Archive for the ‘刑事事件’ Category

大麻取締法違反(栽培ほう助)で逮捕

2020-07-20

大麻取締法違反栽培ほう助)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

~事例~
福岡県福岡市中央区の園芸用品販売会社に勤めるAさんは、ある日、福岡県中央警察署大麻取締法違反栽培ほう助)の容疑で逮捕されました。
大麻の栽培に使用することを知りながら、複数の客に大麻育成に必要な照明器具などを販売したという疑いで、会社の社長Bさん、従業員のCさんと共に逮捕されました。
Aさんは、「大麻の栽培に使用されるなんて知らなかった。」と供述しているとのことですが、捜査機関は、県内で大麻の営利目的栽培で複数人を摘発しており、その被疑者らが栽培用具をAさんの勤める会社から購入したことが分かっており、客に対して栽培方法についてのアドバイスもしていたとみて調べを進めています。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

大麻取締法違反:栽培ほう助罪

大麻取締法で規制対象となる「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)とその製品です。
大麻草の成熟した茎や樹脂を除くその製品、大麻草の種子やその製品は、大麻取締法における「大麻」から除かれます。

大麻取締法は、その第3条において、大麻取扱者以外の大麻の所持・栽培・譲受・譲渡し・研究目的使用を禁止しています。
大麻の所持・栽培・譲受・譲渡・研究目的使用が許される「大麻取扱者」というのは、大麻栽培者と大麻研究者です。
前者は、都道府県知事の免許を受けて、繊維もしくは趣旨を採取する目的で大麻草を栽培する者をいい、後者は、都道府県知事の免許を受けて、大麻を研究する目的で大麻草を栽培・使用する者をいいます。
大麻の所持・栽培・譲受・譲渡し・研究目的使用が許される「大麻取扱者」でない者が、大麻の所持・栽培・譲受・譲渡し・研究目的使用を行った場合には、大麻取締法違反となり刑事罰が科される可能性があります。

大麻の違法栽培に対する罰則については、大麻取締法第24条に規定されています。

第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

「みだりに」というのは、「違法に」という意味で、この場合、許可を受けていないのに大麻を栽培等することを意味します。
大麻の違法栽培の法定刑は、7年以下の懲役です。
営利目的であった場合は、刑が加重され10年以下の懲役、情状により10年以下の懲役と300万円以下の罰金となります。

Aさんらは、大麻の栽培ほう助罪に問われています。
ほう助」については、刑法第62条に規定されています。

第六十二条 正犯を幇ほう助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

ほう助犯は、「正犯をほう助した者」のことです。
ほう助犯が成立するためには、
ほう助者が「正犯をほう助」し、
②被ほう助者が犯罪を実行した
ことが必要となります。

①正犯をほう助すること
ほう助行為とほう助の故意が必要です。
ほう助行為は、実行行為以外の行為によって正犯を補助し、その実行行為を容易にする行為を行うことです。
ほう助の方法は、物理的であると精神的であるとを問いません。
また、正犯をほう助する意思も必要です。
ほう助の意思の内容については、学説により争いがあるところですが、被ほう助者である正犯が犯罪の結果を発生させることまでの認識・認容を意味すると一般的に理解されています。

②被ほう助者が犯罪を実行したこと
ほう助行為は行われたものの、正犯者が実行の着手に至らなかった場合、つまりほう助の未遂は、不可罰となります。
一方、被ほう助者が実行行為に出たものの、その犯罪が未遂に終わった場合を未遂犯のほう助といいますが、この場合は処罰の対象となります。

さて、Aさんは、用具を販売した客が大麻を栽培することを知らなかったと供述しています。
ほう助の故意を否認しているわけです。
主観的要件のため、ほう助の故意を立証することは容易ではありません。
しかし、故意を推認させるような証拠、例えば、客がAさんから大麻の栽培方法についてアドバイスを受けていた事実などがあれば、Aさんが単に「知らなかった」と主張しても通らないでしょう。
また、捜査機関の取調べにおいて、被疑者が供述した内容が供述調書として後の公判で証拠として使用される可能性がありますが、その取調べにおいて、故意があったと思わせるような供述が取られると、後々に争うことは難しいのです。
ですので、被疑者段階での取調べ対応はしっかりと行うことが重要です。

ご家族が刑事事件を起こしてしまった場合には、すぐに刑事事件に強い弁護士に接見を依頼されるのがよいでしょう。
弁護士は、逮捕された方から事件の詳細を伺った上で、今後の流れや取調べ対応について的確なアドバイスを行います。
特に、否認事件の場合には、自分の意に反した供述調書がとられないよう注意を払い取調べに対応する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

飲酒運転で人身事故

2020-07-06

飲酒運転をし人身事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

~事例~
会社まで車で通勤していたAさんは、会社の飲み会が行われた日は公共交通機関を利用して帰宅しようと考えていました。
しかし、飲み会後、車内で仮眠をとったAさんは、仮眠後に「運転しても大丈夫だろう。」と思い、車を運転して帰ることにしました。
福岡県北九州市小倉南区の交差点を左折しようとした際、Aさんは横断歩道を左から渡ろうとしていた自転車に気が付かず、自転車と接触し、自転車が転倒してしまいました。
Aさんは慌てて車から降り、被害者の様子を確認し、すぐに救急車を呼びました。
その後、現場に駆け付けた福岡県小倉南警察署の警察官は、Aさんが飲酒運転をしていたのではないかと疑い、呼気検査を行いました。
Aさんは、その場で逮捕されることになり、今後のどのような処分を受けることになるのか心配しています。
(フィクションです。)

飲酒運転をし、人身事故を起こしてしまった場合には、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。

飲酒運転について

お酒を飲んだ後に、そのアルコールの影響がある状態で自動車などの車両を運転する行為を「飲酒運転」をいいます。
飲酒運転には、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」とがあります。

1.酒気帯び運転

道路交通法
第65条第1項
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

第117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(略)
3 第65条第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの。

罰則の対象となる「酒気帯び運転」は、政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で車両等を運転する行為であって、呼気1リットルあたり0.15mg以上もしくは血液1ミリリットルあたり0.3mg以上のアルコールを含んで車両を運転することです。
交通事故や人身事故など具体的な被害が生じていなくても道路交通法違反が成立します。

飲酒の程度が政令で定める程度未満(呼気1リットルあたり0.15mg未満、血液1ミリリットルあたり0.3mg未満)の場合、飲酒運転に該当し、禁止規定に抵触することにはなりますが、その違反についての罰則規定がないため、刑事罰の対象とはなりません。

2.酒酔い運転

道路交通法
第117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあったもの。

呼気アルコール濃度に関係なく、アルコールの影響で正常に車両を運転できないおそれのある状態で車両等を運転する行為を「酒酔い運転」といいます。
例えば、ろれつが回っていない、まっすぐに歩くことができないなどの状況から判断されます。

飲酒運転で人身事故を起こした場合

飲酒運転をした結果、人身事故を起こした場合、さらに罰則が厳しくなります。
この場合も、アルコールの影響度によって異なる罪が成立することになります。

1.過失運転致傷罪

車両を運転する上で必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立する罪です。
過失運転致傷罪の罰則は、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金ですが、飲酒運転をしての人身事故の場合は、道路交通法違反との併合罪となるため罰則が加重されます。
酒気帯び運転による人身事故の場合には、10年6月以下もしくは禁固または150万円以下の罰金に、酒酔い運転による人身事故の場合は、10年6月以下の懲役もしくは禁固または200万円以下の罰金となります。

2.危険運転致傷罪

アルコールの影響により正常な運転ができないのに車両等を運転し、人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪が成立します。
正常な運転でできない状態であったか否かの判断は、事故前の飲酒量や運転状況、事故前後の言動などから総合的になされます。
相手方に怪我を負わせた場合は、15年以下の懲役が、死亡させてしまった場合には、1年以上の有期懲役が科される可能性があります。

飲酒運転をし、人身事故を起こした場合、多くは逮捕されることになるでしょう。
相手の怪我の程度や初犯である場合には、釈放される可能性もあります。

一方、危険運転致死傷罪に当たるような場合には、実刑判決が言い渡されることも考えられます。

ご家族が飲酒運転人身事故を起こしお困りであれば、交通事件も取り扱う刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
弊所では、刑事事件専門弁護士による無料法律相談初回接見サービスをご用意しております。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

リベンジポルノ事件で不起訴

2020-06-22

リベンジポルノ事件で不起訴処分を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

~事例~
福岡県朝倉警察署は、Vさんから自分の裸の写真をTwitterに投稿されたとの相談を受けました。
同署は、Vさんの元交際相手であるAさんをリベンジポルノ防止法違反事件の被疑者として取調べに応じるよう要請しました。
Aさんは、警察からの要請に応じ、取調べを受けるために出頭しましたが、あと何回か取調べをすると言われています。
今後のことが気になったAさんは、刑事事件専門の弁護士に相談したところ、不起訴となるためにはVさんとの間で示談を成立させることが重要だと言われ、弁護士に示談交渉を依頼することにしました。
(フィクションです。)

リベンジポルノ防止法

「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(以下、「リベンジポルノ防止法」といいます。)は、元交際相手や元配偶者の性的な画像等を、その撮影対象者の許可なく、インターネットの掲示板等に公表する行為により、被害者が大きな精神的苦痛を受ける被害が発生していることから、個人の名誉および私生活の平穏の侵害による被害の発生やその拡大防止を目的として、平成26年に制定されました。

リベンジポルノ防止法は、私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為を処罰することを定めています。

リベンジポルノ防止法における規制の対象となる「私事性的画像記録」とは、
①性交又は性交類行為に係る人の姿態(性交、手淫、口淫行為など)
②他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させるもの(性器、肛門、乳首などを触る行為)
③衣類の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されるものであり、かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの(全裸又は半裸の状態で煽情的なポーズをとらせているものなど)、
であり、その人の姿態が撮影された画像に係る電磁的記録その他の記録のことを言います。

①~③のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録した写真、CD-ROM、USBメモリなどの有体物を「私事性的画像記録物」といいます。

第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処さられる可能性があります。
「特定することができる方法」というのは、撮影対象者の顔や背景に写っている物など、公表された画像自体から撮影対象者を特定することができる場合や、画像公表の際に添えられた文言や掲載された場所など、画像以外の部分から撮影対象者を特定することができる場合を指します。
また、「提供」とは、相手方において利用することができる状態に置く行為をいいます。
これは、相手方が実際に受領することまでを必要とするものではありません。
インターネットの掲示板に撮影対象者を特定できるような形で私事性的画像を投稿し、誰でも閲覧可能な状態にすれば「提供」に当たります。

リベンジポルノ防止法違反で不起訴となるために

私事性的画像記録提供等は、親告罪です。
親告罪というのは、被害者などの告訴権者からの告訴がなければ警察官は公訴を提起することができない犯罪のことです。
そのため、リベンジポルノ防止法違反事件で不起訴を獲得するには、被害者と示談を成立させることが必要となります。

被害者との示談交渉を加害者やその家族が直接行うことはお勧めしません。
性的な画像を公表された被害者は、加害者に対して激しい嫌悪感や恐怖心を抱いていることが多く、加害者側から連絡をとろうとしても受けてくれなかったり、受けてくれたとしても感情的になり交渉が円滑に進まないことが多々あります。
また、加害者側が被害者に連絡をとろうとすることで、加害者側が被害者に被害供述や告訴の取下げを無理やりしようとしているのではないかと、捜査機関に罪証隠滅を疑われることがあります。
そのため、当事者間での交渉を避け、弁護士を介して行うのが一般的です。
弁護士は、早期に示談交渉に着手し、告訴の取下げを目指し、不起訴処分など有利な結果になるよう活動します。

被害者との示談交渉は、刑事事件に精通する交渉にも長けた弁護士にお任せください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
リベンジポルノ防止法違反事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

公然わいせつ罪は後から発覚する?

2020-06-08

公然わいせつ罪が後から発覚するかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

Aさんは、深夜、店員以外誰もいない福岡市東区内のコンビニエンスストア内に入り、店内で陰部を露出した状態で歩いていた公然わいせつ罪で、福岡県東警察署から呼び出しを受けました。警察に発覚することはないだろうと思っていたAさんは驚き、公然わいせつ罪に強い弁護士に無料相談を申込みました。
(事実に基づき作成したフィクションです。)

~公然わいせつ罪~

公然わいせつ罪は刑法174条に規定されています。

刑法174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

つまり、規定から、公然わいせつ罪とは、「公然」と「わいせつな行為」をした場合に成立し、裁判で有罪と認められれば、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料を科せられる犯罪だということが分かります。以下、「公然」と「わいせつな行為」について詳しく解説いたします。

「公然」とは、不特定又は多数の者が認識することができる状態をいいます。現実に不特定又は多数の者に認識される必要はなく、その可能性があれば足りるとされています。
公園や路上などの人前での行為が典型だと思いますが、インターネットの世界は不特定又は多数の者が利用することが可能ですから、インターネット上の行為も「公然」に当たります。

「わいせつな行為」とは、行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる行為であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものをいうとされています。裸、性器等の露出はその典型といっていいでしょう。

~ 公然わいせつ罪が後から発覚? ~

公然わいせつ罪といえば、目撃者の現認から現行犯逮捕というイメージを持たれる方も多いと思いますが、それだけではありません。本件のように公然わいせつ罪であっても後から発覚し、最悪の場合、逮捕につながるおそれも十分あり得ます。

では、なぜ、本件の公然わいせつ罪発覚したのでしょうか?
一番考えられるのは、コンビニエンスストアに設置してある防犯ビデオ映像です。最近のコンビニエンスストアには、レジ上はもちろん、出入口、駐車場等様々な場所に防犯ビデオ映像が設置されてます。しかも、映像の鮮明度も格段に上がっていますから、防犯ビデオ映像にAさんとわかる顔が映っていた可能性があります。
ただ、警察は、防犯ビデオ映像に映っていたAさんの顔のみでは犯人=Aさんと断定はしません。駐車場に設置されてある防犯ビデオ映像に映ったAさんの車の車種やナンバーについて裏付け捜査を進めるとともに、Aさんが犯行時に着てたと思われる着衣についても裏付け捜査が進められます。つまり、警察官がAさん宅へ行き、場合によってはガサで(強制的に)、着衣を押収するのです。本件でも、車種、車のナンバー、着衣等から犯人=Aさんと特定された可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、公然わいせつ罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。公然わいせつ罪でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください、専門のスタッフが無料相談初回接見サービスのご案内をさせていただきます。

監護者わいせつ罪

2020-05-25

監護者わいせつ罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県柳川市に住む会社員のAさんは、妻、長女Vさん(12歳)、次女の4人家族です。Aさんは長女Vさんに対し、日頃から性的虐待を繰り返していたと認められたことから、Vさんは児童相談所に一時保護されました。そして、Aさんは、Vさんに対してわいせつ行為に及んだとして監護者わいせつ罪福岡県柳川警察署に逮捕されてしまいました。Aさんの妻は、突然のことに驚き、Aさんとの接見を弁護士に依頼しました。
(フィクションです)

~監護者わいせつ罪~

監護者わいせつ罪は刑法179条に規定されています。

179条
1項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。

「第176条の例による」との「第176条」とは「強制わいせつ罪」を指し、「例による」とは法定刑を強制わいせつ罪と同様

6月以上10年以下の懲役

とするという意味です。

「監護者」は法律上の監護権(民法820条)に基づかなくても、事実上現に18歳未満の者を監督し保護する者であれば「監護者」に当たります。反対に、法律上の監護権を有していても、実際に監護している実態がなければ現に監護する者に当たりません。現に監護している実態があるかどうかは、同居の有無や居住状況、指導や身の回りの世話などの生活状況、生活費の負担などの経済的状況、未成年者に対する諸手続の状況などを考慮して判断されます。
(例)
・同居して子供の寝食の世話をして指導・監督している親
・単身赴任して平日は子供との関わりは少ないが、配偶者を介したり電話やメールで指導等をしたり、休日に帰宅して指導等をしている親
・親の再婚相手で、養子縁組している者
・養子縁組していない者であっても、同居し子供の寝食の世話し指導・監督している者

「影響力」とは、監護者が被監護者の生活全般にわたり、衣食住などの経済的な観点や生活上の指導・監督などの精神的な観点から、現に被監督者を監督し、保護することによる生じる影響力とされています。「あることに乗じて」とは、当該影響力が一般的に存在し、当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態でわいせつ行為・性交等をすることをいいます。わいせつ行為をする場面で、特定の影響力が生じるための具体的な行為を行う必要はありません。影響力を及ぼしている状態でわいせつ行為を行ったことで「影響力があることに乗じて」に当たります。

「わいせつな行為」とは、判例によると、行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる行為であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものをいうとされています。
(例)
・乳房を触る、揉む、舐める
・性器を触る、舐める
・自己の陰茎を性器に押し当てる

~監護者わいせつ罪は非親告罪~

監護者わいせつ罪は、身内の犯罪であるが故に、
・許してくれるだろう
・告訴はされないだろう
と考えていると大きな間違いです。監護者わいせつ罪は非親告罪であり、被害者の告訴を必要としません(強制わいせつ罪も同様です)。つまり、

被害者(身内)の意思に関係なく起訴され処罰される可能性があるということだけはぜひ覚えていただきたいものです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、監護者わいせつ罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

職務質問~拒否できる?

2020-05-18

職務質問~拒否できる?

覚せい剤と職務質問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市小倉南区に住むAさん(24歳)は、同区内の路上を歩いていたところ、突然、福岡県小倉南区の警察官から職務質問に応じるよう求められました。Aさんは、衣服のポケットの中に覚せい剤を隠し持っていたことから「応じたくない」と思い、警察官に「任意でしょ?」と言いながら警察官の停止の求めに応じず歩き続けていたところ、警察官から「じゃ、令状もってくるしかないね」と言われたため、自らポケットの中から覚せい剤を取り出し警察官に手渡しました。その後、覚せい剤の陽性反応が出たことから、覚せい剤取締法違反(所持の罪)の現行犯として逮捕されしました。
(フィクションです)

~ 職務質問 ~

職務質問は警察官職務執行法(以下、警職法)という法律の第2条の規定に基づいて行われています。警職法2条1項には次のように書かれています。

警職法2条1項 
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知って知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

警察官は誰彼かまわず職務質問できるわけではなく、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知って知つていると認められる者」に対して職務質問することができるのです。

「異常な挙動」とは,その者の言語、態度、着衣、携行品等が通常ではなく不自然であることを意味しますが、挙動が異常であるか否かは場所や時間帯によって異なります。また、「その他周囲の事情」とは、時間、場所、環境等を意味します。

今回、Aさんは警察官から見て「異常な挙動」があったと認められたからこそ職務質問を受けたのだと考えられます。

~ 職務質問を拒否することはできる? ~

職務質問を拒否することは可能なのでしょうか?
この点についてお答えするには、まず、職務質問の性質からご紹介しなければなりません。

=職務質問の性質=
職務質問は、犯罪を予防・鎮圧するための行政警察活動だといわれています。つまり、本来は「逮捕」「取調べ」「捜索・差押え」などをはじめとする捜査の一環ではなく、任意捜査を基本原則とした刑事訴訟法の適用を受けないのが原則です。しかし,職務質問が犯罪発覚の端緒として利用され、その手続が逮捕や取調べ等の捜査に繋がることは少なくなりません。また、一般人から見れば,どこからが職務質問でどこからが捜査か明確に区別できるものではありません。
そこで、職務質問にも任意捜査の原則(刑事訴訟法197条1項本文)を及ぼすという考え方が一般的です。これからすると、職務質問も相手方(以下、対象者という)の意思に基づいて,すなわち任意で行われることが基本となります。ですから,職務質問に応じたくなければ「嫌です」といって拒否することは可能です。
 
=建前としては「拒否できる」が実際は難しい=
しかし,実際に拒否することは難しいと考えます。理由は次の通りです。
①警察官も簡単には諦めない,引き下がらない
職務質問をした警察官は、犯罪の予防・鎮圧といった重責を担っています。もし、仮に、対象者の言い分に従って簡単に引き下がり、その対象者が犯罪を起こしたとすれば、その警察官の責任問題ともなりかねません。そこで、警察官はあの手この手を使って対象者を引き留めようとします。職務質問を拒否すれば拒否するほど、警察官は「何か隠し事があるからだろう」「何か理由があるからだろう」と疑ってかかりますから、そうなればますます拒否することは難しくなります。
②最高裁が一定程度の実力行使(有形力の行使)を認めている
→最高裁は、職務質問を実行たらしめるために、強制にわたらない範囲内における有形力の行使を認めています。どの程度の有形力の行使が認められるかについて、最高裁は、「職務質問の必要性、緊急性なども考慮した上、具体的状況の下で相当と認められるかどうか」を基準とするとしています。以下、判例で許容された有形力の行使の例と違法な有形力の行使の例をご紹介いたします。
ア判例で許容された有形力の行使の例
a 職務質問中突然逃げ出した者を130メートル追跡し,背後から腕に手をかけて停止させた行為
b 酒気帯び運転の疑いのある者が運転する車両のエンジンキーを回転してスイッチを切った行為
c 交通整理等の職務に従事していた警察官につばを吐きかけた通行人の胸元をつかみ歩道上に押し上げた行為 など
イ違法な有形力の行使と考えられる行為の例
a 手錠をかけて警察署に連行する行為
b 数人で引っ張って警察署に連行する行為
c 対象者の住居,敷地内に無断で立ち入る行為 など
  
以上からすれば、職務質問のため警察官が対象者の進路を塞いだり、対象者の後を追跡する行為は許容されそうです。そうすれば、職務質問建前としては拒否できても実際上拒否することは困難ということがお分かりになるかと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。

【盗撮】送検前に釈放?~

2020-05-03

【盗撮】送検前に釈放?

盗撮の送検前の釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市西区に住む会社員のAさん(34歳)は、駅構内のエスカレーターで、前に座っていた女性のスカート内を盗撮したとして、福岡県迷惑行為防止条例違反で現行犯逮捕されました。そこで、逮捕の通知を受けたAさんの妻Bさんは、弁護士XにAさんとの接見を依頼しました。その後、弁護士Xから接見の報告を受けたBさんは、弁護士報酬が高いことに驚きその場で契約はしませんでした。ところが、Aさんは検察庁へ送検される前に釈放され、「在宅」被疑者として捜査を受けることになりました。AさんとBさんは話し合った結果、接見を依頼した弁護士に刑事弁護を依頼することに決めました。
(フィクションです。)

~盗撮~

盗撮については福岡県迷惑行為防止条例6条2項,3項に規定されています。
規定によると

①他人の身体又は着用している下着を写真機等(スマートフォンなどを含む)を用いて撮影する行為
②衣服等を透かして見ることができる機能を有する写真機等を用いて、衣服等で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着の映像を見、又は撮影する行為
③①・②号の行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向ける行為
④他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態を写真機等を用いて撮影する行為
⑤④の行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向ける行為

を「盗撮行為」として規制しています。
なお、「写真機等」にはスマートフォンのほか小型カメラなど写真、動画撮影機能がついている装置は含まれると考えてください。
また、「他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」とは、住居、便所、浴場、更衣室のほか風俗店の個室なども含まれます。
さらに、③、⑤からもお分かりいただけるように、「写真機等を設置し、又は他人の身体に向ける行為」だけでも処罰される可能性があります。つまり、映像に対象者の身体や下着が映っていなくても処罰される可能性があるということです。十分注意しましょう。

盗撮行為に対する罰則は

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

です。また、常習として盗撮行為を行った場合は、

2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

です。

~送検前に釈放~

警察に逮捕され、身柄拘束を継続する必要があると判断された場合、その後検察庁へ送致される(送検)手続きが取られます。
ところが、警察の判断でこの送検前に釈放されることもしばしばあります。

そもそも、

罪証隠滅のおそれ
逃亡のおそれ

がある認められる場合に身柄を拘束されるわけですから、反対にこれらの事情が認められない場合は身柄を拘束することはできず直ちに身柄を釈放しなければなりません。

現行犯逮捕の場合は、盗撮行為を見ず知らずの第三者に現認されていることが多いでしょうし、犯行に使用したスマートフォンなどは捜査機関に押収されるでしょう。したがって、被疑者が罪証隠滅行為を図る客観的可能性は低いと考えられます。
また、定職に就いている、適切な監督者がいる、ご家族と同居している、前科前歴がない(初犯である)、監護・介護を要する方がいるなどの事情が認められる場合には逃亡のおそれがないと判断されやすいでしょう。

~ 弁護士に接見を依頼しても弁護活動してくれない? ~

弁護士と身柄を拘束された方との初めての接見を「初回接見」といいます。
通常、初回接見という場合、弁護士が身柄を拘束された方と「接見」をすることを内容とするものであって、その後の弁護活動は含まれないことに注意が必要です。弊所の場合も同様です。
したがって、初回接見後に、弁護士に弁護活動を依頼する場合は、弁護士が所属する法律事務所(あるいは弁護士)との間で新たに委任契約を結ぶ必要があります。
今回、Bさんは初回接見後の弁護活動につき委任契約を結ばれていませんが、たまたま捜査機関の判断でAさんが釈放された、という結果となっているわけです。

~在宅では弁護士は選任されない~

仮に、今回、Aさんの身柄拘束が継続され、Aさんが勾留されたとしたら、Bさんがそれまでに私選の弁護人を選任しない限り、Aさんに国選弁護人が選任されていたはずです。
しかし、今回、Aさんは勾留前に釈放されていますから、Aさんに国選弁護人が選任されることはありません。

在宅事件でも身柄事件と同様に厳しい取調べを受けることが予想されます。また、ご自身で示談交渉しようとしても捜査機関は加害者に被害者の連絡先などを教えません。したがって、厳しい取調べに対応してほしい、被害者と示談交渉してほしい、などという場合は私選の弁護人を選任するしかありません。

お困りの際はお気軽にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、盗撮をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。盗撮でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。24時間、無料法律相談(ご案内はこちら→無料法律相談のご案内)、初回接見サービス(ご案内はこちら→初回接見サービスのご案内)を受け付けております。

【傷害】傷害致死罪と正当防衛

2020-05-01

【傷害】傷害致死罪と正当防衛

傷害致死罪と正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県筑紫野市に住むAさんは、天神でお酒を飲んだ後、一人で西鉄天神駅へと向かっていたところ、すれ違いざまに男性Vさんの肩と軽くぶつかってしまいました。Aさんは酒に酔っていたこともあって、Vさんがわざと自分にぶつかってきたものと思い、Vさんに「なんやこのやろう!」と大声を上げました。すると、Aさんは、「何だって。」などと言いながら近づいてくるVさんに胸ぐらをつかまれたため、Vさんの両肩を両手で押して払いのけた、Vさんを地面に転倒させ、頭を地面に打ち付けさせてVさんを意識不明の状態とし、搬送先の病院で死亡させしまいました。Aさんは現場に駆けつけてきた福岡県中央警察署の警察官に事情を聴かれました。Aさんは警察官に「正当防衛だ。」などと主張しましたが、傷害致死罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 傷害致死罪の成立要件 ~

犯罪が成立するためには、行った行為が

①法律に規定する構成要件に該当し(構成要件該当性)
②違法であり(違法性)
③行った行為の責任を行為者に帰責できる(有責性)

ことが必要とされています。

傷害致死罪の①構成要件は、

暴行行為+被害者の死+暴行と被害者の死との間に因果関係

です。
しかし、構成要件を満たしても直ちに犯罪が成立するわけではなく、②、③を順次検討していく必要があります。
このうち正当防衛の成立の可否を検討しなければならないのが②の場面です。

~ 正当防衛 ~

ある行為が犯罪に当たると思われても、その行為に違法性がなければ犯罪は成立しません。この違法性に該当しない事由のことを「違法性阻却事由」といいます。Aさんが主張している「正当防衛」(刑法36条)は違法性阻却事由の一つです。違法性阻却事由は、正当防衛のほかにも緊急避難(刑法37条)、正当行為(刑法35条)があります。

刑法36条
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

「急迫」とは、法益(今回でいえば、Aさんの身体)侵害が現に存在するか、目前に差し迫っていることをいいます。ですから、過去の侵害や将来の侵害に対しては正当防衛は認められません。例えば、相手から足を蹴られ、その侵害が一応去った後、相手を追っかけて相手の顔面を殴ったとしても正当防衛は成立しません。「不正」とは違法であることをいいます。「侵害」とは、法益に対する実害又はその危険を生じさせる行為をいいます。

「権利」とは、法律で「〇〇権」と明文化されているものに限らず、広く法律上保護されている法益をいいます。
「防衛」とは、侵害から法益を守ることをいいます。防衛行為は、侵害者に向けられた行為でなければなりません。例えば、AさんがVさんから刃物で襲われたため、その場にいたWさんを盾にしてWさんに傷害を負わせたという場合、Wさんとの関係で緊急避難(刑法37条)が成立する余地はあっても正当防衛は成立しません。

防衛行為は、自己又は他人の権利を防衛するためのものでなければなりません。そこで、正当防衛が成立するには、防衛行為が防衛の意思に基づくことを要するかが問題となります。この点、判例は必要との立場をとっています(最判昭和46年11月16日など)。ただし、防衛行為は、緊急状況下で行われることが多いと思われますから、防衛の意思の意義を「急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態」と解する説もあります。

「やむを得ずにした」とは、具体的事情の下において、その防衛行為が、侵害を排除し、又は法益を防衛するために必要かつ相当なものであったことをいいます。防衛行為の相当性ともいわれています。防衛行為の相当性を超えたものが過剰防衛です(刑法36条2項)。防衛行為の相当性は、法益の権衡と防衛行為事態の態様の2つの面から検討し、具体的事情の下で社会的・一般的見地から見て必要かつ相当か否かと判断します。例えば、素手で向かってくる相手に対し、刃物を用いて対抗する場合は相当性を欠く場合が多いでしょうが、体格、腕力等において優勢な者に対して刃物で対抗してもなお相当性が認められる場合もあります。

~ おわりに ~

正当防衛を主張するケースでは、当事者双方から事件当時の出来事を詳細に聴き出した上で、上記要件に当てはまるかどうか判断するという極めて高度な技術と知識が必要となります。正当防衛を適切に主張するなら、刑事事件専門の弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

【強制わいせつ】不起訴について

2020-04-09

【強制わいせつ】不起訴について

強制わいせつ罪不起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所●●支部が解説します。

福岡県宗像市に住むAさんは、援助交際の目的で、出会い系サイトで知り合った女子高生のVさんと会うことにしました。Aさんは、Vさんと会いホテルに入りましたが、Vさんから援助交際を断られてしまいました。そこで、Aさんは部屋から出ていこうとするVさんの腕を引っ張り、ベットに羽交い絞めにして胸を揉むなどしました。Aさんは、さらに陰部を触ろうとしましたがVさんから抵抗されたことから、それ以上Vさんに手を出すことはできませんでした。後日、Aさんは福岡県宗像警察署に強制わいせつ罪で逮捕されてしまいました。Aさんは接見に来た弁護士に、Vさんと示談して不起訴を獲得できないか相談しました。
(フィクションです。)

~強制わいせつ罪~

援助交際目的で出会ったものの、相手の受け取る印象が違い、援助交際を断れた結果、強制わいせつ罪、強制性交等罪などの性犯罪にまで発展するというケースも散見されます。
事例は強制わいせつ罪に発展したケースです。
強制わいせつ罪は刑法176条に規定されています。

刑法176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 

「暴行」とは、他人の身体に対する有形力の行使をいい、脅迫とは、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
そして、強制わいせつ罪における暴行、脅迫の程度は、一般には、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものでなければならないとされています。
具体的には、殴る、蹴る、叩く、首を絞める、馬乗りになるなどが「暴行」の典型ですが、そのほかAさんのようにわいせつ行為の手段として腕を引っ張る、羽交い絞めにするなどの行為も「暴行」に当たります。
「わいせつ行為」については、膣を触る、陰部に手を入れる、乳房を揉む、相手方の感情を無視したキスなどが典型です。

~不起訴~

不起訴とは,検察官が下す終局処分(その事件について起訴・不起訴を終局的に決める処分)の一種で,その意味は文字通り,起訴されないということです。以下,具体的にみていきましょう。
不起訴は,検察官が下す終局処分の一種です。したがって、不起訴を決めるは警察官でもなければ,裁判官でもなく,検察官です。検察官の元には,警察や検察の捜査で収集した証拠が全て届けられます。その証拠の中には,被疑者(犯人)にとって不利な証拠もあれば,有利な証拠も含まれています。したがって,検察官は,それらの証拠を総合的に判断して,事件を起訴するか,不起訴にするか判断できる立場にあるのです。

上記のとおり,起訴するか,不起訴にするかの判断は検察官に委ねられていますから,その判断の時期も検察官の判断(裁量)に委ねられます。
検察官は,捜査の過程で収集した証拠に基づいて終局処分を決めますし,証拠の収集には一定程度時間を要しますから,終局処分の判断までにも一定の時間を要します。ただし,身柄事件の場合は時間的制約がありますから,在宅事件に比べて証拠収集のスピードがあがり,その分,終局処分を下す時期も早くなります。

上記のとおり、検察官の元には捜査で収集した様々な証拠が集まります。検察官はそれらの証拠に基づき、起訴・不起訴の刑事処分を判断します。
ここで、検察官が

「証拠関係から裁判(起訴)しても勝てるけど、被疑者を許してやるか~」

と判断した場合は起訴猶予による不起訴となる可能性が高くなります。検察官ときくと感情がない冷徹なイメージかもしれませんがやはり人間です。情はもっています。
そこで、検察官の元に「被疑者を許してやるか~」と思わせるような証拠が集まれば起訴猶予による不起訴処分を獲得できる可能性があがります。
「被疑者を許してやるか~」と思わせるような証拠としてインパクトが大きいのがやはり示談書です。したがって、強制わいせつ罪で起訴猶予による不起訴を獲得するためには、検察官が起訴・不起訴の判断をする前に示談を締結し、示談書を検察官に提示する必要があります。

なお、検察官が

「証拠関係から裁判(起訴)しても勝てない」

と判断した場合は嫌疑不十分による不起訴となる可能性が高くなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの場合は0120-631-881までお気軽にお電話ください。初回接見サービス,無料法律相談等を24時間受け付けております。

【窃盗】常習累犯窃盗で逮捕

2020-04-07

【窃盗】常習累犯窃盗で逮捕

常習累犯窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市西区に住む主婦のAさんは,令和元年5月1日、同区内にある100円ショップで日用品(販売価格108円)を万引きしたところ保安員に見つかり窃盗罪の現行犯で逮捕されてしまいました。実は、Aさんは、過去5回、万引き(いずれも窃盗罪)で検挙されたことがあり、そのうち3回は刑務所に服役しました。1回目の服役は平成20年12月1日から平成21月6月1日(懲役6月)まで、2回目は、平成25年4月1日から同年12月1日(懲役8月)まで、3回目が、平成29年3月1日から平成30年1月1日(懲役10月)まででした。逮捕後、Aさんは、窃盗罪ではなく常習累犯窃盗罪で起訴されました。
(フィクションです。)

~ 常習累犯窃盗罪とは ~

常習累犯窃盗罪は、万引きなどの窃盗罪を繰り返し、さらに窃盗既遂罪あるいは窃盗未遂罪を犯した場合に問われ得る犯罪です。
「盗犯等ノ防止及処分二関スル法律(以下、法律)」の3条に規定されています。
以下、規定の内容及びAさんの行為が常習累犯窃盗罪に処せられるのかみていきたいと思います。

法律3条の規定は以下のとおりです(ひらがな部分は実際はカタカナです)。

常習として前条に掲げたる刑法各条の罪又はその未遂の罪を犯したる者にしてその行為前10年内にこれらの罪又はこれらの罪と他の罪との併合罪に付き3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受け又はその執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る

この規定を分解すると、

1 前条に掲げたる刑法各条の罪(刑法235条(窃盗)、236条(強盗)、238条(事後強盗)、239条(昏睡強盗))の罪又はこれらの未遂の罪を犯したこと
2 1記載の犯罪を常習として犯したこと
3 1記載の犯罪又はそれらの犯罪と他の犯罪との併合罪につき、懲役6月以上の刑の執行を受け又はその執行の免除を得たことがあること
4 3が、行為前の10年以内に3回以上あること

となります。

= 1について =

本件で1に掲げる罪又はこれらの未遂の罪を犯したことが必要です。

= 2について =

「常習として」とは、反復して特定の行為を行う習癖をいいます。常習性の有無については、行為者の前科・前歴はもちろん、性格、素行、犯行の動機、手口、態様、回数などを総合的に検討して判断されます。したがって、「常習性」の認定は前科のみで判断されるわけではありません。

* 常習性が否定された裁判例 *

過去の窃盗前科の犯行態様が、ドライバーを使って古いアパートの錠を外して侵入し現金を盗んだ、という人が、本件で、スーパーマーケットの缶詰2個を万引きしたという事案で、動機・態様を著しく異にしており、本件が窃盗の習癖の発現としてなされたものであるとは認められないとして常習性が否定された裁判例(東京高裁:平成5年11月30日)があります。

= 3について =

「1記載の犯罪」とは、刑法235条(窃盗)、236条(強盗)、238条(事後強盗)、239条(昏睡強盗)の罪又はこれらの未遂罪をいいます。
「刑の執行を受け」とは、刑務所内に服役したことを意味します。つまり、執行猶予の場合は含まれませんが、執行猶予が取消され、服役した場合はもちろん含まれます。そして、10年以内の3回の刑のうち最後の刑の執行に着手されれば足り、執行が終了したことを要しないとされています。したがって、最後の刑について仮釈放となり、その仮釈放中に常習として窃盗等を行った場合でも、3の要件を満たすことになります。

= 4について =

「10年以内」とは、10年以内の3回の刑のうち最初の刑の執行終了日が10年以内であれば足り、その執行開始日が10年以内である必要はないと解されています。

= Aさんについて =

1の要件→◎:Aさんは、本件で万引き、つまり窃盗罪を犯しています
2の要件→△:常習性の判断は上記で記載した事情を総合して判断しますが、過去の前科も万引きだったことからすれば常習性は認められやすいでしょう。
3の要件→◎:Aさんは、過去、窃盗罪につき3回服役していることが認められます。最後に刑の執行に着手されたのは平成29年3月1日です。
4の要件→◎:Aさんの最初の刑の執行終了日は平成21年6月1日です。これは行為日(令和元年5月1日)から遡って10年以内に含まれます。

以上から、Aさんは常習累犯窃盗罪に処せられる可能性が高いといます。

~ 常習累犯窃盗罪の法定刑は? ~

法律3条では「前条の例に依る」とされています。そこで前条、すなわち法律2条を見ると、法律2条では

窃盗を以て論ずべきときは3年以上の有期懲役に処す

とされていますから、常習累犯窃盗罪の法定刑は

3年以上の有期懲役

ということになります。
執行猶予付きの判決を受けるためには、「懲役3年以下」の判決の言い渡しを受けることが必要ですから、常習累犯窃盗罪で有罪となると、基本的に

実刑

を覚悟しなければなりません。

しかし、法律上の減軽事由(刑法66条等)に当たる事情がある場合は、法定刑が減軽され、執行猶予付きの判決を獲得できるハードルを低めることはできます。
法律上の減軽事由には、情状に特に酌量すべき点が認められる

情状酌量

の場合もあります。
お困りの方は弁護士までご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗罪をはじめとする刑事事件、少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件、少年事件でお困りの方は、まずは、お気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

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