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飲酒運転と犯罪②

2019-03-02

飲酒運転と犯罪②

~ 昨日の続き ~

福岡県福津市に住むAさんは,地元の居酒屋X店でBさんら同級生数名と久しぶりに食事をしました。Aさんはあまり酒が飲めませんでしたが,Bさんは以前から大のお酒好きでした。Aさんが把握しているだけでも,1時間で,ビールジョッキ中2杯,焼酎水割り1杯を飲んでいました。そうしたところ,Aさんは,Bさんから「コンビニまでたばこを買いに行きたいけど,歩いて居酒屋まで来たので脚がない」と言われました。Aさんは,「コンビニは近いし,事故など起こさなければいいや」という気持ちで,Bさんの車の運転キーを渡しました。
ところが,Bさんはコンビニに向かう途中,福岡県宗像警察署の検問に遭い,酒気帯び運転が発覚しました。また,Bさんの供述に基づき,Aさんも道路交通法違反(車両等提供罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ Aさんの罪【車両提供の罪】 ~

Bさんが逮捕された酒気帯び運転の罪については昨日ご紹介しました。本日は,車を貸した側のAさんの罪についてご紹介いたします。

= 車両等提供の罪の規定 =

車両等提供の罪に関する規定は,道路交通法(以下「法」)65条2項,117条の2第2号,117条の2の2第4号にあります。

法65条2項
 
何人も,酒気を帯びている者で,前項の規定(法65条1項=何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。)に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し,車両等を提供してはならない。

法117条の2 次の各号のいずれかに該当する者は,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第2項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が酒に酔った状態で当該車両等を運転した場合に限る。)

法117条の2の2 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
4号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第2項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が身体に前号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で当該車両等を運転した場合に限るものとし,前条(117条の2)第2号に該当する場合を除く。)

以上から,法117条の2は酒酔い運転者に対する車両等の提供に関する罰則,法117条の2の2は酒気帯び運転者に対する車両等の提供に関する罰則であることが分かります。いずれも,実際に運転した方と罰則は同じであり,これからすると,車両提供の罪も実際に運転したのと同じように悪質であると考えられていることが分かります。

= 「酒気を帯びている者」とは =

アルコール分を体内に摂取していることが外観上(顔色,呼気等)認知できる状態にある者という意味です。
車両等の提供者は,車両等を提供した時点で,この状態にあることを認識する必要がありますが,どの程度の酒気を帯びているか(酒酔いか酒気帯びかなど)までの認識は必要ではありません。
Aさんは,Bさんが,1時間で,少なくともビールジョッキ中2杯,焼酎水割り1杯を飲んだことは見ています。したがって,Aさんは,Bさんに運転キーを渡す時点で,Bさんが「酒気を帯びている者」であることは容易に認識していたといえるでしょう。

= 「車両等を運転することとなるおそれ」とは =

車両等を提供すれば,酒気を帯びて車両等を運転することとなる蓋然性があることをいいます。
車両等の提供者は,提供を受ける者が酒気を帯びている者で,酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがあるとの認識が必要です。
Aさんは,Bさんが「酒気を帯びている者」との認識はあります。また,Aさんは「コンビニに行きたいけど,脚がない」と言われています。Aさんが置かれた状況下で「脚がない」と言われれば,通常,「車か自転車がない」という意味に受け取るでしょう。そして,AさんはBさんに運転キーを渡しているわけですから,AさんにはBさんが「車両等を運転することとなるおそれ」があるとの認識は十分にあるでしょう。

= 「提供」とは =

提供を受ける者が利用し得る状態に置くことをいいます。
Aさんのように,車の運転キーを渡す行為もこれに含まれます。

= まとめ =

以上からすると,Aさんの行為は車両提供の罪に当たりそうです。ただ,Bさんが結果的に酒気帯び運転だったことから,罰則は法117条の2の2第4号が適用され「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲内で処罰されることとなります。

~ その他の犯罪【酒類提供の罪】,【車両同乗の罪】 ~

酒類提供の罪については法65条3項,罰則については法117条の2の2第5号(運転者が酒酔い運転だった場合,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金),法117条の3の2第2号(運転者が酒気帯び運転だった場合,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)に規定されています。酒類提供の罪の場合も,車両等提供の罪と同様,酒類を提供する側において,提供した時点で,酒類の提供を受けた者が「車両等を運転することとなるおそれのある者」であることを認識していたこと必要となります。
車両同乗の罪については法65条4項,罰則については法117条の2の2第6号(運転者が酒酔い運転だった場合,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金),法117の3の2第3号(運転者が酒気帯び運転だった場合,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)に規定されています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,酒気帯び運転などの交通違反をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
福岡県宗像警察署までの初回接見費用:39,100円)

飲酒運転と犯罪①

2019-03-01

飲酒運転と犯罪①

福岡県福津市に住むAさんは,地元の居酒屋X店でBさんら同級生数名と久しぶりに食事をしました。Aさんはあまり酒が飲めませんでしたが,Bさんは以前から大のお酒好きでした。Aさんが把握しているだけでも,1時間で,ビールジョッキ中2杯,焼酎水割り1杯を飲んでいました。そうしたところ,Aさんは,Bさんから「コンビニまでたばこを買いに行きたいけど,歩いて居酒屋まで来たので脚がない」と言われました。Aさんは,「コンビニは近いし,事故など起こさなければいいや」という気持ちで,Bさんの車の運転キーを渡しました。
ところが,Bさんはコンビニに向かう途中,福岡県宗像警察署の検問に遭い,酒気帯び運転が発覚しました。また,Bさんの供述に基づき,Aさんも道路交通法違反(車両等提供罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ Bさんの罪【酒気帯び運転の罪】 ~

Bさんは酒気帯び運転の罪で逮捕されたようです。酒気帯び運転とはどんな罪かご紹介した上で,酒酔い運転との違いについてもご紹介したいと思います。

= 酒気帯び運転の罪 =

酒気帯び運転の罪に関する規定は,道路交通法(以下「法」)65条1項,117条の2の2第3号,道路交通法施行令(以下「施行令」)44条の3にあります。

法65条1項
 何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

法117条の2の2 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く)を運転した者で,その運転した場合いおいて身体に政令で定める程度以上に  アルコールを保有する状態にあったもの

施行令44条の3
 法第117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は,血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。

つまり,酒気帯び運転とは,血液1ミリリットルにつき0.3mg又は呼気1リットルにつき0.15mg以上アルコールを保有する状態で車両等(軽車両(自転車など)を除く)を運転することをいいます。そして,酒気帯び運転の罪では,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑を科されるおそれがあります。

= 酒酔い運転との違い =

酒酔い運転の罪に関する規定は,上記の法65条1項のほかに,法117条の2第1項にあります。

法117条の2 次の各号のいずれかに該当する者は,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1項 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で,その運転した場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常  な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの

* 成立要件の違い *

酒気帯び運転の罪の場合,血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムと具体的数値が必要ですが,酒酔い運転の罪の場合,「酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)」と具体的数値までは必要とされていません。つまり,酒酔い運転の罪の場合,人によっては,たとえ,酒気帯び運転の罪で必要とされる数値以下の数値であっても,諸般の事情から酒酔い運転とされることがあります。お酒に弱い方,肝機能が正常でない方などは注意した方がよいでしょう。

・ 具体的には? ・

人によって状態はそれぞれですが,一例をあげますと,

呼気からはアルコールの臭いはするが,警察官からの質問にはきちんと受け答えできている

という場合は,酒気帯び運転とされやすいでしょう。他方で。

呂律が回っていない,警察官の質問に無反応・意味不明な答えを繰り返す,まっすぐ歩けない

などという場合は酒酔い運転とされやすいです。

* 罰則の違い *

酒気帯び運転の罪は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し,酒酔い運転の罪は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

* 適用される車両の違い *

酒気帯び運転の罪の場合,車両等(軽車両を除く)となっていますが,酒酔い運転の罪の場合,軽車両が除かれていません。つまり,酒酔い運転の罪は,軽車両=自転車にも適用されますから注意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,酒気帯び運転などの交通違反をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
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赤色信号看過で過失運転致傷罪

2019-02-27

赤色信号看過で過失運転致傷罪

福岡市東区に住むAさんは,深夜午前1時頃,普通乗用自動車を運転して帰宅途中,前方約70メートルにある交差点の対面信号が赤色信号だったにも関わらず,「深夜だし交差点を通過する車はいないだろう」「早く家に帰ってゆっくりしたい」などと思って,時速約60キロメートルで交差点に進入しました。そうしたところ,右方から交差点に進入してきたVさん運転の軽自動車に自車を衝突させ,Vさん運転の軽自動車を電柱に衝突させてVさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。
Aさんは,当初,福岡県東警察署過失運転致傷罪で現行犯逮捕され,その後起訴されました。
(フィクションです)

~ 過失運転致傷罪 ~

過失運転致傷罪とは,どんな罪なのでしょうか?まずは,過失運転致傷罪が規定されている法律,条文から確認することにします。
過失運転致傷罪は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下,法律)」の5条に規定されています。

法律5条
 自動車の運転上必要な注意義務を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。

つまり,過失運転致傷罪が成立した場合,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。

= 「自動車の運転上必要な注意義務を怠り」とは? =

「自動車の運転上必要な注意義務を怠った」とは,要は「過失」があることをいいます。では,「過失」とは何かというと「不注意な行為」,つまり,

ある注意義務が課されているにもかかわらず,その注意義務違反があったこと

をいうのです。要は,「~すべき(注意義務)だったにもかかわらず,それを怠った,しなかった」ということです。

= 赤色信号看過における注意義務とは(常識的理解) =

では,赤色信号看過における注意義務とは何なのでしょうか?
これについては,車を運転する方なら誰しも,

赤色信号は守らなければならない,従わなければならない

ということは常識としてご存知のはずで,概ねこれが,赤色信号看過における注意義務と考えていいでしょう。

= 赤色信号看過における注意義務,注意義務違反(法律的理解) =

これを法律に従って解説すると,道路交通法7条では

道路を通行する歩行者又は車両等は,信号機の表示する信号・・・・に従わなければならない

と規定されており,道路交通法施行規則2条では,道路交通法4条4項に規定する信号機の表示する信号の種類,意味について規定しており,

車両等は,停止位置を超えて進行してはならないこと

としています。

つまり,赤色信号看過の場合,

赤色信号に従わなければならない
停止位置を超えてはならない

ということが「注意義務」,それに違反することが「注意義務違反」=「過失」ということになります。

= 信号看過に関する2つの考え方 =

信号看過に関する「過失」のご説明は以上ですが,この信号看過に関する「過失」については次の2つの考え方があります。

* 注意義務の内容を信号の色(赤か黄)で区別する考え方 *

信号看過をした運転者が,仮に対面信号が黄色信号から赤色信号に変わった時点でそのことに気づき,直ちに急ブレーキをかけて,停止位置手前(あるいは交差点入口の安全な場所)で停止できたにもかかわらず,これを看過した場合は赤色信号看過の過失が,停止できない場合には黄色信号看過の過失が成立するとする考え方です。
この考え方の理由として,客観的に黄色から赤色に変わった時点で気づいても,停止位置等で止まれないような場合,運転者に赤色信号看過の過失を問うのは不可能であり,酷だからだとしています。

* 注意義務の内容を信号の色(赤か黄)で区別しない考え方 *

他方で,「(色に関係なく)信号表示に従わずに進行したこと」を「過失」ととらえ,結果的に,車両が交差点手前の停止位置を超える時点において,その対面信号機が赤色表示のときは赤色信号看過の過失が,黄色信号のときは,黄色信号看過の過失が成立するとする考え方です。この考え方によれば,上記の考え方のように,「仮に,赤色信号に気づいた時点で,停止位置で停止することができたか否か」という点は考慮しなくてもいいことになります(単に,信号を看過したか否か,看過したときの信号の色はどうだったのかを考慮すればよい)。

= 量刑における赤色信号看過と黄色信号看過の違い =

赤色信号看過の場合,相手方は,青色信号で交差点に進入してきており,しかも,赤色信号看過して進入してくる車両等はないものと安心しきっていますから,赤色信号看過と黄色信号看過と比べると,前者の方が断然,交通事故発生の危険度は高いです。したがって,量刑でも,黄色信号看過より赤色信号看過の方が重くなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は交通事故などの刑事事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件化した交通事故でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

自動車ドアの開扉と交通事故

2019-02-19

自動車ドアの開扉と交通事故

~ ケース1 ~

福岡県小郡市に住むAさんは普通乗用自動車を運転していましたが,喉が渇いたため自動販売機でコーヒーを買おうと思い,左ウィンカーを点滅させて,道路左側に車を停車させました。そして,車から降りようと運転席ドアを開けたところ,ちょうど車を右側からよけようとして進行してきたVさん運転の自転車に運転席ドアを衝突させ,Vさんを路上に転倒させてVさんに加療約2週間の怪我を負わせてしまいました。Aさんは,過失運転致傷罪に問われるのでしょうか?

~ ケース2 ~

タクシー運転手のBさんは,客であるCさんを後部座席に乗せて運転していたところ,目的地に着いたためタクシーを道路左側に寄せて停車させました。そして,BさんはCさんから代金を受け取り,Cさんを降車させようと後部座席左側のドア開扉したところ,タクシーの左側を通過してきたVさん運転の自転車にドアを衝突させ,Vさんを路上に転倒させてVさんに加療約2週間の怪我を負わせました。Bさんは,過失運転致傷罪に問われるのでしょうか?
(いずれもフィクションです)

~ 過失運転致傷罪 ~

= はじめに =

過失運転致傷罪は,

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条

に規定されています。この法律が施行される平成26年5月20日までは,刑法211条2項に同様の規定が設けられ(罪名は「自動車運転過失傷害罪」でした)ていましたが,法律5条が新設されてことに伴い現在は削除されています。

法律5条
 自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。

= 「運転」とは =

「運転」とは,

自動車の運転者が自動車の各種装置を操作し,そのコントロール下において自動車を動かす行為を意味し,発進に始まり停止で終わる

と解されています。

* 自動車ドアの開扉事故 *

ところで,車を停止させて運転席ドアを開けたところ,ドアを自転車を運転してきた人にぶつけて怪我をさせた場合,過失運転致傷罪に問われるのでしょうか?
この点,「運転」を上記のように解釈すれば,ドアを開ける行為は「運転」後の行為ですから「運転」とは言えず過失運転致傷罪には問われないように思えます。ただし,過去には,業務上過失傷害罪(刑法211条)が成立する旨判示した裁判例(平成25年6月11日 東京高等裁判所)があります。

しかし,運転者が車を停止後も車を発進させるつもりだった場合(例えば,タクシーの運転手が同乗者を後部座席から降ろすため一時的に停止し,後部座席ドア開扉したところ,ドアを自転車を運転してきた人にぶつけて怪我を負わせた場合など)はどうでしょうか?
この場合,走行→停止→再発進という自動車の一連の動きを総合的・全体的に観察すると,一時的に停止したとはいえ,なお「運転」中であったと見ることができるようにも思えます。この場合,タクシー運転手は過失運転致傷罪に問われるおそれが出てきます。 

= 「自動車の運転上必要な注意」とは =

自動車の運転上必要な注意」とは,

自動車の運転者が,自動車の各種装置を操作し,そのコントロール下において自動車を動かすうえで必要とされる注意義務

と解されています。
注意義務の内容は,自動車運転の場合,通常,道路交通法(以下,法)に規定されています。例えば,「赤色信号看過」の場合は,法7条に,

(略)車両等は,信号機の表示する信号(略)に従わなければならない

と規定されており,これが自動車運転者に課される「注意義務」となるのです。にもかかわらず,赤色信号看過した場合は「自動車の運転上必要な注意」(義務)を怠ったということになり「過失」が認められることになります。また,ドア開扉に関しては,法71条4号の3が根拠となります。

法71条 車両等の運転者は,次に掲げる事項を守らなければならない。
4号の3 
 安全を確認しないで,ドアを開き,又は車両等から降りないようにし,及びその車両等に乗車している他の者がこれらの行為いより交通の危険を生じさせないようにするため必要な措置を講ずること

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無免許運転と看護師の欠格事由

2019-02-15

無免許運転と看護師の欠格事由

福岡市早良区に住むAさん(20歳)は看護師を目指していました。そして,看護師になるため普段は福岡市内の専門学校に電車で通学していました。しかし,ある日,Aさんは,学校帰りに遠方にいる友人に会いに行く必要があったことから,親に無断で車を運転して通学しました。ところが,その途中,Aさんは福岡県早良警察署の警察官に赤色信号無視で呼び止められてしまいました。Aさんは,警察官から免許の呈示を求められましたが,免許を持っていなかったことから呈示できず,無免許運転したことがばれてしまいました。Aさんは逮捕されずに済みましたが,今後のことが不安になって弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ 無免許運転 ~

= 無免許運転とはどんな罪? =

まず,無免許運転の規定から確認することにします。

道路交通法(以下,法)64条1項

何人も,第84条1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(~略~により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。

法84条1項

自動車及び原動機付自転車を運転しようとする者は,公安委員会の運転免許を受けなければならない。

法117条の2の2 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 法令の規定による運転の免許を受けている者(略)でなければ運転し,又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)~略~運転した者

以上から,無免許運転した場合は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。なお,無免許運転といってもその態様は様々で,

・いかなる運転免許も受けていない,純無免許運転
・運転免許が取り消された後に運転した,取消無免許運転
・免許の効力停止中に運転した,停止中無免許運転
・特定の車両以外の車両を運転することを許可されてないで運転した,免許外無免許運転
・免許の有効期間を更新しないまま運転した,失効無免許運転

があります。これらは全て無免許運転となります。

= 逮捕されるの?刑の重さは? =

Aさんは逮捕されませんでしたが,無免許運転を繰り返していた場合など悪質な場合などは逮捕されるおそれもあります。無免許運転の場合,通常,起訴猶予による不起訴処分となる可能性は低く,初犯の場合であれば,略式起訴され,略式裁判で罰金20万円から40万円の命令を言い渡されることが多いかと思われます。また,常習性が顕著である場合は,正式起訴され,裁判に出廷しなければなりません。裁判で有罪と認められれば,事案にもよりますが,おおよそ懲役8月から1年2月の刑を言い渡されることが多いかと思います(悪質な場合は,それ以上を言い渡されることもあります)。

~ 看護師の欠格事由 ~

無免許運転した場合は,刑事処分の他に行政処分(免許点数の加算,停止期間,欠格期間の延長など)も受けることになります。また,刑罰を受けることで免許や免許取得にも影響が出ることから注意が必要です。

看護師については,保険師助産師看護師法という法律に以下の規定があります。まず,これから看護師免許の取得を目指している方は以下の規定に注意する必要があります。

9条 次の各号のいずれかに該当する者には,前二条による免許を与えないことがある
1号 罰金以上の刑に処せられた者

「罰金以上の刑」とは,罰金刑,禁錮刑,懲役刑,死刑のことを指し,「処せられた」とは裁判を受け,その裁判が確定したことを言います。
逮捕中の場合はまだ裁判すら受けていない段階ですので,逮捕された事実のみをもって看護師等になれないということはありませんが,先ほども申し上げたとおり,無免許運転では,略式罰金の命令を受けることも多いですから,もし無免許運転が発覚すれば上記の9条1号に当たるおそれもでてきます。

次に,すでに看護師免許を受けている方は以下の規定に注意する必要があります。

14条 (略)看護師が第9条各号のいずれかに該当するに至ったときは,(略),厚生労働大臣は,次に掲げる処分をすることができる。
1号 戒告
2号 3年以内の業務の停止
3号 免許の取消し

つまり,すでに看護師免許をお持ちの方が罰金以上の刑に処せられた場合,免許を取消されるおそれが出てくるというのですから注意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,無免許運転をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。
福岡県早良警察署までの初回接見費用:35,500円)

ひき逃げと刑事事件 

2019-02-08

ひき逃げと刑事事件 

福岡県春日市に住むAさんは,仕事を終え,普通乗用自動車を運転して帰宅途中,道路を横断してきたVさん(69歳)に自車前方を衝突させて路上に転倒させました。Aさんは車を道路脇に停め,車を降りてVさんの元に近づいたところ,Vさんの意識ははっきりしており怪我の程度も酷くはなさそうだったため(後日,Vさんは加療約2か月間の怪我を負っていたことが判明),警察に通報するなどせずその場を立ち去りました。その後,Aさんは普段どおりの生活を送っていますが,いつ警察に逮捕されるか不安で仕方ありません。そこで,警察に自首することも含め,ひき逃げ事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ ひき逃げはどんな罪? ~

ひき逃げと言われる犯罪は,怪我した人を助けなかった

救護措置義務違反

と,交通事故の内容等を警察官に報告しなかった

事故報告義務違反

の2つに分けられます。

ひき逃げについては,道路交通法(以下,法)72条1項に規定されていますから,まずはその規定からご紹介いたします。

法72条1項
 交通事故があったときは,当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(略)は,直ちに車両等を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において,当該車両等の運転者(略)は,警察官が現場にいるときは当該警察官に,警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所,当該事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度,当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

「~講じなければならない。」(法72条1項前段)までが「救護措置義務」に関する規定,「この場合において」以下(法72条1項後段)が「事故報告義務」に関する規定です。ひき逃げに関する規定についてはお分かりいただけたでしょうか?

~ ひき逃げ(救護措置義務違反)の刑の重さは? ~

では,ひき逃げの刑の重さ,つまり罰則はどうなっているのでしょうか?

まず,救護措置義務違反については法117条に規定されています。

法117条
1項 車両等(軽車両を除く。)の運転者が,当該車両等の交通による人の死傷があった場合において,第72条第1項前段の規定に違反したときは,5年以下の懲役又  は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の場合において,同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは,10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

= 1項について =

「当該車両等の交通による人の死傷があった場合」とは,交通事故のうち,いわゆる人身事故があった場合ということで,いわゆる物損事故については法117条の5第1号が適用されます。

※参考
 法117条の5 次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
      1号 第72条第1項前段の規定に違反した者(107条の規定に該当する者を除く)

= 2項について =

「人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるとき」とは,当該運転者の運転が原因となって当該事故が発生した場合をいいます。一般的には,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」5条に規定される過失運転致死傷罪が成立する場合は2項が適用されます。
他方,1項が適用される場合は,「人の死傷が当該運転者の運転に起因するものでなかったとき」,例えば,駐車中の車両が後方から進行してきた車両に追突され,その衝撃で前方に移動し,前方を横断中の歩行者を死傷させた,などという場合が考えられます(歩行者の死傷が,駐車中の車両の運転に起因するものとは言い難いため)。

2項は,1項に比べ,運転者の運転が原因で人の死傷が発生しているため責任が重く,罰則も1項より2倍とかなり重くなっていることが分かります!

~ ひき逃げ(事故報告義務違反)の刑の重さは? ~

次に,事故報告義務違反については法119条1項10号に規定されています。

法119条1項 次の各号のいずれかに該当する者は,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
    10号 第72条第1項後段に規定する報告をしなかった者

事故報告義務違反は救護措置義務違反に比べ罰則が軽いです。これは,事故内容等を警察官に報告することは自ら警察官に犯罪を申告することに等しく,人情としては躊躇されるものであり,このような場合にまで重い刑罰を科すことは相当ではないと考えられたためです。

~ Aさんの刑の重さは? ~

Aさんに過失が認められれば,過失運転致傷罪が成立します。同罪の法定刑は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。また,Aさんには救護措置義務違反が認められ,Vさんの怪我がAさんの運転に起因すると認められる場合は法117条2項が適用されます。さらに,警察官にも報告していないため,事故報告義務違反にも問われるでしょう。本件では,Aさんの怪我の程度が重たいですから,情状に有利な点が認められなければ「実刑」となることも十分に考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,ひき逃げなどの交通事故・刑事事件専門の法律事務所です。ひき逃げを起こしお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。
福岡県春日警察署までの初回接見費用:36,600円)

煽り運転を殺人罪で起訴

2019-01-22

煽り運転を殺人罪で起訴

Aさんは,一般道において普通乗用自動車を時速100メートルで運転中,前方を走っていたVさんが死んでも構わないという意図の下,Vさん運転の大型バイクを執拗に煽った末,同バイクに自車を衝突させるなどしてVさんを死亡させたとして,殺人罪起訴されました。Aさんの弁護を担当する弁護人は,公判で殺人罪の殺意(故意)を争い,殺人罪は成立せず,過失運転致死罪が成立するにとどまるなどと主張しています。
(フィクションです)

~ 危険運転致死罪,過失運転致死罪 ~

通常,交通事故によって人を死亡させた場合,

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

という法律に規定されている,危険運転致死罪(法律2条)や過失運転致死罪(法律5条)が適用される場合がほとんどです。
前者は,法律2条各号に危険運転の類型が定めらており,行為者(運転者)が各類型の事実や相手方が死亡するであろうという結果を認識しなければ罪が成立しない故意犯です。ちなみに,煽り運転で一番該当しそうな類型は,法律2条4号の

人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に進入し,その他通行中の人又は車に著しく近接し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

だと思われます。法定刑は,1年以上の有期懲役です。
次に,後者の過失運転致死罪ですが,これは名称からもわかる通り,故意犯ではなく過失犯です。過失とは,とある注意義務を不注意によって怠って結果(死亡)を発生させ,かつ,その結果(死亡)発生につき認識・認容がない場合をいいます。法定刑は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。Aさんの弁護人は,AさんはVさんが死んでも構わないと思って煽り運転をしていたわけではないなどと主張し,殺意(故意)を否認して過失運転致死罪の成立を主張しているのです。

~ 殺意 ~

殺意とは,一般的には人を殺害する意思を意味しますが,刑法上は,人を殺害することを認識し,認容している心理状態をいうとされています。
このような内心の心理状態は本人にしか分からないため,殺意の有無の判断においては,客観的に死亡の危険性が高い行為をしたのか,あるいはその認識があったのか,などという点が考慮されます。

具体的にいうと,例えば,凶器として日本刀のように刃渡りが長く大きな傷を与えうる刃物を用いたという場合には殺意を肯定する方向に評価が傾きますが,他方で,100円ショップ等で売っているような刃渡りの短いカッターナイフを用いたという場合には殺意が否定される方向に評価が傾きます。
また,同じ刃物を用いた場合でも,心臓や首など,人体の生命活動に必要不可欠な部位を刺したという場合には殺意を肯定する方向に評価が傾きますが,手首など傷を負っても死亡という結果に至りにくい部位を刺したという場合には殺意が否定される方向に評価が傾きます。
用いた凶器や傷の部位,凶器の使い方など実行行為時の事実だけでなく,実行行為終了後の事実が殺意の有無に影響を与えることもあります。
例えば,相手に怪我をさせた後直ちに傷の手当てをするなど相手を死亡させないように努力したという場合には殺意が否定される方向に評価が傾くこともあります。

では,本事例の煽り運転ではどうでしょうか?
今回,明らかになっている事実,つまり,Aさんが時速100キロメートルで普通乗用自動車を運転していたという行為は,死亡という結果発生を惹起しうる危険な行為ですから殺意を肯定する方向に働くでしょう。その他,速度のみならず,走行方法,バイクとの距離,車内の物音,ブレーキの有無などが殺意を認定する上での考慮事情となるでしょう。
また,現在(平成31年1月18日現在),大阪地方裁判所堺支部で公判係属中の煽り運転の事件では,被告人がバイクに追突したその約10秒後に,「はい,終わりー」と陽気に?言ったことが,殺意を認定する上での考慮事情とされているようです。検察側は,これを被害者に向けた言葉だと解釈して殺意有りと主張しているのに対し,被告人側は「事故を起こしたら仕事を辞めやきゃいけない。自分の立場や生活が「終わった」ことだ」と反論し殺意を否定しています。今後,裁判所がどういう判断を下すのか注目です。

~ 起訴 ~

起訴とは,検察官が当該事件を刑事裁判にかけることをいいます。刑事裁判では,被告人が何を行ったのか,行ったとしてそれは犯罪に当たるのか,犯罪に当たるとしてどんな罪が成立するのか,犯罪が成立するとして被告人にはどんな刑罰を科すのが適当かといったことが争われます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,殺人罪などの刑事事件に関する刑事裁判に慣れた弁護士が所属しております。お困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間無料法律相談初回接見サービスを受け付けております。

飲酒運転の犯人隠避罪

2019-01-20

飲酒運転の犯人隠避罪

福岡市小郡市に住むAさんは,飲酒帰りの友人Bさん,Cさん及びDさんから,自動車でそれぞれの自宅まで送って欲しいと頼まれ,B,C及びDを自動車に乗せて出発しましたが,その途中,自動車の運転をBさんに交代しました。すると,飲酒運転をしていたBさんが運転操作を誤ったため,自動車は崖下に転落し,Bさん及びCさんは即死しました。Aさん及びDさんは軽傷で済みましたが,Bさんの飲酒運転の発覚を恐れ,Aさんが運転していて事故を起こしたことにしようと相談し,Aさんは,通報を受けて事故現場に臨場した福岡県小郡警察署の警察官に対し,自分が自動車を運転していて事故を起こしたと説明しました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

酒酔い・酒気帯び運転,無免許運転などの同乗者が,運転者の身代わりとなって,警察官に「自分が犯人だ」などと虚偽の供述をする,又は運転者等にさせられるというケースが散見されます。これは事故発生から警察官の現場臨場まで時間があること,同乗者が複数人いる場合,実際の運転行為はその同乗者しか現認していないことなどの理由から比較的,同乗者間で口裏合わせをしやすいからだと思われます。
本件でも,Aさんが虚偽の供述をしています。Aさんはどんな罪に問われるのかみていきます。

~ 犯人蔵匿・隠避罪(刑法103条) ~

刑法103条
 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(略)を蔵匿し,又は隠避させた者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

= 罰金以上の刑に当たる罪 =

「罰金以上の刑に当たる罪」とは,法定刑として罰金刑以上の刑が規定されていればよく,選択刑として拘留・科料が規定されていても構わないとされています。Bさんが問われる罪として考えられるのは,

1 過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)
2 危険運転致死傷罪(同法律2条)

ですが,1は選択刑として罰金刑が,2は懲役刑しか規定されていませんから,いずれの罪の場合でも「罰金以上の刑に当たる罪」に当たります。

= 罪を犯した者 =

では,Bさんは「罪を犯した者」といえるでしょうか?
この点については,犯人蔵匿・隠避罪が何に重点を置いて規定された罪なのかとうことに対する考え方で結論が異なってきます。つまり,犯人蔵匿・隠避罪が,捜査機関による犯人の身柄確保に重点を置いているという考え方をとれば,Bさんはすでに死亡していますから,Bさんは「罪を犯した者」に当たります。他方で,捜査機関による犯人の特定に重点を置いているという考え方をとれば,本件のように,小郡警察署の警察官が犯人がまだ誰なのかを特定していない段階で,Aさんが「犯人は自分だ」と名乗り出る行為は,犯人の特定を妨げる行為となりますから,Bさんは「罪を犯した者」には当たりません。
過去には,死亡した犯人の身代わりとなって出頭した事案について,犯人隠避罪を認めた裁判例があります(札幌高判平17年8月18日)。

= 蔵匿・隠避 =

蔵匿とは,犯人に場所を提供してかくまってやることをいいます。隠避とは,蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れされる一切の行為を指し,Aさんのように,Bさんの代わりに警察官に「自分が犯人だ」と言う行為,自首する行為,犯人に変装用の衣服や旅費を与える行為などがあります。

= 故意 =

本件の故意としては,Aさんが被蔵匿者又は被隠避者が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」であることの認識が必要ですが,判例は,罰金以上の刑に当たる材質の犯罪事実を犯した者であることを知っていれば,その罪の法定刑が罰金以上であることの認識までは必要ないとしています。つまり,Aさんが,Bさんが「交通事故を起こし,怪我を負わせた人」であるということが分かっていれば故意は認められそうです。

以上から,Aさんには犯人隠避罪が成立しそうです。

~ 車両提供罪 ~

本罪は,相手方が酒気を帯びている者で,酒気を帯びて車両等を運転すること(飲酒運転すること)となるおそれがあることを認識しながら,相手方に車両等を提供した場合に成立する犯罪です(道路交通法65条2項)。罰則は,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です(道路交通法117条の2第2号)。「提供」とは,提供を受ける者が利用し得る状態に置くことをいい,Aさんのように車の運転を代わる行為,エンジンキーを渡す行為,車の所在を教える行為などがこれに当たります。ただ,車両提供罪が成立するには,提供を受けた者が実際に飲酒運転を行ったことが必要とされており,Bさんが飲酒運転をしていたことが立証されれば,Aさんは,車両提供罪でも問われる可能性が出てくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,飲酒運転をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。飲酒運転でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービス24時間受け付けております。
福岡県小郡警察署までの初回接見費用:39,200円)

福岡県大野城市のあおり運転で死亡事故 危険運転に強い弁護士が解説②

2019-01-02

福岡県大野城市のあおり運転で死亡事故 危険運転に強い弁護士が解説②

Aさんは,Vさんをあおり運転の末に高速道路の追い越し車線に停車させ,後続したトラックによる追突事故を引き起こしてVさんを死亡させる死亡事故を起こしたとして,福岡県春日警察署危険運転致死罪で逮捕されました。この死亡事故について,危険運転に強い弁護士が解説します。
(フィクションです)

~ はじめに ~

昨日は,危険運転致死罪の内容,横浜地方裁判所で行われたあおり運転の裁判で,何が最大の争点だったのかについて解説いたしました。本日は,なぜ,危険運転致死罪が適用されたのかについてご説明いたしたいと思います。

~ 危険運転の中の通行妨害運転 ~

危険運転致死罪を適用するためには,昨日ご紹介した①から⑥の類型のいずれかに当てはまらなければなりません。

では,まず④の通行妨害運転の規定内容からみていきましょう。

「人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に進入し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転させる行為」

~ 検察,弁護側の主張,裁判所の判断は? ~

検察側は④の通行妨害運転に当たると主張しました。他方で,弁護側は,事故の直接の原因となったトラックによる追突事故を引き起こしたのは,あくまで被告人が被害車両を停車させた行為(前日ブログ記載の②行為)で,停車させるという時速0kmの速度は「重大な交通の危険を生じさせる速度」には当たらないから通行妨害運転には当たらないと主張しました。

この点,裁判所は,「高速道路上で停車させた速度ゼロの状態が同罪の構成要件の「重大な危険を生じさせる速度」とするのは解釈上無理がある」と指摘しました。
他方で,停車させる行為以前のあおり運転(①行為)については通行妨害運転に当たるとし,停止させた行為(②行為)はあおり運転(①行為)に密接に関連した行為であり,死傷の結果はあおり運転(①行為)によって現実化したと述べて,あおり運転と結果との間の因果関係を認めました。つまり,裁判所は,複数のあおり運転と停車行為とを一連一体の行為を通行妨害運転と認定し,危険運転致死罪を適用したということになります。

あおり運転危険運転でお困りの方は,まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談下さい。

福岡県大野城市のあおり運転で死亡事故 危険運転に強い弁護士が解説①

2019-01-01

福岡県大野城市のあおり運転で死亡事故 危険運転に強い弁護士が解説①

Aさんは,Vさんをあおり運転の末に高速道路の追い越し車線に停車させ,後続したトラックによる追突事故を引き起こしてVさんを死亡させる死亡事故を起こしたとして,福岡県春日警察署危険運転致死罪で逮捕されました。この死亡事故について,危険運転に強い弁護士が解説します。
(フィクションです)

~ 危険運転致死罪 ~

危険運転致死罪は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第2条に規定されており,①酩酊・薬物運転(同条1号),②制御困難運転(2号),③未熟運転(3号),④通行妨害運転(4号),⑤信号無視運転(5号),⑥通行禁止道路運転(6号)の危険運転によって人を死亡させた場合に成立する犯罪で,法定刑は1年以上の有期懲役です。

~ 何が争点(問題点)か ~

平成30年12月14日,横浜地方裁判所で,Aさんと同じくあおり運転をした末に死亡事故を起こした男性被告人に懲役18年(求刑:懲役23年)の実刑判決が言い渡されましたので,この裁判を例にとって解説いたします。

死亡事故の経過は,

①東名高速道路で,約700メートル,32秒間にわたり,4回,被害者の車の直前に割り込むなどのあおり運転をした
②被害者の車の前に割り込み,同車を追い越し車線上に停車させた
③停車から約2分後,別の大型トラックが被害車両後部に衝突
④被害者2名死亡,2名怪我

というものでした。

①から④からすると,本件死亡事故の発生(被害者2名の死亡の結果)は,被告人の行為(あおり運転等)が直接の原因とはなっていない(直接の原因は,大型トラックが後方から追突したこと)ため,被告人に危険運転致死罪を適用できるのか,適用できるとして何が危険運転なのかが最大の争点となりました。

裁判所は危険運転致死罪の適用を認めたのですが,明日は,なぜそういう結論となったのかについて解説いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,あおり運転危険運転による死亡事故をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。あおり運転危険運転死亡事故でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間無料法律相談初回接見サービスを受け付けております。
福岡県春日警察署までの初回接見費用:36,600円)

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