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軽犯罪法違反で逮捕?
軽犯罪法違反で逮捕?
軽犯罪法違反と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県糸島市内に住むAさんは、糸島市の海水浴場に設けられ飲食店で、殊更お尻を強調するブーメラン型のパンツを着用していたところ、通報を受け駆け付けた福岡県糸島警察署の警察官に軽犯罪法違反で事情を聴かれることになりました。Aさんとしては「海水浴場に行ったついでなので問題ないだろう」と軽く考えていました。その後、Aさんは再び糸島警察署から繰り返し出頭するよう求められましたが、仕事が多忙などを理由に出頭を拒否し、最終的には警察官からの電話すら無視し続けていました。そうしたところ、Aさんは、突然の糸島警察署の警察官の訪問を受け、警察官から「軽犯罪法違反で逮捕する」と言われました。「軽犯罪法で逮捕されることはない」と考えていたAさんは突然の逮捕にびっくりし、接見に来た弁護士に早期釈放のための弁護活動を依頼しました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
これから海水浴シーズン。
海などのレジャーに出かけられ、羽を伸ばすという方も多いのではないでしょうか?
ですが、行き過ぎた行為は思わぬ犯罪に当たるおそれがあり要注意です。今回は軽犯罪法の中でも「身体露出の罪」についてご紹介いたします。
~ 身体露出の罪 ~
身体露出の罪は軽犯罪法1条20号に規定されており、次の者を「拘留又は過料」に処するとされています。
公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他の身体の一部をみだりに露出した者
「公衆の目に触れるような場所」とは、不特定又は多数人に見られる可能性のある場所をいい、「ような場所」とあるように、現に公衆に目に触れられていることを要しません。「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」とは、抽象的には、一般の通常人の風俗感情上不快の念を与えるものをいい、行為者の性別、、年齢、露出される部分、行為者の態度、姿態、行為の場所及びその周辺の情況などを総合考慮して判断されるものと思われます。
本件では、Aさんが履いていたパンツが通常の海水パンツではなく、履いていた場所が飲食店だったことから周囲の人が不快に感じられ警察に通報されたものと思われます。
~ 軽犯罪法違反で逮捕? ~
ネットなどでは「軽犯罪法違反では逮捕されない」という情報が散見されます。
ですがはたしてそれは本当でしょうか?
この点については、刑事訴訟法199条を見れば答えは明らかです。
刑事訴訟法199条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
軽犯罪法の法定刑は「拘留又は科料」ですので、「身体露出の罪」は199条文但書きの「拘留又は科料に当たる罪」当たります。
ですから、軽犯罪法違反の場合であっても、
・被疑者が定まった住居を有しない場合
・正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合
には逮捕される可能性があることから注意が必要です。
そもそも、逮捕は被疑者の「逃亡のおそれ」「罪証隠滅のおそれ」がある場合などにできるものですが、上記2つの要件が当てはまる場合は特に「逃亡のおそれ」の蓋然性が高いと考えられることからこのような規定が設けられているのです。
確かに、軽犯罪法のみで逮捕される事例は少ないと思われますが、Aさんのように逮捕されない高をくくっていると逮捕されることもありますから、注意してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
通貨偽造罪・同行使罪で逮捕
通貨偽造罪・同行使罪で逮捕
通貨偽造罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県飯塚市に住む少年A君(16歳)は、ビリビリに破れてしまった数枚の1万円札を貼り合わせて1枚の1万円札にし、これをコンビニの店員に手渡して商品を買いました。ところが、その直後、偽札であることに気付いた店員が警察に通報し、防犯ビデオ映像の解析などから犯人がA君であることが特定されてしまいました。そこで、A君は福岡県飯塚警察署の警察官に通貨偽造罪及び偽造通貨行使罪で逮捕されてしまいました。警察から逮捕の通知を受けたAさんの母親は、刑事事件に強い弁護士にA君との接見を依頼しました。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 通貨偽造罪 ~
通貨偽造罪は刑法148条1項に規定されています。
刑法148条1項
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
見てお分かりいただけるように、通貨偽造罪は
無期懲役
が規定されているほか、有期懲役刑も
最低が3年
ですから、他の罪を比べてかなり重たい罪であることが分かります。ちなみに、強盗罪は5年以上の有期懲役ですが、その強盗罪ですら無期懲役の規定はありません。
= 行使の目的 =
「行使」とは、偽造・変造した通貨を真正な通貨として流通に置くことをいいます。つまり、通貨偽造罪が成立するには、偽造した通貨を真正な通貨として流通に置く目的で通貨を偽造することが必要ということになります。
A君は、商品を買う目的で偽札をコンビニの店員に手渡していますから「行使の目的」ありとされるでしょう。
= 通用する貨幣、紙幣又は銀行券 =
「通用する」とは、強制通用力を有していることを意味します(※通用する通貨か否かは日本銀行のホームページなどで確認することができます)。貨幣、紙幣、銀行券を総称して「通貨」といいます。「貨幣」とは政府が発行する硬貨、「紙幣」とは政府が発行する貨幣代用証券(現在は流通してない)、「銀行券」とは日本銀行が発行する貨幣代用証券、すなわち日本銀行券を意味します。千円札はもちろん銀行券です。
= 偽造 =
「偽造」とは、通貨発行権者(政府・日本銀行)でない者が、真正の通貨の外観を有するものを作ること、「変造」とは、通貨発行権者でない者が、真正な通貨に加工して、別個の、真正な通貨と紛らわしい外観を有する物を作ることをいいます。
「偽造」と「変造」の違いが分かりにくいですが、「変造」は常に真正な(本物の)通貨が材料となる点を抑えてください。簡単に言えば、本物の千円札に0を一個加えて1万円札にする行為は「偽造」ではなく「変造」となります。本件は「偽造」に当たるでしょう。
「偽造・変造」というためには、一般人が誤解する程度に似ているものである必要があります。そのため、一見して偽物とわかる偽札を作った程度では「偽造・変造」には当たらず「模造」となり、通貨及証券模造取締法で処罰されることとなります。
本件で、A君に通貨偽造罪が成立するかどうかも、この「偽造・変造」の程度にかかってくるものと思われます。
~ 偽造通貨行使罪 ~
偽造・変造した通貨を行使すれば通貨偽造行使罪に当たります。通貨偽造行使罪は刑法148条2項に規定されています。
刑法148条2項
偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使のも目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項(刑法148条1項)と同様とする。
ちなみに、通貨を偽造し、これを行使した場合は、通貨偽造罪と偽造通貨行使罪の両方が成立しますが、両者は手段と結果の関係にあり一罪として処理されます(牽連犯罪、刑法54条1項後段)。
~ 詐欺罪は成立しないの? ~
A君のように、相手方に偽札を手渡し、偽札を本物だと信じ切った人から商品を受け取る行為は詐欺罪(刑法246条、10年以下の懲役)に当たるかのようにも思えます。しかしながら、判例は、偽造通貨を行使する際には一般的に詐欺行為を伴い、偽造通貨行使罪は詐欺罪を当然に予定しているとして、別途詐欺罪は成立せず、偽造通貨行使罪一罪のみが成立すると判断しています。
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テラスを燃やし放火未遂罪?
テラスを燃やし放火未遂罪?
放火未遂罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県久山町に住むAさんは、交際相手の男性Vさんに別にお付き合いをしている女性がいることを知り、報復目的で、Vさんやその家族が住む一軒家を燃やす意図で、ライターで火を点けた新聞紙をVさん宅に設置されてあるテラスに投げ込みました。Aさんはしばらく燃え上がる火を眺めていましたが、やがて「大変なことをしてしまった」と後悔の念にかられ、庭にあった放水ホースを使って消火活動に努めましたが、テラスの約8割を燃やしてしまいました。その後、Aさんは自宅から出てきたVさんから「お前がやったんか。」などと問い詰められ、福岡県粕屋警察署に通報され、現住建造物等放火未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ 現住建造物放火罪とは ~
本罪は刑法108条に規定されています。
刑法108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
まず、「放火して」とは、ひろく目的物の焼損に原因力を与えることをいいます。
典型的な行為としては、目的物にライターやマッチなどを用いて直接点火することなどが挙げられますが、目的物に直接点火しない場合であっても、導火線などの媒介物を介して目的物に点火する行為も「放火」に当たります。
「人」とは犯人以外の者をいいますから、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物」とは、犯人以外の者が住む住居、あるいは犯人以外の者がいる建造物ということになります。
「焼損」とは、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続しうる状態に達することをいいます。
「焼損」は本罪の既遂か未遂かを区別する重要な概念です。
ここでいう「目的物」とは、当然、Vさんの住居です。
本件では、Vさんのテラスを燃やしたにとどまり、いまだ、Vさんの住居は燃えていないことから未遂罪とされています。
~ 建造物等以外放火罪では? ~
ところで、AさんはVさんの住居ではなくテラスを燃やしているだけですから、この場合、建造物等以外放火罪が適用されるかにも思えます。同罪は刑法110条1項に規定されています。
刑法110条1項
放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせたもの者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
テラスは「前2条に規定する物以外の物」に含まれますから、公共の危険が生じた場合は本罪が適用されるかにも思えますが、仮に、AさんがVさんの住居を焼損する意思でテラスなどの自宅に隣接する物を焼損し、これらを焼損するにとどまった場合は本件のように現住建造物等放火未遂罪が成立するものと思われます。
したがって、現住建造物等放火未遂罪か建造物等以外放火罪が適用されるか否かは、Aさんに人が住む住居等を燃やす意思があったか否かによることになります。両罪の法定刑は格段に異なりますから、この意思があったか否かは非常に重要な事柄です。
~ 内心は客観的状況からも推認される ~
AさんにVさんの住居を燃やす意思があったか否かはAさんの内心に関わることですから、直接は、Aさんがどう話すかによって大きく結論が変わります。その意味では、捜査機関から受ける取調べへの対応は極めて重要といえるでしょう。また、仮に、Aさんが完全に黙秘した場合でも、テラスの構造、点火位置(犯行態様)、AさんとVさんの関係、犯行に至るまでの経緯、などからAさんの意思を推認されることもあります。
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未成年者に対する誘拐罪
未成年者に対する誘拐罪
誘拐罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県福津市に住むAさんは、SNS上で家出先を探していた中学生Vさん(14歳・女性)に、「困っているなら僕の家に家出しておいでよ。」などというメッセージを送り、、自宅にVさんを誘い出し、数日間自宅にVさんを住まわせたとして、福岡県宗像署に未成年者誘拐罪で逮捕されました。Vさんの両親がVさんの行方を心配して宗像警察署に相談。宗像警察署が捜査していたところ、VさんがAさん宅に泊まっていることが判明したそうです。Aさんは、示談して不起訴処分を獲得したいと考えています。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 未成年者誘拐罪 ~
本罪は刑法224条に規定されています。
刑法224条
未成年者を略取し、誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
「未成年者」とは20歳未満の者をいいます。
「略取」とは、略取された者の意思に反する方法、すなわち暴行、脅迫を手段とする場合や、誘惑に当たらない場合でしかも相手方の真意に反する方法を手段として、未成年者を自分や第三者の支配下に置くこと、「誘拐」とは、欺罔(騙すこと)や誘惑を手段として、他人を自分や第三者の支配下に置くことをいいます。「誘拐」と「略取」とをあわせて「拐取」ということもあります。
Aさんが「困っているなら僕の家に家出しておいでよ。」などというメッセージを送り、自宅にVさんを住まわせる行為は「誘拐」に当たるでしょう。
VさんがAさん宅へ行くこと、Aさん宅に泊まることに同意していたとしても本罪の成否には何ら関係がありません。つまり、本罪は成立します。
これは、本罪が守ろうとしているのが未成年者の自由だけでなく、親権者の保護監督権も含まれからです。したがって、親権者が同意していない以上、本罪は成立します。
なお、本罪は告訴がなければ起訴されない親告罪です。
* 深夜連れ出し等の罪 *
未成年者誘拐罪と似ている罪として福岡県青少年健全育成条例で規定される深夜連れ出し等の罪(20万円以の罰金又は科料)があります。
ただし、対象者が青少年(18歳未満の者)であること(未成年者は20歳未満の者)、時間が限定的であること(「深夜」とは午後11時から翌日の午前4時まで)などが異なります。
~ わいせつ目的等誘拐罪 ~
本罪は刑法225条に規定されています。
刑法225条
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
Aさんのように、SNSで家出中の外出先を探している未成年を自宅に呼び込み、強制わいせつ罪(刑法176条、6月以上10年以下の懲役)、強制性交等罪(5年以上の有期懲役)などの性犯罪に当たり得る行為をするというケースも散見されます。仮に、そのような行為が疑われた場合は、未成年者誘拐罪ではなく本罪が適用される可能性があります。
なお、本罪は未成年者誘拐罪と異なり親告罪ではありません。
~ 身代金目的誘拐罪 ~
本罪は刑法225条の2第1項に規定されています。
刑法225条の2第1項
近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に応じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
「近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者」とは、被拐取者との間に密接な人間関係があるため、被拐取者の安否を親身になって憂慮する者のことで、「近親者」、すなわち、親子、夫婦、兄弟、祖父母といった近い関係に当たる者のみならず、里親、住み込み店員に対する店主のように事実上の保護関係にあるものも含まれます。
本罪は、無期懲役刑が規定される非常に重たい罪ですが、近年の通信技術(逆探知技術、防犯ビデオカメラの映像精度)の向上などによって警察に検挙される件数は少なくなってきていると言われています。つまり、犯人からすると「割に合わない罪」となっているようです。
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留置場とは?
留置場とは?
留置場について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市東区に住むAさん(58歳)は、夫(62歳)、息子2人(長男、会社員、25歳・次男、東京都内に住む大学生B君、21歳)の4人家族です。Aさんは、夕食を作りながら夫の帰りを待っていると、突然、東京都新宿警察署の警察官から電話を受けました。Aさんは電話に出ると、「もしもし、B君のお母さんですか?」「私は警視庁新宿警察署捜査二課の●●と申します。」「先ほど、あなたの息子さんを特殊詐欺で逮捕しました。」「息子さんは新宿警察署にいますから、どうぞご心配なさらないで。」と言われ、一方的に電話を切られました。Aさんは、突然のことでパニックになってしまい、警察官からどんなことを言われたのかはっきりと覚えていません。また、警察に折り返し電話をする勇気もなかったことから、まずは刑事事件専門の法律事務所を探し、新宿警察署の近くに事務所がある法律事務所の弁護士に接見に行ってもらうことにしました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
ご家族様が逮捕されたという場合、必ずしも留置(拘束)されている留置場がご自宅近くの留置場であるとは限りません。
留置される留置場となる基準は、
・犯行場所がどこであるのか
・被害者がどこにお住まいなのか
・捜査担当警察署はどこなのか
などで異なります。
例えば、今回、B君は特殊詐欺で逮捕されたということですから、B君は新宿警察署の管轄内(新宿区の内、新宿3丁目15番、17番の各一部、18~29番、31番の一部、33~38番、新宿5丁目12~14番の各一部、18番の一部、新宿6丁目、新宿7丁目、歌舞伎町(1丁目1番の一部を除く)、西新宿、北新宿、余丁町8番の一部、大久保、百人町1~3丁目)で特殊詐欺の犯行に関わった可能性が高いと思われます。
今回、Aさん家族とB君は別居していたようですが、仮に福岡市内のご自宅で同居していたとしても、新宿警察の管轄内で特殊詐欺をしたと疑われれば、そのときはやはり新宿警察署の警察官(あるいは警視庁の警察官)がご自宅にいるB君を逮捕して新宿警察署まで移送し、新宿警察署の留置場へ留置することになるかと思います。
~ 留置場に近い法律事務所の弁護士に接見依頼を ~
ご家族等がご自宅から遠方の留置場に留置されたという場合、そのご家族はおろか弁護士であってもすぐに逮捕された方と接見することは物理的に不可能です。そこで、そういった場合は、逮捕された方が留置されている警察署の近くの法律事務所の弁護士に接見を依頼しましょう。
この点、全国主要都市に法律事務所を設けている弊所は、依頼者様から接見の依頼を受けた際、まずご家族がどの留置場に留置されているのか確認し、その留置場に近い法律事務所に近い弁護士を速やかに接見に派遣いたします。したがって、ご自身でご確認いただくのは、ご家族様がどの警察署に逮捕されたのかということだけで構いません。ご家族様が留置されている留置場に近い法律事務所がどの法律事務所であるのかは、依頼を受けた事務員が対応し(探し)、ご家族がその警察署の留置場に留置されているのかどうか確認いたします。
~ 留置場とは ~
ところで、留置場は、全国の各都道府県警察署内に設けられた、主に被疑者の逃走、罪証隠滅行為を防止するための施設です。
一定の場合(運動、診断、入浴等)を除き、8畳ほどの簡素な居室の中で生活することになります。規則正しい生活を強いられ、場合によっては共同で狭い居室の中で生活しなければなりません。また、食事は出ますが、警察署内に調理する場所はなく、専ら外注した弁当を配膳されます。当然、好きなもの、食べたいものが配膳されるわけではありませんし、冷めていて温めることもできません。入浴は、夏場は週に2回、冬場は週に1回とされていることが多いようです。
このよな生活であることから、留置された方にとっては相当な負担となることでしょう。
~ おわりに ~
特殊詐欺で逮捕された場合には、身柄拘束期間が長期化することも予想されます。そうした場合は、釈放を目指す弁護活動の他にも、面会の他、それが物理的に不可能であれば、手紙を送ったり、差し入れをすることもご本人の励みになるかと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は,詐欺罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
福岡県の暴力団排除条例
福岡県の暴力団排除条例
暴力団排除条例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市中央区にある建設会社Xの代表取締約Aさんは、パチンコ店Yとの契約で、ある地域にパチンコ店を建設する予定としていましたが、地元住民の反対から建設の着工には程遠い状況でした。そんなある日、Aさんは、暴力団組員Bから一本の電話を受けました。Aさんは電話に出ると、Bから「〇〇組の者だけど。」「お宅の会社、地元住民の反対でパチンコ店を建設できないって?」「俺たちが住民たちを黙らせてやる。」「その代わりと言っては何だが、仲介料として100万円を〇〇口座に振りんでもらえないかね?」と言われました。Aさんはどうしようか迷いましたが、会社の経営を考えると着工を遅らせるわけにはいかないと思い、指定された口座に100万円を振込みました。そうしたところ、地元住民の反対運動は沈静化し、Aさんは建設に着工することができましたが、後日、福岡県中央警察署に暴力団との癒着が明らかとなって暴力団排除条例違反により逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
お笑い芸人のスリムクラブが、平成28年に、指定暴力団幹部の誕生パーティーに出席するなどしてギャラを受け取っていたことが判明し、無期限の謹慎処分を受けたことはご存知かと思います。スリムクラブ以外にも数々の芸人が反社会的勢力あらギャラを受け取っていたことが明らかとなっています。そこで、本日は、福岡県で制定されている暴力団排除条例についてみていきたいと思います。
~ 暴力団排除条例 ~
福岡県では全国初の暴力団排除条例(以下、条例)が制定され(現在は各地の都道府県で制定されています)、平成22年4月1日から施行されています。
福岡県においては、暴力団が、県民の生活や社会経済活動に介入し、県民や事業者に多大な脅威を与えている現状にあることに鑑みて、安全で平穏な県民生活を確保するとともに、福岡県の社会経済活動の発展のため、暴力団を排除するための条例が制定されたのです。
条例の構成は、
第1章 総則 (第1条~第5条)
第2章 暴力団の排除に関する基本的施策等 (第6条~第12条の2)
第2章の2 暴力団排除通報をした者に対する不利益な取扱いの禁止 (第12条の3)
第3章 青少年の健全な育成を図るための措置 (第13条~第14条)
第3章の2 特定の地域における暴力団の排除を推進するための措置 (第14条の2)
第4章 暴力団員等に対する利益の供与の禁止等 (第15条~ 第17条の3)
第5章 暴力団員等が利益の供与を受けることの禁止等 (第18条 ・ 第18条の2)
第6章 不動産の譲渡等をしようとする者の講ずべき措置等 (第19条 ・ 第20条)
第6章の2 特定の事業者に対する暴力団の不当な影響を排除するための措置 (第20条の2)
第7章 義務違反者に対する措置等 (第21条~第23条 )
第8章 雑則 (第23条の2~第24条)
第9章 罰則 (第25条 ・ 第26条)
となっています。
~ 事業者等に対する罰則 ~
事業者は、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、
・暴力団の威力を利用する目的で、金品その他の財産上の利益の供与(以下単に「利益の供与」という。)をすること。
・暴力団の威力を利用したことに関し、利益の供与をすること
を禁じられており(条例15条1項)、これに違反して利益の供与をした者は
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
に処せられることとなっています(条例25条1項3号)。なお、暴力団員等とは、現に暴力団員の者のみならず、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者も含まれます(条例2条3号)。
また、暴力団排除特別強化地域で特定接客業を営む者の申出により、暴力団員が当該営業所に立ち入ることを禁止する旨の「標章」を掲げることができます(条例14条の2第2項、3項)が、
・標章を損壊し、若しくは汚損し、又は取り除いた場合
は
30万円以下の罰金
に処せられることになっています(条例25条4項2号)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。
神奈川県愛川町での逃走事件について③~犯人隠避罪~
神奈川県愛川町での逃走事件について③~犯人隠避罪~
犯人隠避罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aさんは、福岡地方裁判所で窃盗罪、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反などで審理を受け、懲役4年の実刑判決を受けました。Aさんは、審理の対象となった事実については全面的に認めていたものの、量刑に不服がありました。そこで、Aさんは、福岡高等裁判所宛に控訴の申し立てをすると同時に、選任されていた国選弁護人に保釈請求してもらったところ、請求が許可されたため、知人の援助を得て保釈保証金を納付し釈放されました。その後、控訴審では、Aさんの控訴申し立ては棄却され、裁判は確定したことから、Aさんは、福岡高等検察庁から、刑(懲役4年)執行のため検察庁へ出頭するよう要請されました。Aさんは刑務所に入所するのが嫌でその要請を無視し続けていたところ、突然、検察庁職員らの訪問を受け、職員から収容状を呈示されながら、「あなたに収容状が出ている。」「今すぐ荷物をまとめて刑務所に行く準備をしてください。」などと言われました。しかし、Aさんは、「なんで突然くっとや。」「心の準備ができとらんばってん。」などと言いながら台所から包丁を取り出し、職員との距離約1メートルのところで職員に包丁を示しながら、「オレに近づくとこれで刺すけんな。」などと言って職員の間を走り抜け、玄関を出てそのまま逃走してしまいました。その後、Aさんは、友人宅Bさん方アパートにいたところ、公務執行妨害罪で逮捕されてしまいました。また、Bさんも、犯人蔵匿罪で逮捕されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ はじめに ~
前回までの「神奈川県愛川町での逃走事件について①」では、Aさんに公務執行妨害罪が成立すること、「神奈川県愛川町での逃走事件について②」では、Aさんに逃走罪が成立しないことをご説明いたしました。今回は、Bさんが逮捕された罪、すなわち犯人蔵匿・隠避罪についてご説明したいと思います(なお、Aさんに逃走罪が成立しにため、Bさんには被拘禁者奪取罪(刑法99条)、逃走援助罪(刑法100条)が成立しないことは前回ご説明したとおりです)。
~ 犯人蔵匿・隠避罪 ~
本罪は刑法103条に規定されています。
刑法103条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(略)を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
= 罰金以上の刑に当たる罪 =
「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑として罰金刑以上の刑が規定されていればよく、選択刑として拘留・科料が規定されていても構わないとされています。「罰金以上の刑」とは、罰金刑を含む、禁錮刑、懲役刑、死刑のことを指します。
この点、Aさんが疑われている公務執行妨害罪の法定刑は
3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
ですから、公務執行妨害罪は「罰金以上の刑に当たる罪」に当たります。
= 罪を犯した者 =
「罪を犯した者」については、真犯人に限るという説と、真犯人に限らず、犯罪の嫌疑を受けて捜査又は訴追されている者も含むとする見解がありますが、判例(昭和33年2月18日など)は真犯人であることを要しないとして後者の立場をとっています。
つまり、結果として、Aさんが不起訴処分を受けたり、刑事裁判で無罪判決を受けるなどしても、Bさんの犯罪の成否には影響を与えないということになります。
= 蔵匿・隠避 =
蔵匿とは、犯人に場所を提供してかくまってやることをいいます。隠避とは、蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れされる一切の行為をいいます。
この点、Bさんは、自分のアパートでAさんを匿っていたことから蔵匿罪で逮捕されています。
= 故意 =
犯人蔵匿罪の故意としては、Bさんに、Aさん(被蔵匿者)が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」であることの認識が必要です。この点、判例(昭和29年9月30日)は、罰金以上の刑に当たる罪質の犯罪事実を犯した者であることを知っていれば、その罪の法定刑が罰金以上であることの認識までは必要ないとしています。つまり、Bさんに、Aさんが「公務執行妨害罪に当たる行為を犯して逃げていた人」という認識が認められれば、犯人蔵匿罪の故意が認められるでしょう。
~ まとめ ~
本件では、「故意」以外の外形的事実については容易に認められそうですが、問題は、BさんがAさんを「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」と認識していたかどうかだと思われます。その点は、BさんがAさんから何と説明を受けてAさんをアパートに匿ったのか、BさんとAさんとの間でどんなやり取りが行われたのか、BさんがニュースなどでAさんのことをどこまで認識していたのかにもよるものと思います。
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神奈川県愛川町での逃走事件について②~逃走罪~
神奈川県愛川町での逃走事件について②~逃走罪~
逃走罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aさんは、福岡地方裁判所で窃盗罪、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反などで審理を受け、懲役4年の実刑判決を受けました。Aさんは、審理の対象となった事実については全面的に認めていたものの、量刑に不服がありました。そこで、Aさんは、福岡高等裁判所宛に控訴の申し立てをすると同時に、選任されていた国選弁護人に保釈請求してもらったところ、請求が許可されたため、知人の援助を得て保釈保証金を納付し釈放されました。その後、控訴審では、Aさんの控訴申し立ては棄却され、裁判は確定したことから、Aさんは、福岡高等検察庁から、刑(懲役4年)執行のため検察庁へ出頭するよう要請されました。Aさんは刑務所に入所するのが嫌でその要請を無視し続けていたところ、突然、検察庁職員らの訪問を受け、職員から収容状を呈示されながら、「あなたに収容状が出ている。」「今すぐ荷物をまとめて刑務所に行く準備をしてください。」などと言われました。しかし、Aさんは、「なんで突然くっとや。」「心の準備ができとらんばってん。」などと言いながら台所から包丁を取り出し、職員との距離約1メートルのところで職員に包丁を示しながら、「オレに近づくとこれで刺すけんな。」などと言って職員の間を走り抜け、玄関を出てそのまま逃走してしまいました。Aさんは、検察庁職員などに対する公務執行妨害罪で逮捕状が出て全国に指名手配されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ はじめに ~
上記事例は、先日、神奈川県愛川町で起きた事件を基に作成しています。実際の事件では、男性は控訴審で保釈中であったところ控訴棄却の判決を受け裁判が確定し、検察庁職員の再三の呼び出しにも応じず、職員が男性宅に収容に訪れたところ、台所から包丁を持ち出して自宅から逃走した、とのことでした。
この事件に関するニュースなどを見られて、
・なぜ、公務執行妨害罪で逮捕状?
・なぜ、逃走罪ではないの?
などという疑問を持たれた方も多いかと思います。そこで、先日は「公務執行妨害罪」についてご説明しました。本日は「逃走罪」についてご説明したいと思います。
~ 逃走罪の概要 ~
逃走罪に関する規定については刑法97条から刑法102条まで設けられています。
そのうち、拘束された本人を処罰するための規定は
刑法97条の単純逃走罪及びその未遂罪(刑法102条)
刑法98条の加重逃走罪及びその未遂罪(刑法102条)
で、逃走を援助した人を処罰するための規定は
刑法99条の被拘禁者奪取罪及びその未遂罪(刑法102条)
刑法100条の逃走援助罪及びその未遂罪(刑法102条)
刑法101条の看守者等による逃走援助罪及びその未遂罪(刑法102条)
です。Aさんは保釈される前は拘束されていましたから、以下、単純逃走罪、加重逃走罪についてご説明します。
~ 単純逃走罪 ~
刑法97条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する
「裁判の執行により拘禁された」者とは、留置場と呼ばれる「留置施設」、あるいは刑務所、拘置所などの「刑事施設」などに留置、収容(拘束)されている者をいいます。
「既決の者」とは、刑事裁判が確定し、その刑の執行を受ける者(死刑確定者、労役場留置者を含む)をいいます。
「未決の者」とは、刑事裁判が確定する前に勾留されている被疑者・被告人をいいます。なお、逮捕中の者はこれに当たりません。
「逃走」とは、拘束から離脱することをいい、看守者の実力支配を脱したときに既遂となり、その前段階では未遂にとどまります。
~ 加重逃走罪 ~
刑法98条
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、3月以上の
「勾引状の執行を受けた者」とは、勾引状により勾引された者のほか、通常逮捕状、緊急逮捕状により逮捕された者も含まれます。
本罪が成立するには、単に逃走しただけでは足りず、
・拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊したこと
・暴行若しくは脅迫をしたこと
・二人以上通謀したこと
が必要です。
~ まとめ ~
以上からすると、保釈中に逃走したAは、
・裁判の執行により拘禁された既決・未決の者(刑法97条)
にも、
・前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者(刑法98条)
にも当たりません(確かに、Aさんは刑事裁判が確定した既決者ではありますが、拘禁(拘束)はされていません)。したがって、Aさんには逃走罪は成立しません。なお、Aさんに逃走罪が成立しませんから、Aさんの逃走を援助した者にも、
・被拘禁者奪取罪(刑法99条)
・逃走援助罪(刑法100条)
などは成立しません。
では、何罪が成立するのかという点を次回ご説明したいと思います。
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養護者による高齢者虐待②
養護者による高齢者虐待②
高齢者虐待について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
会社員のAさん(55歳)は、重度の認知症の母親Vさん(83歳)と福岡県春日市内のアパートで二人暮らしでした。Aさんは、10年程前から認知症だった母親を一人で支えてきましたが、日に日に病状が悪化する母親を介護しつづけるのも我慢の限界に達しようとしていました。Aさんは、日頃から母親の介護に対するストレスを抱え込むようになり、趣味のパチンコをする他ストレスを吐き出すはけ口を見失い、母親に対し、殴る、蹴るの暴力を繰り返すようになりました。また、Aさんはケアマネジャーの勧めにかかわらず介護サービスを利用しようともせず、食事も一日一回だけコンビニ弁当を買い与えるだけという生活のため、Vさんの健康状態は寝たきりに近い状態まで悪化してしまいました。そうしたところ、ケアマネジャーがAさんがパチンコに行っている間、Aさん宅を訪問した際、Vさんの異変に気づき、Vさんが高齢者虐待を受けて生命及び身体に危険が生じていると判断し、高齢者虐待防止法により市町村に通報しました。その後、Aさんは立入り調査を受け、事態を重く見られ、春日警察署に保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
先日の、養護者による高齢者虐待①では、高齢者虐待が増加していることや高齢者虐待の定義、高齢者虐待の中でも「身体的虐待」が多いことなどをご紹介しました。本日は、高齢者虐待の種別(身体的虐待、介護等放棄、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待)ごとにどんな罪に問われうるのかみていきたいと思います。
ところで、高齢者虐待法では、高齢者虐待に当たる行為に対する処罰・罰則を設けていませんから、刑法上の罪に問われることはあっても高齢者虐待防止法で処罰されることはありません。ちなみに、高齢者処罰防止法では、正当な理由なく、地域包括支援センターの職員等の立ち入り調査を拒むなどしたり、職員等の質問に答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合などに、30万円以下の罰金に処する旨規定しています。
~ 身体的虐待 ~
身体的虐待とは、高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること、をいいます。
・殴る
・蹴る
・無理矢理食事を口に入れる
・どこかに拘束する・監禁する
などの行為がこれに当たります。
刑法上は、暴行罪(刑法208条、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、強要罪(刑法223条、3年以下の懲役)、逮捕・監禁罪(刑法220条、3月以上7年以下の懲役)、逮捕・監禁致傷罪(刑法221条、3月以上15年以下の懲役)に問われる可能性があります。さらに、高齢者を死亡させた場合は、傷害致死罪(刑法205条、3年以上の有期懲役)、逮捕・監禁致死罪(刑法221条、3年以上の有期懲役)に問われる可能性があります。
~ 介護等放棄 ~
介護等放棄とは、高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人による身体的虐待、心理的虐待、性的虐待と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること、をいいます。
・食事を与えない
・入浴させない
・オムツを取り替えない
などの行為がこれに当たります。
刑法上は、保護責任者遺棄等罪(刑法218条、3月以上5年以下の懲役)に問われる可能性があります。さらに、介護等放棄によって、高齢者を死傷させた場合は保護責任者遺棄等致死傷罪(刑法219条、死亡の場合、3年以上の有期懲役、傷害の場合、3月以上15年以下の懲役)に問われる可能性があります。また、介護等放棄は、「養護者以外の同居人による身体的虐待、心理的虐待、性的虐待と同様の行為の放置等」も含まれますから、養護者以外の同居人が犯した刑法上の罪の共犯(共同正犯、教唆犯、幇助犯)に問われる可能性もあります。
~ 心理的虐待、性的虐待、経済的虐待 ~
心理的虐待とは、高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと、をいいます。
刑法上は、名誉棄損罪(刑法230条、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)、侮辱罪(刑法231条、拘留又は科料)、場合によっては脅迫罪(刑法222条、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)に問われる可能性があります。
性的虐待とは、高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること、をいいます。
刑法上は、強制わいせつ罪(刑法176条、6月以上10年以下の懲役)、準強制わいせつ罪(刑法178条1項、6月以上10年以下の懲役)、強制性交等罪(刑法177条、5年以上の有期懲役)、準強制性交等罪(刑法178条2項、5年以上の有期懲役)に、さらにその際、高齢者に怪我をさせたり、高齢者を死亡させた場合は強制わいせつ致死傷罪(刑法181条1項、無期又は3年以上の懲役)、強制性交等致死傷罪(刑法181条2項、無期又は6年以上の懲役)に問われる可能性があります。
経済的虐待とは、養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること、をいいます。
・高齢者の現金(お金)を勝手に使う
・高齢者のクレジットカードを利用して決済する
などの行為がこれに当たります。
刑法上は、窃盗罪(刑法235条、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、詐欺罪(刑法246条、10年以下の懲役)、横領罪(刑法252条1項、5年以下の懲役)、業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)に問われる可能性があります。
~ 刑事裁判になったら?? ~
高齢者虐待は絶対に許される行為ではありません。しかし、それに至るまでの経緯やそれに至った理由などは人それぞれ異なり、それぞれの事情を詳細にみていくと、一概に、養護者を非難できない事情もあると思います。仮に、上記の罪で刑事裁判に至ってしまった場合は、そうした事情を裁判で明らかにし、適切な量刑を獲得すべく努めなければなりません。
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歩きタバコと刑事犯罪
歩きタバコと刑事犯罪
歩きたばこについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
会社員のAさんは、1日、2箱分のタバコを吸う無類のタバコ好きでした。Aさんは、喫煙場所が制限されつつある昨今に不満を抱いており、現に、街を歩いている今日もなかなか喫煙場所を見つけることができずにいました。そこで、Aさんは、歩きタバコや受動喫煙をさせることが悪いとはわかってはいながらも、福岡市中央区天神の路上喫煙が禁止されている歩道上で、タバコを右手指に挟みながら歩きタバコをして歩いていました。そうしたところ、Aさんは、Aさんの横を駆け足で通り過ぎた少女Vちゃん(8歳)の顔に火の点いたタバコを当ててしまいました。Vちゃんが「熱いよ~。」などと言って声を上げたことから、Aさんは、すぐ後方を歩いていたVちゃんの母親から「歩きタバコしていましたよね?」などと声をかけられました。その後、Vちゃん側から福岡県中央警察署に「全治1週間の火傷を負った」との診断書が提出され、Aさんは中央警察署で重過失致死傷罪の被疑者としてを事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
この記事をご覧になっている方の中にも、歩きタバコをして他人に迷惑をかけた、あるいは歩きタバコで受動喫煙などの害を受け迷惑を受けたという方も多数おられるのではないでしょうか?確かに、近年、健康志向や受動喫煙防止に向けた動き(法律、条例等の制定等)の影響から、喫煙スペースは限定的となり、喫煙者の方々にとっては肩身の狭い世中になってきているかもしれません。しかし、自治体によっては、歩きタバコ(路上喫煙)に対する行政罰(過料)を設けるなど、徐々に歩きタバコそのものに対する規制を強化する動きが出てきていることもまた事実です。
~ 歩きタバコと刑事罰 ~
タバコの先端部分は700度から800度に達しているともいわれており、人ごみの中での歩きタバコはとても危険な行為です。特に、子どもに対しては要注意でしょう。タバコを持っている手の位置と子ども顔の位置がちょうど同じ高さ、位置となる可能性が大いにあり、すこし顔に触れただけでも大きな怪我、障害(特に目に当たった場合など)に繋がるおそれがあります。
ところが、こうした危険にもかかわらず、歩きタバコをする方々の罪の意識は低いように思います。しかしながら、歩きタバコをして他人に怪我を負わせると
刑法上の罪
に問われる可能性がありますから注意が必要です。では、どんな罪に問われる可能性があるのでしょうか?
~ 過失傷害罪、重過失致死傷罪 ~
まず、怪我を負わせたという場合、傷害罪(刑法204条)が考えられますが、傷害罪は、相手に怪我をさせてもいい、もしくはそうなっても構わないと認識・認容しつつ(傷害の故意がありつつ)、暴行を加え、相手方に怪我を負わせた場合に成立する犯罪ですから、歩きタバコの場合、このような事態をなかなか想定し得ず、適用されることは少ないでしょう。
次に、相手に怪我を負わせることにつき故意がなかった場合はどうでしょうか?
その場合は、過失傷害罪(刑法209条)、あるいは重過失致傷罪(刑法211条後段)が適用される可能性があります。
過失とは、簡単にいえば、ある一定の行為を取ることを求められているにもかかわらずとらなかった、つまり、注意義務違反のことをいいます。
これを歩きタバコについていえば、路上喫煙が禁止されている区域で歩きタバコをすれば、それ自体注意義務違反とされてしまうおそれがあります。また、仮に、禁止区域以外で歩きタバコをしたとしても、タバコは上記のように危険な物体ですから、他人に接触しないように注意して保持する義務があるといえます。そこで、禁止区域以外で歩きタバコをした場合は、このような義務に違反したとされるおそれは十分にあるのです。
なお、重過失とは、過失の程度、すなわち注意義務違反の程度が著しいことをいいます。路上喫煙の禁止区域で歩きタバコをし、それによって相手方に怪我を負わせた場合は過失傷害罪ではなく重過失致死傷罪で適用されるかもしれません。
~ 罰則は?? ~
過失傷害罪の罰則は、30万円以下の罰金又は科料です。また、同罪は、被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪です。起訴を回避したければ、被害者側と示談するなどして告訴を取り消していただく必要があります。
他方、重過失致死傷罪の罰則は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金で、過失傷害罪に比べ非常に重たく、かつ、親告罪ではありません。
~ 福岡県内での路上禁煙地区 ~
福岡県では、
人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例
で、西鉄天神駅周辺、JR博多駅周辺を路上禁煙地区に定めています。
詳しくは↓↓をご覧ください
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/26893/1/map.pdf?20190220115021
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