Archive for the ‘暴力事件’ Category
元風俗嬢に対する名誉棄損罪
元風俗嬢に対する名誉棄損罪
名誉棄損罪について、あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県博多区に住むAさんは、中州にある個室ヘルス店の常連客でした。Aさんは、長年指名し続けていたVさんと仲良くなり、Vさんから個人名などの個人情報を教えてもらったほか、店外で食事するなどしていました。ところが、後日、AさんはVさんから、「一身上の都合でヘルス店で働けなくなったこと」、「Aさんとデートすることはお断りすること」を告げられました。
Aさんははじめ、何度も何度もVさんに今までどおり交際(デート)を続けてくれないか懇願しましたが、Vさんの態度は頑なでした。そこで、Aさんは、SNS上で、「●●に住むVさんは●●の風俗店で働いていた」などという書き込みをしました。そうしたところ、Aさんは、Vさんの代理人弁護士から、「書き込みを削除すること」「慰謝料として50万円支払うこと」を言われ、これができなければ「●●警察署に名誉棄損罪で告訴する」と告げられました。そこで、Aさんは風俗トラブルに詳しい弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
近年は、ツイッター、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSで誰でも簡単に、しかも匿名でも書き込みできる時代です。ですから、自分の投稿が名誉棄損罪にあたり警察沙汰になるなど思わぬ事態に発展する可能性も考えられます。そこで今回は名誉棄損罪について詳しく見ていきましょう。
~ 名誉棄損罪とは ~
名誉棄損とは、文字通り、他人の名誉を傷つけることをいいます。名誉棄損を行うと刑事上の責任と民事上の責任に問われる可能性があります。
刑事上の名誉棄損罪については刑法230条に規定されています。
刑法230条
1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘時することによってした場合でなければ、罰しない。
刑法232条
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
「名誉」とは、社会の人に対する評価又は価値と解されています。
「公然」とは、不特定又は多数人が認識し得る状態と解されています。そして、不特定又は多数人が認識し得る状態は、不特定又は多数人の視聴に達し得べき状態であれば足り、現実に、人々が覚知したことを要しないとされています。
「事実を摘示する」とは、社会の人に対する評価を低下させるおそれのある具体的事実を指摘、表示することをいいます。
これを本件についてみると、Aさんが「●●に住むVさんは●●の風俗店で働いていた」などと書き込む行為は「事実を摘示する」に当たります。また、ご存知のように、SNSに掲示された内容は、インターネットを通じて誰でもいつでも閲覧することが可能ですから、AさんがSNSに書き込んだ行為は「公然」と「事実を摘示した」ことに当たるでしょう。そして、風俗嬢として働いている方は、一般に、自己の職業を知られたくないと考えられているでしょうから、Aさんのこうした行為は、Vさんの「名誉」を毀損する行為にも繋がりかねません。
* 侮辱罪(刑法231条)との違い *
侮辱罪は刑法231条に規定されています。
刑法231条
事実を摘示なくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
侮辱罪との違いは「事実を摘示したかどうか」です。
「●●の風俗嬢は馬鹿だ」などと意見、憶測を摘示したに過ぎない場合は侮辱罪です。
~ 名誉棄損罪、侮辱罪は親告罪 ~
告訴がなければ検察が公訴を提起(起訴)できない犯罪を親告罪といいます。この点、名誉棄損罪、侮辱罪は親告罪です。
親告罪において、被害者側が捜査機関に告訴状を提出しなければ起訴されることは絶対にありませんし、逮捕されることもありません。
そのため、本件のように「告訴するよ」と言われている場合は、何よりもまず被害者側の告訴状提出を阻む必要があります。そのためには、何よりもまず被害者側と示談交渉を進め、示談を成立させる必要があるでしょう。ただし、被害者側に弁護士が付いている場合は、相手の思い通りに話を進められる可能がありますから、弁護士を付けることも検討しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
犯罪の実現過程②~殺人罪の障害未遂と中止未遂~
犯罪の実現過程②~殺人罪の障害未遂と中止未遂~
犯罪の実現過程について、あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aは長年、Vに対する恨みを抱いており、隙あらば殺そうと考えていました。そして、Aは、知人からVがとある地域のアパートに一人暮らしをしているとの情報を得ました。そこで、AはいよいよVを殺す決意をしました。そこで、Aは殺害用のナイフを購入し、V方アパート付近の下見をするなどしました。そして、Aは、実行日当日、V方アパート近くでVを待ち伏せし、Vが帰宅するのを待ちました。そして、AはVが帰宅したのと同時に、その背後からいきなり、右手に把持していたナイフをVの背中に1回突き刺しました。しかし、AはVから「長年の付き合いではないか。」「頼む、命だけは奪わないでくれ。」と泣きながら懇願されたことから、それ以上突き刺すことをやめ、その場から逃走しました。その後、Vは付近の住民によって119番通報されて駆け付けた救急隊員による救命活動などによって一命をとりとめました。Aは殺人未遂罪で逮捕されてしまいました。
~ はじめに ~
前回、犯罪の実現過程②では、殺人罪における犯罪の実現過程、予備罪や未遂罪の内容についてご説明しました。
今回は、Aが問われている未遂罪についてもう少し詳しくご説明したいと思います。
~ 未遂の種類 ~
実は、前回ご紹介した刑法43条の規定には続きがありました。その全文をご紹介すると、刑法43条は
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
と規定さています。
講学上、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」場合を障害未遂、犯罪の実行に着手してこれを遂げなかったときに、「自己の意思により犯罪を中止した」場合を中止未遂といいます。つまり、未遂は障害未遂と中止未遂の2つに分けられます。
障害未遂が成立するには、
①犯罪の実行に着手したこと
②結果が発生しなかったこと
が必要です。他方で、中止未遂は、①、②の要件に加え、
③自己の意思により犯罪を中止したこと
が必要です。
~ 障害未遂と中止未遂の大きな違い ~
障害未遂の場合、刑が
任意的に(裁判官の裁量で)減軽される
のに対し、中止未遂の場合、刑が
必要的に(必ず)減軽される
点が大きく異なります。減軽されると、殺人罪の場合、有期懲役は法定刑の2分の1となり、
5年以上の懲役(上限20年)から2年6月以上10年以下の懲役
にまで短縮されます。
ちなみに、執行猶予付き判決の言い渡しを受けるための要件として、「3年以下の懲役又は禁錮」の判決の言い渡しを受けることが必要ですので、減軽されると
執行猶予判決を受けられる可能性が高まる
ことになります。
~ 本件で中止未遂は成立する? ~
では、本件で、中止未遂は成立するのでしょうか?
Aが「③自己の意思により犯罪を中止した」と言えるのかどうか、つまり、ア「中止意思の任意性」とイ「中止行為」の2つが認められるかどうか問題となります。
= 中止意思の任意性 =
自己の意思があったかどうか、中止意思に任性があったかどうかについては、大きく主観説と客観説に分けられます。
主観説は、
犯人が自己の行為を後悔してやめた場合を中止未遂、それ以外の事由によってやめた場合を障害未遂
とするものです。
客観説は、
犯人が社会一般の通念に照らして、犯罪の遂行を断念させるような事情又は表象がないにもかかわらずやめたときに中止未遂、そのような犯罪の遂行に障害となるような事情又は表象によってやめたときは障害未遂
とするものです。判例はこの客観説に立って判断しているものと思われます。
そこで、本件についても客観説に立って検討すると、AさんはVさんから「これ以上手を出さないでくれ」と哀願されていますが、このような事情が「犯罪の遂行を断念させるような事情又は表象」とは認めがたいとされれば、Aさんに「中止意思の任意性」を認めることはできます(つまり、中止未遂の成立する可能性が高くなります)。
次回は、残る要件である、イ「中止行為」などについてご説明いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
犯罪の実現過程①~殺人罪の場合~
犯罪の実現過程①~殺人罪の場合~
犯罪の実現過程について、あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aは長年、Vに対する恨みを抱いており、隙あらば殺そうと考えていました。そして、Aは、知人からVがとある地域のアパートに一人暮らしをしているとの情報を得ました。そこで、AはいよいよVを殺す決意をしました。そこで、Aは殺害用のナイフを購入し、V方アパート付近の下見をするなどしました。そして、Aは、実行日当日、V方アパート近くでVを待ち伏せし、Vが帰宅するのを待ちました。そして、AはVが帰宅したのと同時に、その背後からいきなり、右手に把持していたナイフをVの背中に1回突き刺しました。しかし、AはVから「長年の付き合いではないか。」「頼む、命だけは奪わないでくれ。」と泣きながら懇願されたことから、それ以上突き刺すことをやめ、その場から逃走しました。その後、Vは付近の住民によって119番通報されて駆け付けた救急隊員による救命活動などによって一命をとりとめました。Aは殺人未遂罪で逮捕されてしまいました。
~ 犯罪の実現過程 ~
本件は、大きく、
1 AがVを殺すことを決意。
2 Aがナイフを購入し、V方アパート付近を下見
3 AがVの背中をナイフで突き刺す(結果、Vは死亡しなかった)
の3段階に分けられると思います。犯罪は通常、どのような経緯を辿り、どの段階で犯罪となり得るのでしょうか?今回はイメージしやすい、殺人罪を例にとります。
~ 1の段階 ~
まず、1の段階の決意だけでは犯罪となりません。「何人も思想によりて処罰されることなし」の法諺が当てはまります。法は行為又は結果として客観化されない「人の内面」にまで踏み込むことはできないのです。
~ 2の段階 ~
一定の犯罪を実行するための準備行為を「予備」といいます。「予備」とは、犯罪行為の実行に着手する前の段階をいいますから、あらゆる犯罪について予備罪を設けてしまうと、人々の日常生活の行動を著しく制限してしまうことになりかねません(たとえば、窃盗罪に予備罪が設けられると、ホームセンターでマイナスドライバーを購入する行為が処罰されることになりかねません)。そこで、予備も原則として犯罪とはならず、重大な結果を引き起こす蓋然性が高い重大犯罪に限って予備罪が設けられ処罰するとされています。代表的な予備罪は以下のとおりです。
本件では、殺人の目的でナイフを購入する行為、V方あアパート付近を下見する行為が「予備」に当たります。
刑法113条(放火予備罪)
第108条(現住建造物等放火罪)又は第109条1項の罪(非現住建造物等放火罪)を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
刑法201条(殺人予備罪)
第199条の罪(殺人罪)を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
刑法237条(強盗予備罪)
強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。
~ 3の段階 ~
実行の着手に至ったが、何らかの事情によって結果が発生しなかった場合を「未遂」といいます。上の「予備」との決定的な違いは「実行の着手」があったか否かです。「実行の着手」とは、法益侵害に対する現実的危険性を有する行為、と言われていますが、何をもって「実行の着手」とするのかは事案によって個別に判断されます。本件では、少なくともAがVの背中を突き刺した時点で「実行の着手」ありとされるでしょう。未遂が処罰されるのも例外で、処罰されるためには個別に各本条の規定がなければなりません。
刑法43条本文
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
刑法44条
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
刑法203条
第199条及び前条の罪(自殺関与、自殺同意罪)の未遂は、罰する。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
余罪と身柄拘束の基本原則
余罪と身柄拘束の基本原則
余罪と身柄拘束の基本原則について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県古賀市に住むAさんは、Vさんの死体を川に遺棄したとして福岡県粕屋警察署に死体遺棄罪で逮捕、勾留されました。Aさんは逮捕直後からVさんを殺害したことは一貫して否認していましたが、Aさんの取調べを担当した刑事からは「お前がやったんだろう。」などと執拗にVさん殺害の件の余罪について追及を受けました。そして、勾留20日目、Aさんは死体遺棄罪の件では処分保留とされ釈放され、直後に殺人罪で逮捕・勾留されてしまいました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
この記事をご覧の方の中にも、マスコミの報道などで「余罪」という言葉を聞いたことがある方は多いのではにないでしょうか?そこで、今回は、まずこの「余罪」や身柄拘束の基本原則についてご説明することから始めたいと思います。
~ 余罪とは ~
余罪とは、現に疑いをかけられている事実(被疑事実、公訴事実)の罪以外の事実に関する罪で、同一人において同時訴追の可能性のあるものをいいます。
本件でいえば、
「AさんがVさんの死体を川に遺棄した」という事実に関する死体遺棄罪が「現に疑いをかけられている事実(起訴される前なので被疑事実)の罪」
で、それ以外の
「AさんがVさんを殺害した」という事実に関する殺人罪が「現に疑いをかけられている事実(被疑事実、公訴事実)の罪以外の事実に関する罪」であり「余罪」
に当たります。なお、法律上は、同一人において同時訴追の可能性のある罪、つまり起訴される可能性のある罪を「余罪」といい、その可能性すらないものは「余罪」には当たりません。
余罪は、本人の自供・自白から発覚するケース(自白先行型)もあれば、自供・自白以外から発覚するケースまで様々です。
~ 捜査の基本原則(事件単位の原則) ~
実務上、逮捕などの身柄拘束は被疑事実を単位(基準)としてなされています。これを事件単位の原則といいます(事件単位の原則に対して、逮捕などの身柄拘束を「人」を基準とする人単位説もあります。)。そこで、逮捕、勾留の要件(身柄拘束の理由、必要性)、勾留延長事由及び保釈事由の有無などの身柄拘束にかかる判断は、逮捕、勾留された事実に基づいて判断されます。
また、事件単位の原則を基準とすると、同一人につき、複数の事実で逮捕、勾留の競合が可能で、また、事実を異にして逮捕・勾留を繰り返すことができます(再逮捕・再勾留)。
~ 再逮捕の原則 ~
上記のように、再逮捕、再勾留は、前に逮捕、勾留された事実と異なる事実を基礎にできるのが原則です。死体遺棄罪の事実と殺人罪の事実は異なる事実と考えられるため、事例のように死体遺棄罪で逮捕・勾留された後、殺人罪で逮捕・勾留されることは基本的には問題ないと考えられます。
「異なる事実」での再逮捕、再勾留に限定されたのは、同じ事実で再逮捕、再勾留されるとなると、逮捕から48時間以内に事件を検察官へ送致、勾留の日は最大で20日間などと法律が厳格に定めた時間、日数制限を無視することになるからです。
ですが、例外的に、新たに新証拠が発見されたとか、新たな拘束の必要性が生じたなどの釈放後の事情変更により、重ねて逮捕・勾留することが合理的な必要性があり、それが不当な逮捕・勾留の蒸し返しにならない場合にのみ「同一事実」につき逮捕・勾留できるとされています。
今回は余罪と身柄拘束の基本原則についてご説明いたしました。次回は、余罪と諸問題に関しご説明いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
示談強要が犯罪
示談強要が犯罪
示談強要と犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県小郡市に住むAさんは、会社の部下Vさんと仕事の進め方のことで口論となり、Vさんの胸ぐらをつかみ、左拳でVさんの顔面を殴る暴行を加え、結果、VさんにVさんの歯を折るなどの怪我を負わせてしまいました。しかし、Aさんは、会社上司の説諭から、自分に非があったことを認め、Vさんはまだ警察に被害届を出していないようでしたので、Vさんに謝罪し、被害弁償をして事を穏便に解決したいと考えました。そこで、Aさんは、会社上司を通じてVさんに、「謝罪したい」「被害弁償したい」旨を伝えたところ、会社上司を通じて、「お断りする」「警察に被害届を出す」と言われてしまいました。これに激高したAさんは、会社内部のメール機能を使って、Vさん宛に「謝罪、被害弁償を断るなんてどういうことだ」「断るとお前の将来どうなるか分かっているんだろうな」「おれが会社にこれなくすることぐらい簡単なんだぞ」などというメールを送って、謝罪や被害弁償に応じるように言いました。そうしたところ、Aさんは、福岡県小郡警察署に傷害罪、強要未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~ 被害弁償、示談交渉は弁護士へ依頼 ~
何らかの犯罪を犯したとき、その事実を認める場合に、すみやかに被害者に謝罪、被害弁償をすることは加害者としての当然の義務といえるでしょう。そして、加害者にとっても、被害弁償からさらに進んで示談を締結することは、その後の刑事処分や裁判での量刑を決める要素として非常に大切になってきます。
被害弁償がなされ、示談が締結されている場合は、そうでないときに比べ、検察官が不起訴処分とする可能性、裁判官が裁判で執行猶予付き判決を言い渡す可能性は高くなるからです。
しかし、被害弁償、示談交渉は、直接ご自身でなさってはいけません。
直接被害者と接触することは、それ自身、罪証隠滅行為をとらえられかねず本件(傷害罪)での逮捕のリスクを高めてしまうことに繋がりかねません。また、あとでご説明するとおり、他の犯罪を引き起こしてしまう可能性もあります。さらに、何より被害者の処罰感情が厳しいことが通常であるため、被害弁償、示談交渉を円滑に進めることができません。仮に示談に応じてくれたとしても、内容、形式が適切なものかどうか判断がつかないことが多いかと思われます。
そこで、被害弁償、示談交渉を円滑に進めるためには、弁護士に依頼した方がよろしいかと思います。
~ 示談を強要すると犯罪? ~
直接示談交渉を行うと、別の犯罪に当たる行為もしてしまいかねませんから注意が必要です。たとえば、強要罪です。強要罪は刑法233条に規定されていますが、本件と関係する同条1項をご紹介いたします。
刑法223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して」とは「害悪の告知」と呼ばれ、一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければなりません。Aさんの「おれが会社にこれなくすることぐらい簡単なんだぞ」というメールの意図が不明ですが、メールの前後関係などから「害悪の告知」とされてしまう可能性があります。また、被害弁償に応じるか、示談に応じるか否かは、Vさんの意思の事由ですから、これらを強要することは「人に義務のないことを行わせ」たことに当たるでしょう。
~ 示談交渉は弁護士にご相談を ~
先ほども申し上げましたが、示談交渉は弁護士にお任せください。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、円滑、適切な形で示談を成立させることが可能です。Aさんのように、本件とは別の犯罪で逮捕されるという事態も防ぐことができますし、本件での不起訴処分獲得の可能性も高くなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
受水槽の中で泳ぎ偽計業務妨害罪
受水槽の中で泳ぎ偽計業務妨害罪
偽計業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県志免町に住むAさんは、アパート施工業者の委託を受けた水道設備設置会社に所属し、同町内にあるアパートの受水槽設置等の作業に従事していたところ、その作業中、「他の従業員を笑わせよう」「インターネットに投稿すると面白い」との思いから、受水槽の中を泳ぎその場面を撮影した動画をSNSで公開しました。そうしたところ、その動画がアパート施行業者の担当者の目にとまり、福岡県粕屋警察署に被害届を提出されてしまいました。そして、Aさんは、偽計業務妨害罪の被疑者として粕屋警察署で事情を聴かれ、その後、福岡地方検察庁へ事件を送検されてしまいました。今後のことが不安になったAさんは刑事事件に詳しい弁護士に無料法律相談を申込みました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ はじめに ~
上記事例は、マスコミでも大きく報じられたニュースを基に作成しています。このような事例は「●●テロ」と言われ、今年に入ってから急速に拡散しているような気がします。これまでマスコミで報じられた一例を挙げると、
・関東地方の牛丼チェーン店で、店員が、従業時間内に氷のようなもの投げ合っている動画を投稿
・大阪府内の回転ずしチェーン店で、店員が、食材の魚をゴミ箱に捨てた後、まな板に乗せる動画を投稿
・横浜市内のコンビニエンスストアで、店員が、おでんの具を口の中に入れ、吐き出すなどの動画を投稿
などがあります(この他にも数えきれないほどあります)。
注意しなければならないのは、こららの行為で問題となっているのは「店舗内における行為」であって、動画をSNS等にアップした行為ではありません。つまり、店舗内での悪質な行為によって、その店舗のみならず、その店舗を利用する、あるいは利用しようとする人にまで影響を与え、結果、様々な損失を及ぼしてしまうことになるのです。動画をSNSにアップする行為はあくまで、その行為のきっかけ、あるいは発覚のきっかけにしかすぎません。
~ 受水槽とは ~
そもそも、今回、Aさんが泳いだ受水槽とは、ビル・マンション・学校・病院など多量の水を使用する建物などで、水道局から供給された水をいったんためておく容器のことをいいます。
高層建築物で屋上等に高架水槽がある場合、地階もしくは1階に設けられている受水槽に水をため、高架水槽にポンプで水をくみ上げ、これにより、配水管の水圧が変動しても給水圧・給水量を一定に保持できること、一時に多量の水使用が可能であること、断水時や災害時にも給水が確保できること等の効果があると言われています。受水槽から各入居者の蛇口までは、建物所有者の責任の下で管理されています。
したがって、受水槽の中で泳ぐということは、建物所有者(アパート施工業者)のみならず、抽象的にも、そのアパートに住む住民にも影響を与えることになるのです。
~ 偽計業務妨害罪とは ~
そして、今回、「受水槽の中で泳ぐという行為」は偽計業務妨害罪に当たる行為だとして立件、送検されています。
偽計業務妨害罪(信用棄損罪も含む)は刑法233に規定されています。
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
今回、Aさんは、「偽計を用いて」、「人の業務を妨害」した者として立件されています。
「偽計を用いて」とは、ごく簡単にいえば、
ひっそりとこっそりと
という意味です。
お店のパンなどの食材に針を混入する行為
も「偽計」に当たるといえばお分かりいただけるでしょうか?
「人の業務を妨害」の「人」とはある特定の個人(自然人)のみならず、会社(法人)、団体であってもよいとされています。本件ではアパート施工業者が「人」に当たるでしょう。「業務」とはアパート施工業者の受水槽に対する維持・管理業務といったことでしょうか。「妨害」したとは、
現実に妨害が発生している必要はなく、業務を妨害しうるような行為をすれば足りる(犯罪は成立する)
とされています。
~ おわりに ~
以上が、本件における「刑事責任」についてのお話ですが、本件によってアパート施工業者に損失を与えたとすれば、不法行為責任に基づく損害賠償義務(民事責任)を負わなければならなくなる可能性も出てきます。そうすると、ご自身が所属している会社にも迷惑をかけることになりかねませんので、くれぐれも注意する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
神奈川県愛川町での逃走事件について①~公務執行妨害罪~
神奈川県愛川町での逃走事件について①~公務執行妨害罪~
公務執行妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します
Aさんは、福岡地方裁判所で窃盗罪、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反などで審理を受け、懲役4年の実刑判決を受けました。Aさんは、審理の対象となった事実については全面的に認めていたものの、量刑に不服がありました。そこで、Aさんは、福岡高等裁判所宛に控訴の申し立てをすると同時に、選任されていた国選弁護人に保釈請求してもらったところ、請求が許可されたため、知人の援助を得て保釈保証金を納付し釈放されました。その後、控訴審では、Aさんの控訴申し立ては棄却され、裁判は確定したことから、Aさんは、福岡高等検察庁から、刑(懲役4年)執行のため検察庁へ出頭するよう要請されました。Aさんは刑務所に入所するのが嫌でその要請を無視し続けていたところ、突然、検察庁職員らの訪問を受け、職員から収容状を呈示されながら、「あなたに収容状が出ている。」「今すぐ荷物をまとめて刑務所に行く準備をしてください。」などと言われました。しかし、Aさんは、「なんで突然くっとや。」「心の準備ができとらんばってん。」などと言いながら台所から包丁を取り出し、職員との距離約1メートルのところで職員に包丁を示しながら、「オレに近づくとこれで刺すけんな。」などと言って職員の間を走り抜け、玄関を出てそのまま逃走してしまいました。Aさんは、検察庁職員などに対する公務執行妨害罪で逮捕状が出て全国に指名手配されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ はじめに ~
上記事例は、先日、神奈川県愛川町で起きた事件を基に作成しています。実際の事件では、男性は控訴審で保釈中であったところ控訴棄却の判決を受け裁判が確定し、検察庁職員の再三の呼び出しにも応じず、職員が男性宅に収容に訪れたところ、台所から包丁を持ち出して自宅から逃走した、とのことでした。
この事件に関するニュースなどを見られて、
・なぜ、公務執行妨害罪で逮捕状?
・なぜ、逃走罪ではないの?
などという疑問を持たれた方も多いかと思います。そこで、本日は、はじめに公務執行妨害罪についてご説明したいと思います。
~ 公務執行妨害罪とは ~
本罪は刑法95条1項に規定されています。
刑法95条1項
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
とされています。
ここでいう「暴行」とは、公務員の職務執行にあたり、公務員に対し、その執行を妨害するに足りる不法な有形力を行使すること(直接暴行、間接暴行を含む)をいいます。「有形」とは目に見えるもの、という意味ですから、有形力とは、殴る、蹴る、投げ飛ばすなどの人の身体に接触するものだけとは限らず、本件のように包丁を示す差し出す、振り回す、物を投げつけるなど人の身体に接触しない行為も含まれます(なお、事例のAさんは、包丁を示しながら「オレに近づくとこれで刺すけんな。」と言った行為は、公務執行妨害罪の「脅迫」に当たります)。
また、刑の執行は検察官がこれを指揮します(刑事訴訟法472条)。そして、まずはじめに執行のために呼び出しを行い(刑事訴訟法484条)、これにも応じなければ収容状が発布されます(刑事訴訟法485条)。収容状は、基本的には、検察官から指揮を受けた検察事務官が執行します(刑事訴訟法489条、70条)。検察事務官は国家公務員ですから、検察事務官の職務執行に違法な点が認められなければ、本事例の場合でも、神奈川県のケースの場合でも、「公務員が職務を執行するに当たり」に当たるものと考えられます。
ところで、検察事務官は警察官と異なり、逮捕術などを専門的に学んでいるわけではありません。そこで、収容の現場で対象者が逃走したり、その場で暴れるおそれが高い場合は警察官に協力を求めることもあります。神奈川県のケースでも警察官に協力を求め、警察官と一緒に対応していたようですが、結局は逃走を図られてしまったようです。
次回は逃走罪について解説いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
養護者による高齢者虐待②
養護者による高齢者虐待②
高齢者虐待について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
会社員のAさん(55歳)は、重度の認知症の母親Vさん(83歳)と福岡県春日市内のアパートで二人暮らしでした。Aさんは、10年程前から認知症だった母親を一人で支えてきましたが、日に日に病状が悪化する母親を介護しつづけるのも我慢の限界に達しようとしていました。Aさんは、日頃から母親の介護に対するストレスを抱え込むようになり、趣味のパチンコをする他ストレスを吐き出すはけ口を見失い、母親に対し、殴る、蹴るの暴力を繰り返すようになりました。また、Aさんはケアマネジャーの勧めにかかわらず介護サービスを利用しようともせず、食事も一日一回だけコンビニ弁当を買い与えるだけという生活のため、Vさんの健康状態は寝たきりに近い状態まで悪化してしまいました。そうしたところ、ケアマネジャーがAさんがパチンコに行っている間、Aさん宅を訪問した際、Vさんの異変に気づき、Vさんが高齢者虐待を受けて生命及び身体に危険が生じていると判断し、高齢者虐待防止法により市町村に通報しました。その後、Aさんは立入り調査を受け、事態を重く見られ、春日警察署に保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
先日の、養護者による高齢者虐待①では、高齢者虐待が増加していることや高齢者虐待の定義、高齢者虐待の中でも「身体的虐待」が多いことなどをご紹介しました。本日は、高齢者虐待の種別(身体的虐待、介護等放棄、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待)ごとにどんな罪に問われうるのかみていきたいと思います。
ところで、高齢者虐待法では、高齢者虐待に当たる行為に対する処罰・罰則を設けていませんから、刑法上の罪に問われることはあっても高齢者虐待防止法で処罰されることはありません。ちなみに、高齢者処罰防止法では、正当な理由なく、地域包括支援センターの職員等の立ち入り調査を拒むなどしたり、職員等の質問に答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合などに、30万円以下の罰金に処する旨規定しています。
~ 身体的虐待 ~
身体的虐待とは、高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること、をいいます。
・殴る
・蹴る
・無理矢理食事を口に入れる
・どこかに拘束する・監禁する
などの行為がこれに当たります。
刑法上は、暴行罪(刑法208条、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、強要罪(刑法223条、3年以下の懲役)、逮捕・監禁罪(刑法220条、3月以上7年以下の懲役)、逮捕・監禁致傷罪(刑法221条、3月以上15年以下の懲役)に問われる可能性があります。さらに、高齢者を死亡させた場合は、傷害致死罪(刑法205条、3年以上の有期懲役)、逮捕・監禁致死罪(刑法221条、3年以上の有期懲役)に問われる可能性があります。
~ 介護等放棄 ~
介護等放棄とは、高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人による身体的虐待、心理的虐待、性的虐待と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること、をいいます。
・食事を与えない
・入浴させない
・オムツを取り替えない
などの行為がこれに当たります。
刑法上は、保護責任者遺棄等罪(刑法218条、3月以上5年以下の懲役)に問われる可能性があります。さらに、介護等放棄によって、高齢者を死傷させた場合は保護責任者遺棄等致死傷罪(刑法219条、死亡の場合、3年以上の有期懲役、傷害の場合、3月以上15年以下の懲役)に問われる可能性があります。また、介護等放棄は、「養護者以外の同居人による身体的虐待、心理的虐待、性的虐待と同様の行為の放置等」も含まれますから、養護者以外の同居人が犯した刑法上の罪の共犯(共同正犯、教唆犯、幇助犯)に問われる可能性もあります。
~ 心理的虐待、性的虐待、経済的虐待 ~
心理的虐待とは、高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと、をいいます。
刑法上は、名誉棄損罪(刑法230条、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)、侮辱罪(刑法231条、拘留又は科料)、場合によっては脅迫罪(刑法222条、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)に問われる可能性があります。
性的虐待とは、高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること、をいいます。
刑法上は、強制わいせつ罪(刑法176条、6月以上10年以下の懲役)、準強制わいせつ罪(刑法178条1項、6月以上10年以下の懲役)、強制性交等罪(刑法177条、5年以上の有期懲役)、準強制性交等罪(刑法178条2項、5年以上の有期懲役)に、さらにその際、高齢者に怪我をさせたり、高齢者を死亡させた場合は強制わいせつ致死傷罪(刑法181条1項、無期又は3年以上の懲役)、強制性交等致死傷罪(刑法181条2項、無期又は6年以上の懲役)に問われる可能性があります。
経済的虐待とは、養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること、をいいます。
・高齢者の現金(お金)を勝手に使う
・高齢者のクレジットカードを利用して決済する
などの行為がこれに当たります。
刑法上は、窃盗罪(刑法235条、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、詐欺罪(刑法246条、10年以下の懲役)、横領罪(刑法252条1項、5年以下の懲役)、業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)に問われる可能性があります。
~ 刑事裁判になったら?? ~
高齢者虐待は絶対に許される行為ではありません。しかし、それに至るまでの経緯やそれに至った理由などは人それぞれ異なり、それぞれの事情を詳細にみていくと、一概に、養護者を非難できない事情もあると思います。仮に、上記の罪で刑事裁判に至ってしまった場合は、そうした事情を裁判で明らかにし、適切な量刑を獲得すべく努めなければなりません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は,刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は,まずは,0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスの受け付けを行っております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
養護者による高齢者虐待①
養護者による高齢者虐待①
高齢者虐待について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
会社員のAさん(55歳)は、重度の認知症の母親Vさん(83歳)と福岡県春日市内のアパートで二人暮らしでした。Aさんは、10年程前から認知症だった母親を一人で支えてきましたが、日に日に病状が悪化する母親を介護しつづけるのも我慢の限界に達しようとしていました。Aさんは、日頃から母親の介護に対するストレスを抱え込むようになり、趣味のパチンコをする他ストレスを吐き出すはけ口を見失い、母親に対し、殴る、蹴るの暴力を繰り返すようになりました。また、Aさんはケアマネジャーの勧めにかかわらず介護サービスを利用しようともせず、食事も一日一回だけコンビニ弁当を買い与えるだけという生活のため、Vさんの健康状態は寝たきりに近い状態まで悪化してしまいました。そうしたところ、ケアマネジャーがAさんがパチンコに行っている間、Aさん宅を訪問した際、Vさんの異変に気づき、Vさんが高齢者虐待を受けて生命及び身体に危険が生じていると判断し、高齢者虐待防止法により市町村に通報しました。その後、Aさんは立入り調査を受け、事態を重く見られ、春日警察署に保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ 高齢者虐待の増加 ~
高齢化が進み、被介護者の人数が増えるとともに、高齢者虐待の問題が深刻化しています。
そして、近年では、自宅のみならず、高齢者が安心して生活できるはずの養介護施設での高齢者虐待に関するニュースをよく見かけます。
平成18年4月1日に施行された高齢者虐待防止法(正式名称:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)では、
・養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等
と、
・養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等
の2つの章をそれぞれ別に設け、必要な措置、規制に関する規定を設けています。ここで、「養護者」とはAさんのような高齢者の家族、親族、同居人など、高齢者を現に養護する者であって、養介護施設従事者等以外のものをいい、「養介護施設従事者等」とは老人ホームなどの養介護施設の業務に従事する者などをいいます。
~ 養護者による「高齢者虐待」とは ~
ところで、養護者による高齢者虐待とは何かというと、高齢者虐待防止法2条4項では次のように規定しています。
この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
二 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
通常、一イは「身体的虐待」、一ロは「介護等放棄」、一ハは「心理的虐待」、一二は「性的虐待」、二は「経済的虐待」と呼ばれています。
~ 養護者による高齢者虐待の増加 ~
養護者による高齢者虐待の件数は増えてきていると言われています。
平成30年度版犯罪白書によると、平成28年度の高齢者虐待に関する市町村への通報・相談件数は
2万7940件
と、高齢者虐待防止法が施行された平成18年度(1万8390件)の
約1.5倍
だったとのことです。また、平成28年度に高齢者虐待と判断された件数は
1万6384件
と、平成18年度(1万2569件)の
約1.3倍
だったとのことです。
虐待種別に見ると(重複計上)、
身体的虐待 1万1383人
心理的虐待 6922人
介護等放棄 3281人
経済的虐待 3041人
の順で、身体的虐待が一番多かったとのことでした。
~ 福岡県でも公表 ~
福岡県のホームページでも高齢者虐待の状況に関して、市町村からの報告を取りまとめた結果を公表しています。
それによると、平成29年度中、福岡県内の市町村が相談・通報を受け対応した件数は「896件(うち、高齢者虐待と判断したものは495件)」だったとのことです。また、虐待種別では、上の順位どおり、身体的虐待が最も多かった(重複計上で332件)とのことでした。
次回は、養護者による高齢者虐待と刑事責任などについてご紹介できたらと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は,刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は,まずは,0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスの受け付けを行っております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
傷害事件で正当防衛を主張
傷害事件で正当防衛を主張
福岡県筑紫野市に住むAさんは、天神でお酒を飲んだ後、一人で西鉄天神駅へと向かっていたところ、すれ違いざまに男性Vさんの肩と軽くぶつかってしまいました。Aさんは酒に酔っていたこともあって、Vさんがわざと自分にぶつかってきたものと思い、Vさんに「なんやこのやろう!」と大声を上げました。すると、Aさんは、「何だって。」などと言いながら近づいてくるVさんに胸ぐらをつかまれたため、Vさんの両肩を両手で押して払いのけた、Vさんを地面に転倒させました。その後、周囲の人がAさんとVさんとの間に割って入り、事が収まりました。AさんとVさんは現場に駆けつけてきた福岡県中央警察署の警察官に事情を聴かれました。Aさんは警察官に「正当防衛だ。」などと主張しています。Vさんは、病院へ連れていかれ、診断の結果、加療約2週間の傷害と診断されました。
(フィクションです。)
~ 正当防衛 ~
ある行為が犯罪に当たると思われても、その行為に違法性がなければ犯罪は成立しません。この違法性に該当しない事由のことを「違法性阻却事由」といいます。Aさんが主張している「正当防衛」(刑法36条)は違法性阻却事由の一つです。違法性阻却事由は、正当防衛のほかにも緊急避難(刑法37条)、正当行為(刑法35条)があります。
刑法36条
急迫不正の侵害に対して,自己又は他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為は,罰しない。
今回、Aさんのは、Vさんの両肩を両手で押すという「暴行」を加え、それによってVさんに怪我を負わせているのですからAさんの行為は刑法204条の傷害罪に当たります。しかし、Aさんの行為が上の正当防衛の要件に該当する場合は、傷害罪は成立しません。以下では、正当防衛が成立するための要件についてみていきたいと思います。
* 急迫不正の侵害 *
「急迫」とは、法益(今回でいえば、Aさんの身体)侵害が現に存在するか、目前に差し迫っていることをいいます。ですから、過去の侵害や将来の侵害に対しては正当防衛は認められません。例えば、相手から足を蹴られ、その侵害が一応去った後、相手を追っかけて相手の顔面を殴ったとしても正当防衛は成立しません。「不正」とは違法であることをいいます。「侵害」とは、法益に対する実害又はその危険を生じさせる行為をいいます。
* 自己又は他人の権利を防衛するため *
「権利」とは、法律で「〇〇権」と明文化されているものに限らず、広く法律上保護されている法益をいいます。
「防衛」とは、侵害から法益を守ることをいいます。防衛行為は、侵害者に向けられた行為でなければなりません。例えば、AさんがVさんから刃物で襲われたため、その場にいたWさんを盾にしてWさんに傷害を負わせたという場合、Wさんとの関係で緊急避難(刑法37条)が成立する余地はあっても正当防衛は成立しません。
※防衛の意思(防衛するため)
防衛行為は、自己又は他人の権利を防衛するためのものでなければなりません。そこで、正当防衛が成立するには、防衛行為が防衛の意思に基づくことを要するかが問題となります。この点、判例は必要との立場をとっています(最判昭和46年11月16日など)。ただし、防衛行為は、緊急状況下で行われることが多いと思われますから、防衛の意思の意義を「急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態」と解する説もあります。
* やむを得ずにした行為 *
「やむを得ずにした」とは、具体的事情の下において、その防衛行為が、侵害を排除し、又は法益を防衛するために必要かつ相当なものであったことをいいます。防衛行為の相当性ともいわれています。防衛行為の相当性を超えたものが過剰防衛です(刑法36条2項)。防衛行為の相当性は、法益の権衡と防衛行為事態の態様の2つの面から検討し、具体的事情の下で社会的・一般的見地から見て必要かつ相当か否かと判断します。例えば、素手で向かってくる相手に対し、刃物を用いて対抗する場合は相当性を欠く場合が多いでしょうが、体格、腕力等において優勢な者に対して刃物で対抗してもなお相当性が認められる場合もあります。
~ おわりに ~
正当防衛を主張するケースでは、当事者双方から事件当時の出来事を詳細に聴き出した上で、上記要件に当てはまるかどうか判断するという極めて高度な技術と知識が必要となります。正当防衛を適切に主張するなら、刑事事件専門の弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介