実刑判決を受けても保釈?

2019-07-22

実刑判決を受けても保釈?

福岡県柳川市に住むAさんは、保釈中であった平成30年12月1日に、福岡地方裁判所柳川支部において窃盗罪などで懲役3年6月の実刑判決を受けたことから、裁判所で収容されてしまいました。しかし、Aさんの国選弁護人は、量刑を不服として福岡地方裁判所柳川支部宛に控訴申立書を提出すると同時に、Aさんの保釈を請求しました。保釈請求は許可され、Aさんは家族などの協力を得て保釈保証金を納付して釈放されました。一方、控訴審の福岡高等裁判所は、Aさんの控訴申し立てに理由がないとして控訴を棄却し、判決は確定しました。そこで、検察庁職員が、刑執行のためAさんの身柄を収容しようと、Aさん宅に何度も呼び出し状を発送するもAさんが指定された日時に出頭しなかったことから、収容状をもってAさん宅まで収容にいきました。職員が自宅に上がりこむとAさんは台所から包丁を取り出し、職員に包丁を向けながら「来るな。」「俺に触るもんなら刺すぞ」などと言って、自宅の裏口から逃走しました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

~ はじめに ~

神奈川県愛川町で、保釈中の男性が実刑判決が確定していたものの、検察庁職員の収容手続に応じず逃走し、その5日後に、横須賀市のアパートで公務執行妨害罪の容疑で逮捕されました。報道によると、男性は、昨年9月、横浜地方裁判所小田原支部で、窃盗罪、傷害罪、覚せい剤取締法違反などの罪で懲役3年8月の実刑判決を受け、東京高等裁判所に控訴したものの、棄却され、今年2月にその判決が確定していたということです。

この事件に関するニュースをみて、

実刑判決を受けたのに保釈(請求)できるの?
・なぜ保釈が認められたの?
・どうして逃げることができたの?

などという疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか?

~ 実刑判決を受けたのに保釈(請求)できるの? ~

上訴(控訴、上告)する道が残されていれば、保釈請求することは可能です。

上訴する道が残されている、すなわち、言い渡された判決が確定するまでの間(審理前、審理期間中)は、未だ

刑事被告人

としての地位のままです。そして、勾留されている刑事被告人やその弁護人は裁判所に保釈請求をすることができるのです(刑事訴訟法88条1項)。

~ なぜ保釈が認められたの? ~

では、なぜ、保釈が許可されたのでしょうか?

保釈許可の要件は、大きく分けて、「権利保釈」と「裁量保釈」の2つがあります。
「権利保釈」とは、刑事訴訟法89条各号に掲げる事由に該当しない限りは保釈を許可するというものです。「裁量保釈」とは、たとえ、刑事訴訟法89条各号に掲げる事由に該当したとしても、裁判所が、「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度のその他の事情」を考慮し、保釈を許可するというものです(刑事訴訟法90条)。つまり、たとえ、重大な犯罪を犯したり、実刑判決を受けたとしても、

「裁量保釈」によって保釈が許可される

ことは有り得ることです。

詳細は分かりませんが、今回の神奈川県のケースでも「裁量保釈」で保釈が許可された可能性はあります。
また、今年3月には、東京地裁が殺人罪で実刑判決を受けた刑事被告人に保釈を許可するというケースもありました(その後、東京高裁で検察官の抗告を認容=保釈許可されず)。
近年の裁判所は過去に比べて、刑事被告人の保釈を許可する傾向にあります。一方で、刑事被告人等が保釈中に逃走するケースも増えており、今回の事件をきっかけに、保釈に対する考え方、取扱方に変化があるかもしれません。

~ なぜ、逃走することができたのか? ~

第一審の場合、刑事被告人は法廷に出廷しなければなりません。したがって、判決期日で実刑判決が下れば保釈の効力は失われ(刑事訴訟法343条)、裁判所の法廷内で検察庁職員により収容されてしまいます。他方、控訴審の場合、刑事被告人が法廷に出廷する必要はありません(刑事訴訟法390条)。つまり、本来、保釈中に、控訴審で控訴棄却が言い渡されれば、理論的には

保釈の効力は失われ(勾留の効力が復活し)

て、その日から収容されることになります。しかし、控訴審では、法廷に刑事被告人が出廷していないことが多いことから、実務では、まず、検察庁職員が検察庁へ出頭するよう要請を行い、それでも応じない場合は、収容状を持参して強制的に収容するという手続を取っているようです(控訴審判決が確定している場合)。神奈川県のケースでは、この収容手続中に逃走された、というわけです。

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