久留米市の傷害事件

2019-01-26

久留米市の傷害事件

福岡県久留米市で工場を経営するAさんは,日頃のVさんの勤務態度やVさんの営業成績に不満を持っていました。そして,ある日,AさんはVさんに勤務態度や営業成績について口頭で指導,注意したところ,Vさんから「あんたの指示が曖昧やけん,こっちも困っとるちゃんね」「毎日,2時間も,3時間も残業させられりゃ,そりゃ効率も悪くなりますよ」などと言われました。AさんはVさんからそう言われたことに腹を立て,近くにあった鉄パイプで1回,Vさんの脚を叩き,地面に転倒したVさんの腹部等を鉄パイプで数回殴打しました。周囲にいた社員がAさんとVさんを引き離し,なんとか自体は沈静化しましたが,Vさんは病院に運ばれ,医師の診察を受けた結果「加療約1か月間」との診断を受けました。Aさんは,110番通報により現場に駆け付けた久留米警察署の警察官に傷害罪で逮捕されました。

~ 犯罪が成立する場合とは? ~ 

犯罪が成立するためには,行った行為が

1 法律に規定する構成要件に該当し(構成要件該当性)
2 違法であり(違法性)
3 行った行為の責任を行為者に帰責できる(有責性)

ことが必要とされています。

1の構成要件該当性とは,行った行為が,法律などで規定されている文言に該当することをいいます。例えば,殺人罪を規定する刑法199条には「人を殺した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」と書かれていますが,これからすると殺人罪の構成要件該当性とは,ある行為が「人を殺した」ことに該当すること,ということになります。
2の違法性とは,行った行為が正当防衛(刑法35条1項)や緊急避難(刑法37条1項)など正当化事由に当たらないことをいいます。正当防衛や緊急避難は刑法で規定されている要件に該当しなければ成立しません。単に,悪口を言われていた,金を返さなかったから殴ったなどというだけでは,情状面では一定の配慮があるとしても,違法性のレベルでは検討される余地はありません。
3の有責性とは,行為者が責任能力を有すること(心神喪失や心神耗弱(刑法39条)などに該当しないこと)をいいます。暴行・傷害事件ではよく「酔っていて覚えていない」と言われる方がおられます。しかし,あくまで,有責性は行為時を基準に判断されます。行為時に酩酊状態だったという場合は話は別ですが,言動,態度がしっかりしていて意識が明瞭だったと認められる場合は,やはり責任能力はあるとされてしまうでしょう。

~ 傷害罪が成立する場合とは? ~

では,傷害罪が成立する場合とはどんな場合なのでしょうか?

まず,傷害罪の構成要件該当性を検討するにあたって,傷害罪が規定されてある刑法204条の規定を確認しましょう。

刑法204条
 人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

まず,傷害罪の規定から分かることは,傷害の対象者は「人」の身体だということです。つまり,「人」以外の動物などを傷害しても傷害罪に問われることはありません(この場合は,器物損壊罪(刑法261条)に問われることになります)。また,「傷害」の意義については諸説ありますが,判例,裁判例は,人の生理機能に障害を与えること,又は人の健康状態を不良に変更することとする生理機能障害説に立っているものと思われます。打撲,骨折,創傷が「傷害」に当たることは明らかですが,中毒症状を惹起し,めまい,嘔吐をさせる,病菌を感染させるなども「傷害」に当たるとされています。

次に,規定上は単に「人の身体を傷害した」と行為の結果しか書かれていませんが,その前提として,

1 暴行の故意+暴行行為
2 傷害の故意+傷害行為

が必要とされています。暴行とは人の身体に対する不法な有形力の行使をいい,殴る,蹴る,突く,押す,投げ飛ばすなどがその典型といえるでしょう。暴行の故意とは,要は,怪我させるつもりはなかったという場合です。この,暴行の故意で暴行行為を働き,結果,傷害を発生させた場合でも傷害罪に問われ得ることになります。他方,傷害の故意とは,傷害させるつもりだったという場合です。傷害の故意で傷害行為を働き,結果,傷害を発生させた場合は傷害罪に,傷害を発生させなかった場合は暴行罪(刑法208条)に問われ得ることになります。

最後に,暴行行為,又は傷害行為と傷害との間に因果関係があることが必要です。この因果関係の考え方についても諸説ありますが,基本的には「その行為がなかったならばその結果は発生しなかった」という関係が認められれば因果関係を認められるとされています。よって,例えば,暴行行為により被害者に骨折を負わせたとされても,暴行行為の前に,被害者が別の原因で骨折していたということが判明した場合は,「その行為がなくても結果は発生していた」といえますから因果関係は否定されることになり,傷害罪は成立しないことになります。

~ 重大犯罪・事件に発展する可能性も? ~

本件では,幸いにもVさんの一命は取り留められたようですが,仮に,その後Vさんが死亡した場合,Aさんはどんな罪に問われるのでしょうか?

刑法205条
 身体を傷害し,よって人を死亡させた者は,3年以上の有期懲役に処する。

これは傷害致死罪と呼ばれる罪名の規定で,Vさんが死亡した場合,Aさんは傷害致死罪に問われる可能性が出てきます。有期懲役の上限は20年(刑法12条1項)ですから,傷害罪に比べると格段に刑は重くなっています。また,裁判員裁判対象事件であるため,起訴されれば一般人が裁判員としえ裁判に参加することになります。ただし,傷害致死罪の場合も,行為(暴行行為,傷害行為)と死亡との間に因果関係があることが必要です。したがって,Vさんの入院中に,医師の手術が原因でVさんが死亡したという場合は,傷害致死罪ではなく傷害罪が成立する可能性が高いでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,傷害罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。傷害罪などでご家族の方が逮捕された,警察の捜査,呼び出しを受けて困っている,被害者と示談したいなどとお考えの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。

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