【事例解説】飲酒による酩酊状態での器物損壊事件

 公務員が飲酒による酩酊状態で器物損壊し逮捕された架空の事件を参考に、酩酊状態での犯行における刑事責任能力と器物損壊罪の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します

参考事件

 福岡県久留米市内の居酒屋で、店の扉を壊したとして、同市内在住の同市職員の男性A(28歳)が逮捕されました。
 警察の調べによると、事件当時Aは飲酒により酩酊しており、トイレの扉を蹴って損壊したところ、被害に気づいた店員が警察に通報し、駆け付けた警察官により逮捕されました。Aは、酷く酩酊していたため全く覚えていないと供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

心神喪失と心神耗弱について

 心神喪失者心神耗弱者の犯行については、刑事責任能力の欠如を根拠に刑の免除や減軽が規定されています。精神の障害により、善悪を区別する能力又は自分の行動を制御する能力全くない状態「心神喪失」著しく減退している状態「心神耗弱」といいます(刑法第39条)。

 心神喪失心神耗弱が認定される例として、統合失調症や躁うつ病等の精神障害、知的障害や認知症、薬物や飲酒による酩酊状態などが挙げられますが、例えば、精神障害であれば一律に責任能力を欠くという訳ではなく、犯行当時の病状、犯行前の生活状態や犯行の動機・態様などから、犯行がその障害の影響によるものであると認定される必要があります。

飲酒による酩酊状態と刑事責任能力

 飲酒による酩酊状態の場合、普段の酒癖や犯行前の飲酒量、犯行の動機・態様、犯行前後の言動などが総合的に考慮されて責任能力が判断されることになりますが、一般的な酩酊状態(「単純酩酊」の場合は、完全な責任能力が認められる可能性が非常に高いです。

 仮に、著しい興奮が生じる「複雑酩酊」や幻覚が生じるほどの「病的酩酊」として、心神喪失心神耗弱と認定される可能性があるとしても、自由な意思による飲酒でその状態を招いた場合は、刑事責任を認めることとされ、犯罪の成立は妨げられない可能性が高いです(「原因において自由な行為」といいます。)。

公務員による器物損壊事件の弁護活動

 器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料、と定められています(刑法第261条)。

 Aは地方公務員であることから、起訴され有罪となり万一懲役刑となった場合、執行猶予が付いたとしても、地方公務員法第16条1号で定める「禁錮以上の刑に処せられた者」に該当し、原則として失職することとなります(同法第28条4項)。

 他方、器物損壊罪親告罪であり、被害者からの告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がないと起訴されないため、弁護活動としては、早期に被害者に対する謝罪及び被害弁償を行った上、被害者との示談交渉により、告訴をしない又は告訴を取り消す内容を含む示談の成立を目指すことが考えられます。
 刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士であれば、示談金の支払いと併せて、今後一切、被害店舗に立ち入らない旨を誓約することなどにより、告訴の取り下げ又は告訴をしない内容を含む示談が成立する可能性を高めることが期待できます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、器物損壊事件における示談成立による事件解決の実績が数多くあります。

 器物損壊事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

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