自殺ほう助罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aさんは、自宅において、自分と一緒に自殺することに同意した恋人Vさんと練炭自殺を図ろうとしました。
しかしながら、途中で練炭の火が消えてしまったために、AさんもVさんも一命をとりとめました。
この件でAさんは、福岡県西警察署の警察官により自殺幇助未遂罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんが逮捕されたことを知ったAさんの両親は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(フィクションです。)
~ 自殺幇助罪 ~
刑法第202条が規定している犯罪は、全部で4種類あります。
①人を教唆して自殺させる自殺教唆罪、②人を幇助して自殺させる自殺幇助罪、③嘱託を受けて人を殺す嘱託殺人罪、④承諾を受けて人を殺す承諾殺人罪の4つです。
①と②とをまとめて自殺関与罪、③と④とをまとめて同意殺人罪ともいいます。
これら4つの罪は、何らかの形で「自ら死ぬ」と判断した人が死ぬことにつき関与したという点で共通しています。
他方で、自殺関与罪と同意殺人罪とは、実際に行われた行為が自殺なのか殺人(他殺)なのかという点で大きな違いがあります。
上の事案では、練炭を用いたいわゆる無理心中が行われており、これは自殺であると考えられますので、自殺関与罪の成否が問題になると考えられます。
では、自殺関与罪のうち、自殺教唆罪と自殺幇助罪とはどのように区別されるでしょうか。
まず、「教唆」とは、他人を唆して特定の犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。
他方、「幇助」とは、すでに犯罪の実行を決意している人に対して助言や激励などによってその決意を強固にすることをいいます。
「教唆」も「幇助」もどちらとも犯罪を実行する人に対して犯罪の実行についての発言をしているというてんでは共通していますが、犯罪を実行した人が犯罪実行の決意をしたのが自らの意思によるのか、それとも発言を受けたことによるのかという点で異なります。
当初は犯罪を実行するつもりがなかったという場合には「教唆」、当初から犯罪を実行するつもりであったという場合には「幇助」となります。
そうすると、自殺幇助罪は、すでに自殺を決意している人に対して助言や手伝いをしてその決意を強固にする犯罪ということになります。
上の事案では、どのような経緯でAさんとVさんが練炭自殺による無理心中を図ろうとしたのか明らかではありません。
そのため、Vさんが当初から自殺をする意思があったのか否かが問題となります。
当初から自殺をする意思があってAさんの関与を受けたことによって自殺を図るに至ったという場合には自殺幇助罪、当初から自殺をする意思がなかったのにAさんの関与により自殺を図るに至ったという場合には自殺教唆罪となる可能性があります。
なお、自殺幇助罪が成立するためには、幇助によって自殺を図ったという事実が必要であり、ただ自殺をするように助言をしたというだけでは自殺幇助罪は成立しません。
上の事案では、実際に練炭に火をつけて自殺を図っていますが、Vさんが死亡するに至っていないため、これに関与したAさんには自殺幇助既遂罪ではなく自殺幇助未遂罪が成立する可能性があります。
この場合、6月以上7年以下の懲役に処せられることがあります。
もっとも、自殺幇助罪について、そもそも自殺は犯罪ではないのに、それを幇助した者が従犯として処罰されるのはおかしいのではないかという問題があります。
そもそも従犯は、犯罪の実行を幇助する行為ですので、犯罪ではない自殺を幇助しても犯罪とはならないようにも思えます。
この点については様々な見解が対立していますが、生命という最も重要な利益の放棄にあたる自殺については、他者が関与することまでは許されないことから、自殺幇助罪を処罰すべきだと考えられているようです。
~ 殺人罪の可能性 ~
仮に自殺の助言につき、相手方の自由な意思決定を阻害するような態様で行われたという場合には、自殺関与(未遂)罪にとどまらず殺人(未遂)罪が成立する可能性があります。
殺人罪が斉一した場合には、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処せられることがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。ぜひ一度、当事務所までご相談ください。