傘で失明、傷害罪?過失傷害罪?
傷害罪と過失傷害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
北州市八幡東区に住むの会社員の男性Aさんは、路上で肩がぶるかるなどしてVさんと口論となり、もっていた傘の先端でVさんの目を突き刺しまし、その場から逃走しました(Vさんはその後病院に搬送され、失明の障害を負ってしまいました)。ところが、現場に駆け付けた目撃者の話、防犯ビデオカメラの映像からVさんの目に傘の先端を突き刺したのはAさんだ、ということが判明し、Aさんは福岡県八幡東警察署に傷害罪で逮捕、勾留されてしまいました。そして、Aさんは、福岡地方検察庁小倉支部の検察官に傷害罪で起訴され、実刑判決を受けてしまいました。
(実際にあった事例をもとに作成したフィクションです)
~ 傘も立派な凶器 ~
普段何気なく使っている傘でも、使い方によってはナイフなどと同様「凶器」に変わりえます。
本件のように、被害者に失明などの障害を与えてしまった場合は、「傷害罪(刑法204条)」、
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
あるいは、殺意が認められる場合は、「殺人未遂罪(刑法199条、203条)」
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法203条
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。
に問われます。
~ 過失による場合は? ~
傷害罪は「人を傷めつけてやろう」、殺人未遂罪は「人を殺してやろう、死んでもかまわない」などという意図(故意)があってはじめて成立する犯罪です。
ところが、たとえば、
会社員Aさんが、雨の日、雨が止んだと思って傘を折りたたみ、その傘を地面と平行にして持って歩いていたところ、たまたまAさんの後方を歩いていた幼児Vちゃん(3歳)の目に傘の先端が当たってしまい失明させてしまった
という場合はどうでしょうか?
この場合、AさんにVちゃんを「痛めつけてやろう」とか、「殺してやろう」とする意図(故意)は認められません。
ただし、過失犯に問われることがあります。
ここで、「過失」とは「故意がないこと」とご説明すれば簡単ですが、それでは分かりにくいことからもう少し踏み込んでご説明すると「不注意」、つまり、「注意義務に違反すること」をいいます。
では、ここでの「注意義務」は何かといえば、雨の日ですからさすがに「傘を持ち歩くな」ということをAさんにいうことはできません。やはり、傘を持ち歩くことは認めるとしても、その「持ち歩き方に注意してね」ということ、つまり、「凶器となり得る傘の先端を人に当たらないよう地面に向けるなどして歩け」ということではないでしょうか?
そして、「凶器となり得る傘の先端を人に当たらないよう地面に向けるなどして歩かなかったこと」が注意義務違反、つまり「過失」となるのです。
過失により傷害を負わせた場合は、刑法209条の過失傷害罪に問われるとされています。なお、同罪は、被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪です。
刑法209条
1項 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2項 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
~ 民事上の不法行為責任も? ~
なお、過失傷害罪は傷害罪や殺人未遂罪に比べ法定刑は低いですが、たとえ過失による場合であっても、失明などの重大な傷害を負わせた場合は民事上の不法行為責任を問われ
(刑事責任とは別に)何千万円という損害賠償金を請求されることもあります。
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