児童虐待と刑事罰
福岡県小郡市に住むAさんは,旦那,Xちゃん(2歳)と二人暮らしでした。旦那は残業が続き,連日帰宅が遅かったことから,家事,育児のほとんどはAさんが担っていました。ある日,AさんはXちゃんにご飯を食べさせようとしたところ,XちゃんがAさんの手を払いのけ,ご飯やおかずを床一面に飛散させました。Aさんはこれに腹が立ち,Xちゃんの左頬を右手で一回叩きました。その日以降,Aさんは,Xちゃんが言うことをきかないたびに暴力を振るい続けるようになってしまいました。そうしたところ,旦那がXちゃんに着替えをさせている最中,Xちゃんの背中に大きな痣ができているのを見つけました。旦那は,Aさんに内緒で児童相談所に対応を相談しました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
児童虐待による悲惨な事件が後を絶ちません。あとでご紹介するように,児童虐待は立派な犯罪です。しかし,児童虐待をする側にも何らかの原因があるはず。理化学研究所の調査によれば,
児童虐待を行って有罪判決を受けた親の約7割が,過去に自らも児童虐待を経験していた
ことが判明したとのニュースがピックアップされました。刑事罰のみでは児童虐待はなくならないようです。児童虐待の原因を追究し,社会で支えていく仕組みが必要といえそうです。
~ 児童虐待とは ~
ところで,児童虐待といいますが,「児童虐待罪」という罪やその罪を規定した法律はありません。ただし,児童虐待については,児童虐待の防止等に関する法律という法律(2条)(以下,児童虐待防止法)に明確に定義されています。それによると,児童虐待とは
保護者(略)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ)について次に掲げる行為をいう
とされています。
そして,「次に掲げる行為」とは,以下の行為です。
1号 児童の身体に外傷が生じ,又は生じるおそれがある暴行を加えること(身体的虐待)
2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
3号 児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置,保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)
4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応,児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(略)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)
以上からすると,Aさんの行為は1号の児童虐待に当たりそうです。しかし,だからといって児童虐待防止法で処罰されるわけではありません。
~ 児童虐待と刑事罰 ~
児童虐待に当たる行為は,刑法などに規定される罪によって処罰され得ることになります。上記各号別にみていきましょう。
= 1号について =
暴行罪,傷害罪で処罰される可能性があります。暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
* 死亡させた場合は? *
傷害させ,児童(人)を死亡させた場合は傷害致死罪で処罰される可能性があります。同罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。
= 2号について =
強制わいせつ罪,強制性交等罪,監護者わいせつ罪,監護者性交等罪で処罰される可能性があります。強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」,強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」,監護者わいせつ罪は強制わいせつ罪と同様,監護者性交等罪は強制性交等罪と同様です。
* 傷害,死亡させた場合は? *
児童(人)を傷害,死亡させた場合,強制わいせつ致死傷罪,監護者わいせつ致死傷罪として「無期又は3年以上の懲役」,あるいは強制性交等致死傷罪,監護者性交等致死傷罪として「無期又は6年以上の懲役」に処せられる可能性があります。
= 3号について =
保護責任者遺棄罪で処罰される可能性があります。法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
* 傷害,死亡させた場合は? *
児童(人)を傷害,死亡させた場合は保護責任者遺棄致傷罪,保護責任者遺棄致死罪で処罰される可能性があります。前者の法定刑は「3月以上15年以下の懲役」,後者の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。
= 4号について =
行き過ぎた暴言は暴行罪,それによって精神的な障害を患った場合などは傷害罪で処罰される可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,児童虐待に関する刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
(福岡県小郡警察署までの初回接見費用:39,200円)

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