【事例解説】樹木に対する器物損壊罪の成立と事件化阻止の弁護活動

 隣人トラブルから、隣家の樹木を枯らすため除草剤を散布した事件を参考に、樹木に対する器物損壊罪の成立と刑事事件化を阻止するための弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市内に居住する男性Aは、隣人Vの庭の樹木の枝が自宅の庭まで伸びていることをVに注意したものの、何も対応しないVに腹を立て、Vの外出時を狙って、樹木を枯らす目的で、自宅の庭から樹木の根元へ除草剤を繰り返し散布しました。
 ある日のこと、Aは、除草剤を散布するところをVに目撃され、警察に通報すると訴えられてしまい、刑事事件に強い弁護士に対応を相談しました。
(事例はフィクションです。)

樹木に対する器物損壊罪の成立について

 他人の物を損壊した者は、器物損壊罪として、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料を科される可能性があります(刑法第261条)。

 器物損壊罪における「物」とは、広く財産権の目的となり得る一切の物をいい、動物や植物もこれに含まれます。

 また、同罪における「損壊」とは、物理的な損傷に限らず、心理的な抵抗感から事実上使用不可となるなど、その物の本来の効用を失わせることも含むとされます。
 そのため、物理的な損傷に至っていないため未遂にとどまり、器物損壊罪は未遂犯の処罰規定がないから処罰されない、と単純に考えることはできません。

 本件で、除草剤の散布により樹木の枯死や変色などの物理的な損傷に至っていないとしても、除草剤の影響で生育に何らかの害が生じ得ることによる取引価値の低下など、樹木の本来の効用を失わせ「損壊」したとして、器物損壊罪の成立が認められる可能性もあると考えられます。

器物損壊で刑事事件化を阻止するための弁護活動

 器物損壊罪は、被害者の告訴(犯罪事実を申告し、加害者の処罰を求める意思表示)がなければ起訴されない親告罪であることから、被害届が出される前に被害者と示談が成立し、示談書の中に宥恕条項(加害者の処罰を求めない旨の条項)を入れてもらえれば、警察の介入による刑事事件化を防げる可能性が高いと考えられます。

 また、示談書の中に宥恕条項まで入れてもらうことができなかったとしても、器物損壊罪の法定刑は比較的軽微であるため、被害弁償が済んでいることが示談書で確認できれば、不起訴処分となる可能性を高めることが期待できます。

 そのため、器物損壊罪が成立し得る行為を行った場合、被害者との示談の成立が特に重要と言えますが、当事者同士では、被害者の被害感情などから、示談交渉がうまくいかない可能性が考えられます。
 また、法律の専門家ではない当事者同士による示談の場合、内容に不備があることで、一旦示談が成立したにも関わらず、後日紛争が蒸し返される恐れがでてきます。

 そのため、被害者との示談交渉は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。刑事事件における示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することで、適切な示談金を算定した上で、十分な内容の示談が成立する可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、被害届が出される前に被害者と示談を成立させることで、刑事事件化を阻止した実績が多数あります。
 自身やご家族が、器物損壊罪が成立し得る行為を行ってしまい、刑事事件化を防ぎたいとお考えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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