準強制わいせつ罪から準強制わいせつ致傷罪に

2019-08-09

準強制わいせつ罪から準強制わいせつ致傷罪に

準強制わいせつ罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県八女市に住むAさん(27歳)は介護士で、この日は、女性介護士Bさん(25歳)と二人で夜勤勤務(夜22時から翌朝8時まで)を担当していました。AさんとBさんは話し合って、途中仮民を取るなど休憩を挟みながらお年寄りなどの介護にあたっていました。そして、2時間ほど経過した後、Aさんは、Bさんから「仮眠を取りたい」と言われたことからこれを了承し、一人で勤務に当たっていました。ところが、Aさんは、1時間経過してもBさんが起きてこないことから仮眠室へ行くと、Bさんが勤務服を脱ぎ、下着姿で寝ているのを見ました。Aさんはこれを見て気持ちが高ぶり、「誰も見ていないからこの隙に触ってしまえ」などと考えてBさんに近づき、熟睡中だったBさんの下着の中に手を入れ、指でBさんの陰部などを触るなどしたところ、目を覚ましたBさんから「何をしているんですか!」などと言われました。Aさんは驚いて、「警察に通報する」などと言って仮眠室から出ていこうとするBさんの左肩に手をかけ、Bさんをその場に転倒させてしまいました(後日、Bさんは加療5日間の傷害を負ったことが判明)。その後、Aさんは、準強制わいせつ致傷罪福岡県八女警察署に逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 準強制わいせつ罪とは ~

今回Aさんんが逮捕された準強制わいせつ致傷罪についてご説明する前に、準強制わいせつ罪についてご説明したいと思います。

本罪は刑法178条1項に規定されています。

刑法178条1項
 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,わいせつな行為をした者は,第176条の例による。

Bさんは、熟睡中だったということですから「抗拒不能」だったといえますし、Aさんが、Bさんの下着の中に手を入れ、指でBさんの陰部などを触るなどした行為は「わいせつな行為」に当たるでしょう。
「第176条の例による」との「第176条」とは「強制わいせつ罪」を指しています。「例による」とは、法定刑をその罪と同様とする、という意味で、強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下」ですから、準強制わいせつ罪の法定刑も「6月以上10年以下」となります。

~ 準強制わいせつ致傷罪とは ~

準強制わいせつ致死傷罪とは、準強制わいせつ罪または準強制わいせつ罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。刑法181条1項に規定されています。

刑法181条1項
 第176条、第178条1項(略)又はこれらの未遂の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

本罪は

無期懲役刑

が規定されている非常に重たい罪です。

まず、「第178条1項(略)の罪を犯し」という点については上記で確認したことからよいかと思います。また、「死傷」の「傷」とは傷害のこと、すなわち、怪我を含む相手方に生理的機能障害を生じさせることをいい、今回、Bさんは加療約5日間の怪我をしていますから、この点も問題はないかと思います。

問題は、「よって」の部分、すなわち、準強制わいせつ致死傷罪において、

傷害・死亡という重い結果が、どのような行為によって発生したことが必要であるか

という点です。この点、確かに、Bさんの傷害は、Aさんのわいせつ行為から直接生じたものではなく、Bさんの傷害はAさんの行為に「よって」生じた、とはいえず準強制わいせつ致傷罪は成立しないかのようにも思えます。
しかしながら、判例(平成20年1月22日)は、

準強制わいせつ罪を犯した者が、わいせつ行為を行う意思をなくした後、逃走するために被害者に暴行を加え傷害を負わせた事例

で、準強制わいせつ致死傷罪の成立を認めています。裁判所は、被害者に生じた傷害は、

わいせつ行為に密接に関連、付随する行為だ

として、死傷の結果が、直接わいせつ行為から生じていなくとも、準強制わいせつ致死傷罪が成立し得ることを認めているのです。
今回、Bさんの傷害はAさんがBさんの左肩に手をかけるという行為から生じています。そして、確かに、AさんのBさんの左方に手をかけるという行為は、AさんのBさんに対するわいせつ行為の後に行われてはいます。しかし、Aさんは、わいせつ行為から逃走中のBさんの左肩に手をかけているわけですから、Aさんの行為はわいせつ行為と密接に関連、付随する行為といえそうです。

そこで、Aさんは、準強制わいせつ致傷罪で逮捕されたものと思われます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

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