薬物事件で保釈なら
薬物事件と保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県糸島市に住むAさんは、同区内の自宅アパートで、覚せい剤を注射する方法で使用しました。しかし、翌日、Aさん宅に福岡県糸島警察署の捜索が入り、尿の任意提出を求められ提出したところ、尿から覚せい剤成分が検出されたことから、Aさんは覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。Aさんは勾留され、国選弁護人が選任されましたが、国選弁護人の弁護活動には満足していませんでした。そして、10日間の勾留期間を経た後、Aさんは覚せい剤取締法違反で起訴されてしまいました。そこで、Aさんの父親は、国選弁護人から私選弁護人への切り替えを検討しており、Aさんを保釈してもらいたいと考えています。
(フィクションです)
~ 保釈とは ~
保釈とは、被告人(裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。「被告人」とは起訴され、刑事裁判にかけられた人をいいますから、あくまで保釈請求は「起訴後」しかすることができません。
~ 保釈のメリットと保釈されないデメリット ~
保釈のメリットとしては以下の点が挙げられます。
①精神的、肉体的負担の軽減
→起訴されると自動的に2か月間の勾留が決まります。また、起訴されてから初めての裁判があるまで、裁判の準備期間などを考えると早くても1か月を要します。この間の留置場、拘置所暮らしの生活は多大な精神的、肉体的負担を伴いますが、保釈されればこれらの負担から解放されます。
②様々な処分を免れる
→身柄を拘束されていると会社、学校を休むことを理由に解雇、退学などの処分に繋がるおそれがあります。通常よりも早期に保釈されることによりこうした処分を免れる可能性があります。
③家族が安心する、負担が減る
→勾留中は限られた範囲でしか接見(面会)することができません。保釈されればこうした制限を気にする必要はありません。何よりご家族が安心されます。ご家族が留置場等へ面会に行く手間も省けます。
④裁判に向けた十分な打合せができる
→接見室だと事実上の制限があってなかなか十分な打ち合わせをすることができません。保釈されればいつでも弁護士に相談できるわけですし、何より落ち着いて、時間をかけて打合せを行うことができます。
⑤再犯防止に向けた対策を取ることができる
→身柄拘束中は、薬物の専門機関に通院するなどの具体的な再犯防止に向けた行動を取ることができません。保釈されれば再犯防止に向けた具体的な行動をとることができます。また、そのことが執行猶予獲得などの有利な結果に繋がる可能性があります。
~ 保釈の注意点 ~
ただ、保釈はメリットだけではありません。
以下の点に注意する必要があります。
①多額の保釈保証金が必要となる
→保釈保証金の額は、被告人の認否、事案の内容等に鑑みて裁判官(裁判所)が決めます(日産のカルロスゴーン社長が保釈保証金1億円を納付したことはニュースになりました)。決して安い金額ではなく、通常の簡易な事件でさえ100万円~150万円を準備する必要があります。
②保釈条件を遵守する必要がある
→保釈を許可するにあたっては・裁判所から呼び出された場合は必ず出頭する・住居地を変更するには裁判所の許可を受ける・被害者への連絡は弁護人を介する
・被害者、目撃者、共犯者などの事件関係者と接触しない・薬物に近寄らないなどの条件を付けられます。全くフリーな状態で釈放されるわけではありません。
③保釈保証金は没収され、収容されるおそれがある
→決められた条件を守らなければ納付した保釈保証金は没収され、再び留置施設等に収容されるおそれがあります。カルロス・ゴーン被告も保釈条件を守らなかった結果、保釈保証金を没収され保釈許可決定が取り消されています。
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