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【事例解説】軽微な暴行事件における弁護活動と微罪処分(口論相手に水をかけた架空の事例に基づく解説)
この記事では、架空の事例を基に、軽微な暴行事件における弁護活動と微罪処分について解説します。
事例紹介:口論相手に水をかけたケース
福岡市在住の会社員男性Aが、知人の女性Vと、市内の飲食店で食事中に口論となり、故意にVの身体にグラスの水をかけました。Vに怪我はありませんでしたが、福岡県博多警察署に被害届を提出し、Aは暴行の容疑で警察の取調べを受けることになりました。
(事例はフィクションです。)
軽微な事件における微罪処分とは
警察が犯罪を認知して捜査をした場合、その書類や証拠物とともに事件を検察官に送致(報道等では「送検」と呼ばれることもあります。)しなければならないとされています(刑事訴訟法第246条本文)。送致された後、検察官が事件を引き継いで捜査の上、起訴するかを最終的に決定します。
しかし、この例外として、捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる、とされています(同条但書、犯罪捜査規範第198条)。
このように、軽微な犯罪の場合に、事件を検察官に送致せず終了させる措置のことを「微罪処分」と呼びます。
微罪処分の場合、被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒める、などの処置をとるものとされています(犯罪捜査規範第200条)。
なお、微罪処分となった事件は、被疑者の氏名や犯罪事実の要旨などが、1月ごとに一括して検察官に報告されるのみであり、起訴され刑罰を科されたり、それによって前科が付くことはないと考えられます。
暴行事件における微罪処分の要件
微罪処分の対象となる「検察官が指定した事件」については、犯罪の内容、被害者の処罰感情や犯人の前科前歴の有無などを考慮して、各地方検察庁において、具体的な基準を定めているとされます。
基準は非公開ですが、暴行事件については、概ね、以下のような基準が定められていると考えられます。
・犯行態様が軽微(共犯事件でない、武器を使用していないなど)であること
・被害者と示談が成立しており、被害者が処罰を望んでいないこと
・素行不良者でない者(粗暴犯の前科、前歴がないなど)の偶発的犯行であって再犯のおそれのないもの
軽微な暴行事件における弁護活動
暴行事件を起こした場合、被害者との示談を成立させ、示談書の中に宥恕条項(加害者の処罰を求めない旨の条項)を入れてもらうことが、微罪処分を受けるためにも重要となりますが、当事者同士では、被害者の被害感情などから示談交渉がうまくいかず、かえって示談の成立が困難になってしまうおそれがあります。
また、微罪処分を得るためには、事件が検察官へ送致される前までに示談を成立させ、その結果を警察へ報告する必要があるため、警察の捜査状況も確認しながら、示談交渉の経過を適時報告しつつ、迅速に示談交渉を進めていく必要があります。
そのため、被害者と知人関係にあるからといって、安易に自ら示談交渉を行おうとすることは避け、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士に相談の上、対応を検討することをお勧めします。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、暴行事件において、検察官不送致(微罪処分)を獲得した実績があります。
自身やご家族が暴行事件を起こしてしまい、今後のことでご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部までご相談ください。
【事例解説】ストーカー規制法違反その弁護活動(元交際相手に復縁を迫り逮捕された架空の事例に基づく解説)
元交際相手の女性に復縁を迫り、待ち伏せや連続で電話をかけるなどしたとして、ストーカー規制法違反の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、ストーカー規制法の成立とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事例紹介:Aさんのケース
元交際相手の20代の女性Vに復縁を迫り、待ち伏せや連続で電話をかけるなどしたとして、糸島市在住の男性Aがストーカー規制法違反の容疑で逮捕されました。
糸島警察署の調べによると、Aは、元交際相手のVに復縁を迫るため、Vの勤務先の近くで待ち伏せをしたり、着信拒否にもかかわらず連続で電話をかけるなどのストーカー行為をした疑いです。Aは、ストーカー規制法違反の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)
ストーカー規制法違反とは
「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(「ストーカー規制法」)では、特定の者に対する「恋愛感情」等や、それが満たされなかったことに対する「怨恨の感情」を充足する目的で、特定の者やその関係者に対し、「つきまとい等」を行うことを禁じています。
「つきまとい等」にあたる行為として、本件AがVに対して行った「待ち伏せ」や「拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかける」行為が含まれます(同法2条1項)。
同一の相手に対して、「つきまとい等」を反復することを「ストーカー行為」とし、ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する、とされています(同法2条4項、18条)。
被害者から警察への相談・申出により、警察から「つきまとい等」をした者に対して、「つきまとい等」を止めるよう「警告」が発せられることもありますが、行為の悪質性などから、被害者への接触を禁止した上で捜査を行う必要性が高いとして、警告のないまま逮捕される場合もあります。
なお、警告に反して「つきまとい等」を続ける者に対しては、都道府県公安委員会は「禁止命令等」を発することができるとされ、「禁止命令等」に違反してストーカー行為をした者は、刑が加重され、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科される可能性があります。
ストーカー規制法違反事件の刑事弁護
事例のように、ストーカー規制法違反で逮捕され身体拘束された場合、弁護活動としては、加害者が被害者と接触しないための具体的な措置を講じたことなどを検察官や裁判官に主張し、身体拘束からの解放を目指します。
また、ストーカー規制法違反は、被害者との示談の成立を目指すことも重要な弁護活動だと考えられます。
ストーカー規制法違反は、被害者の告訴がなくとも検察官の判断で起訴できる罪(非親告罪)となりましたが、実務上の運用は、被害者の意思を尊重し、プライバシー侵害が生じないように配慮する観点から、被害者との示談が成立することにより、検察官が起訴することなく事件が終了する可能性を高められると考えられるためです。
しかしながら、事件の性質上、被害者が加害者との直接の示談交渉を拒む可能性は極めて高く、警告や禁止命令等が発せられている場合であれば、加害者が直接示談交渉を申し入れたりすること自体がストーカー行為の一環とみなされてしまう恐れもあるため、身体拘束されている場合はもとより、そうでない場合でも、示談交渉は弁護士に依頼して行う必要性が高いと考えられます。
福岡県のストーカー規制法違反事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、ストーカー規制法違反事件において、身体拘束からの解放や示談成立による不起訴処分を獲得している実績があります。
ストーカー規制法違反の容疑で自身やご家族が逮捕されたり、警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】樹木に対する器物損壊罪の成立と事件化阻止の弁護活動
隣人トラブルから、隣家の樹木を枯らすため除草剤を散布した事件を参考に、樹木に対する器物損壊罪の成立と刑事事件化を阻止するための弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市内に居住する男性Aは、隣人Vの庭の樹木の枝が自宅の庭まで伸びていることをVに注意したものの、何も対応しないVに腹を立て、Vの外出時を狙って、樹木を枯らす目的で、自宅の庭から樹木の根元へ除草剤を繰り返し散布しました。
ある日のこと、Aは、除草剤を散布するところをVに目撃され、警察に通報すると訴えられてしまい、刑事事件に強い弁護士に対応を相談しました。
(事例はフィクションです。)
樹木に対する器物損壊罪の成立について
他人の物を損壊した者は、器物損壊罪として、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料を科される可能性があります(刑法第261条)。
器物損壊罪における「物」とは、広く財産権の目的となり得る一切の物をいい、動物や植物もこれに含まれます。
また、同罪における「損壊」とは、物理的な損傷に限らず、心理的な抵抗感から事実上使用不可となるなど、その物の本来の効用を失わせることも含むとされます。
そのため、物理的な損傷に至っていないため未遂にとどまり、器物損壊罪は未遂犯の処罰規定がないから処罰されない、と単純に考えることはできません。
本件で、除草剤の散布により樹木の枯死や変色などの物理的な損傷に至っていないとしても、除草剤の影響で生育に何らかの害が生じ得ることによる取引価値の低下など、樹木の本来の効用を失わせ「損壊」したとして、器物損壊罪の成立が認められる可能性もあると考えられます。
器物損壊で刑事事件化を阻止するための弁護活動
器物損壊罪は、被害者の告訴(犯罪事実を申告し、加害者の処罰を求める意思表示)がなければ起訴されない親告罪であることから、被害届が出される前に被害者と示談が成立し、示談書の中に宥恕条項(加害者の処罰を求めない旨の条項)を入れてもらえれば、警察の介入による刑事事件化を防げる可能性が高いと考えられます。
また、示談書の中に宥恕条項まで入れてもらうことができなかったとしても、器物損壊罪の法定刑は比較的軽微であるため、被害弁償が済んでいることが示談書で確認できれば、不起訴処分となる可能性を高めることが期待できます。
そのため、器物損壊罪が成立し得る行為を行った場合、被害者との示談の成立が特に重要と言えますが、当事者同士では、被害者の被害感情などから、示談交渉がうまくいかない可能性が考えられます。
また、法律の専門家ではない当事者同士による示談の場合、内容に不備があることで、一旦示談が成立したにも関わらず、後日紛争が蒸し返される恐れがでてきます。
そのため、被害者との示談交渉は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。刑事事件における示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することで、適切な示談金を算定した上で、十分な内容の示談が成立する可能性を高めることができます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、被害届が出される前に被害者と示談を成立させることで、刑事事件化を阻止した実績が多数あります。
自身やご家族が、器物損壊罪が成立し得る行為を行ってしまい、刑事事件化を防ぎたいとお考えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事件解説】プログラムの社外持ち出しが会社に発覚 事件化阻止のための弁護活動
プログラムの不正な社外持ち出しが会社に発覚し、刑事告訴される可能性のある事件を参考に、背任罪の成立や事件化阻止のための弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市在住のA(45歳)は、コンピュータの販売やソフトウェアの開発・販売等を行っているV社の従業員として、V社の提供する顧客管理プログラムをV社との契約に基づき導入した店舗に対する、プログラムの導入・維持管理を担当し、プログラムが入ったUSBメモリを管理していました。
Aは、私的にV社のプログラムを使用しようと企て、V社の取引先の店舗の担当者Bと共謀し、Bの管理するコンピュータにV社のプログラムを不正に導入しました。
後日V社にそのことが発覚してしまい、AはV社から、損害賠償請求や刑事告訴の可能性を告げられています。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)
背任罪とは
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第247条)。
「他人のためにその事務を処理する」とは、他人からの信任・委託に基づいてその事務を処理することとされ、会社の従業員は、背任罪の典型的な主体になるといえます。
「その任務に背く行為」(「任務違背行為」といいます。)とは、事務処理者としてなすべきと法的に期待される行為に反する行為とされ、信任・委託されている事務の内容、事務処理者としての地位・権限などから判断されます。
本件Aは、V社の従業員として、V社のプログラムの導入・維持管理を担当し、そのプログラムが入ったUSBメモリの管理を任されていたことから、V社から、そのUSBメモリを適切に管理することを法的に期待されていたといえます。
それにもかかわらず、Aは、V社のプログラムを私的に使用しようと企て、取引先のコンピュータにそのプログラムを不正に導入しているため、Aは任務違背行為を行ったものと考えられます。
なお、「財産上の損害」とは、本人の財産の価値が減少した場合に限らず、増加すべき価値が増加しなかった場合も含むとされるため、本件でAが不正に導入したV社のプログラムの導入代金相当額も、「財産上の損害」に含まれると考えられます。
よって、Aは、自己の利益を図る目的で、V社の従業員(プログラムの導入・維持管理担当者)として任務に背く行為をし、V社に財産上の損額を加えたとして、背任罪が成立し得ると考えられます。
任務違背行為の責任を会社に問われた場合の弁護活動
会社の従業員が行った任務違背行為は、まず会社内部での通報や調査等で発覚することが多く、警察が介入する前に、会社から責任を追及される場合が多いと考えられます。
そのため、背任罪に該当し得る行為を犯した場合でも、早い段階で、会社との間で、被害弁償の交渉を行い、被害届提出や刑事告訴をしない内容を含む示談を締結することができれば、刑事事件化を阻止できる可能性があります。
また、本件のような、会社の財産の外部への持ち出しといった任務違背行為の場合は、背任罪より法定刑の重い業務上横領罪(刑法第253条)が成立する可能性もありますが、その判断は難しいため、自らの犯した行為が何罪に該当し得るのか、今後の事件の見通しや、事件化阻止のために行うべき対応について、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士に早い段階で相談することをお勧めします。
なお、仮に刑事事件化した場合でも、そうした示談締結の事実は、起訴・不起訴の判断や起訴された場合の量刑判断において、有利な事情になると考えられます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、背任罪などの財産事件において、被害者との示談締結により事件化を阻止した実績が多数あります。
自身やご家族が背任罪に該当する可能性がある行為を行い、ご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事件解説】山菜採取で森林窃盗罪 事件化阻止の弁護活動
山林で山菜を無断採取したところを森林所有者に発見され、森林法違反(森林窃盗罪)に問われた事件を参考に、森林窃盗罪と事件化を阻止する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事件概要
福岡県八女市内の森林で、同市内在住の自営業男性A(52歳)が山菜の「タラの芽」を10本ほど採取して所持していたところを、所有者Vから発見されました。
Vから、森林法違反(森林窃盗罪)として警察への通報を仄めかされたところ、Aはその場で知人の弁護士に電話し、今後の対応について相談しました。
(過去に報道された実際の事件に基づき、事実関係を大幅に変更したフィクションです。)
森林窃盗罪とは
森林法とは、森林の保護・培養と森林生産力の増進に関する基本的事項を規定する法律です。
同法197条で「森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗とし、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」と定められています。
「森林」は、私有地・公有地を問わず、「産物」は、山菜やキノコ等の食材となる有機物のみならず、昆虫や植物、鉱物や岩石なども対象となります。
訪れた山や森で昆虫や植物を採取した経験のある方もいるかもしれませんが、所有者の許可なく行うことは同法違反となる可能性が高いため、注意が必要です。
事件化阻止の弁護活動
Vが警察に通報し、被害届を提出した場合、刑事事件として警察の捜査の対象となる可能性が高まります。
森林法違反(森林窃盗罪)は法定刑が比較的軽微とはいえ、その目的や常習性といった事情次第では、逮捕・勾留による身体拘束の可能性がないとも言い切れません。
そのため、警察に被害届が出される前に、被害者に謝罪と被害弁償を行った上、被害届を提出しない内容を含む示談の成立を目指すことが考えられます。
これにより、警察が介入することなく事件化を防ぐ可能性を高めることが期待できます。
弁護士を介さず示談交渉を行うことも可能ではありますが、当事者同士では、被害者の被害感情などから、交渉がうまくいかない可能性が考えられます。
また、法律の専門家ではない当事者同士による示談の場合、内容に不備があることで、一旦示談が成立したにも関わらず、後日紛争が蒸し返される恐れがでてきます。
そのため、被害者との示談交渉は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。刑事事件における示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することで、適切な示談金を算定した上で、十分な内容の示談が成立する可能性を高めることができます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、被害者との間での、被害届を提出しない内容を含む示談の成立により、事件化を阻止した実績が多数あります。
森林窃盗罪で自身やご家族が森林所有者とトラブルとなりお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【事例解説】飲酒による酩酊状態での器物損壊事件
公務員が飲酒による酩酊状態で器物損壊し逮捕された架空の事件を参考に、酩酊状態での犯行における刑事責任能力と器物損壊罪の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡県久留米市内の居酒屋で、店の扉を壊したとして、同市内在住の同市職員の男性A(28歳)が逮捕されました。
警察の調べによると、事件当時Aは飲酒により酩酊しており、トイレの扉を蹴って損壊したところ、被害に気づいた店員が警察に通報し、駆け付けた警察官により逮捕されました。Aは、酷く酩酊していたため全く覚えていないと供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)
心神喪失と心神耗弱について
心神喪失者や心神耗弱者の犯行については、刑事責任能力の欠如を根拠に刑の免除や減軽が規定されています。精神の障害により、善悪を区別する能力又は自分の行動を制御する能力が全くない状態を「心神喪失」、著しく減退している状態を「心神耗弱」といいます(刑法第39条)。
心神喪失や心神耗弱が認定される例として、統合失調症や躁うつ病等の精神障害、知的障害や認知症、薬物や飲酒による酩酊状態などが挙げられますが、例えば、精神障害であれば一律に責任能力を欠くという訳ではなく、犯行当時の病状、犯行前の生活状態や犯行の動機・態様などから、犯行がその障害の影響によるものであると認定される必要があります。
飲酒による酩酊状態と刑事責任能力
飲酒による酩酊状態の場合、普段の酒癖や犯行前の飲酒量、犯行の動機・態様、犯行前後の言動などが総合的に考慮されて責任能力が判断されることになりますが、一般的な酩酊状態(「単純酩酊」)の場合は、完全な責任能力が認められる可能性が非常に高いです。
仮に、著しい興奮が生じる「複雑酩酊」や幻覚が生じるほどの「病的酩酊」として、心神喪失や心神耗弱と認定される可能性があるとしても、自由な意思による飲酒でその状態を招いた場合は、刑事責任を認めることとされ、犯罪の成立は妨げられない可能性が高いです(「原因において自由な行為」といいます。)。
公務員による器物損壊事件の弁護活動
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料、と定められています(刑法第261条)。
Aは地方公務員であることから、起訴され有罪となり万一懲役刑となった場合、執行猶予が付いたとしても、地方公務員法第16条1号で定める「禁錮以上の刑に処せられた者」に該当し、原則として失職することとなります(同法第28条4項)。
他方、器物損壊罪は親告罪であり、被害者からの告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がないと起訴されないため、弁護活動としては、早期に被害者に対する謝罪及び被害弁償を行った上、被害者との示談交渉により、告訴をしない又は告訴を取り消す内容を含む示談の成立を目指すことが考えられます。
刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士であれば、示談金の支払いと併せて、今後一切、被害店舗に立ち入らない旨を誓約することなどにより、告訴の取り下げ又は告訴をしない内容を含む示談が成立する可能性を高めることが期待できます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、器物損壊事件における示談成立による事件解決の実績が数多くあります。
器物損壊事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】SNSでの誹謗中傷 被害届が出された場合の弁護活動
知人のSNSに誹謗中傷の投稿を行ったことで被害届が提出された事件を参考に、名誉毀損罪と侮辱罪及びその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市在住の会社員女性A(24歳)は、知人である元交際相手の会社経営者の男性V(32歳)のSNSのコメント欄に、「不倫している」、「人間性を疑う」等の投稿を連日、それぞれ行いました。
Vから警察に上記誹謗中傷に関する被害届が提出され、後日、警察からAに電話があり、Vから被害届が提出された件について、任意の取調べの呼び出しを受けました。
不安になったAは、今後の対応について、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
SNSでの誹謗中傷により成立し得る罪
SNSへの誹謗中傷の投稿については、少なくとも名誉毀損罪か侮辱罪の成立が考えられます。
名誉毀損罪(刑法第230条第1項)は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。
「公然」とは、不特定又は多数の人が知ることのできる状態を指します。SNSのコメント欄は、一般に不特定又は多数の人が閲覧可能であるため、これに該当すると考えられます。
また、「事実を摘示」とは、人の名誉(社会的評価)を害するに足りる事実を示すことを指し、摘示した事実の内容が真実でも、一定の例外を除いて罪の成立は妨げられません。
不倫は、一般的に人の社会的評価を低下させ得る事実と言えるため、「不倫している」という本件投稿は、「人の名誉を害するに足りる事実を摘示」したと認められる可能性が高いと考えられます。
なお、「名誉を毀損した」と規定されていますが、実際にその人の社会的評価が低下したことまでは必要ありません。
これに対し、侮辱罪(刑法第231条)は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と定められています。
「侮辱」とは、人の人格を蔑視する価値判断を表示することとされ、名誉毀損罪と異なり、事実の摘示は侮辱罪の成立する要件ではありません。
よって、「人間性を疑う」という本件投稿は、事実の摘示とまでは言えないものの、Vの人格を蔑視する価値判断の表示とは言えるため、侮辱罪が成立し得ます。
名誉毀損罪と侮辱罪の弁護活動
インターネット上の誹謗中傷の社会問題化を受け、令和4年7月に侮辱罪の法定刑が引き上げられ、名誉毀損罪と同様に懲役刑や罰金刑を科すことも可能となりました。
他方で、名誉毀損罪も侮辱罪も親告罪であり、被害者からの告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がないと起訴されないため、被害届提出の段階であれば、被害届の取り下げ及び告訴をしない内容を含む示談が成立すれば、起訴を回避し得ます。
当事者同士では、冷静な示談交渉が期待できず新たな紛争を生むおそれがあるほか、示談の内容に不備があることで、一旦示談が成立したにも関わらず後日紛争が蒸し返されるおそれもあることから、被害者との示談交渉は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。
示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することで、被害届の取り下げ及び告訴をしない内容を含む、双方が十分に納得のいく示談が成立する可能性を高めることができます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件を取り扱う法律事務所です。
誹謗中傷による名誉毀損罪や侮辱罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事件解説】未成年の少女を自宅に連れ込み 未成年者誘拐罪で逮捕
SNSで知り合った未成年の少女を自宅に連れ込み、未成年者誘拐罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事件概要
福岡県大牟田市に住む中学3年生の少女Vを誘拐したとして、福岡市在住の会社員の男A(25歳)が未成年者誘拐罪で現行犯逮捕されました。
福岡県警博多警察署の調べによると、AはVとSNSで知り合い、Vが未成年であることを知りながらAの自宅で会う約束をし、Aの自宅の最寄り駅まで来たVを迎え、自宅に連れ込みました。
Vの両親から警察に捜索願が出され、スマートフォンの位置情報からVの居場所が特定され、駆け付けた警察官にVは保護されました。
警察の調べに対し、AはVを自宅に連れ込んだことは認めていますが、わいせつ目的等はなかったと供述しています。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)
未成年者誘拐罪とは
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第224条)。
「誘拐」とは、欺罔または誘惑を手段とし、人を従来の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の事実的支配化に置くこと、とされています。
本件では、AはVと約束した上、最寄り駅まで来たVを自宅に連れ込んだとのことですが、判断能力が十分とは言えない中学生に自宅に来るよう誘うことは「誘惑」と認められます。
また、Vの自宅から離れた福岡市内の自宅に連れ込んだことは、Vを「従来の生活環境から離脱」させ、「事実的支配下」に置いたものと認められるため、未成年者誘拐罪で逮捕されています。
なお、未成年者誘拐罪は、営利、わいせつ、身代金要求等の目的がなくても成立しますが、これらの目的が伴う場合は、被害者が成人の場合と同様、営利目的等誘拐罪、身の代金目的誘拐罪等が成立します。
未成年者誘拐罪の弁護活動
未成年者誘拐罪が保護する法益は、未成年者の身体の自由・安全のみならず、両親等の監護権も含むとされるため、未成年者の同意があったとしても、犯罪の成立は妨げられません。
他方で、未成年者誘拐罪は親告罪であり、両親等からの告訴(捜査機関に対し被害の事実を申告し、かつ犯人の処罰を求める意思表示)がないと起訴されないため、弁護活動としては、両親等との示談交渉により、告訴をしない又は告訴を取り消す内容を含む示談の成立を目指します。
なお、告訴する権利を放棄することは判例では認められておらず、告訴しないという内容の示談が成立したとしても、両親等が翻意して告訴がなされるおそれは排除できないため、そのような可能性をできる限り減らすためにも、刑事事件の示談交渉の経験が豊富な弁護士により、双方が十分に納得した上での示談を成立させる必要があります。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、様々な刑事事件における示談交渉の経験が豊富にあり、未成年者誘拐罪の事件解決の実績もあります。
ご家族が未成年者誘拐罪で逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
【北九州市の少年事件】商業施設のトイレを壊した18歳の男子高校生逮捕~②~
北九州市の商業施設において、トイレなどを壊した18歳の男子高校生逮捕された事件を参考に、少年事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
昨日コラムで、器物損壊罪について解説しましたが、今回の事件で逮捕されたのは18歳の少年です。
18歳の少年が器物損壊事件のような刑事事件を起こして逮捕された際、検察庁に事件が送致されて犯罪捜査が行われている間は、成人事件とほぼ同じ手続きが進みますが、警察や検察庁の捜査を終えて家庭裁判所に送致後は、少年事件特有の手続きが進むこととなり、家庭裁判所から検察庁に逆送されない限りは、昨日解説したような法定刑に定められている刑事罰を受けることはありません。
少年事件の特徴
少年事件特有の手続きを紹介します。
(1)観護措置
家庭裁判所が調査・審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る必要がある場合には、観護措置がなされます。
観護措置には、在宅で家庭裁判所調査官の観護に付する場合と、少年鑑別所に送致する場合がありますが、多くの場合後者の方法で行われます。
期間は通常4週間(少年法第17条3項、4項本文)として運用されており、最長で8週間(少年法第17条4項ただし書き、9項)とされています。
(2)調査
家庭裁判所では、審判に付すべき少年について事件の調査が行われますが、この調査には法的調査と社会調査があります。
法的調査とは審判条件や非行事実の存否に関する調査をいい、社会調査とは少年に対してどのような処遇が最も有効適切であるかを明らかにするための調査をいいます。
このうち社会調査は、裁判官の調査命令を受けた調査官によって、少年、保護者、学校の先生に対する面接を通して実施されます。
(3)審判
審判では、裁判官が、法的調査と社会調査を踏まえて、少年の最終的な処遇を決定します。
少年保護事件では、成人のように公開法廷での公判が開かれることはなく、非公開の審判という手続きで審理が行われます(少年法第22条2項)。
少年事件の手続きについては こちらをクリック
特定少年
今年の4月から成人年齢が18歳に引き下げられたのに合わせて、少年事件の取り扱いも大きく変わった点がいくつかあります。その中の一つが「特定少年」についてです。
改正少年法では、18歳と19歳の少年を「特定少年」と位置付け、引き続き少年法が適用されますが、原則逆送事件の対象事件が拡大されると共に、起訴された場合に、実名報道されることがあります。
ちなみに今回の事件は器物損壊事件なので、原則逆送事件には該当しません。
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【北九州市の少年事件】商業施設のトイレを壊した18歳の男子高校生逮捕~①~
北九州市の商業施設において、トイレなどを壊した18歳の男子高校生逮捕された事件を参考に、器物損壊事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事件概要
今年の7月ころ、北九州市小倉北区の商業施設において、電気コードが切断されるなどして、自動洗浄機能付きトイレやハンドドライヤーが壊される器物損壊事件が発生しました。
施設から通報を受けた福岡県宗像警察署が防犯カメラなどを調べて捜査をした結果、18歳の男子高校生が容疑者として浮上し、この男子高校を逮捕したとのことです。
逮捕された男子高校生は、警察の取調べに対して容疑を認めているようです。
(9月13日配信のテレビ西日本の記事から抜粋しています。)
器物損壊事件
他人の物を故意的に壊すと「器物損壊罪」となります。
器物損壊罪は刑法第261条に規定されている法律で、その法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。
「懲役」とは、刑務所に収容されて刑務作業が科せられる自由刑の一種です。
他方、「罰金」や「科料」は国にお金を収める財産刑のことで、言い渡された金額を国に納付すれば手続きは終了しますが、納付するお金が用意できない場合は、労役作業に従事しなければなりません。
器物損壊罪の特徴
器物損壊罪は親告罪です。
親告罪は、被害者等の刑事告訴がなければ被疑者(犯人)を起訴できません。
刑事告訴は、警察所等の捜査機関に対して告訴状を提出するか、刑事手続きの過程で警察官が作成する告訴調書によって明らかにされます。
刑事告訴には、告訴不可分の原則というルールが定められており、この客観的原則として、一個の犯罪事実の一部について、告訴又はその取消があったときは、その犯罪事実の全てに効力が及ぶとされています。
また主観的原則として、親告罪について、共犯者の1人又は数人に対して告訴又はその取消があった場合は、他の共犯者に対してもその効力が生じるとされています。
器物損壊罪の弁護活動に強い弁護士
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器物損壊事件を起こして警察の捜査を受けておられる方、ご家族、ご友人が器物損壊事件を起こして警察に逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
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