Archive for the ‘暴力事件’ Category
少年事件と少年院送致
少年事件と少年院送致
福岡県春日市内の高校に通うAさん(16歳)は、お金の貸し借りの件で友人Vさんと口論となり、Vさんの顔や腹部を殴る蹴るなどの暴行を加え、Vさんに全治2か月の大怪我を負わせてしまいました。Aさんは、学校の通報により駆け付けた福岡県春日警察署の警察官に傷害罪で逮捕されてしまいました。逮捕を通知を受けたAさんの両親は、今後、息子が少年院へ送致されるのではないかと不安になり、弁護士に刑事弁護を依頼しました。
(フィクションです。)
~ 傷害罪 ~
傷害罪は刑法204条に規定されています。
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪は、当初、怪我させるつもりはあった場合はもちろん、なかった場合でも、行為と結果(傷害)との間に因果関係が認められる場合には成立します。また、傷害の結果、人を死亡させた場合は傷害致死罪に問われることになります。
* 傷害致死罪は原則逆送事件 *
故意の犯罪行為により被害者を死亡させ、行為時に16歳以上だった少年にかかる事件については、原則、家庭裁判所にある事件を検察官の元へ送致しなければなりません。これを原則逆送事件と呼んでおり、傷害致死罪もこの事件に含まれます。検察官の元へ送致されると、成人と同様の刑事手続で進められていきます。裁判となれば、一般人が裁判に参加する裁判員裁判を受けなければなりません。
~ 少年院送致とは ~
少年院送致は、家庭裁判所の少年審判において下される保護処分(少年院送致の他に、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致があります)の一つです。少年審判では、少年をどの種類の少年院に送致するかまで決定されます(少年審判規則37条1項)。少年院の種類は以下のとおりです(少年院法4条1項1号から3号)。
第1種(1号)
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く。)
第2種(2号)
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
第3種(3号)
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
* 少年院の収容期間は? *
少年院の収容期間は、大きく短期処遇と長期処遇にわけられます。
短期処遇は、さらに特修短期処遇と一般短期処遇にわけられ、「特修短期処遇」の場合、「4か月」以内、「一般短期処遇」の場合、「6か月」以内です。長期処遇については10か月から2年です。
さきほど、少年審判では家庭裁判所から処遇に関する勧告が出されることがあります(少年審判規則38条2項)。ここで、家庭裁判所が特集短期処遇、一般短期処遇との勧告を出せば、少年院はこれに従うべきとされています(従う勧告)。また、長期処遇については、「比較的短期」の処遇勧告が出た場合、収容期間は10か月以内とされ、少年院はその勧告を尊重しなければならないとされています(尊重勧告)。しかし、長期処遇について何ら勧告がない場合は、少年院が1年から2年の範囲内で決めています。
~ 傷害事件における弁護活動(少年院送致回避に向けて) ~
相手に怪我を負わせている場合は、相手が肉体的にも精神的にも損失を被っています。ですから、一刻も早く被害弁償をして、示談を締結することが先決です。示談を成立させることができれば、反省の意を示す証拠ともなり得、少年院送致回避に向けた証拠としても使えます。
傷害事件の場合には,少年に強い暴力性が認められるケースが多く,自分の感情をコントロールすることができないなどの欠点が見受けられることも多いものです。そのため,弁護士が少年と同じ目線に立って,感情のコントロールの仕方を教えていくことが重要となります。その上で、少年の生活環境、家庭環境、交友関係などを見直し、更生のための環境を整えていく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
(福岡県春日警察署までの初回接見費用:36,600円)

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刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
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バイトテロと犯罪
バイトテロと犯罪
福岡市博多区のすし店でアルバイトをしているAさんは,廃棄済みの魚を拾って再度調理する動画をSNSを通じて公開しました。そうしたところ、この動画を見た店長が福岡県博多警察署に被害届を提出。Aさんは、信用毀損罪、偽計業務妨害罪の被疑者として博多警察署から呼び出しを受けました。大変なことをしてしまったと不安になったAさんは、弁護士に今後の対応を相談しました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ バイトテロとは ~
Aさんの行為は「バイトテロ」と呼ばれています。「バイトテロ」とは、主にアルバイトなどの非正規雇用で雇われている飲食店や小売店の(正社員も含めた)従業員が、勤務先の商品(特に食品)や什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなどで撮影し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿して炎上させる現象を指す日本の造語です。
これまでには、他に
・牛丼店のアルバイト店員が、メニューに存在しない超大盛りの豚丼を盛りつけ「テラ豚丼」として投稿。
・コンビニの店員がアイスのケースに入り込んで写真を撮影し、フェイスブックに投稿。
・定食店で、マスクをした男性の店員が下半身丸出しにしてお盆を股間にあてる動画を投稿。
・コンビニの店員が、売り物のおでん鍋から直接しらたきを食べて踊る動画をツイッターに投稿。
などの「バイトテロ」がありました。
Aさんとすれば面白半分で行った行為なのでしょうが、最悪の場合、刑事責任、民事責任を問われる場合も出てきます。そこで、今回は、どんな刑事責任を問われ得るのか解説したいと思います。
~ バイトテロは信用毀損罪、業務妨害罪に当たり得る ~
Aさんもしかり、バイトテロを行えば、刑法上の信用棄損罪、偽計業務妨害罪に当たり得ます。両罪は刑法233条に規定されています。
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
懲役刑が規定されているということは、
刑務所に服役する可能性もある
ということを十分に自覚しましょう。
~ 「信用を毀損」、「業務を妨害」とは ~
まず、「信用を毀損し」の「信用」とは、人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼のみならず、
販売される商品の社会的な信頼も含まれる
とされています。「毀損」とは、人の信用を低下するおそれのある状態をつくることをいい、
現実に信用が低下したことを要しない
と解されています。
次に、「業務を妨害」とは、業務の執行自体を妨害する場合に限らず、ひろく業務の経営を阻害する一切の行為をいうとされており、通説・判例は、
業務妨害の結果を発生するおそれのある行為をすれば足り、現実にその結果の発生したことを要しない
としています(大判昭和11年5月7日)。
信用棄損罪も業務妨害罪も、
企業の損失・損害如何に関係なく、バイトテロ行為をしただけで成立する可能性がある
ということは十分自覚するべきでしょう。
~ 刑事責任の他にも民事責任 ~
刑事責任は刑罰を与えられ、与えられた刑に服さなければならない責任のことです。一方、バイトテロにおける民事責任とは、企業が被った損失・損害に対する損害賠償責任です。刑事責任を負ったからといって民事責任を免れるわけではありません。バイトテロによって
・売り上げが減った
・機材等を買い替えた
・株価が暴落した
などという場合は損失・損害が認められ、損害賠償責任を負う必要が出てくるものと考えます
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、信用棄損罪、偽計業務妨害罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。

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公妨,公文書毀棄と釈放
公妨,公文書毀棄と釈放
Aさんは自動車をを運転中,非常点滅表示灯が点滅していなかったことから,パトカーを運転する福岡県久留米警察署の警察官に停止を求められました。Aさんは道路わきに車を止め,車から降りて警察官の職務質問を受けました。Aさんは,素直に罪を認め,はやく手続を終わらせたいと考えていましたが,警察官の態度があまりにも横柄すぎると感じたことから,警察官Aから交付を受けた「交通反則切符」をその場で破り捨てました。そこで,Aさんは公務執行妨害罪,公文書毀棄罪で逮捕されてしまいました。Aさんは,妻と二人で痴ほう症の両親の面倒を看ています。そこで,逮捕の連絡を受けたAさんの妻は,一刻も早く釈放されることを願って刑事事件に強い弁護士に弁護活動を依頼しました。
(フィクションです。)
~ 逮捕罪名について ~
まずは,Aさんの逮捕罪名である公務執行妨害罪,公文書毀棄罪から解説したいと思います。
= 公務執行妨害罪 =
本罪は,刑法95条1項に規定されています。
刑法95条1項
公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
* 破っただけで公妨? *
この記事をご覧になった方は,
・警察かに暴行,脅迫を加えてないのになぜ逮捕?
・切符破っただけで公妨?
などと疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか?実は,公務執行妨害罪の「暴行」とは,
公務員の身体に対して直接加えられる有形力の行使(直接暴行)に限られず,公務員に対して向けられてはいるものの,直接公務員の身体に対して加えられたものではない有形力の行使(間接暴行)をも含む
とされています。これは公務執行妨害罪が公務の円滑な遂行を保護することを目的としているからと説明されています。判例では,
・覚せい剤液注射液入りアンプルを足で踏み付け破壊する行為
・収税官吏が差し押さえた密造酒入りのカメを破壊する行為
なども「暴行」に当たるとされています。
= 公文書毀棄罪 =
本罪は,刑法258条に規定されています。
刑法258条
公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は,3月以上7年以下の懲役に処する。
「公務所」とは,官公庁その他公務員が職務を行う所をいいます。「公務所の用に供する文書(公用文書)」とは,公務所で使用されるための文書をいいます。過去の裁判例(東京高裁昭和41年11月11日)では,交通切符をも「公用文書」に当たると判断されています。なお,犯人が署名する前など,文書として未完成のものであっても「公用文書」であることに変わりはないとされています。「毀棄」とは,共用文書等の本来の効用を害する一切の行為をいうとされています。破り捨てる行為も「毀棄」に当たるでしょう。
~ 本件と釈放 ~
本件の場合,犯罪を立証し得る直接証拠は犯行を現認した警察官Aの供述です。しかし,Aさんが釈放された場合,わざわざ警察署まで出向いて警察官Aを威迫し,自分に有利に供述を変遷させるなどの罪証隠滅行為に出ることは通常考え難いです。そもそも,Aさんとしては,警察官Aの特定すらできないかもしれません。よって,本件の場合,罪証隠滅行為の現実的可能性は他の犯罪に比べ低いです。ですから,本罪では逃亡のおそれさえなくしてしまえば釈放される可能性はグンと高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,公務執行妨害罪,公文書毀棄罪などをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。ご家族の一日でも早い釈放をお望みの方は,土日・祝日,24時間受付中の弊所の初回接見サービスのご利用をご検討ください。

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殺人事件と取調べ
殺人事件と取調べ
福岡県京都郡苅田町に住むAさんは,自宅内で,妻であるVさんの腕や顔を包丁で切り付けた上,その腹部を刺し,Vさんを死亡させた殺人罪で福岡県行橋警察署に逮捕されました。勾留後,接見した弁護士は,Aさんの様子を見て違法・不当な取調べが行われているのではないかと,取調べに対して強い懸念を抱いています。
(フィクションです)
~ 取調べに関する最近の流れ ~
報道によれば,政府は,4月16日,一部の事件の全過程について,取調べの可視化の義務化を6月1日から始めることを閣議決定したとのことです。これによって,今までとどう変わるのか,何が変わるのか,についてご紹介していきたいと思います。
* 取調べの可視化とは *
取調べの可視化とは,弁護人の取調べへの立会権を認めることや,取調べ状況をすべて録音・録画することをいいます。現時点(平成31年4月22日)では,弁護人の取調べへの立会権や取調べの録音・録画を許容する明文の規定はありません。しかし,録音・録画については,以下でみるとおり,捜査機関の内部の通達などで,一定の範囲の事件に限って実施されています。
* なぜ,取調べの可視化が必要なの? *
密室で行われていた取調べが第三者によって検証できるようにオープンになります。その結果,取調官の違法・不当な取調べに対する抑止が期待できます。これに伴い,取調べで認められている各種権利(黙秘権,増減変更申立権,署名・押印拒否権)も適切に行使できることが期待できます。また,被疑者・被告人が任意に供述(話)をしたかなどを事後的に検証しやすくなります。
~ 現在の対象事件 ~
現在,捜査機関(警察,検察)では,どんな事件(対象事件)を録音・録画の対象としているのでしょうか?
= 警察における対象事件 =
1 基本的に実施する事件
① 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件(殺人罪,強盗殺人罪,強盗致死罪,現住建造物放火罪 など)
② 短期1年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件(危険運転致死罪など)
2 試行対象事件
③ 知的障害,発達障害,精神障害等の被疑者にかかる事件
※①,②は裁判員裁判対象事件とも呼ばれます
= 検察における対象事件 =
1 基本的に実施する事件
① 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
② 短期1年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件
③ 検察官独自捜査事件
④ 知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件
2 試行対象事件
⑤ 公判請求が見込まれる身柄事件であって,事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者の供述が立証上重要であるもの,証拠関係や供述状況等に照らし被疑者の取調べ増強をめぐって争いが生じる可能性があるものなど,被疑者の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件
⑥ 公判請求が見込まれる身柄事件であって,被害者・参考人の供述が立証の中核となることが見込まれるなどの個々の事情により、被害者・参考人の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件
※⑥については参考人も対象とされていることが特徴です。
~ 取調べに関する改正法の内容 ~
改正法における対象事件は
① 裁判員裁判対象事件
② 検察官独自捜査事件
です。まず,法律(刑事訴訟法)で取調べの録音・録画が明文化されたことが特徴です。なお,これまでの運用より,対象事件の範囲が狭くなったと思いますが,対象外の事件については,引き続き通達などで運用されていくものと思われます。また,録音・録画が明文化されたといっても,割合としては全事件の数%程度だと思います。
弁護人としては,引き続き,対象事件以外の事件についても録音・録画を実施するよう捜査機関に申入れを行っていく必要があります。
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児童虐待と刑事罰
児童虐待と刑事罰
福岡県小郡市に住むAさんは,旦那,Xちゃん(2歳)と二人暮らしでした。旦那は残業が続き,連日帰宅が遅かったことから,家事,育児のほとんどはAさんが担っていました。ある日,AさんはXちゃんにご飯を食べさせようとしたところ,XちゃんがAさんの手を払いのけ,ご飯やおかずを床一面に飛散させました。Aさんはこれに腹が立ち,Xちゃんの左頬を右手で一回叩きました。その日以降,Aさんは,Xちゃんが言うことをきかないたびに暴力を振るい続けるようになってしまいました。そうしたところ,旦那がXちゃんに着替えをさせている最中,Xちゃんの背中に大きな痣ができているのを見つけました。旦那は,Aさんに内緒で児童相談所に対応を相談しました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
児童虐待による悲惨な事件が後を絶ちません。あとでご紹介するように,児童虐待は立派な犯罪です。しかし,児童虐待をする側にも何らかの原因があるはず。理化学研究所の調査によれば,
児童虐待を行って有罪判決を受けた親の約7割が,過去に自らも児童虐待を経験していた
ことが判明したとのニュースがピックアップされました。刑事罰のみでは児童虐待はなくならないようです。児童虐待の原因を追究し,社会で支えていく仕組みが必要といえそうです。
~ 児童虐待とは ~
ところで,児童虐待といいますが,「児童虐待罪」という罪やその罪を規定した法律はありません。ただし,児童虐待については,児童虐待の防止等に関する法律という法律(2条)(以下,児童虐待防止法)に明確に定義されています。それによると,児童虐待とは
保護者(略)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ)について次に掲げる行為をいう
とされています。
そして,「次に掲げる行為」とは,以下の行為です。
1号 児童の身体に外傷が生じ,又は生じるおそれがある暴行を加えること(身体的虐待)
2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
3号 児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置,保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)
4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応,児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(略)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)
以上からすると,Aさんの行為は1号の児童虐待に当たりそうです。しかし,だからといって児童虐待防止法で処罰されるわけではありません。
~ 児童虐待と刑事罰 ~
児童虐待に当たる行為は,刑法などに規定される罪によって処罰され得ることになります。上記各号別にみていきましょう。
= 1号について =
暴行罪,傷害罪で処罰される可能性があります。暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
* 死亡させた場合は? *
傷害させ,児童(人)を死亡させた場合は傷害致死罪で処罰される可能性があります。同罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。
= 2号について =
強制わいせつ罪,強制性交等罪,監護者わいせつ罪,監護者性交等罪で処罰される可能性があります。強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」,強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」,監護者わいせつ罪は強制わいせつ罪と同様,監護者性交等罪は強制性交等罪と同様です。
* 傷害,死亡させた場合は? *
児童(人)を傷害,死亡させた場合,強制わいせつ致死傷罪,監護者わいせつ致死傷罪として「無期又は3年以上の懲役」,あるいは強制性交等致死傷罪,監護者性交等致死傷罪として「無期又は6年以上の懲役」に処せられる可能性があります。
= 3号について =
保護責任者遺棄罪で処罰される可能性があります。法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
* 傷害,死亡させた場合は? *
児童(人)を傷害,死亡させた場合は保護責任者遺棄致傷罪,保護責任者遺棄致死罪で処罰される可能性があります。前者の法定刑は「3月以上15年以下の懲役」,後者の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。
= 4号について =
行き過ぎた暴言は暴行罪,それによって精神的な障害を患った場合などは傷害罪で処罰される可能性もあります。
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(福岡県小郡警察署までの初回接見費用:39,200円)

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DV法と保護命令②
DV法と保護命令②
~ 先日の続き ~
北九州市小倉北区に住むAさんは,妻Vさんと口論となり,Vさんの顔面や腹部等を足蹴にするなどの暴行を加え,Vさんに加療約1か月間を要する傷害を負わせた傷害罪で福岡県小倉北警察署に逮捕されてしまいました。その後,Aさんは勾留期間中に,VさんからDV法に基づき保護命令の申し立てをされました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
先日の「DV法と保護命令①」のコラムでは,Aさんから暴力を加えられた妻Vさんが申し立てた「保護命令」の解説をいたしました。では,申し立てられた側のAさんは,それに対し,不服を申し立てることはできないのでしょうか?また,Aさんが保護命令に違反した場合はどんな刑罰が科されるのでしょうか?
~ 保護命令に対する不服申し立て ~
保護命令に対して不服がある場合は,高等裁判所に対して不服申し立て(即時抗告)をすることができます。即時抗告は決定があった日から1週間以内に,抗告状という書面を原裁判所(保護命令を出した裁判所)に提出しなければなりません。ただし,即時抗告をしただけでは保護命令の効力が失われるわけではありませんから注意が必要です。
~ 保護命令に違反した場合の刑罰 ~
保護命令に違反した場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に処せられます。
ここで保護命令とは,
①接近禁止命令
②退去,はいかい禁止命令
③電話等禁止命令
④子への接近禁止命令
⑤親族等への接近禁止命令
のことをいいます(ただし,③から⑤については,①の接近禁止命令が発令されている場合のみ発令されます)。
* ①接近禁止命令 *
接近禁止命令は,命令の効力が生じた日から起算して6か月間,被害者(※)の住居その他の場所において被害者の身辺につきまとい,又は被害者の住居,勤務先その他のその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
※ 被害者
DV法では,被害者を「配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた者」と定義しています。
* ②退去命令 *
②退去命令は,命令の効力が生じた日から2か月間,被害者と生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
* ③電話等禁止命令 *
③電話等禁止命令は,命令の効力が生じた日から6か月間,電話などをかけてはならない旨の命令を指します。電話の他にしてはならないことの代表として,面会要求,著しく粗野又は乱暴な言動,メールの送信などがあります。
* ④子への接近禁止命令 *
④子への接近禁止命令は,命令の効力が生じた日から6か月間,当該子の住居,就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい,又は当該子の住居,就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
当該命令の発布には,次の要件が必要となります。
・被害者が子と同居していること
・配偶者が子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があること
・被害者がその同居している子に関しては配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めること
* ⑤親族等への接近禁止命令 *
⑤親族等への接近禁止命令は,命令の効力が生じた日から6か月間,当該親族等の住居,その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい,又は当該親族等の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令を指します。
当該命令の発布には,次の要件が必要となります。
・配偶者が被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があること
・被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めること
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DV法と保護命令①
DV法と保護命令①
北九州市小倉北区に住むAさんは,妻Vさんと口論となり,Vさんの顔面や腹部等を足蹴にするなどの暴行を加え,Vさんに加療約1か月間を要する傷害を負わせた傷害罪で福岡県小倉北警察署に逮捕されてしまいました。その後,Aさんは勾留期間中に,VさんからDV法に基づき保護命令の申し立てをされました。
(フィクションです)
~ DV法とは ~
DV法とは,正式名称,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律といいます。
DV法では,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的として,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等に関する規定を設けており,平成26年1月3日から施行されています。
夫婦間での暴力・傷害事件では,相手方から保護命令というものを申し立てられることがあります。そこで,今回は,DV法に基づく保護命令に関しご紹介いたします。
~ 保護命令とは ~
DV法では「保護命令」に関する規定を設けています。
保護命令とは,相手方(Aさん)からの申立人(Vさん)に対する身体への暴力を防ぐため,裁判所が相手方に対し,申立人に近寄らないよう命じる決定のことをいいます。
= どんな決定が出るの? =
まずは,①接近禁止命令,②退去命令を受けることが考えられます。
①接近禁止命令とは,6か月間,申立人の身辺につきまとったり,申立人の住居(同居する住居は除く。)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令です。②退去命令とは,申立人と相手方とが同居している場合で,申立人が同居する住居から引越しをする準備等のために,相手方に対して,2か月間家から出ていくことを命じ,かつ同期間その家の付近をうろつくことを禁止する命令です。
= その他の命令は? =
その他の命令として③子へ接近禁止命令,④親族等への接近禁止命令,⑤電話等禁止命令があります。③から⑤の命令は,必要な場面に応じて被害者本人への接近禁止命令の実効性を確保する付随的な制度ですから,単独で発令されることはなく,申立人に対する接近禁止命令が同時に出る場合か,既に出ている場合のみ発令されます。
③子への接近禁止命令とは,子を幼稚園から連れ去られるなど子に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに,6か月間,申立人と同居している子の身辺につきまとったり,住居や学校等その通常いる場所の付近をうろつくことを禁止する命令です。
④親族等への接近禁止命令とは,相手方が申立人の実家など密接な関係にある親族等の住居に押し掛けて暴れるなどその親族等に関して申立人が相手方に会わざるを得なくなる状態を防ぐため必要があると認められるときに,6か月間,その親族等の身辺につきまとったり,住居(その親族等が相手方と同居する住居は除く。)や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令です。
⑤電話等禁止命令とは,6か月間,相手方から申立人に対する面会の要求,深夜の電話やFAX送信,メール送信など一定の迷惑行為を禁止する命令です。
= 誰が申立てできるのか? =
被害者です。ここでいう「被害者」とは,配偶者(Aさん)からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫)を受けた者のことをいいます。
= どのような場合に申立される(できる)のか? =
基本的には申立て現在において婚姻関係にあることが必要ですが,離婚をし,婚姻関係が解消された場合でも申立てされることがあります。
* 婚姻関係にある場合 *
身体への暴力(性的暴力・精神的暴力はこれに含まれません。)又は生命・身体に対する脅迫を受けた申立人が,今後,身体に対する暴力を受けて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき。
* 婚姻関係が解消されている場合 *
暴力・脅迫を受けた申立人が,離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き身体に対する暴力を受けて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき。つまり,この場合,以前に受けた暴力・脅迫を基に保護命令を申し立てられるのであって,婚姻関係解消後の暴力・脅迫を基に保護命令を申し立てられることはありません。
次回は,DV法に規定されている罪などについてご紹介いたします。
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脅迫罪と強要罪
脅迫罪と強要罪
Aさんは,自動車を運転して久留米市内の道路を走行していたところ,後方から走行してきたVさん運転の自動車に煽り運転を受けました。
これに腹を立てたAさんは,信号待ちの際に車から降り,Vさんの車の窓を叩いて降りるよう要求しました。そして,Aさんは,Vさんが車から降りたため,Vさんに「なに煽り運転してんだよ!」「オレには,バックに〇〇組(暴力団組員)が付いているからな」「車のナンバーも写メしたし,命が欲しいならでここで土下座しろ」などと言いました。Vさんは,「煽り運転はしていない」「車間距離が短かったのであれば謝罪する」などと言いましたが,Aさんの怒りはいっこうに収まることはありませんでした。そうしたところ,後続車が通報したのか,Aさんは,現場に駆け付けた福岡県久留米警察署の警察官から,脅迫罪,強要罪で事情を聴かれることとなりました。
(フィクションです。)
~ 脅迫罪 ~
脅迫罪は刑法222条に規定されています。
1項 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。
= 害を加える旨の告知(害悪の告知) =
害悪の告知は,一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならないとされています。
人を畏怖させるに足りるものであったか否かは,害悪の告知の内容を四囲の状況に照らして判断されます。
この点,Aさんの「〇〇組(暴力団組員)が付いているからな」,「車のナンバーも写メしたし,命が欲しいなら~」という行為は,Aさん,もしくは暴力団組員がVさん,もしくはVさんの車に何らかの危害を加える旨を想起させる言葉であり,生命,身体,財産に対する害悪の告知といえそうです。
* 脅迫行為に関する特別法 *
「暴力行為等処罰に関する法律」という法律に,脅迫行為に関する特別規定が設けられています。すなわち,その1条には,「団体」若しくは「多衆」の威力を示すなどして刑法222条の罪などを犯した場合は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処する旨の規定が設けられているのです。本件では,「〇〇組」が「団体」若しくは「多衆」に当たるかどうかがポイントとなるでしょう。
~ 強要罪 ~
強要罪は刑法223条に規定されています。
1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害 した者は,3年以下の懲役に処する。
強要罪でも「害悪の告知」が必要とされています。ただし,強要罪は,結果として相手方に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害したことが必要ですから,強要罪の「害悪の告知」はその程度のものであることが必要とされています。
* 土下座の要求は強要罪に当たるのか? *
まず,単に土下座を要求しただけでは強要罪には当たりません(「人に義務のないことを行わせ」たとはいえません)。強要罪の成立には,あくまで「暴行」「脅迫」が必要だからです。また,行為者の言い分が正当な場合など「ここで土下座を要求されても仕方がない」といえる状況の場合も同様です。結局は,社会通念に照らし,ケースバイケースで判断されるものと思われます。本件の場合,道路上で土下座を要求している点を重く見られて(他の交通の妨げになるため),強要罪に当たると判断される可能性があります。
~ 本件の行方 ~
Aさんの土下座要求行為が強要罪に当たると判断されればAさんは強要罪に問われることになります。その際,脅迫罪は強要罪に吸収され,別個に脅迫罪を問われることはありません。強要罪に当たらないとされた場合は,刑法もしくは暴力行為等処罰に関する法律の脅迫罪に問われます。
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暴行罪と微罪処分
暴行罪と微罪処分
福岡県直方市に住むのAさんは会社の送別会の席で,Vさんから陰口を言われたことに憤慨し,Vさんを店の外に呼び出し,いきなり左拳でVさんの左頬を1回殴りました。ちょうどそのとき,二人のことが心配になって後をついてきたAさんとVさんの上司が二人の間に入り,事はいったん収まりました。ところが,Vさんが福岡県直方警察署に電話し,被害届を提出したいなどと言ったため,Aさんは警察官から事情を聴かれることになりました。その数日後,事件のことを振り返り反省したAさんは,Vさんと示談したいと考えています。Aさん微罪処分獲得を目指し,示談交渉を弁護士に依頼しました。
(フィクションです)
~ 傷害未遂罪って存在するの? ~
人の物を盗もうとして盗めなかったら窃盗未遂罪,人を殺すつもりでナイフで刺そうとしたところ失敗して人を殺すことができなかった場合は殺人未遂罪となります。では,人に怪我させるつもりで人に暴行を加えたところ怪我させることができなかった場合はどうでしょうか?
この点,未遂罪を処罰するには,その罪について「未遂罪を処罰する」旨の規定を設けられていなければならないところ(刑法44条),傷害罪には「未遂罪を処罰する」旨の規定が設けられていません。したがって,傷害未遂罪という罪は存在しません。では,Aさんは無罪放免かというとそうではありません。
実は,暴行罪を規定する刑法208条に,傷害未遂罪的な文言が取り込まれています。
刑法208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった」という文言が,まさに傷害未遂罪的な文言です。つまり,人に怪我させるつもりで人に暴行を加えたところ怪我させることができなかった場合は刑法208条により「暴行罪」に問われることになります。
~ 微罪処分 ~
微罪処分とは,警察が事件を検察庁を送致せず,被疑者への厳重注意,訓戒等で終了させる手続きのことをいいます。微罪処分と聞けば,万引きなどの窃盗罪
を最初に思い浮かべる方も多いかもしれませんが,実は,暴行罪も対象事件に含まれていることが多いです。どんな罪を,どんな要件に従って微罪処分とするかは各都道府県の検察庁の検事正という方が決め,それを各警察本部を通じて警察官に指示しています。暴行罪については,概ね,
・示談が成立していること
・被害者が処罰を望んでいないこと
・犯行態様が軽微であること(武器を使用していないことなど)
・粗暴歴(前科,前歴)がないこと
が要件として考えられます。
最終的には,警察官が,検察官から指示さた要件を満たしているかどうかを確認し微罪処分を下します。「処分」と言われていますが,何らかの刑罰がくだるというわけではありません。警察署に呼び出され,警察官から注意,訓戒を受け,二度と再犯をしない旨の誓約書を書いて終わり,というケースが多いです。事件は検察庁へ送致されませんから,検察庁から呼び出しを受けたり,刑事処分(起訴,不起訴)を受けたり,裁判を受ける必要がなくなります。裁判を受ける必要がないということは,刑罰を科されることはありまえせんし,前科が付くこともありません。
~ 微罪処分を受けるには? ~
上記要件のところでご紹介したように,微罪処分を受けるには,
被害者と示談を成立させること
が重要だということがお分かりいただけるかと思います。ただし,暴行事件の場合,当事者同士で示談交渉をすることは,感情の縺れなどから決裂する可能性が高いですから避けた方が無難です。これはたとえ顔見知り,同僚等関係が近い場合であっても同様です。最初は,「知っている人だからこのくらいで示談してくれるだろう」と軽い気持ちで交渉したつもりが,その過程で思わぬ方向へと話が縺れ,結局示談を締結できなかったということがあります。また,微罪処分の獲得を目指すには,警察官が事件を検察庁へ送致する前に示談を締結させ,その結果を警察へ報告しなければなりません。つまり,警察の捜査状況も確認しながら示談交渉を進めていく必要があるのです。
このように,対被害者の面でも,対警察の面でも,ご自身一人で示談交渉を進めていくことには限界がありますから,示談交渉は法律の専門家である弁護士に任せた方が安心,安全です。
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玄関ドアに落書きで建造物損壊罪
玄関ドアに落書きで建造物損壊罪
福岡県糸島市に住むAさんは,飲み会の帰り,酒に酔った勢いで,同市内に住むVさん方の玄関ドアに,持っていたラッカースプレーを用いて,赤色及び黒色のペンキを吹き付けて,「××××」,「△△△△」などと大書きしました。Vさんによると,玄関ドアの取り換え費用に約15万円かかったとのことです。Aさんは,後日,福岡県糸島警察署から建造物損壊罪で呼び出しを受けました。今後のことが不安になったAさんは,弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ 建造物損壊罪 ~
建造物損壊罪は刑法260条に規定されています。
刑法260条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は,5年以下の懲役に処する。
以下,ご説明いたします。
= 他人の建造物 =
「他人の」とは,他人所有のという意味です。「建造物」とは,屋蓋を有し,障壁又は柱材で支持されて土地に定着し,その内部に人が出入りできる構造を持つ家屋その他これに類する工作物をいうとされています。
* 「建造物」と「器物」の区別 *
「建造物」と器物損壊罪(刑法261条)の器物(規定上は「他人の物」)との区別は,分離に毀損を要するかによって決定されるとするのが通説・判例です。壁板などは,これを毀棄しなければ取り外すことはできないことから「建造物」です。他方,容易に取り外すことができる雨戸,畳,建具などは「建造物」ではなく,器物損壊罪の「他人の物」となります。
では,本件の玄関ドアはどうでしょうか?
確かに,玄関ドアは取り外しが可能ですから「建造物」ではなく器物損壊罪の「他人の物」に当たるような気がします。しかし,判例(平成19年3月20日
)は,玄関ドアの外界との遮断,防犯,防風,防音という玄関ドアの機能に鑑みて,玄関ドアを「建造物」であると判示しています。このように,近年では,「建造物」と「器物」との区別につき,単に分離に毀損を要するか,取り外しが可能か,といった点のみならず,その物の機能的側面も考慮して建造物と一体化しているかどうかという点も基準として加えるようになってきています。
= 損壊 =
「損壊」とは,建造物・艦船の実質を毀損すること,又はその他の方法で,それらの使用価値を滅却し,あるいは減損することをいいます。物理的に形態を変更又は滅却させる場合だけでなく,事実上その本来の用法・効用に従い使用することができない状態に至らせる場合も含まれます。最高裁は,落書き(平成18年1月18日),ビラ張り行為(昭和41年6月10日)も「損壊」に当たると判示しています。
~ 器物損壊罪との違い ~
上記で見たように,まず,「建造物」と「その他の物」の意味内容に違いがあります。その他,次の違いに注意が必要です。
= 罰則 =
器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」であるのに対し,建造物損壊罪は「5年以下の懲役」と罰金刑以下の刑の記載がありません。つまり,起訴されてしまえば正式裁判を受けなければなりませんし,逮捕・勾留されれば身柄拘束期間が長引くことも予想されます(他方,略式裁判によって罰金刑の命令を受けた場合,命令の告知と同時に釈放される)。
= 親告罪,非親告罪 =
器物損壊罪は,起訴するにあたり,告訴を必要とする親告罪です。他方,建造物損壊罪は非親告罪です。つまり,建造物損壊罪の場合,被害届や告発状によっても捜査を受けたり,起訴されたりする可能性があります。
~ いたずらでも罪に! ~
街中を歩いていると,壁などにスプレーで落書きされてあるのを見かけます。また,テレビやネットでは,学校の壁や重要な文化財などに落書きして逮捕されたというニュースを見たり聞いたりします。ちょっとしたいらずか感覚が重大事件に発展しかねませんから十分注意する必要がります。
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