【事例解説】SNSでの誹謗中傷 被害届が出された場合の弁護活動

 知人のSNSに誹謗中傷の投稿を行ったことで被害届が提出された事件を参考に、名誉毀損罪と侮辱罪及びその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員女性A(24歳)は、知人である元交際相手の会社経営者の男性V(32歳)のSNSのコメント欄に、「不倫している」、「人間性を疑う」等の投稿を連日、それぞれ行いました。
 Vから警察に上記誹謗中傷に関する被害届が提出され、後日、警察からAに電話があり、Vから被害届が提出された件について、任意の取調べの呼び出しを受けました。
 不安になったAは、今後の対応について、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

SNSでの誹謗中傷により成立し得る罪

 SNSへの誹謗中傷の投稿については、少なくとも名誉毀損罪侮辱罪の成立が考えられます。

 名誉毀損罪(刑法第230条第1項)は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。

 「公然」とは、不特定又は多数の人が知ることのできる状態を指します。SNSのコメント欄は、一般に不特定又は多数の人が閲覧可能であるため、これに該当すると考えられます。

 また、「事実を摘示」とは、人の名誉(社会的評価)を害するに足りる事実を示すことを指し、摘示した事実の内容が真実でも、一定の例外を除いて罪の成立は妨げられません。
 不倫は、一般的に人の社会的評価を低下させ得る事実と言えるため、「不倫している」という本件投稿は、「人の名誉を害するに足りる事実を摘示」したと認められる可能性が高いと考えられます。
なお、「名誉を毀損した」と規定されていますが、実際にその人の社会的評価が低下したことまでは必要ありません。

 これに対し、侮辱罪(刑法第231条)は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と定められています。

 「侮辱」とは、人の人格を蔑視する価値判断を表示することとされ、名誉毀損罪と異なり、事実の摘示は侮辱罪の成立する要件ではありません。
 よって、「人間性を疑う」という本件投稿は、事実の摘示とまでは言えないものの、Vの人格を蔑視する価値判断の表示とは言えるため、侮辱罪が成立し得ます。

名誉毀損罪と侮辱罪の弁護活動

 インターネット上の誹謗中傷の社会問題化を受け、令和4年7月に侮辱罪の法定刑が引き上げられ、名誉毀損罪と同様に懲役刑罰金刑を科すことも可能となりました。

 他方で、名誉毀損罪侮辱罪親告罪であり、被害者からの告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がないと起訴されないため、被害届提出の段階であれば、被害届の取り下げ及び告訴をしない内容を含む示談が成立すれば、起訴を回避し得ます。

 当事者同士では、冷静な示談交渉が期待できず新たな紛争を生むおそれがあるほか、示談の内容に不備があることで、一旦示談が成立したにも関わらず後日紛争が蒸し返されるおそれもあることから、被害者との示談交渉は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。

 示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することで、被害届の取り下げ及び告訴をしない内容を含む、双方が十分に納得のいく示談が成立する可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件を取り扱う法律事務所です。
 誹謗中傷による名誉毀損罪侮辱罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

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