犯罪の実現過程①~殺人罪の場合~

2019-08-17

犯罪の実現過程①~殺人罪の場合~

Aは長年、Vに対する恨みを抱いており、隙あらば殺そうと考えていました。そして、Aは、知人からVがとある地域のアパートに一人暮らしをしているとの情報を得ました。そこで、AはいよいよVを殺す決意をしました。そこで、Aは殺害用のナイフを購入し、V方アパート付近の下見をするなどしました。そして、Aは、実行日当日、V方アパート近くでVを待ち伏せし、Vが帰宅するのを待ちました。そして、AはVが帰宅したのと同時に、その背後からいきなり、右手に把持していたナイフをVの背中に1回突き刺しました。しかし、AはVから「長年の付き合いではないか。」「頼む、命だけは奪わないでくれ。」と泣きながら懇願されたことから、それ以上突き刺すことをやめ、その場から逃走しました。その後、Vは付近の住民によって119番通報されて駆け付けた救急隊員による救命活動などによって一命をとりとめました。Aは殺人未遂罪で逮捕されてしまいました。

~ 犯罪の実現過程 ~

本件は、大きく、

1 AがVを殺すことを決意。
2 Aがナイフを購入し、V方アパート付近を下見
3 AがVの背中をナイフで突き刺す(結果、Vは死亡しなかった)

の3段階に分けられると思います。犯罪は通常、どのような経緯を辿り、どの段階で犯罪となり得るのでしょうか?今回はイメージしやすい、殺人罪を例にとります。

~ 1の段階 ~

まず、1の段階の決意だけでは犯罪となりません。「何人も思想によりて処罰されることなし」の法諺が当てはまります。法は行為又は結果として客観化されない「人の内面」にまで踏み込むことはできないのです。

~ 2の段階 ~

一定の犯罪を実行するための準備行為を「予備」といいます。「予備」とは、犯罪行為の実行に着手する前の段階をいいますから、あらゆる犯罪について予備罪を設けてしまうと、人々の日常生活の行動を著しく制限してしまうことになりかねません(たとえば、窃盗罪に予備罪が設けられると、ホームセンターでマイナスドライバーを購入する行為が処罰されることになりかねません)。そこで、予備も原則として犯罪とはならず、重大な結果を引き起こす蓋然性が高い重大犯罪に限って予備罪が設けられ処罰するとされています。代表的な予備罪は以下のとおりです。
本件では、殺人の目的でナイフを購入する行為、V方あアパート付近を下見する行為が「予備」に当たります。

刑法113条(放火予備罪)
 第108条(現住建造物等放火罪)又は第109条1項の罪(非現住建造物等放火罪)を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

刑法201条(殺人予備罪)
 第199条の罪(殺人罪)を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

刑法237条(強盗予備罪)
 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。

~ 3の段階 ~

実行の着手に至ったが、何らかの事情によって結果が発生しなかった場合を「未遂」といいます。上の「予備」との決定的な違いは「実行の着手」があったか否かです。「実行の着手」とは、法益侵害に対する現実的危険性を有する行為、と言われていますが、何をもって「実行の着手」とするのかは事案によって個別に判断されます。本件では、少なくともAがVの背中を突き刺した時点で「実行の着手」ありとされるでしょう。未遂が処罰されるのも例外で、処罰されるためには個別に各本条の規定がなければなりません。

刑法43条本文
 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。

刑法44条
 未遂を罰する場合は、各本条で定める。

刑法203条 
 第199条及び前条の罪(自殺関与、自殺同意罪)の未遂は、罰する。

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