昏睡強盗罪?窃盗罪?

2019-10-30

昏睡強盗罪?窃盗罪?

昏睡強盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市八幡西区に住む大学生のAさんは、北九州市小倉北区内の居酒屋に、友人Bさんと二人でお酒を呑みに行きました。そして、Aさんらは店内で知り合った同世代の女性二人(Vさん、Yさん)と仲良くなり、その後四人でカラオケに行きました。Aさんら四人は、カラオケでもお酒を呑んだり歌ったりして楽しんでいましたが、そのうち女性二人が酒に酔って居眠りを始めました。ちょうどそのとき、AさんはVさんのバッグの口が空いており、バッグの中に一見して分厚そうな財布が入っているのを見つけました。Aさんはこれを見てBさんに「今のうちなら盗れるよ。」「お金もないことだし、盗って二人で山分けしね?」と言いました。すると、Bさんもこれに承諾したことから、AさんはVさんのバッグの中に手を入れ、財布をつかんでBさんとともにカラオケ店を出ました。Aさんは財布の中身を確認すると1万円札が6枚入っていたことから、3万円をBさんい渡し、財布は川に投げ捨てました。その後、AさんとBさんは福岡県小倉北警察署に昏睡強盗罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 昏睡強盗罪 ~

昏睡強盗罪は刑法239条に規定されています。

刑法239条
 人を昏睡させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。

「強盗として論ずる」とは、法定刑を強盗罪(刑法236条)と同じ「5年以上の有期懲役」とする、という意味です。
強盗罪と言えば、人にナイフなどを示したり、暴行を加えることでお金などを強取することイメージしがちです。しかし、人を昏睡させ、その犯行を抑圧してお金などの財物を奪取する行為は、強盗罪に匹敵するほどの可罰性を有することから、強盗罪と同じ刑の重さの罪としたのです。

「昏睡させ」るとは、睡眠薬や麻酔薬などの薬物を使用し、アルコール飲料を飲ませ、あるいは催眠術を施すなどして、人の意識作用に一時的又は継続的な障害を引き起こさせることをいいます。暴行を用いて人を昏睡させて財物を奪うのは昏睡強盗罪ではなく強盗罪に当たります。

昏睡させる行為は、盗取の犯人自らか、その共犯者が行うことが必要です。したがって、まったく関係のない他人が被害者を昏睡させたのに乗じたり、被害者自らが昏睡又は熟睡している隙にその財物を奪取する行為は、昏睡強盗罪ではなく、窃盗罪(刑法235条)に当たります。

刑法235条
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

~ 「人を昏睡させてその財物を盗取したこと」が必要 ~

つまり、昏睡強盗罪の「昏睡」は、あくまで「財物の盗取(奪取)」に向けられたものでなければなりません。
したがって、例えば、行為者が他の目的で昏睡させた後、財物奪取の意思を生じ、昏睡に乗じて財物を奪取した場合も、行為者自身が財物を奪取するために昏睡させたものではない以上、昏睡強盗罪ではなく窃盗罪が成立します。

~ Aさんの場合はどうか? ~

以上からすると、

AさんやBさんが財物を盗取する目的でVさんやYさんらにお酒を飲ませたのか?

が本件の争点となりそうです。
財物を盗取する目的の有無に関しては、AさんやBさんの内心にかかわる事柄ですから、

・Aさん、Bさんの供述
・Aさん、BさんがVさんらと知り合った経緯
・お酒の内容、量
・居酒屋、カラオケ店での代金の負担額
・メールの内容

などから推測されていくことでしょう。
など、逮捕段階では、警察は主にVさんやYさんの供述に基づいて昏睡強盗罪で逮捕している可能性もあります。しかし、被害者の供述のみでは財物を盗取する目的することあできません。したがって、財物を盗取する目的がなければその旨供述する必要があります。決して取調官の圧迫に屈してはいけません。

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