職務質問~拒否できる?

職務質問~拒否できる?

覚せい剤と職務質問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市小倉南区に住むAさん(24歳)は、同区内の路上を歩いていたところ、突然、福岡県小倉南区の警察官から職務質問に応じるよう求められました。Aさんは、衣服のポケットの中に覚せい剤を隠し持っていたことから「応じたくない」と思い、警察官に「任意でしょ?」と言いながら警察官の停止の求めに応じず歩き続けていたところ、警察官から「じゃ、令状もってくるしかないね」と言われたため、自らポケットの中から覚せい剤を取り出し警察官に手渡しました。その後、覚せい剤の陽性反応が出たことから、覚せい剤取締法違反(所持の罪)の現行犯として逮捕されしました。
(フィクションです)

~ 職務質問 ~

職務質問は警察官職務執行法(以下、警職法)という法律の第2条の規定に基づいて行われています。警職法2条1項には次のように書かれています。

警職法2条1項 
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知って知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

警察官は誰彼かまわず職務質問できるわけではなく、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知って知つていると認められる者」に対して職務質問することができるのです。

「異常な挙動」とは,その者の言語、態度、着衣、携行品等が通常ではなく不自然であることを意味しますが、挙動が異常であるか否かは場所や時間帯によって異なります。また、「その他周囲の事情」とは、時間、場所、環境等を意味します。

今回、Aさんは警察官から見て「異常な挙動」があったと認められたからこそ職務質問を受けたのだと考えられます。

~ 職務質問を拒否することはできる? ~

職務質問を拒否することは可能なのでしょうか?
この点についてお答えするには、まず、職務質問の性質からご紹介しなければなりません。

=職務質問の性質=
職務質問は、犯罪を予防・鎮圧するための行政警察活動だといわれています。つまり、本来は「逮捕」「取調べ」「捜索・差押え」などをはじめとする捜査の一環ではなく、任意捜査を基本原則とした刑事訴訟法の適用を受けないのが原則です。しかし,職務質問が犯罪発覚の端緒として利用され、その手続が逮捕や取調べ等の捜査に繋がることは少なくなりません。また、一般人から見れば,どこからが職務質問でどこからが捜査か明確に区別できるものではありません。
そこで、職務質問にも任意捜査の原則(刑事訴訟法197条1項本文)を及ぼすという考え方が一般的です。これからすると、職務質問も相手方(以下、対象者という)の意思に基づいて,すなわち任意で行われることが基本となります。ですから,職務質問に応じたくなければ「嫌です」といって拒否することは可能です。
 
=建前としては「拒否できる」が実際は難しい=
しかし,実際に拒否することは難しいと考えます。理由は次の通りです。
①警察官も簡単には諦めない,引き下がらない
職務質問をした警察官は、犯罪の予防・鎮圧といった重責を担っています。もし、仮に、対象者の言い分に従って簡単に引き下がり、その対象者が犯罪を起こしたとすれば、その警察官の責任問題ともなりかねません。そこで、警察官はあの手この手を使って対象者を引き留めようとします。職務質問を拒否すれば拒否するほど、警察官は「何か隠し事があるからだろう」「何か理由があるからだろう」と疑ってかかりますから、そうなればますます拒否することは難しくなります。
②最高裁が一定程度の実力行使(有形力の行使)を認めている
→最高裁は、職務質問を実行たらしめるために、強制にわたらない範囲内における有形力の行使を認めています。どの程度の有形力の行使が認められるかについて、最高裁は、「職務質問の必要性、緊急性なども考慮した上、具体的状況の下で相当と認められるかどうか」を基準とするとしています。以下、判例で許容された有形力の行使の例と違法な有形力の行使の例をご紹介いたします。
ア判例で許容された有形力の行使の例
a 職務質問中突然逃げ出した者を130メートル追跡し,背後から腕に手をかけて停止させた行為
b 酒気帯び運転の疑いのある者が運転する車両のエンジンキーを回転してスイッチを切った行為
c 交通整理等の職務に従事していた警察官につばを吐きかけた通行人の胸元をつかみ歩道上に押し上げた行為 など
イ違法な有形力の行使と考えられる行為の例
a 手錠をかけて警察署に連行する行為
b 数人で引っ張って警察署に連行する行為
c 対象者の住居,敷地内に無断で立ち入る行為 など
  
以上からすれば、職務質問のため警察官が対象者の進路を塞いだり、対象者の後を追跡する行為は許容されそうです。そうすれば、職務質問建前としては拒否できても実際上拒否することは困難ということがお分かりになるかと思います。

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