同級生に万引きを行わせたことにより、中学生が窃盗容疑で警察の取調べを受けた架空の事件を参考に、間接正犯や教唆犯・共同正犯の成立について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
北九州市内の中学校に通う少年A(15歳)は、同校内の特別支援学級に通う知的障害を有する同級生のBに命じ、家電量販店で欲しかったゲームソフト1点の万引きを行わせ、Bから回収しました(X事件)。
犯行後、Bは体調不良で学校を欠席するようになりました。Aは別の同級生Cに「前に成功した店だから絶対に大丈夫。」と唆し、同店でCにゲームソフト数点の万引きを行わせ、Cから情報提供料として内1点を譲り受けました(Y事件)。
後日、被害に気づいた同店が警察に被害届を提出し、防犯カメラの映像からBとCの犯行が明らかになりました。BとCは、警察の取調べに際しAの関与を供述したことから、Aは窃盗の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)
間接正犯の成立について
万引きは、他人の財物を窃取する行為であり、窃盗罪が成立します(刑法第235条)。
万引きを直接実行したのは、X事件ではB、Y事件ではCですが、関与したAにも同罪が成立するか問題となります。
自身で直接犯行を行わなくても、事情を知らない他人や、幼児などの是非を弁識する能力のない者を利用して犯行を行う場合、正犯が成立するとされます(これを「間接正犯」といいます。)。
具体的には、他人を利用する者が、(1)自らの犯罪として行う意思を有し、(2)他人の行為を道具として一方的に支配・利用した、と認められる場合に間接正犯が成立し得ると解されます。
X事件で、(1)について、Aは自分の欲しかったゲームソフトの万引きをBに行わせ、回収し自分の物としている点で、自らの犯罪として行う意思を有したと認定し得ると考えられます。
(2)について、Bは特別支援学級に通う知的障害を有する生徒であることから、是非を弁識する能力のないBをAが一方的に利用したものと認められる可能性が十分にあります。
以上のことから、X事件で、Aに間接正犯として窃盗罪が成立し得ると考えらえます。
なお、この場合、Bは心神喪失(精神の障害により、善悪を区別する能力が全くない状態)に当たるとして、不可罰になると考えられます。
次回の後編では、Y事件における教唆犯及び共同正犯の成立について解説していきます。
少年が万引きに関与して取調べを受ける場合の弁護活動
窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科する、とされる罪ですが、本件は15歳の少年による事件のため、原則として刑事裁判や刑事罰の対象とはならず、少年法における少年事件として取り扱われます。
ただし、捜査段階では成人の刑事事件と原則同じ手続きとなるため、逮捕・勾留され、長期の身体拘束を強いられる可能性はあります。
そうした不利益を回避する可能性を高めるためにも、できるだけ早期の段階で刑事事件や少年事件の弁護活動の実績が豊富な弁護士に相談し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることをお勧めします。
福岡県の刑事事件・少年事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、窃盗の刑事事件・少年事件対応の豊富な実績があります。
ご家族の少年が窃盗に関与したとして警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。