駐車場内での人身事故で刑事責任?
福岡県朝倉市に住むAさんは,コンビニエンスストアで買い物を終え,駐車場に停めていた車に乗って車を後退させていたところ,自車後方を歩いていた高齢の女性に自車を衝突させて路上に転倒させ,右腕の骨を折る怪我を負わせてしまいました。Aさんは大変なことをしてしまったと思い,すぐに警察と救急車を呼びました。その後,Aさんは,事故現場で警察の実況見分に立会い,後日,警察署に出頭を要請されました。Aさんとしては駐車場の事故だったので警察沙汰にはならないだろいうと安心していたので,警察の要請は意外で納得がいっていません。そこで,刑事専門の弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
この記事をご覧の方の中には,駐車場の事故で刑事責任を問われることはあるのだろうか?という疑問をお持ちの方もおられるのではないでしょうか?駐車場といっても,大型ショッピングセンターの駐車場ような広く一般に公開されている駐車場から個人宅の駐車場のようにより限定された駐車場まで幅広くあると思います。自動車を運転する以上は,これらの駐車場での人身事故も十分想定しておかなければなりません。では,駐車場内での人身事故で刑事責任を問われることはあるのでしょうか?問われるとして,どんな処分,刑罰が科されるのでしょうか?
~ 駐車場内での人身事故と刑事責任 ~
車を運転して人い怪我をさせたいわゆる人身事故の場合,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下,法律)」が適用されることが多いかと思われます。そして,通常の人身事故の場合に適用される法律5条には次のようにかかれてあります。
法律5条
自動車の運転上必要な注意義務を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。
この条文をよくみると,単に,「自動車の運転上必要な注意義務を怠り」とだけしか書いておらず,場所に関するワードは書かれてありません。また,法律には,「運転」に関する定義も書かれていません(※この点が道路交通法と異なるところですが,それはまた今度解説いたします)。つまり,法律5条は,人身事故を場所に関係なく適用されるということになります。したがって,人身事故を起こした場所が駐車場であろうが,「自動車の運転上必要な注意義務を怠り,よって人を死傷させた」場合は法律5条が適用され,刑事責任を負わなければならなくなる可能性が出てくるのです。
~ 法律が適用される場合の刑事処分,刑罰は? ~
法律5条が適用されるからといって,直ちに刑罰を受けるかといえばそうではありません。まず,人身事故の場合,刑事処分を決めるにあたっては相手方の怪我の程度が一番考慮されます。概ね,怪我の程度が2週間以内であれば,不起訴処分(起訴猶予)となる可能性は高いでしょう(ただし,その他の悪情状がある場合(酒気帯び・無免許運転中の事故,執行猶予中,前科を有しているなど)は別です)。また,怪我の程度が2週間を超えても怪我の程度が1か月を超えない場合は,相手方と示談できればやはり不起訴処分(起訴猶予)となる可能性は高くなります。怪我の程度がそれ以上か,それ以下でも後遺症が残るなどした場合は起訴される可能性が高くなります。
起訴は略式起訴か正式起訴の2種類あります。怪我の程度が比較的軽微な場合は略式起訴されますが,重いと正式起訴される可能性が高くなります。略式起訴の場合は罰金刑,正式起訴の場合は,通常,懲役刑が科されます(有罪と認定された場合)。
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