少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」
福岡市西区に住むA君(18歳)は、17歳のときにバイクの暴走(共同危険行為)で試験観察、その後保護観察処分を受けましたが、その保護観察期間中に学校内で暴力事件を起こし、福岡県西警察署に傷害罪で逮捕されました。その後、A君は20日間勾留され、取調べを受けるなどした後、事件を家庭裁判所へ送致(家裁送致)されました。家裁送致後は、少年鑑別所で専門技官による鑑別を受けたり、家庭裁判所調査官による面接を受けるなどし、最終的に少年審判を受けることになりました。そして、少年審判では、「少年院送致」の保護処分を言い渡されました。
(フィクションです。)
~ 少年法での年齢「18歳未満引き下げの議論」 ~
少年法の適用年齢を現行の「20歳未満」ではなく「18歳未満」に引き下げたらどうかという議論が、法務省の法制審議会が続けています。
この議論が開始されたのは、2017年(平成29年)3月からです。そして、今年6月までに部会は「16回」開催されています。
この議論の背景には、2016年からはじまった「18歳選挙権」、2022年施行の民法改正によって「18歳以上は成人」とされることがあると言われています。
* 法制審議会とは *
法制審議会とは、日本の法務省に設置された審議会等の一つで、法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議すること等を目的としています。法制審議会は学識経験者の中から法務大臣により任命された委員によって構成されています。
~ 引き下げられるとどうなるの? ~
引き下げられると、成人と同様の刑事手続を踏むことになります。
すなわち、逮捕され、勾留されるところまでは同じですが、その後が異なります。基本的には勾留期間内に、検察官による不起訴、起訴の刑事処分を受けます。仮に、起訴されると、皆さんもよくテレビドラマなどでご覧になったことのある「公開の法廷」で刑事裁判を受けなければなりません。刑事裁判を受け有罪と認定されれば、「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料」の刑事罰の言い渡しを受けます(懲役、禁錮、罰金については執行猶予付き判決の可能性もあり)。その裁判が確定すると前科となります。実刑判決を受けた場合は、少年院ではなく刑務所に収容されます。
~ 引き下げには異論も多い(理由①:少年犯罪の減少) ~
ただ、年齢引き下げには異論も多いようです。その理由の一つ目として、少年犯罪の減少です。
平成30年度版犯罪白書によれば、平成29年度に刑法犯で検挙された少年の数は
3万5108人
でした。近年を見ると、
平成24年 7万9430人
平成25年 6万9113人
平成26年 6万251人
平成27年 4万680人
平成28年 4万103人
と年々減少していることが分かります(ちなみに、少年犯罪がピークだったとされる昭和58年の検挙者数は、今と比べ少年の数が多かったものの、それでも「26万1634人」でしたから、いかに減少してきたかわかります)。
「年齢引き下げ=少年犯罪の増加、少年犯罪の凶悪化?」とイメージしがちですが、実態としては、少年犯罪の数自体は年々減少してきており、世間のイメージと実態とが乖離しているかもしれません。
~ 引き下げには異論も多い(理由②:少年法が機能している) ~
理由の二つ目として、現在の少年法がきちんと機能している、と指摘する専門家もいます。また、現在議論を続けている法制審議会も、「少年法が機能していないから、年齢引き下げを検討しているものではない」ことを前提に議論を続けているようです。では、なぜ議論が続けらているのかといえば、それは「改正民法(18歳以上は成人)との整合性を保つだけ」と指摘する専門家もいます。
~ おわりに ~
少年院を経験した方からは、
・少年院を経験してよかった
・少年院があったから犯罪との縁を切れた
という声も。
このように、少年法が犯罪の目を早いうちから積むことに一役買っている、大きく貢献しているのであれば、年齢引き下げは必要ないのかもしれません。
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