高齢受刑者と再犯
高齢受刑者と再犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県太宰府市に住むAさん(80歳)は年金生活で、何とか年金で生活費を賄っていましたが、今月は好きなギャンブルにお金を費やしてしまいお金が足りませんでした。Aさんは息子、娘に援助を求めることも思いつきましたが、迷惑をかけてはならないと思い諦めました。そこで、Aさんは悪いとは思いつつも、近所のスーパーで食料品を万引きしました。しかし、Aさんは保安員に万引きを見つけられてしまい、逮捕されてしまいました。そして、Aさんは、窃盗罪で起訴され、裁判で懲役1年の実刑判決を受けてしまいました。実は、Aさんは、昨年10月に刑務所から出所してきたばかりでした。
(フィクションです。)
~ 刑の執行に変わりはあるのか? ~
高齢者の方が犯罪を犯し、刑務所に収容されるおそれがあるとき、
高齢者だから特別扱いされるのではないか?
などと疑問を持たれる方もおられるのではないでしょうか?
確かに、受刑者などの処遇などに関して規定した刑事収容施設被収容者法30条では
受刑者の処遇は、その者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする
とされていますから、高齢者に限らず、受刑者間の個別具体的事情に応じて処遇が異なるということはあるでしょう。しかし、だからとって、決められた刑期の種類が変わったり、期間が短くなったりするということはありません。ただし、刑事訴訟法482条では、
・刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき
・年齢70年以上であるとき
などは、検察官の指揮により、一時的に刑の執行を停止することができるとされています。
~ 高齢者と再入率 ~
高齢者(65歳以上)の2年以内の再犯入所率が高いようです。
平成30年度版犯罪白書(以下、犯罪白書)によると、
平成25年度内に出所した高齢出所受刑者(満期釈放者、仮釈放者)
の
再入率(各年の出所受刑者人員のうち、出所後の犯罪により、受刑のため刑事施設に再入所した者の人員の比率)
を、満期釈放者、仮釈放者別で区分すると以下のとおりとなっています。
【満期釈放者】 【仮釈放者】
出所時 11・9% 3.0%
2年以内 30.1% 15.5%
3年以内 37.8% 22.4%
4年以内 42.5% 27.4%
5年以内 44.2% 31.3%
これからすると、高齢者間では、
仮釈放者より満期釈放者の方が再入率が高い
ことがわかります。また、高齢者と非高齢者(65歳未満)を比べると、5年以内の再入率は変わりはないとのことですが、
2年以内の再入率が高齢者の方が、満期釈放者、仮釈放者とも高い
とされています(非高齢者の満期釈放者の再入率→1年以内 7.5%、2年以内 26.1%、仮釈放者の再入率→1年以内 1.4%、2年以内 10.8%)。
~ 再犯期間も短い ~
上記の数字は、
5年以内に刑務所に再入所した高齢出所受刑者の比率
ですが、刑務所に入所する前の再犯期間も短いようです。
犯罪白書によれば、高齢者の5年以内再入者のうち、1年未満に再犯に及んだ高齢者は全体の
60.8%(非高齢者は47.3%)
だったとのことです。さらに、1年未満を細かくみると、3月未満に再犯に及んだ高齢者は全体の
21.6%(非高齢者は12.8%)
だったとのことでした。
~ 高齢受刑者に対する出口支援 ~
高齢受刑者等の中には、高齢又は障害のために自立した生活をすることが困難であるのに、身寄りがなく、福祉的支援が必要な状況にありながら、適切な支援体制が確保されないまま出所し、社会復帰を果たす上で困難な状況に陥っている者が少なからず存在します。そこで、矯正施設及び保護観察所においては、厚生労働省の地域生活定着促進事業により設置された地域生活定着支援センターを始めとする多くの機関と連携し、平成21年4月から、高齢者又は障害を有する者で、かつ、適当な帰住先がない受刑者等について、釈放後速やかに、必要な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として、特別調整を実施しています。
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