に盗った場合は窃盗罪に問われます。
Aさんも窃盗罪に問われています。
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
また、他人の物を勝手に盗った場合でも、その物が自己の占有下にあると認められる場合は横領罪、業務上横領罪に問われます。
横領罪は刑法252条、業務上横領罪は刑法253条に規定されています。
刑法252条1項
自己の占有する他人の者を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
この点、Aさんはアルバイトです。
アルバイトの場合、通常、お店のお金の管理までは任されておらず、お金に対して「自己の占有下にある」と認めることは困難でしょう。
よって、Aさんは窃盗罪に問われる可能性が高いです。
~ 警察に被害届を提出すると言われたら? ~
刑事事件化する前に、一刻も早く相手方と被害弁償、示談交渉に臨みましょう。
もちろん、被害弁償、示談交渉はご自身で行うことも可能です。
しかし、場合によっては、事例のように門前払いを受けることも予想されます。
そうした場合は、被害弁償、示談交渉は交渉に慣れた弁護士に任せましょう。
弁護士は示談交渉に関する知識、経験を有していますから、弁護士であれば適切な形式、内容で示談を締結できる可能性が高くなります。
示談締結の際に、「捜査機関に告訴や被害届を提出しない」旨の条項を盛り込むことができれば、逮捕などの捜査を受けるおそれもなくなるでしょう。
弁護士が当事者の間に入ることによって、相手方からの不当な要求や態度に対しても毅然とした態度で交渉に臨むことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗罪、横領罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件でお困りの方は、0120-631-881までお気軽にお電話ください。土日・祝日を問わず、専門のスタッフが24時間、無料法律相談、初回接見のご予約を承っております。
【刑事事件】お店の無断キャンセルで偽計業務妨害罪~福岡市博多区
【刑事事件】お店の無断キャンセルで偽計業務妨害罪~福岡市博多区
お店の無断キャンセルと偽計業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市博多区に住む会社員Aさんは、嫌がらせのため、同区内の居酒屋V店に電話をし「●●月●●日に17人、1人1万円で3千円の飲み放題を付けてくれ。」などと言いました。ところが、予定の人になってもV店にはお客は現れませんでした。そこで、V店が福岡県博多警察署に被害届を提出したところ、Aさんがこの電話をした疑いがあるとしてAさんを偽計業務妨害罪で逮捕しました。Aさんは以前から周辺の居酒屋店に同様の内容の電話を繰り返していると疑われていたため、警察から目をつけられていたようです。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
上記事例は、虚偽の宴会を予約して居酒屋の業務を妨害したとして、警視庁が昨年11月11日、東京都葛飾区の無職男性を偽計業務妨害罪の疑いで逮捕した事案をモデルにしています。
警視庁丸の内警察署によると、被疑者は昨年6月26日、東京都千代田区内の居酒屋に、1人1万3千円の17人の宴会を同28日午後8時から予約する虚偽の電話を入れ、料理を準備させるなど業務を妨害した疑いが持たれています。被疑者は、「電話はしたが予約はしていない」と事実を否認する供述をしているようです。
無断キャンセルで逮捕者が出るのは珍しいと言われています。
しかし、予約が入ると店側としては、空きがでない限り他の客の予約を確保することができず、また、予約日当日までに使った食材も無駄に消費することになり、店側にとっては大損害です。そこで、警察としては、こうした悪質な無断キャンセルに警笛を鳴らすためにも逮捕に踏み切ったものと考えられます。
~ 業務妨害罪とは ~
業務妨害罪刑法233条、234条に規定されています。
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
刑法233条では、信用棄損罪と業務妨害罪とが併せて規定されています。
刑法233条の業務妨害罪は「偽計業務妨害罪」、刑法234条の業務妨害罪は「威力業務妨害罪」と呼ばれます。
このうちAさんは「偽計業務妨害罪」で逮捕されています。
業務妨害罪といえば、
・牛丼店のアルバイト店員が、メニューに存在しない超大盛りの豚丼を盛りつけ「テラ豚丼」として投稿。
・コンビニの店員がアイスのケースに入り込んで写真を撮影し、フェイスブックに投稿。
・定食店で、マスクをした男性の店員が下半身丸出しにしてお盆を股間にあてる動画を投稿。
・コンビニの店員が、売り物のおでん鍋から直接しらたきを食べて踊る動画をツイッターに投稿。
などのバイトテロを想起される方も多いかと思われますが、バイトテロに限らず様々は場面で適用されます。
~ 偽計業務妨害罪 ~
「偽計を用いて」とは、人を欺罔・誘惑し、又は人の錯誤(簡単にいうと誤解)・不知(知らないこと)を利用する違法な手段一般をいう、と解されています。
そうはいっても、実際上、「偽計」なのか、「威力」なのかはっきりとしない、という場合もあります。この点、裁判所は、業務妨害行為が公然と行われた場合を「威力」、隠密的に行われた場合を「偽計」とする傾向にあるようです。
人の不知を利用する手段で代表的なのが
スーパーの菓子パンに針を差し込む行為
です。
また、昨年7月には、福岡県で、
水道関連工事会社の従業員が、アパートの受水槽の中で泳いだ件
で、偽計業務妨害罪で検挙されています(その後、不起訴(嫌疑不十分))。
偽計業務妨害罪でも、現実に業務妨害の結果が発生したことまでは必要ではなく,業務を妨害するに足りる行為があれば足りるとされています。
とはいっても、無断キャンセルによって店側には多大な損害を与えています。
損害賠償請求など刑事のみならず民事的責任を負わされる可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。
【強盗】起訴後に保釈~福岡県春日市
【強盗】起訴後に保釈~福岡県春日市
強盗罪と保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県春日市に住むAさんは、ギャンブルで借金を繰り返し、その返済に追われていました。そこで、何か簡単にお金を手に入れる方法はないかと考えた結果、コンビニ強盗を行うことにしました。
Aさんは犯行がばれないようにと口にはマスクを付け、頭には帽子を被り、店員を脅すための包丁を持って春日市内にあるコンビニへ行きました。そして、Aさんは店に入り、店内に人がいないかどうか確認した後、レジにいる店員Vさんに包丁を示して「金を出せ。殺すぞ。」と言い、Aさんの脅しに怯んだVさんから現金2万円を受け取りました。ところが後日、Aさんは福岡県春日警察署に強盗罪で逮捕され、その後、強盗罪で起訴されました。Aさんと接見した弁護士は、Aさんが犯行を認めていること、前科前歴がないこと、家族が監督を誓約していることに鑑みて保釈請求することにしました。
(フィクションです。)
~ 強盗罪 ~
強盗罪は刑法236条に規定されています。
刑法236条
1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
一般に、「暴行」とは人の身体に対する有形力の行使、「脅迫」とは人に畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいますが、強盗罪の「暴行」「脅迫」の程度は、
相手方の反抗を抑圧する程度
に強いものでなければならないとされています。そして、程度であるか否かは、
・犯行の時刻・場所その他周囲の状況
・凶器使用の有無
・凶器の形状性質
・凶器の用い方など犯行の手段方法
・犯人、相手方の性別、年齢、体力
などを総合的に考慮して判断されます。
「強取」とは、上記の「暴行」「脅迫」により、相手方の反抗を抑圧して財物を自己又は第三者に移すことをいいます。
強盗罪によく似た罪として、恐喝罪(刑法249条)があります。
恐喝罪も暴行または脅迫を手段とする罪ですが、恐喝罪の暴行、脅迫は両者は相手方の反抗を抑圧するに至らない程度でもよいとされています。
言い方を変えると、財物の交付(犯人にお金などを渡すこと)について被害者の意思に基づくものといえる場合は恐喝罪ですが、基づくものといえない場合は強盗罪です。
~ 保釈 ~
保釈許可の要件は、大きく分けて、「権利保釈」と「裁量保釈」の2つがあります。
「権利保釈」とは、刑事訴訟法89条各号に掲げる事由に該当しない限りは保釈を許可するというものです。「裁量保釈」とは、たとえ、刑事訴訟法89条各号に掲げる事由に該当したとしても、裁判所が、「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度のその他の事情」を考慮し、保釈を許可するというものです。
強盗罪は法定刑が5年以上の有期懲役ですから、残念ながら刑事訴訟法89条1号に当たり「権利保釈」で保釈されることはありません。しかし、「裁量保釈」で保釈されることはあります。
お金がなく保釈保証金の準備が難しい方は、日本保釈支援協会が提供する「保釈保証金立替システム」の利用もご検討ください。
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【のぞき】のぞき見と犯罪~福岡県大牟田市
【のぞき】のぞき見と犯罪~福岡県大牟田市
のぞき見について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県大牟田市に住むAさんは、同市内の他人方敷地内に立ち入り、浴室の窓からスマートフォンをを差し入れて入浴中のVさん(25歳)の裸体をのぞき見ました。しかし、Vさんがスマートフォンの存在に気づき「のぞき見!」と大声を出したことで、Aさんは外に出てきた家族により現行犯逮捕されました。なお、Aさんのスマホに映像は保存されていませんでした。
(フィクションです)
~ のぞき見と犯罪 ~
のぞき見で適用される法令は、福岡県迷惑行為防止条例と軽犯罪法です。
福岡県迷惑行為防止条例第6条には以下の規定が設けられています。
条例6条2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、正当な理由がないのに、前項に規定する方法(人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法)で次に掲げる行為をしてはならない。
1号 通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞき見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この条にお いて「写真機等」という。)を用いて撮影すること。
2号 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること 」
条例6条3項 何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
1号 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等 を用いて撮影すること。
2号 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
今回、Aさんは、浴場にいるVさん(の裸)に対して、カメラを差し向けています。
したがって、Aさんの行為は条例6条3項2号に当たるおそれがあります。実際に、身体、裸が映っていなくても条例違反に問われることがあります。
罰則は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですが、常習として行った場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
軽犯罪法第1条第23号は
正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
「拘留または科料」に処することを定めています。
仮に、のぞき見行為が条例に当たらない場合は、軽犯罪法違反に問われるおそれがあります。
さらに、他人の敷地内に勝手に立ち入った場合は住居侵入罪に問われるおそれがあります。
同罪の住居とは住居の一部と認められる敷地も含まれるからです。
同罪の罰則は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
~ のぞき見で逮捕されると ~
逮捕されると警察の留置場に収容されます。
それから約3日程度の身柄拘束を受けて、勾留(逮捕に引き続く身柄拘束)か否か判断されます。
この間、捜査機関や裁判所に釈放を求めることも可能です。
ただ、国選弁護人は選任されませんから、釈放を求める場合は私選弁護人を選任する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
【児童虐待】エアガン事件~保護責任者遺棄致死罪で再逮捕(福岡県飯塚市)
【児童虐待】エアガン事件~保護責任者遺棄致死罪で再逮捕(福岡県飯塚市)
保護責任者遺棄致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県飯塚市の県営団地に住むAは、妻B、子Vちゃん(1歳)と3人暮らしです。
A、BはVちゃんに必要な食事を与えず栄養失調で死亡させたとして保護責任者遺棄致死罪で福岡県飯塚警察署に逮捕されてしまいました。
A、Bは「必要な食事は与えていた。」、「死ぬとは思わなかった。」などと話しています。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ 保護責任者遺棄致死傷罪 ~
福岡県田川市では、団地に住む両親が、昨年9月上旬~12月にかけて、子に医師の診察を受けさせず、重度の低栄養状態による肺炎で死亡させたとして、保護責任者遺棄致死罪で再逮捕されています。当初の逮捕容疑は、エアガンを使って子にBB弾を複数命中させて傷害を負わせた傷害罪でしたが、処分保留で釈放されています。BB弾の命中行為と傷害との因果関係の立証が難しいと判断された可能性もあります。
報道によると、両親は生後8カ月ごろを最後に診察を受けさせていなかった、と言われています。また、1歳4カ月だった子の死亡時の体重は6キロ未満だったといいます。これは平均体重の約10キロを大きく下回っており、捜査機関は、子に医師の診察を受けさせなかったことが子の死亡につながった(つまり因果関係がある)とみて保護責任者遺棄致死罪の逮捕に踏み切ったのでしょう。
子に必要な保護を与えないのネグレクトと呼ばれます。
ネグレクトは児童虐待防止法で児童虐待の一つとして明確に定義されています。
児童虐待防止法ではネグレクトを「児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること」と定義されています。
しかし、ネグレクトをはじめとする児童虐待で逮捕される事案が後を絶ちません。
ネグレクトで子を死亡させた場合は上の事例のように保護責任者遺棄致死罪という罪で逮捕されることが多いかと思います。
今年7月には、2歳11カ月の長女を3日間以上のあいだ自宅に放置し低体温症で死なせたとして、宮城県仙台市在住の母親の飲食店従業員女性が保護責任者遺棄致死罪の疑いで逮捕されています。室内に幼児が摂取できる飲食物はなかったとみられ、司法解剖の結果、死亡時の体重は約8.6キロで目立った外傷はなかったと言われています。
保護責任者遺棄致死罪は刑法219条に規定されています。
刑法219条
前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処する。
「前2条の罪」とは、単なる遺棄罪(刑法217条)と保護責任者遺棄罪(刑法218条)のことを指します。
このうち、親が子に対するネグレクトは「保護責任者遺棄」にあたり、これに「人の死傷」が加わり、「保護責任者遺棄」と「人の死傷」との間に因果関係が認められれば保護責任者遺棄致死罪に問われます。
刑法218条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
「生存に必要な保護をしなかった」という点がネグレクトに当たる部分です。
・食事を与えない
・入浴させない
・オムツを取り替えない
などは全てネグレクトに当たります。
保護責任者遺棄致死傷罪の法定刑は、傷害を負わせた場合は「3月以上15年以下の懲役」、死亡させた場合は「3年以上の有期懲役」です。
保護責任者遺棄致死罪は、「殺す意図はなかった。」という場合、つまり死の結果について認識、認容がなかった場合に適用される罪です。
反対に、死の結果について認識、認容があったと認められた場合は殺人罪(刑法199条)に問われる可能性もあります。
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
~ まずは児童相談所に相談を ~
子育ては大変です。
子育てに困った、児童虐待をしてしまいそうだ、などという方は迷わず児童相談所に相談されることをお勧めいたします。
子育てなどの悩みは決して一人で解決できるものではありません。
周囲の方を巻き込んで解決していく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
【性犯罪】強制わいせつ致傷罪~性犯罪者のための再犯防止プログラム
【性犯罪】強制わいせつ致傷罪~性犯罪者のための再犯防止プログラム
令和元年10月11日、鹿児島地方裁判所で、登校中の女子中学生Vさんにわいせつな行為をしようと企て、Vさんの首を絞めたり、ガラス片のようなもので頭を数回殴るなどの暴行を加え、Vさんに加療約10日間の怪我を負わせるなどして強制わいせつ致傷罪などの罪に問われた男性に対し、懲役8年の実刑判決が言い渡されました。検察の求刑(懲役7年)を超える異例の判決でした。男性は、昨年8月に、熊本県内の自宅に侵入し、就寝中の女性の体を触ろうとした準強制わいせつ未遂罪など、同9月、別の住宅から下着を盗もうとした窃盗未遂罪に問われ、今年3月、熊本地方裁判所で懲役2年、3年間執行猶予(保護観察付)の判決の言い渡しを受けたばかりでした。男性は保護観察期間中、性犯罪の「再犯防止プログラム」を受講していたそうです。
(報道を基に作成しています。)
~ 強制わいせつ致傷罪は重たい罪 ~
まず、強制わいせつ致傷罪がどんな罪か確認します。
強制わいせつ致傷罪は刑法181条1項に規定されています。
刑法181条1項
第176条若しくは第178条1項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって、人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
以上の規定からすれば、強制わいせつ致傷罪は、
・強制わいせつ既遂罪(刑法176条)又はその未遂罪が成立したこと
・行為の「機会」に人に怪我をさせたこと(因果関係が認められること)
という条件を満たした場合に成立します。
この点、事例の男性は、わいせつな行為をする目的でVさんの首を絞めたり、ガラス片のようなもので頭を数回殴る「暴行」を加えてたことが認められます。もっとも、わいせつな行為にまでは及んでいないことから強制わいせつ未遂罪が成立するにとどまります。次に、男性は上記に暴行によってVさんに怪我させたものと認められますから、行為の「機会」に人に怪我をさせたといえます。
このことから男性に強制わいせつ致傷罪が成立しています。
~ 再犯防止プログラムとは ~
今回、男性が執行猶予期間中であったこと、保護観察期間中であったこと、再犯防止プログラムを受けていたにもかかわらず同じ性犯罪に及んでいたことや犯行態様の悪質性から求刑を上回る判決が言い渡されたようです。
ところで、この再犯防止プログラムは、2004年に奈良市で起きた小学生女児の殺害事件がきっかけとなり、2006年から導入されたものです。性犯罪につながる認知の偏り、自己統制力の不足等の自己の問題性を認識させ、その改善を図るとともに、再犯をしないための具体的な方法を習得させることを目的としています(犯罪白書より)。
受講の対象者は、性犯罪の傾向が進んでいると認められる受刑者や保護観察付きの執行猶予判決を受けた人で、一定の事由が認めらえる場合を除いて原則受講がき義務付けられています。
近年では、下着窃盗を繰り返す被告人に対し、検察が敢えて保護観察付執行猶予判決を求めるなど、性犯罪傾向が進んでいる人に対しては、検察、保護観察所が連携して裁判後も国の監視、監督下に置いて更生の道を歩ませようとする取り組みも行われています。
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【暴力事件】殺人罪の中止犯とは?~北九州市小倉南区
殺人罪の中止犯とは?~北九州市小倉南区
殺人罪と中止犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
北九州市小倉南区に住むAさんは、自分の娘であるVさん(5歳)の首をひもで締めて殺そうとしましたが、Vさんが泣き出したことでかわいそうだという気持ちになり、首を絞めるのをやめたことでVさんは死亡するに至りませんでした。とんでもないことをしてしまったと思ったAさんは自ら警察に通報したため、Aさんは福岡県小倉南警察署に殺人未遂罪の疑いで逮捕されました。
Aさんの両親から依頼を受けてAさんと接見した弁護士は、殺人罪の中止犯が成立するとみています。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 中止犯とは ~
中止犯と聞くと、なんだか殺人罪のとは別の犯罪が成立して刑が重たくなるのではないか、と思われそうですが、実はそうではありません。
殺人罪における中止犯とは、
犯罪の実行に着手したものの、人の死という結果が発生せず、かつ、結果が発生しなかった原因が自らの意思で犯行を中止したと認められること
をいい、中止犯が成立すると
必要的に刑が減軽されます。つまり、殺人罪の法定刑の
死刑又は無期若しくは5年以上の懲役
が
死刑→無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮
無期→7年以上の有期の懲役又は禁錮
5年以上の懲役→2年6月以上の懲役(上限懲役10年)
と減軽され、この範囲で量刑が決められます。
中止犯の根拠は刑法43条後段に求められます。
刑法43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
~ 殺人罪の実行に着手したこと ~
中止犯が成立するには、まず、犯罪の実行に着手したこと、が必要です。
犯罪の実行にすら着手していない場合は、罪に問われないか、あるいは殺人予備罪(刑法201条、2年以下の懲役)に問われるにとどまります。
殺人罪の実行に着手したといえるためには、死亡結果を生じさせる危険のある行為を開始している必要があります。
典型的な例としては、刃物で相手の心臓付近を突き刺す行為や、けん銃を相手に向けて引き金を引く行為などが考えられます。
また、極めて限定的な事例ではありますが、裁判例の中には、クロロホルムを吸引させて被害者を昏倒させ、自動車に乗せたうえで、自動車事岸壁から海中に転落させて沈めて溺死させるという計画を立ててこれを実行したという事案で、クロロホルムを吸引させた時点で殺人罪の実行に着手したと認めたものがあります。
~ 結果が発生しなかったこと ~
次に、人の死という結果が発生しなかったことが必要です。
これには、①そもそも結果が発生しなかった場合と、②死亡結果と原因行為との間に因果関係が認められない場合とが考えられます。
因果関係が認められない場合としては、例えば、実行行為者の行為とは全く無関係のところから死亡結果が生じている場合や、死亡結果のそもそもの原因を特定できない場合などがあります。
因果関係が認められるか否かの判断は、実行行為の危険の大小や、介在事情の異常性など様々な事情を考慮して行われますが、この判断は非常に困難です。
~ 結果が発生しなかった原因が自らの意思で犯行を中止したと認められること ~
ここで大切なのは、①「自己の意思により」、②「犯罪を中止した」といえるか否かです。
ただし、①はあくまで内面の事情ですから、その判断も非常に困難です。
学説としては、
犯人が自己の行為を後悔してやめた場合を中止未遂、それ以外の事由によってやめた場合を障害未遂
という主観説と、
犯人が社会一般の通念に照らして、犯罪の遂行を断念させるような事情又は表象がないにもかかわらずやめたときに中止未遂、そのような犯罪の遂行に障害となるような事情又は表象によってやめたときは障害未遂
とする客観説がありますが、判例はこの客観説に立っているものと思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
【刑事事件】往来妨害罪で逮捕~福岡市城南区
往来妨害罪で逮捕
往来妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市城南区に住むAさんは、自宅付近の市道において、両端の電柱とガードレールにビニールひもを張って通行する車両などの往来を妨害したとして、福岡県早良警察署の警察官により往来妨害罪の容疑で逮捕されました。Aさんが逮捕されたことを知ったAさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(フィクションです。)
~ 往来妨害罪 ~
往来妨害罪は刑法124条に規定されています。
刑法124条
1 陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞そくして往来の妨害を生じさせた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
「陸路」とは道路のことをいい、「水路」とは、船舶や筏などの航行に用いられる河川や運河、港口のことをいい、「橋」とは陸橋や桟橋などをいいます。
「損壊」とは、道路や橋を爆破するなどして物理的に損壊することをいいます。
そのため、例えば汚物を道路にばらまいて心理的に通行不可能にする行為は往来妨害罪のいう「損壊」には含まれません。
他方、「閉塞」とは、障害物を設置することによって道路などを遮断することをいいます。
ここでの遮断は、完全な遮断でなく部分的な遮断であったとしても道路の効用を阻害して往来の危険を生じさせたと言える場合には「閉塞」に当たる場合があります。
そして、「往来の妨害」とは、陸路などの損壊・閉塞により、通行が不可能又は著しく困難になったことをいいます。
実際に往来が妨害されたという結果が生じたことまでは必要ではありません。
以上からすると、Aさんには往来妨害罪が成立する可能性が寿分にあります。
~ 人を死傷させた場合は? ~
人を死傷させた場合は、刑法124条2項が適用されます。
往来妨害罪に当たる行為をしたことによって、人を死傷させたことが必要です。
「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」とは、傷害の場合は傷害罪(刑法204条)と比べて重たい刑を適用し、死亡の場合は傷害致死罪(刑法205条)と比べて重たい刑を適用する、ということです。
刑法204条
人のの身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
これからすると、傷害の場合、罰金刑、懲役刑とも傷害罪の場合が重たく、死亡の場合も傷害致死罪の場合が重たいことが分かります。
したがって、往来妨害罪に当たる行為をしたことによって人を傷害した場合は、
15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
人を死亡させた場合は、
3年以上の有期懲役(上限は20年)
となります。
~ 接見を行うことのメリット ~
逮捕直後は、弁護人以外の者(ご家族等)との接見は法律上認められていません。弁護人であれば、曜日、時間に関係なく、立会人なしに、無制限に接見できます。よって、弁護人との接見では、逮捕された方から何をしたのか(どんな犯罪犯したのか)、容疑を認めるのか、認めないのかなど十分にお聴き取りをした上で、今後の見通しや容疑、認否に応じたアドバイスをさせていただくことができます。
また、接見後は、ご家族様など接見を依頼された方に接見で得た内容をご報告させていただきますのでご安心ください。接見前に、ご家族様からご伝言をお預かりすることもできます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
【刑事事件】玉替え受検で逮捕
玉替え受検で逮捕
有印私文書偽造罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aさんは、私立V大学の入試に何とかして合格したいという弟Bさんからの依頼を受け、V大学の入試当日にBさんに代わって受験をし、答案の記名欄にBさんの氏名を記入したうえで答案を作成しました。
このAさんの替え玉受験がV大学の知るところとなり、V大学が被害届を出したことで、Aさんは有印私文書偽造罪の容疑で福岡県直方署の警察官により逮捕されました。
Aさんの両親は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 有印私文書偽造罪 ~
有印私文書偽造罪は刑法159条に規定されています。
刑法159条
1 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事 実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
「行使の目的」にいう「行使」とは、虚偽作成にかかわる文書を、真正な文書、内容の真実な文書として他人に認識させ又は認識し得る状態に置くことをいいます。
「行使」と言えるかどうかについては2つのポイントがあります。
一つは、作成された虚偽文書が、内容が真実であると一般人が誤信する程度の外観を備えていること、もう一つは、作成された虚偽文書を他人に示すことです。
そのため、例えば、だれが見ても偽物の文書であることが明らかであるような文書を作成し、これを誰かに見せたとしても「行使」とはいえません。また、虚偽文書を作成したとしても、他人に示していない以上は「行使」とはいえません。
これをじれに当てはめると、AさんがBさんの名前を書いた上で答案を作成しこれを他人が見た場合、Aさんが作成したものであると気付くことは困難ですし、大学側に提出する目的で作成していることも明らかです。よって、「行使の目的」が認めらえることになりそうです。
次に、Aさんは、V大学入試の答案にBさんの名前を記入していますから、「他人の…署名を使用」することにも当たります。
「事実証明に関する文書」とは、実生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいうと解されています。
例として
・履歴書
・推薦状
・クレジットカード払いをする際に署名をする支払伝票
などがあります。
大学入試における答案については、答案それ自体で志願者(受験者)の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者の学力を示す資料となり、これを基に合否判定が行われるという性質を踏まえ、「事実証明に関する文書」に当たると解されています。
「偽造」とは、文書の作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して文書を作成すること(有形偽造)を言います。
上の事案で言えば、本来答案作成の権限を有しないAさんが、Bさんという他人の名義を冒用して答案にBさんの氏名を記入したことが「偽造」にあたることになります。
以上より、Aさんは有印私文書偽造罪(刑法159条1項)に問われる可能性があります。
最後に、Aさんが作成した内容虚偽の答案をV大学に提出した行為は「行使」に当たり、Aさんは偽造私文書等行使罪にも問われる可能性があります(刑法161条)。
しかし、偽造罪と行使罪とは、手段と目的の関係にあり併せて1罪として評価されます(牽連犯)。
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【暴力事件】傷害致死罪と正当防衛~福岡県田川市
傷害致死罪と正当防衛
傷害致死罪と正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県田川市に住むAさんは、夫Vさんから日常的にDVを受け続けていました。そこで、Aさんは今後夫から暴力を振るわれたときにそなえて常にバタフライナイフをズボンのポケットに隠し持っていました。そして、ある日、AさんはまたVさんから殴りかかられそうになりました。そこで、Aさんはズボンのポケットからバタフライナイフを取り出し、Vさんに示して「近づいたら殺すぞ。」などと言ってVさんを脅しました。しかし、それでもAさんはVさんから襲いかかられそうになったことからとっさにバタフライナイフを突き出したところ、ナイフがVさんの心臓部に突き刺さってしまいました。AさんはVさんが大量の血を流しながらその場に意識のない状態で転倒したことから、「大変なことをしてしまった。」と思い、自ら110番、119番通報したところ、駆け付けた福岡県田川警察署の警察官により傷害罪で緊急逮捕されてしまいました。また、その後、搬送先の病院でVさんの死亡が確認され、Aさんに対する容疑は傷害罪から傷害致死罪に切り替わりました。
(フィクションです。)
~ 傷害致死罪 ~
傷害致死罪は刑法205条に規定されています。
刑法205条
身体を傷害し,よって人を死亡させた者は,3年以上の有期懲役に処する。
「傷害」の意味については様々な説がありますが、人に怪我をさせることが「傷害」に当たることは明らかです。
これからすると、AさんがVさんの身体にバタフライナイフを突き刺す行為は「傷害」に当たります。
加えて、傷害致死罪は「死亡」という結果が発生し、「傷害」と「死亡」との間に因果関係が存在してはじめて成立します。
では、殺人罪(刑法199条)はどうでしょうか?
殺人罪と傷害致死罪の適用と分ける大きな要素は、殺意の有無です。
殺意が認められれば殺人罪、殺意が認められなければ傷害致死罪です。
殺意とは,要は「人の内心」ですから,被疑者・被告人の供述のほか、以下の要素から認定されていきます。
・被害者の受傷の部位
・受傷の程度
・計画性の有無
・犯行道具の有無
・犯行に至るまでの経緯
・犯行時の加害者の言動
・犯行後の言動
この点、確かにAさんはバタフライナイフという大変危険な凶器を使用しています。
しかも、普段からこのナイフをズボンのポケットに忍ばせていた、というのです。
この点だけ見れば確かに、Aさんに殺意が認められてもおかしくはなさそうです。
しかし、AさんはVさんから日常的にDVを受け続けており、万が一のときにそなえてズボンに忍ばせていたのです。
また、実際にVさんから殴りかかられそうになったときも防御に終始しており、Vさん殺害のために積極的にナイフを使った、とは言い難いです。
したがって、この点をも含めて考えると殺意は否定される方向に働きそうです。
~ 正当防衛 ~
また、仮に傷害致死罪が成立するとしても、正当防衛の成否を検討しなけばなりません。
正当防衛は刑法36条1項に規定されています。
刑法36条1項
①急迫②不正の③侵害に対して、④自己又は他人の権利を防衛するため、⑤やむを得ずにした行為は、罰しない
※数字は筆者が記載
AさんはVさんから殴りかかられそうになった、というのですから①急迫、②不正の③侵害、を受けたことは明らかです。
問題は④と⑤です。
~ ④自己又は他人の権利を防衛するため ~
ここでよく問題となるのは、防衛の意思(身を守ろうとする意思)があったか否か、という点です。
防衛の意思○→正当防衛成立
防衛の意思×→正当防衛不成立
~ ⑤やむを得ずにした行為 ~
誤解を恐れず言うと「やり過ぎたらダメ」ということです。
やり過ぎではない→正当防衛成立
やり過ぎ→正当防衛不成立
通常、攻撃者(Vさん)が素手であるのに対し反撃者(Aさん)が武器の場合は「やり過ぎ」と評価されるでしょう。
しかし、本件のように日頃DVを受けていた体格的のも劣る女性のAさんが、素手で襲い掛かってくる男性Vさんに武器で対抗した場合はどうでしょうか?
この場合、Aさんとしては素手で対抗してもまたVさんから暴力を受ける可能性が高かったといえます。
また、Aさんの防御態様としては、ナイフをVさんに示すにとどまっています。
したがって、この場合、「やり過ぎ」と評価することは困難です。
具体的状況にもよりますがAさんに正当防衛が成立する可能性もあります。
詳細は弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。どうぞ、お気軽にご相談ください。
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