親権を持つ親の未成年者略取罪と監禁致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します
福岡市東区に住む夫Aさんは、自身が不倫をしたことが妻Bさんにばれてしまい、それのことがきっかけとして別居するようになりました。A・Bさん夫婦には6歳の子どもCちゃんがいますが、CちゃんはBさんと同居しています。そして、ある日、Bさんと離婚調停中のAさんは「このままでは将来、子どもの親権を持てない。」、「子どもと一生あえなくなるかもしれない。」などと不安になり、Bさんが住んでいるアパートを訪ね、Bさんが留守であるところを見計らってCちゃんを誘い出し、Cちゃんを車に乗せてそのまま連れ去ってしまいました。ところが、Aさんが信号停止中、助手席に乗っていたCちゃんは自らドアを開け、外に逃げ出し近くの人に助けを求めたのでした。Cちゃんは車から逃げ出した際、全治1週間の怪我を負いました。他方、Aさんは車を走らせていたところ、東警察署の警察官が運転するパトカーに呼び止められてしまいました。そして、Aさんは未成年者略取罪、監禁致傷罪で逮捕されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~未成年者誘拐罪~
未成年者誘拐罪は刑法224条に規定されています。
刑法224条
未成年者を略取し、誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
「未成年者」とは20歳未満の者をいいます。
「略取」とは、略取された者の意思に反する方法、すなわち暴行、脅迫を手段とする場合や、誘惑に当たらない場合でしかも相手方の真意に反する方法を手段として、未成年者を自分や第三者の支配下に置くことをいいます。
「誘拐」とは、欺罔(騙すこと)や誘惑を手段として、他人を自分や第三者の支配下に置くことをいいます。
「誘拐」と「略取」とをあわせて「拐取」ということもあります。
なお、VちゃんがAさんの誘いに同意していたとしても本罪の成否には何ら関係がありません。つまり、本罪は成立します。
これは、本罪が守ろうとしているのが未成年者の自由だけでなく、親権者(Bさん)の保護監督権も含まれからです。親権者が同意していない以上、本罪は成立します。また、離婚前で、AさんがCちゃんに対する親権を持っているかどうかも無関係です。
~監禁致傷罪~
監禁致傷罪は刑法221条に規定されています。
刑法221条
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
本条は「人を死傷」とされていますから、監禁致傷罪のみならず監禁致死罪に関する規定でもあります。
そして、監禁致死傷罪(監禁致傷罪、監禁致死罪)は、上記規定から①前条の罪を犯すこと、②人を死傷させること、③①と②との間に因果関係が認められること、によって成立する犯罪、といえそうです。
①「前条の罪」とは刑法220条の「逮捕・監禁」の罪を指しています。
刑法220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
「監禁」とは、人が一定の区域内から脱出することが不可能又は著しく困難にすることをいいます。
そして、監禁といえるためには、被監禁者の自由の拘束が完全なものであることを要しないとされています。したがって、一応、脱出の方法がないわけではないけれども、生命・身体の危険を冒すか、又は常軌を脱した非常手段を講じなければ脱出できないような場合であれば監禁といえます。
「不法に」とは、まさに違法であることをいいます。
違法かどうかは、行為の手段・目的などに照らして社会通念上許容されるものかどうか、という観点から判断されます。
③「よって人を死傷させた」の「よって」というのは人の「傷害」「死」という結果の発生と、その結果と監禁そのもの、少なくともその手段としての行為との間に因果関係が必要であることを意味しています。
したがって、被害者が監禁状態から離脱しようとして怪我を負ったり死亡した場合にも、監禁致傷罪、監禁致死罪に問われる可能性があります。
刑法221条は「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」としています。
これは傷害の場合、傷害罪(刑法204条:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。死亡の場合、傷害致死罪(刑法205条:3年以上の有期懲役(上限20年))の罪と比較する、ということを意味しています。
そして、傷害罪と監禁罪を比較した場合、下限は監禁罪が重たく、上限は傷害罪が重たいことが分かります。
したがって、監禁致傷罪の法定刑は
3月以上15年以下の懲役
となります。
次に、傷害致死罪と監禁罪を比較した場合、傷害致死罪が重たいことが分かります。
したがって、監禁致死罪の法定刑は
3年以上の有期懲役
となります。
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