歩きタバコと刑事犯罪

歩きタバコと刑事犯罪

歩きたばこについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

会社員のAさんは、1日、2箱分のタバコを吸う無類のタバコ好きでした。Aさんは、喫煙場所が制限されつつある昨今に不満を抱いており、現に、街を歩いている今日もなかなか喫煙場所を見つけることができずにいました。そこで、Aさんは、歩きタバコや受動喫煙をさせることが悪いとはわかってはいながらも、福岡市中央区天神の路上喫煙が禁止されている歩道上で、タバコを右手指に挟みながら歩きタバコをして歩いていました。そうしたところ、Aさんは、Aさんの横を駆け足で通り過ぎた少女Vちゃん(8歳)の顔に火の点いたタバコを当ててしまいました。Vちゃんが「熱いよ~。」などと言って声を上げたことから、Aさんは、すぐ後方を歩いていたVちゃんの母親から「歩きタバコしていましたよね?」などと声をかけられました。その後、Vちゃん側から福岡県中央警察署に「全治1週間の火傷を負った」との診断書が提出され、Aさんは中央警察署で重過失致死傷罪の被疑者としてを事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

この記事をご覧になっている方の中にも、歩きタバコをして他人に迷惑をかけた、あるいは歩きタバコで受動喫煙などの害を受け迷惑を受けたという方も多数おられるのではないでしょうか?確かに、近年、健康志向や受動喫煙防止に向けた動き(法律、条例等の制定等)の影響から、喫煙スペースは限定的となり、喫煙者の方々にとっては肩身の狭い世中になってきているかもしれません。しかし、自治体によっては、歩きタバコ(路上喫煙)に対する行政罰(過料)を設けるなど、徐々に歩きタバコそのものに対する規制を強化する動きが出てきていることもまた事実です。

~ 歩きタバコと刑事罰 ~

タバコの先端部分は700度から800度に達しているともいわれており、人ごみの中での歩きタバコはとても危険な行為です。特に、子どもに対しては要注意でしょう。タバコを持っている手の位置と子ども顔の位置がちょうど同じ高さ、位置となる可能性が大いにあり、すこし顔に触れただけでも大きな怪我、障害(特に目に当たった場合など)に繋がるおそれがあります。

ところが、こうした危険にもかかわらず、歩きタバコをする方々の罪の意識は低いように思います。しかしながら、歩きタバコをして他人に怪我を負わせると

刑法上の罪

に問われる可能性がありますから注意が必要です。では、どんな罪に問われる可能性があるのでしょうか?

~ 過失傷害罪、重過失致死傷罪 ~

まず、怪我を負わせたという場合、傷害罪(刑法204条)が考えられますが、傷害罪は、相手に怪我をさせてもいい、もしくはそうなっても構わないと認識・認容しつつ(傷害の故意がありつつ)、暴行を加え、相手方に怪我を負わせた場合に成立する犯罪ですから、歩きタバコの場合、このような事態をなかなか想定し得ず、適用されることは少ないでしょう。

次に、相手に怪我を負わせることにつき故意がなかった場合はどうでしょうか?
その場合は、過失傷害罪(刑法209条)、あるいは重過失致傷罪(刑法211条後段)が適用される可能性があります。

過失とは、簡単にいえば、ある一定の行為を取ることを求められているにもかかわらずとらなかった、つまり、注意義務違反のことをいいます。
これを歩きタバコについていえば、路上喫煙が禁止されている区域で歩きタバコをすれば、それ自体注意義務違反とされてしまうおそれがあります。また、仮に、禁止区域以外で歩きタバコをしたとしても、タバコは上記のように危険な物体ですから、他人に接触しないように注意して保持する義務があるといえます。そこで、禁止区域以外で歩きタバコをした場合は、このような義務に違反したとされるおそれは十分にあるのです。

なお、重過失とは、過失の程度、すなわち注意義務違反の程度が著しいことをいいます。路上喫煙の禁止区域で歩きタバコをし、それによって相手方に怪我を負わせた場合は過失傷害罪ではなく重過失致死傷罪で適用されるかもしれません。

~ 罰則は?? ~

過失傷害罪の罰則は、30万円以下の罰金又は科料です。また、同罪は、被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪です。起訴を回避したければ、被害者側と示談するなどして告訴を取り消していただく必要があります。
他方、重過失致死傷罪の罰則は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金で、過失傷害罪に比べ非常に重たく、かつ、親告罪ではありません。

~ 福岡県内での路上禁煙地区 ~

福岡県では、

人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例

で、西鉄天神駅周辺、JR博多駅周辺を路上禁煙地区に定めています。

詳しくは↓↓をご覧ください

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/26893/1/map.pdf?20190220115021

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談初回接見サービスの受け付けを行っております。

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