養護者による高齢者虐待①

2019-07-23

養護者による高齢者虐待①

会社員のAさん(55歳)は、重度の認知症の母親Vさん(83歳)と福岡県春日市内のアパートで二人暮らしでした。Aさんは、10年程前から認知症だった母親を一人で支えてきましたが、日に日に病状が悪化する母親を介護しつづけるのも我慢の限界に達しようとしていました。Aさんは、日頃から母親の介護に対するストレスを抱え込むようになり、趣味のパチンコをする他ストレスを吐き出すはけ口を見失い、母親に対し、殴る、蹴るの暴力を繰り返すようになりました。また、Aさんはケアマネジャーの勧めにかかわらず介護サービスを利用しようともせず、食事も一日一回だけコンビニ弁当を買い与えるだけという生活のため、Vさんの健康状態は寝たきりに近い状態まで悪化してしまいました。そうしたところ、ケアマネジャーがAさんがパチンコに行っている間、Aさん宅を訪問した際、Vさんの異変に気づき、Vさんが高齢者虐待を受けて生命及び身体に危険が生じていると判断し、高齢者虐待防止法により市町村に通報しました。その後、Aさんは立入り調査を受け、事態を重く見られ、春日警察署に保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 高齢者虐待の増加 ~

高齢化が進み、被介護者の人数が増えるとともに、高齢者虐待の問題が深刻化しています。
そして、近年では、自宅のみならず、高齢者が安心して生活できるはずの養介護施設での高齢者虐待に関するニュースをよく見かけます。

平成18年4月1日に施行された高齢者虐待防止法(正式名称:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)では、

養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等

と、

・養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等

の2つの章をそれぞれ別に設け、必要な措置、規制に関する規定を設けています。ここで、「養護者」とはAさんのような高齢者の家族、親族、同居人など、高齢者を現に養護する者であって、養介護施設従事者等以外のものをいい、「養介護施設従事者等」とは老人ホームなどの養介護施設の業務に従事する者などをいいます。

~ 養護者による「高齢者虐待」とは ~

ところで、養護者による高齢者虐待とは何かというと、高齢者虐待防止法2条4項では次のように規定しています。

この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
 イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
 ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
 ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
 ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
二 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

通常、一イは「身体的虐待」、一ロは「介護等放棄」、一ハは「心理的虐待」、一二は「性的虐待」、二は「経済的虐待」と呼ばれています。

~ 養護者による高齢者虐待の増加 ~

養護者による高齢者虐待の件数は増えてきていると言われています。
平成30年度版犯罪白書によると、平成28年度の高齢者虐待に関する市町村への通報・相談件数は

2万7940件

と、高齢者虐待防止法が施行された平成18年度(1万8390件)の

約1.5倍

だったとのことです。また、平成28年度に高齢者虐待と判断された件数は

1万6384件

と、平成18年度(1万2569件)の

約1.3倍

だったとのことです。

虐待種別に見ると(重複計上)、

身体的虐待 1万1383人
心理的虐待   6922人
介護等放棄   3281人
経済的虐待   3041人

の順で、身体的虐待が一番多かったとのことでした。

~ 福岡県でも公表 ~

福岡県のホームページでも高齢者虐待の状況に関して、市町村からの報告を取りまとめた結果を公表しています。
それによると、平成29年度中、福岡県内の市町村が相談・通報を受け対応した件数は「896件(うち、高齢者虐待と判断したものは495件)」だったとのことです。また、虐待種別では、上の順位どおり、身体的虐待が最も多かった(重複計上で332件)とのことでした。

次回は、養護者による高齢者虐待と刑事責任などについてご紹介できたらと思います。

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